韓国空軍(Republic of Korea Air Force)
【総論】
現在
韓国空軍は300機以上の作戦機を有しており、主力となる戦闘・攻撃飛行隊22個のほか偵察飛行隊1個、輸送飛行隊4個などの航空機部隊、防空ミサイル大隊5個、防空砲兵旅団2個などの地上部隊を擁している。兵員は約60,000名。KF-16やF-15Kなど虎の子の機体は北朝鮮の攻撃を避けるため、停戦ラインのかなり後方に置かれている。ほとんどの機体はアメリカ製だが、F/A-50やKO-1など一部の機体は国産化が進められており、ロシア製の練習機やヘリコプターも導入している。主敵が北朝鮮軍なためか、どちらかといえば制空よりも対地攻撃に重点が置かれているようだ。戦闘機パイロットの年間飛行時間は135~140時間といわれ(諸説あり)、
北朝鮮空軍のパイロットと比べると雲泥の差があり、その技量の差は圧倒的だろう。近年は航空自衛隊や台湾空軍のようにアメリカの大規模演習場で実戦形式の訓練を行う事はしておらず、もっぱら国内の演習場で射爆訓練を行っている。2008年8月にアメリカで行なわれる演習「レッドフラッグ」にF-15K 6機を派遣する予定。
【装備について】
韓国空軍はここ15年ほどで急激な近代化を進めてきた。その中心となったのは国内でライセンス生産したKF-16で、そこで得た技術を元に国内計画機であるT-50シリーズの共同開発がアメリカと行われた。また将来的にはKFXと呼ばれる国産ステルス戦闘機の開発も予定されている。現在の主力機はF-16(KF-16)で約180機が配備されており、それまで主力機だったF-4とF-5は退役が進んでいる。現在導入中のF-15Kは40機の配備が確定し、またさらに20機が追加導入される可能性が高く、最新鋭攻撃機として今後空軍の中心を荷うだろう。現代興空戦に必須とされるAWACS機も紆余曲折の末にE-737の導入が決定し、2012年までに4機が引き渡される予定。また長距離無人偵察機(グローバルホーク)やパトリオットPAC2の導入も検討されており、韓国空軍は米軍からの戦時統制権委譲後に向けて着々と総合的な戦闘力を整えつつある。
しかし韓国空軍は深刻な予算不足で整備に支障をきたしているといわれており、保有している戦闘機用の予備エンジンのうち実に97%(2006年の統計)が非稼動状態と報道された。このため各種戦闘機の稼働率(F-16:77%、F-4:75%、F-5:80%)はいずれも空軍の平時目標(F-16:90%、F-4:85%、F-5:86%)に届いておらず、戦時目標稼働率の90%にも到底届かないと思われる。また2007年2月に起きたKF-16の墜落事故で韓国空軍の整備体制の杜撰さが浮き彫りになり、大きな問題となっている。朝鮮日報によれば韓国空軍は2000年から6年間、航空機の整備予算として計上した計2,476億ウォンを台風災害の復旧など他の用途に流用しており、このため整備維持が不可能になり稼働率が低下しているという。整備の現場では予備の部品が無いため、待機中の機体から部品を抜き取って整備中の機体に使用する「共食い」が日常化し、整備記録を書き変えるなどの不正行為が横行していると言われている。韓国国防省はこれらの原因をアメリカの韓国空軍に対する支援レベルが低いからだと考えており(2007年5月3日付朝鮮日報紙)、アメリカへ支援レベルを現在の「ランク3」から「ランク2」へ引き上げるよう要請している。基地の整備においても業者の手抜き工事が発覚しており、地盤整備不良のためF-15Kが陥没したマンホールに落ち大破するという悲惨な事故も起きている。
【編制について】
以下の編制表は若干古いので、現在の編制とは異なる可能性がある事に注意されたい。韓国空軍の主力となるのはF-16を装備する第19、20戦闘航空団で、将来的にはこれにF-15Kを装備する1個戦闘航空団が加わる。防空網は北部を担当する烏山の第1主防空管制センター(MCRC1)と南部を担当する大邱の第2主防空管制センター(MCRC2)が中心となっている。またジョンウォンと春川にそれぞれ防空警戒センター(CRC)が存在している。これらの各防空セクションがナイキ・ハーキュリーズ長距離SAMやホーク中距離SAMを装備する防空大隊や戦闘飛行隊を指揮する。2007年5月には各部隊の情報をネットワークで繋ぎ、指揮・通信・管制などをリアルタイムで自動的に統合し配信するシステムが完成した。これにより韓国空軍はようやく現代的な防空体制を気付く事が出来た。今後は空中指揮警戒管制機を加え、より効率的な防空体制の構築を目指すだろう。
烏山 |
空軍作戦軍団 |
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第1主防空管制センター |
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大邱 |
第2主防空管制センター |
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空軍兵站補給処 |
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第11戦闘航空団 |
第151戦闘飛行隊(F-4D)、第102戦闘飛行隊(F-15K)、第122戦闘飛行隊(F-15K) |
春川 |
防空管制センター |
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光州 |
第1戦闘航空団 |
第105戦闘飛行隊(F-5E) |
泗川 |
第3教育航空団 |
第216教育飛行隊(ホーク)、第236教育飛行隊(T-37C) |
金海 |
第15混成航空団 |
第255特殊戦飛行隊(C-130)、第256輸送飛行隊(CN-235)、第258輸送飛行隊(CN-235)、第235輸送飛行隊(CH-47)、第259特殊飛行隊(UH-60) |
原川 |
第8戦闘航空団 |
第238戦術管制飛行隊(A-37)、第239戦術管制飛行隊(A-37) |
水原 |
第10戦闘航空団 |
第101戦闘飛行隊(F-5E)、第103戦闘飛行隊(F-5E) |
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第39偵察航空団 |
第125偵察飛行隊(RF-5)、第131偵察飛行隊(RF-4) |
醴泉 |
第16戦闘航空団 |
第205教育飛行隊(F-5E) |
清州 |
第17戦闘航空団 |
第132戦闘飛行隊(F-4E)、第152戦闘飛行隊(F-4E)、第153戦闘飛行隊(F-4E) |
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基礎教育航空団 |
第208教育飛行隊(T-103)、第216教育飛行隊(T-41) |
江陵 |
第18戦闘航空団 |
第201戦闘飛行隊(F-5E)、第202戦闘飛行隊(F-5E) |
ジョンウォン |
第19戦闘航空団 |
第155戦闘飛行隊(F-16)、第159戦闘飛行隊(F-16)、第161戦闘飛行隊(F-16)、第162戦闘飛行隊(F-16) |
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第93基地設備群 |
瑞山 |
第20戦闘航空団 |
第120戦闘飛行隊(F-16)、第121戦闘飛行隊(F-16)、第123戦闘飛行隊(F-16)、第157戦闘飛行隊(F-16) |
群山 |
第38戦闘航空群 |
第111戦闘飛行隊(F-16) |
城南 |
戦術混成航空団 |
第251輸送飛行隊(B-737)、第257輸送飛行隊(C-130)、第233救難飛行隊(ヘリ)、第237戦術管制飛行隊(O-2A) |
【施設について】
【参考資料】
世界の艦船 1994年7月号、2003年3月号、2006年9月号(海人社)
月刊航空ファン(文林堂)
韓国海軍公式HP
朝鮮日報
Grobal Security
2009-03-04 00:02:38 (Wed)
最終更新:2009年03月04日 00:02