韓国海軍について

韓国海軍(Republic of Korea Navy)


【総論】
現在韓国海軍は艦艇約200隻、15万トンを有しており、兵員は正規兵(職業軍人)が海軍33,000人と海兵隊24,000人で、さらに徴兵17,000人(26ヶ月)、予備役9,000人を擁している。艦艇の大部分は国産で駆逐艦やドック型揚陸艦などの大型艦も保有しており、イージス駆逐艦も建造中である。1970年代にはアメリカから譲渡された旧式駆逐艦数隻が最大の艦艇で、ほとんどが魚雷艇や哨戒艇だった事を考えると、その急速な発展ぶりが理解できる。その背景には韓国経済の急成長と造船業界の発展があり、また脅威の対象が小規模な北朝鮮海軍から海上自衛隊や中国海軍へと移った事も影響している。

【装備について】
韓国造船業界は世界一を誇っているが、その内容をみると日本とは少々異なっている。かつての造船業は主機をはじめ各艤装品に至るまで造船所で製造する一大総合産業であり、日本の造船業も戦前からそういった発展をしてきた。しかし1980年代頃から造船業は急速に姿を変え、船はユニットごとにクレーンで組み立てるだけのものになり、韓国造船業はこの時流にのって短期工法で発展したのである。確かに韓国造船業はこれにより建造能力を急進させたが、それは端的に言えば船の外側を作るだけの技術であり、そのため韓国では機関をはじめとする艤装品の製造基盤の育成が遅れ、現在でも割高な輸入品に頼らざるを得ない状況が続いている。軍艦の建造においてもその傾向は変わらず、主機はアメリカ製、レーダー類や戦闘システムはヨーロッパ製がほとんどである。現在韓国はレーダーをはじめ砲やミサイルなどの装備も国産化を鋭意進めており、将来は艤装品の国産化率は大きく高まると予想される。

韓国は隣国の北朝鮮と未だ戦争状態にある関係上、予算の重点は海軍ではなく陸軍におかれる。しかし着実に勢力を増大させている中国海軍や、竹島(韓国名:独島)を巡って争っている日本の海上自衛隊に対抗する力は備えねばならず、そこに韓国海軍のジレンマが生じている。このため韓国海軍は少ない予算で強力な艦隊を編制するために、1艦にできるだけ重武装をさせて建造数を抑えようとする傾向があるようだ。しかし主力艦艇となるフリゲートやコルベットはどうしても数を揃える必要がある。老朽化が進み近く大量に退役が始まるウルサン級やポーハン級の後継として現在計画されている次期フリゲートはKD-I型駆逐艦並の武装と排水量が予定されているが、果たしてそのような規模の艦を数十隻も揃えられるのか興味深いところだ。また韓国海軍は潜水艦戦力も現在の倍(18隻体制)を目指すとしており、計画通りに進めば周辺諸国にとっては侮れない戦力となるだろう。

しかし少ない予算を戦闘艦艇にまわしているため、その他の支援・補助艦艇等は弱体である事は否めない。満載で1万トンに満たない補給艦は3隻しかなく、機雷戦艦艇も10隻に満たない。有事に北朝鮮が大量の機雷を敷設する事は予想される事であり、韓国海軍のみでは迅速な掃海作業は行う事ができないだろう。また上記のように韓国は潜水艦勢力の大幅増強を計画しているが、潜水艦戦に重要となるデータを収集するための海洋観測船を海軍は保有していない(海洋調査院が保有)。航空戦力も艦隊の規模と比較して貧弱だ。P-3Cは8機しかなく毎日の定期哨戒が限度で、効果的な対潜オペレーションを行う事はほぼ不可能である。今後韓国は外洋海軍を目指す上で補助艦艇や航空機の増強を模索するだろうが、予算が充分に確保できるかは難しいところである。6,700億ウォンを投じて整備を進める予定だった第二次海軍戦術データ・リンク事業も予算不足で2008年後期まで延期された。

韓国海軍は極端な予算不足を解決するため「船舶ファンド事業」という変わった事業を進めている。韓国防衛事業庁関係者によれば「海軍が大量に抱えている老朽艦艇を早期に代替するためには、民間資本を短期集中的に投入するほかない」という。防衛事業庁は小型戦闘艇や支援艦艇計117隻を代替するために船舶ファンドを使用する計画で、民間資本で艦艇で建造したのちに軍が買い取り、一定期間を経た後に国が投資者に資金を分配する。船舶ファンド事業は2006年末までに事業計画案が国会に提出される予定。

【編制について】
韓国海軍は東海(日本海)、西海(黄海)、東シナ海を担当する各1個艦隊を有しており、そのほかに潜水艦、補助艦艇、航空機でそれぞれ1個小艦隊を編制している。主力となるのは第1~3艦隊だが、特に日本と対面している第1艦隊の増強が著しい。2001年3月、金大中大統領(当時)はこれらの地域貼り付け型艦隊とは別に、独島級揚陸艦やKDX-III型イージス艦を中心にした戦略機動艦隊を編制すると突如発表した。発表によればこの機動艦隊はシーレーンの防衛を主任務とした艦隊で、日本でいえば海上自衛隊の護衛艦隊にあたり、本格的外洋海軍を目指す第一歩といえる。当初は独島級3隻とKDX-III級3隻を建造して機動艦隊を3個編制する目論見だったが、予算の都合が全くつかずに敢え無くご破算となった。とりあえず実験的に建造した独島級の1番艦を中心に、1個艦隊だけ機動艦隊を編制する予定。以下の編制表は若干古いので、現在の編制とは異なる可能性がある事に注意されたい。

第1艦隊 東海 日本海を主任務地域とする艦隊。竹島(韓国名:独島)を含む
    第11、12、13駆逐艦戦隊、第101、102沿岸警備戦隊
第2艦隊 平沢 黄海を主任務地域とする艦隊
    第21、22、23駆逐艦戦隊、第201、202沿岸警備戦隊
第3艦隊 木浦 東シナ海を主任務地域とする艦隊
    第31、32、33駆逐艦戦隊、第305、306沿岸警備隊
第5小艦隊 鎮海 補給、掃海、揚陸などの補助艦艇部隊
    第51戦隊(補給)、第52戦隊(機雷戦)、第53戦隊(両用戦)、第55戦隊(救助)、第56戦隊(特殊戦)
第6小艦隊 浦項 航空機部隊(P-3C、スーパーリンクスなど)
    第613飛行隊(P-3C)、第623飛行隊(対潜ヘリ)、第627飛行隊(対潜ヘリ)
第9小艦隊 鎮海 潜水艦部隊

【施設について】
韓国海軍は各地に基地を構えているが、最近更に新しい基地の整備を進めている。これは独島級揚陸艦を中心とした機動艦隊の前進基地とする計画で、まず釜山龍湖洞に最初の作戦基地が2006年6月15日完成した。同基地は5,000億ウォン以上を投入して建設され、53ヘクタールの敷地に30隻以上の艦艇を同時に係留できる埠頭を有している。また大型埠頭にはアメリカのニミッツ級原子力空母(約90,000トン)も接岸できる。さらに済州島の南側にも新たに機動艦隊用前進基地を建設する予定。
▼釜山に新しく建設された機動艦隊基地


韓国海軍の各基地



【参考資料】
世界の艦船 1994年7月号、2003年3月号、2006年9月号(海人社)
月刊航空ファン(文林堂)
韓国海軍公式HP
朝鮮日報
Grobal Security


2009-02-28 23:18:11 (Sat)

最終更新:2009年02月28日 23:18