イーヴリン・ウォー
(Evelyn Waugh)
(1903~1966)

略歴

 ロンドン出身。父は出版社の社長で文芸評論家。ちなみに兄もまた作家である。オックスフォードに入学したが、2年で退学した。結婚した年に処女作を発表し注目を浴びた。その後離婚を経てカトリックに改宗した。作風はブラックユーモアに溢れた風刺的なものであるが、その一方でカトリック的な思想を盛り込まれている。しかしながらそれが単なる保守主義に過ぎないとか、名門崇拝(the Cult of the Big House)的であるとの批判も多い。

作品

 『衰亡(Decline and Fall,1928)は処女作。最初の出版社からは突き返され、仕方なく別の出版社に社長が不在の時に持ち込んだ。というのもその出版社こそ彼の父親の出版社であったからで、父親に見られたら即反対されるのが分かっていたからだ。主人公ポール・ペニフェザーは不品行が理由でオックスフォードから放校になり、父の遺産管財人からの仕送りも途絶える中、様々な冒険を繰り広げる軽妙なタッチの喜劇。ちなに表題はギボンの『ローマ帝国衰亡史』から取られている。
 『エドマンド・キャンピオン(Edmund Campion,1935)はカトリック殉教者の伝記。
 『一握の塵(A Handful of Dust,1937)はヴィクトリア朝式の大邸宅とブラジルを舞台としたラースト婦人の破れた結婚を描いた。
 『ブライズヘッド再訪(Brideshead Revisited,1945)はカトリック色の強い、かなりストレートな宗教小説。第二次大戦中に、ブライズヘッドという広大な邸に駐屯したライダーは、級友のセバスチャンと再会する。現代文明と人間性への幻滅が描かれ、古き良きものへの懐古に満ちた作品。
 『愛されし者(The Loved One,1948)はアメリカ西部の葬儀産業を扱った黒い笑いに満ちた作品。



最終更新:2009年11月10日 17:53