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・過去最高にヤマなし、オチなし
・エロ描写も完全になし。
以下人名対象一覧
カエラ:デコログ。第一人称。
姉御:女サムライ。
彼:眼鏡平。あだ名を先生。
リーダー:茶ファイター。副長と交際中。
副長:緑ナイト。名前はシンシア。
ギルマス:帽子メイジ。
姫ちゃん:プリンセス。偽鬱姫。

――前回の戦闘から二週間弱、ようやくあたし達の戦力も全快しました。

そんなわけで現在あたし達はダンジョン探索中。
巷ではいよいよ『その日』が近いなんて噂も流れているけど、結局あたし達のやることに変わりはないんだよね。
今回は別のギルドとの合同探索。万が一だろうが億が一だろうがこの時期に
不慮の事故で戦力を失うのは避けるよう、大統領府からお達しがあったらしい。
……うん。正直『アレ』を見てると、向こうの人たちには加勢なんて必要ないんじゃないかと思う。
あたし達のお相手はプリンセス四人で構成された歌って踊れる万能チームだった。
回復、攻撃、補助、妨害とそれぞれの役割がしっかりと果たされ、出てくるドラゴンを片っ端から仕留めていく。
まあその分道中の数が多い雑魚モンスターはこっちが引き受けてるわけで、
役に立っていないわけじゃないんだけど。それでも彼女達がここのボス格の大物ドラゴン相手に
一歩もひかずに渡り合うのをあたし達がボーっと眺めている現状に変わりはない。あ、睡眠入った。
「準備、完了……!」
「いっくわよー!ずっとあたし達のターン!」
「さあ、皆さんご一緒に?」
「受けろ!神さえ地を舐める圧倒的な暴力の嵐!!」

「「「「ナインテール」」」」

「ウボァー!」

つつがなくドラゴンの殲滅を完了し、帰り支度を始める。
と、向こうの人たちと話していた姫ちゃんが戻ってきた。基本的に無口な子なんだけど
やっぱプリンセス同士話が弾んだんだろうか。
「……向こうの人たちが、話してきた」
「へ?」
「マレアイアに、遊びに来ないかって」

――――――――――――――――――――

南海に浮かぶ女だけの楽園、マレアイア諸島。
その中にたった一人、明らかに周囲から浮きまくって(という程でもないけど)
居心地が悪そうにしている彼がプリンセス四人に連れられて例の女の子に近付いていく。
「まぁ!本当に集めてきてくださったのですね!
 では、さっそくこれであなたを飾りましょう……え?ちがう?」
そこで彼は何を思ったか、予想外の行動に出た。
その手に持った羽をそっと女の子の髪に挿し、目の高さをあわせて微笑みかける。
「これでよし。うん、似合ってるよ」
「私にこれをプレゼントするというのですか……?」
「うん。こんなにきれいな羽なんだし、僕が持ってるのはもったいないと思うんだ。
 それよりもこれからきれいになっていく君が持っていたほうがずっと、いいと思うよ」
「…………
 な、なんでしょう……頬が熱くなってしまいましたわ……!
 だ、男性って……思ったより優しくて怖くない生き物なのですね……!」

…………

「かっわいいねー?」
「うわっ!?」
「頬が熱くなってしまいましたわ、だって!
 もう、やるじゃんあんな気の利いたアドリブができるなんて知らなかったなー、
 よかったね満足してもらえた上あんなに可愛く喜んでもらえて?」
「い、いやその……」
笑顔で見送る彼に後ろからダイブして見事な受け答えの労をねぎらう。
その首筋に短剣が触れているのはご愛嬌というもんだよね。
たまらないのは彼の方だ。あせあせと必死の弁解が始まった。



「あの羽で飾られるって事は下手すれば女装とかそういう方向に行くわけで
 それはできれば避けたいというか何とかして別の方向に話を持っていけないかなと
 そんなふうに思ったらついああいうことを言っちゃったわけで……」
「……ぷっ」
あまりの必死さに思わず笑いが漏れてしまった。
「あ、……あぁ、もしかしてからかった?」
「ううん、最初は本気だった」

――――――――――――――――――――

場所を移してマレアイア領内、本島から島三つ分離れた海岸でウチのギルドは休暇を過ごしていた。
「やっほー、なんか釣れた?」
「いや、全然だな」
並んで釣糸を垂らしているリーダーとギルマスのうち、リーダーの方が短く答えた。
基本的には男は入れないマレアイア、男達だけ残して遊んでくるわけにもいかないので
あたし達は許可を取ってここに陣取っている。
「先生君はまだマレアイアでクエスト進行中なのかい?」
「まーね。物腰柔らかいから適材だとは思うけど、誰があんなバカなクエスト考えたんだろ」
「むくれない。世の中には色々あるのさ」
「は……ところで姉御は?」
「ナイト君と一緒に水着に着替えてるよ。そのうち出てくるはず」
噂をすれば影とはこのことだろうか、防波林の向こうから姉御と副長がやってきた。
副長が着ているのは白いワンピースだ。シンプルだが色々と眩しい。
「あ、あの……リーダー、どこか変じゃありませんか?」
「あ……ああ、よく似合ってる……と思うぞ」
そして姉御はというと……
「……ねえ、姉御」
「なんだ」
「……それ、いつも着てる全身タイツとは違うの?」
「違う!そしていつも来ているのも全身タイツではない!!」
そうなんだ……?
いや、だって、でも、ねえ?
たしかに袖はないし、裾も膝までしかないけど、そもそも水着なんかに縁のない暮らしを送ってきた
あたしがその辺りの微妙な違いを理解できなかったとしても仕方がないんじゃないかと、あたしは思う。
「で、水着に着替えたって事は泳ぐわけ?」
「何を馬鹿な。泳ぎたいのは山々だがこの辺にはいるだろう、その、……アレが」
「あー……」
姉御のいうアレとは、……要するに触手だ。触手のアレだ。
「姉御もねえ。触手の一本や二本どーってことも」
「やめろっ!私の前でアレの話をするな!アレを思い出すだけで私は、私はっ……!!」
「ああごめん悪かったから泣かないでって……
 でもさ、結界が復活したおかげでこの辺からは魔物が一掃されたんじゃなかったっけ?」
「む……?」
「せっかくだし泳いできたら?気分転換もかねてさ」
「むぅ……そうだな。滅多にこれないところだし……少し泳いでくるか」



姉御を見送ったあたしは釣り糸をたらす二人と一人のところに戻る。
「姉御が泳ぎにいったから引っ掛けないように気をつけて」
「了解。しっかし釣れないねぇ」
「潮が悪いのか、釣り方が悪いのか、餌が悪いのか……」
「……あの、そういえば」
副長が口を挟む。
「狙いは何なんですか?」
「へ?」
「釣りって普通狙いを決めて、その魚に合わせて仕掛けをつけると聞いたんですけど」
「そういえばそうだな。この仕掛けは何に合わせてあるんだ?」
「……えーっと」
「まさか……」
「か、考えてなかったなぁ……なんて」
「だめだなこりゃ」
リーダーが竿を上げた。
糸の先についているのはアゴート揚げだ。……本当に何を釣るつもりだったんだろう?
「やれやれ、情緒はあったが無駄な時間を過ごしたな」
「えー、ここで釣らないと夕ご飯が淋しいことになるよ?」
「んなこと言ってもな。……そうだ、シンシアは泳ぎに行かないのか?」
リーダーが副長に声を掛けた。
「むむ、こういう場合まずは日焼け止めを塗ってあげるのが定番ではないのかね?」
「お前は黙ってろ」
「私、あまり泳ぐのは得意ではないですし……それに小耳に挟んだんですけど、
 この辺りは潮の関係でマレアイアで出たゴミが流れ着くそうですし」
「観光地とゴミ問題は切っても切れぬ関係だな」
「観光地にしたいわけじゃなかったんだろうけどね」
「気候が気候だからね……
 ……ゴミで思い出したけど、マレアイアの弁当屋には裏メニューでろぉぱぁうどんがあるらしくてさ。
 雑誌とかで知った人が興味本位で注文して、結局撃沈して捨ててしまうことも多いそうだよ」
「ふぅん……」
食べ物を粗末にしちゃいけないのに……

……ん?ということは?

「ふぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

浅瀬の方からろぉぱぁうどんの残骸に驚いた姉御の悲鳴が聞こえてきたのはそのときだった。

――――――――――――――――――――

「凄い悲鳴でしたね」
「いくら触手が嫌いでもうどんの残骸に驚くことないと思うんだけどなぁ」
あのあと姉御はあたしが助けに行くまで腰を抜かしてへたり込んでいた。
浅瀬だったからよかったものの、足がつかなかったらと思うともう姉御は海水浴はしないほうがいいと思う。
その姉御は現在リーダーと組み手の真っ最中だ。
組み手といってもリーダーの手には刃を潰した巨大な剣が握られているんだけどね。
ちなみに姉御は刀を持ってきていない。ああいうものは潮風に当てないほうがいいんだそうだ。
で、その組み手の様子はというと。
「……せやっ!!」
「がふっっ!?」
一方的だった。
特攻し、受け流し、反撃の機会さえ与えず一撃でのす。
先程の恥を洗い流そうとするかのごとく姉御は完膚なきまでにリーダーを叩きのめし続けていた。



「で、副長。ちょうど二人で話せるしさ、聞きたいことがあるんだけど」
「はい?なんですか?」
あれから二週間。
「リーダーとはどこまでいったの?」
「……ええぇ!?」
「赤くなった赤くなった」
「もう、からかわないでください!」
「ごめん、あんまり予想通りだったから。で、実際どう?まだキスさえしてないって聞かされても驚かないけど」
「ばば馬鹿にしないでください。そのくらいは……」
「おお。いつ?どこで?どっちから?」
「あのときリーダーが気がついて、あなたがいなくなった後……って、何を言わせるんですか!」
「やー、あの奥手な二人が正式に付き合い始めたくらいで何か変わるもんなのかな、とか思って」
「放っておいてくださいよぅ……それよりあなたの方はどうなんですか?」
「あたし?」
「その、参考までに恋人らしいこととはどんなことをするのかな、と」
「あたし達かぁ……」

それこそ人それぞれ、場合によりけりではなかろうか、と思わないでもない。
そもそも別の理由であたし達は参考にならない気がする。
出会ってから今の関係になるまでは色々と早かった。相補性と偶然がいい感じに重なったんだろう。
で、一時期はお互い若さと好奇心で若干サルをやったこともあったけど、本来あたし達は
そっち方向は淡白らしい。自分で言ってて死にたくなってきたけど。
気の向いたときに寄り添って話し合って、遊んだりする。
あたし達はあまり恋人という言い方をしないような気がする。特にそんなことにこだわったりせず、
気の向くままに付き合っている。
……これって、どうなんだろうか。
これって、遊びの関係とどう違うんだろうか。
もちろんあたしが彼に対して抱いている感情はそんなもんじゃないと思うけど、やってることは。
このままじゃまずいんじゃなかろうか。
なんとなく、そんな事を考えてしまわないでもない……

「あの、カエラさん」
「あ、ごめんごめん。ちょっと考え事しちゃって」
「それはいいんですけど、あれ」
「?」
「ちょっとリーダーが心配になって来ました」

「……む、力が入りすぎたか?」
そうこうしている間に砂浜に倒れ伏したリーダーが起き上がらなくなっていた。
やっちまったか?
思わずあたし達が腰を浮かしかけたところでリーダーは復活した。
「……だーーーーっ!!なんでだ、なんで勝てない!?
 始めと同時に突っ込んできて、どう防ごうとしてもねじ込んできてのされる!
 いったいどうしろと……」
起き上がるなり叫びを上げるリーダーにギルマスが冷静な声を投げる。
「……すこし落ち着いたらどうだい?頭を使わないから負けるんだよ、頭を」
「お前な……傍から見てりゃそりゃ簡単かもしれんがな?こっちは本気で」
「そう、そうなんだよ」
「?」
「傍から見てると君がさっきからどうしてやられ続けてるのか理由が丸分かりだってこと。
 ……ナイト君、教えてあげたまえ」
「私ですか!?」
突然話を振られて慌てる副長だったが、リーダーの真剣な視線に一つ咳払いして口を開く。
「ええっとですね?つまり、その、簡単に言うと」
「うんうん」
「サムライさんは積極的に接近戦に打って出ているように見えて、実際には
 リーダーの迎撃に合わせてカウンターだけで戦ってるんです」
「!なん……だと……!?」



あまりにも簡単な答えに絶句しかでない。ご苦労様、とおいてギルマスが話を引き取った。
「ファイターの戦い方は攻防一体、その巨大な武器で致命的な威力を持った攻撃を繰り出すことで、
 巨大なモンスターを押し戻したり敵に防御を取らせて行動を封じつつ戦うのが基本スタイルだ。
 突っ込んでくるサムライも回避するのが困難である以上、その攻撃ルートをできる限り塞ぐように
 迎撃するのが君なりの防御法になる。が、実際にはサムライは君が迎撃を始めるまで攻撃しない。
 君が慌てて迎撃しようとしたところを、逆にそれにあわせてドカン!というわけだ」
「……マジか?」
「はっはっはっは、気付かずに何とか勝とうと必死になるお前をボコるのは楽しかったなぁ。
 さて、飽きたからそろそろやめようっと」
「勝ち逃げかよ!?」
持って行き場をなくしたリーダーの視線がギルマスで止まる。
あきらめろ、とギルマスは無言で却下した。
「畜生……」
「さて、そろそろ先生君とプリンセスが戻ってくる頃だ。野営の準備をしよう」

――――――――――――――――――――

なんだかんだいって今回の休暇もあっという間だったな。
そんな感慨が浮かび上がる。
「それにしても姫ちゃんのあれ、びっくりしたな」
パチパチと爆ぜる炎をを見たまま隣の彼に話しかけた。
「たしかに……言葉にはしにくいけど、あれだもんね」
それは彼が戻ってきた直後のことだった。ほどなく戻ってきた姫ちゃんが、いきなり
素っ頓狂なイントネーションで、知らない言葉をしゃべりだしたのだ。
マレロ言語。
あれが元は共通言語から枝分かれしたらしいと聞かされても、あたしには到底理解できない。
「なんてゆーかさ、あのイントネーションを聞いてると遺伝子に刻まれた何かが……」
「わかるわかる」
「……」
「……」
やや、沈黙が落ちた。
「それとは別にさ、不思議な国だよね」
「そうかな?」
「そうだよ。
 ……
 ところでさ、お昼もいなくて夕方までずーっと帰ってこなかったよね。
 やっぱ男嫌いの人たちに男を認めさせるためあれやこれや一生懸命……」
ダメだ。こんな話をするべきではないと分かっていても、つい口を突いて棘のある言葉が出てしまう。
ところが、以外にも帰ってきたのは照れくさそうな苦笑顔だった。
「いや、まあ……それもなくはないんだけど、……これ」
「へ?」
「星花の貝殻。マレアイアでしか手に入らないんだって。
 何とか手に入らないかと思ってあちこちの砂浜を探し回っちゃって……
 気がついたらあんな時間になっちゃってたんだ。本当にごめんね」
「……どうして?」
「いや、その……夢中になると周りが見えなくなるというか、時間を忘れるとは本末転倒というか」
「あ、そうじゃなくて。……今日、なんか特別な日だっけ?どうしてそんなに……」
「え……」
じっと、答えを待つ。
帰ってきたのは、簡単で、どうということもなくて、そして単純な答えだった。
「えっと……プレゼントしたかったから……じゃ、ダメかな」

……なんでしょう、頬が熱くなってしまいましたわ。


「………っ」
何故そんな事を聞かれたのかも分からないといった表情。
あたしは思わず彼の背中を叩きながら笑いをかみ殺していた。
「え、え、なに?なにか変なこと言ったかな?」
「あははは、いやー、我ながら変なことに気を回したなーと思って」
「??」
「世間一般のイメージはどうか知んないけど、あたし達はあたし達だねってこと」
なおも訳のわからなそうな顔をする彼にもたれかかり、姉御達のほうを見やる。
酒盛りに移行した大人組。
こちらの視線に気付いた姉御が意味もなく小さく手を振ってくる。
軽く手を振り返し視線をずらすと、姫ちゃんは若干おねむのようだ。
ぼーっとしている姫ちゃんを気遣いながらも副長はリーダーにお酒をつがれ、お返しにつぎ返している。
「ふぅ……なんてゆーか」
「なんていうか?」
「楽しくない」
「えぇー……」
「特におもしろいこともしなかったし、おいしいご飯もなくて魚を適当に焼いただけだし、
 いつの間にか時間がたってて何してたんだろうって思っちゃうけど……」
あれ?酔っ払ったんだろうか。
お酒も飲んでないのに、思考回路がおかしい。
「……でも、なんか幸せ」
本当ならこの休暇をフルに使って、色々な楽しいことにチャレンジしてみるところなんだろう。
それもできずいつの間にか時間を過ごしてしまっていたのに、今あるのは暖かい気持ちだけだ。
「あぁ……なんとなく分かるよ」
「ほんとに?」
「うん。なんていうか、何か嬉しいことがあったときの幸福感よりももっと原始的な、
 家族や仲間が一緒にいる安心感かなって」
「あー。そっか……皆一緒だもんね」
「いつもは意識しないけどね」
上を見上げる。とてもいい月だ。
その光に魅せられて、睡魔に支配され始めた頭に変なテンションが湧き上がってくる。
「ねえ……」
「何?」
「やっぱ、自分の居場所は自分で守んなきゃダメだよね」
「そうだね。あと、自分だけじゃなくて皆で」
「よーし、やるぞー……ドラゴンなんかにあたしの居場所をやったりするもんか、くるならこいやぁー……」
「はは……うん、その通りだ。後もうちょっと、頑張ろうね」
「おー……」

後で分かったことだが、あたしが飲んでいたのは本当にお酒だったらしい。
そんなわけであたしの記憶はここでブラックアウトだ。
ただ、あのとき、また皆でこんなきれいな月を見たいなと思ったことは、
今でもはっきりと覚えている。

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最終更新:2013年05月04日 23:37