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・エメル様×アイテルもの
・801要素あり
・全力で季節ネタ
・エロなし

 ニアラは滅びた。人類は勝利した。
 エデンに青空が戻り、竜とフロワロは消え去った。



 だが、地上から戦いは消えなかった。



 それは人間の宿命なのかもしれない。
 闘争こそが人間を靭くし、それゆえに人間は竜すら退けたのかもしれない。
 竜は食らうのみ。人は、その性、戦いを好む。

 ――そしてその戦いは、人知れぬ禁地の果てにおいてもまた、繰り広げられていた。

 これはそんな愚かな生き物たちの、誇りと存在意義を賭けた闘いの記録である。


「……姉さん」
「――」
「……姉さんってば!」
「――なんだ、アイテル」
「どうして姉さんは、そんな余裕綽綽でいられるの? もう――時間は迫っているのよ」
「こんなときは焦っても仕方ない。むしろ最悪の事態に備えるべきなのだ」
「そうかもしれない。でも、でも、最期まで諦めない、それが」
「諦めなどしないさ。だが、妥協は必要だ。多少の犠牲も」
「だからって」
「アイテル。私たちにできることは、限りがある」
「――姉さん」
「私たちは最大の努力をした。違うか? だが、このままでは間に合わないことも明白だ」
「うん……」
「まずは、現実と折り合いをつけようじゃないか」
「諦めるんじゃなくて?」
「当たり前だ。安心しろ、プランはおおむね立っている」
「まさか、また1000――」
「馬鹿なことを。そんな余裕はどこにもない。何より、資金的に不可能だ。
 ハッ、国家の後ろ盾を失った我々など、こんなものさ」
「エメル姉さん……」
「いいか、計画はこうだ。
 まず、表紙は2色刷り。PPは諦めよう。
 ページ数も32から16に縮減だ。そこで寝てるドリスの阿呆が、締め切りに間に合うとは思えん。
 まったく、落ちぶれたものだな。
 かつては800ページ、『史上最大の801』を実現し――
 ついには5分冊1024ページを達成したサークル『千人砲』が、16ページのコピー本とは」
「表紙2色だなんて! ダメよ、姉さん! 同人誌は表紙が勝負なのよ!」
「現実と戦うんだ、アイテル。あと2時間以内に表紙だけでも入稿しないと、4色製版は間に合わない」
「じゃ、じゃあ、プリンタからのカラー出力で……カラーコピーでも……」
「表紙は紙質が命だ! 最低でも70Kg。ここは譲れない」
「そんな。そんな重い紙、コンビニのコピー機じゃあ」
「このインクジェットなら180kgまでいける。だがこれで4色使えばコストで爆死する」
「で、でも、このプリンタのカートリッジは、CMYが1セットになったタイプで」
「黒だけで刷る。赤は手で塗ればいい」
「……逆に間に合わないんじゃ」
「赤をワンポイントにするんだ! 赤は売りながら塗ればいい。
 本当に、どうしても間に合わないならモノクロ表紙と言い張れば異常はない!」
「そ、それは、そうだけど」
「納得したか? まったく、相変わらず心配性だな、お前は」
「――そうじゃなくて、だからって今この修羅場でカタログをチェックしなくたって」
「何を言うか。お前が『お姉ちゃん、煮詰まってるときは戦○BASARAで無双するといいよ』だの、
『やっぱり浅井夫婦はいいねぇ。ああでも、みっちゃんもいいよねぇ』だの、私の集中を乱すことばかり」
「……95%くらいは姉さんの自業自得なんじゃ」
「ううううううるさいっ! ガノタは黙って数字で掛け算してろ!」
「姉さん、簡単に掛け算っていうけど、数学と違って掛け算の前後を変えると答えが変わるんだからね?」
「そそそそんなことは先刻承知だっ! だいたいが、Wでデビューしたようなひよっこが、この私に説教など」
「だって私、W以前の時期って、『ファン○ム無頼』の最期の砦を守ってたんだもん。
 神栗の掛け算にだってバリエーションは一杯あるんだよ!」
「……き、貴様にイデオ……いや、馬鹿なことで喧嘩するのはよそう。お互いに寒くなる」
「――そ、そうね、姉さん。でも、せめてカタロムにしておけば、もっと検索が楽なんじゃあ」
「分かってないな。カタログのほうが書店に並ぶのが早いんだ。専門書店も含めてな」
「それはそうだけど、せいぜい数日しか違わないんだし」
「見たら買う、それが鉄の掟というものだ。
 たとえカタログといえども、次に出会う機会が必ずあるとは限らない」
「いやいやいやいや。あるから。絶対あるから」
「それに、私がカタロムを手に入れていないとでも思うか」
「じゃあそっちを見れば」
「チェックするのはピンクの蛍光ペンと決めているんだ」
「ダメだこの人」


「でもさぁ、姉さん」
「なんだ――ここ、ベタでいいのか?」
「ええ。姉さん、なんだかんだで、この前の戦争の間はリア充だったんじゃないの? なんでこっちに戻ってきたの?」
「お、おま……リア充……なんで……おま、おまおまおあおあおあま」
「これトーンお願い」
「おうよ」
「ノワリーだっけ? いい感じのメガネ男子じゃない」
「あれはダメだな」
「そうなの?」
「フラグというものを理解していない」
「いや、その、姉さん、それゲーム脳」
「何を言うか。脳科学的にそんなものは何の根拠もない」
「姉さん見てると、精神工学的な根拠はありそうだけど。フラグって、どれのこと?」
「監禁ときたら拷問と陵辱だろうJK」
「――何その他人事みたいな」
「だだだだがプレイヤーの期待というものが」
「ノワリーのほうにそんなことするモチベーションがないじゃない。あ、ここトーンでいいよ」
「インパクト的に集中線にしないか」
「手間じゃない? 間に合う?」
「何本、線を引いてきたと思ってる」
「えへ、信頼してます。んー、まぁ、でも、確かにフラグっちゃあフラグだよね」
「だろう? モチベーションはフラグにあわせるべきだ」
「ギャルゲーじゃないんだから……」
「爆弾処理をする結果として、人間関係は改善する。そういうものだ」
「危険な発言ktkr」
「ともあれ、ノワリーはダメだ。人間としてダメだ」
「そこまで全否定? エデンで一番の良識派って噂じゃない」
「あいつはMだからな」
「そうだけどさ」
「やつは踏まれて伸びる子だ。それなのに良識派とは笑わせる」
「そこまで言うか」
「やつの成長は、ファロに懸かっている」
「ノーマルな恋愛対象を得て、M男から脱皮するとか?」
「アホか。M男は一生M男、何をやろうがそれは変わらない。
 問題はただ一つ、やつがファロに踏まれることを求めるか否かだ。ファロは踏むです。ます」
「――ビッグ○イトを縦置きしたみたいな建物に住んでるんだから、みんなそういう人なんだよね」
「ばれたか」
「あの構造のどこに建築工学的必然があるのか、私が知りたいでーす。あ、ごめん姉さん、そっちのペンとって。ありがと」
「お前こそどうなんだ。タケハヤは」
「んー、随分前から脳内彼だし」
「おま」
「だってさぁ、あれはもう死んでるとしか言いようがないじゃない。私、そこまで馬鹿じゃないもん」
「英雄様ご一行は、随分と同情してたようだが」
「ざっつ・ろーるぷれい!です。ます」
「ファロktkr」
「だってさー。あの子たちさぁ、なんかすっごい、ウブだったじゃない?
 だからほら、モチベーションのためには、恋人を亡くした女を装ったほうがいいかなーって」
「怖い女」
「そんなあなた、いくらすごく好きだったからって、何百年も同じ男を好きだとかありえませんって。
 何その都合のいい妄想。女は黙って待つのが当然とか、死ねばいいのに」
「だよなー。コーヒー飲むか?」
「まだお茶あるから大丈夫。でもさ、結果OKって感じで、良かったよね」
「ニアラを倒したんだしな」
「ドリス×タケハヤなのか、タケハヤ×ドリスなのかが最後に残った課題です。ます」
「ダメだこいつ腐ってやがる」



「よし、ここまで来たらもうちょっとだ」
「頑張った! わたしたち頑張った!」
「うむ――う?」
「ん?」
「……おい――これ、ノンブルが変だ」
「へ?」
「14が二枚ある」
「ええええええええ」
「おおおお落ち着け。落ち着くんだ」
「2、3、5、7」
「いやいやいや」
「1から10までの数を2つの集合に分割して、それぞれの集合に含まれる数をすべて積算したとき、ふたつの解が等しくなるケースは」
「ない。7がどちらか一方にしか含まれないからだ」
「変なごっこ遊びしてる場合じゃないし」
「おおおおおお前が」
「うううん――ミスったねえ。ネーム切らずにカンで描くとこれが怖い」
「ちゃんとネーム切ってても、今の精神状態だと1Pくらい余裕ですっとばしそうだけどな」
「あるあるー」
「ねぇよ。弱ったな。いや、いい。17ページ。これに決めた!」
「ピカ○ュウ、君に決めた!」
「関係ねえええええ!」
「だだだだだだって」
「だっても□ッテもない!」
「助けて魔将」
「ガイ○ルとか誰が分かるんだ。いや、そんな話じゃない。落ち着けアイテル。
 てかアイテルとガ○エルって似てるな」
「○イフルのほうがもっと」
「だから関係ないと言ってるだろう!
 そうじゃなくて、コピー本なんだから16の倍数に縛られる必要はないんだア○フル」
「あ、ああ、あー、そうね。いま7ページぶんのメモ帳とか想像して頭がワース○レイドのコミックス状態に」
「だめだこいつ」
「でも姉さん、やっぱり3ページは余る、よね。表3に刷るとか無理でしょ?」
「無理だな。
 だから1ページ目は中表紙、2ページ目は目次と前書き。最後の20ページは奥付と後書き。完璧だ」
「うはっ、今の今まで奥付がない本でした」
「不幸中の幸いということだ」
「むしろ災い転じて福となす。今明らかになるエメル姉さんの計画性」
「うっせー黙れ1000人砲に詰め込むぞ」
「それより、もうタケハヤとドリスを叩き起こしてもいいかな」
「いいんじゃないか。コピーと製本には手の本数があったほうがいい」
「オラオラ、起きろおめーら。仕事じゃー。原稿を落とした罪は体で購ってもらおうじゃねーがー」
「なんというなまはげ」
「オタな子はいねーがー」
「――すごい、孤独な鬼だな、そいつ。明らかにオタだろ」
「言っててめっさら冷えました現実。つーかちゃきちゃき面付けせんかい」
「アイテル、我々はとっとと8Pと9Pを仕上げなくては」
「そうでした。なんか無駄にエロいよね、8Pとか9Pとか」
「パーピン・キューピンのどこがエロいんですかアイテルさん」
「それはあたかも荒野を無限に続く軌道のような」
「なんというプーチン」
「絶対に今年はメドベージェフ×プーチンあるよねー」
「ない。それはない」
「それはそうと、すごいアイデアが降臨しますた」
「お前のアイデアは信用ならん」
「この17ページを8回コピーして、それぞれ少しずつスミとかトーンとか台詞とかいじって」
「もう10回でも100回でもやったらええ」
「お後がよろしいようで」
「よいといいよな」
「どうせDVDBOX買いますから。良い子はみんな買います」
「ダメだこいつ」




 私たちの戦いはまだまだ始まったばかりだ!

 アイテル先生の次回作にご期待ください。

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最終更新:2013年05月04日 23:45