注意事項
・ほんのりエロ
・ゲーム本編との矛盾あり
・ゲーム本編ラストバトル近辺のネタバレ注意です
・少々長いかも
・メナスファンの人ごめんなさい
登場人物
ソウマ・若サムライ。主人公。一応貴族。真竜ヘイズ戦にて右腕を失う。
エリス・ルシェメイジ。元奴隷。真竜ヘイズ戦にて腹部に重傷を負う。
リア・ルシェプリンセス。元奴隷。アンゼリカケージは習得済み。森からはなんとか生還。
メナス・真竜討伐作戦の責任者。その非人道的作戦のツケがまわってくる。
医師・カザンに住む微笑む医師。奇跡の代行者の遣い手。ソウマ達を治療。
旅するメイド・世界各地を一人で旅するメイド。アースブレイカーの遣い手。
……ここはどこだ?
記憶が乱れて……何も思い出せない。
しかし随分と殺風景だな。砂利と川しかないとは……
ん?あそこにいるのは……母上か?父上もいる……
あぁ……そうか。
私は死んだのか……
母上、父上……不出来な息子も今そちらに……
「あなた…また他の女に手を出したみたいねぇ?今度はルシェの人妻とか聞いたけど……」
「ゆ、許せ!千人砲に入ったはいいが残した娘が心配とかで、慰めるつもりでだな……」
「黙りなさい!耳?耳がいいの!?『お前の強さに惚れた!』って……あれは嘘だったの!?
私、あの時嬉しかったのよ?がらにもなく、あなたの真剣な表情にときめいたのよ!?
それを……それを……!!今日という今日は許さないからね…!ナインティーテール!!」
「ああぁ!!痛くて恐いけどやっぱり気持ちいぃーーー!!!」
……あまり行きたくないな…………
終わるまでここで待つか。
……
…………
………………
一体いつまで続くのだろう?そろそろ待つのも疲れてきた。
気分転換に散歩でもするか……
……
む?なんだあの光は……?
誰かが……私を呼んでいる?
他に行くところもないし、行ってみるとするか……
―――――――――
「う……」
……ここはどこだ?
とりあえず、まずは状況確認だ。どうやら何処かの病室らしい。
そして視界の右側に映るのが……
「……おにぎり?」
しかも二……待て、過去にも同じことを言った気がする。それも二回。
違う……これはおにぎりなんかではない……
そうだ……これは……
「エ…リ…ス……?あぁ…無事だったか……」
「あ……うっ……ソウマ様ぁ!!!」
飛び付いてきたエリスの頭を撫でようとして……自分の腕が根本からないのに気が付いた。
そうだ……思い出した。私は……
――『ガギ……フタリマトメテ……シネ!!』
あの時…ヘイズに片腕を斬り落とされて…
――「うごけ……わたしのからだ!」
無理矢理左で刀を握って……ヘイズの頭部を狙って……
――『バ…カメ…ソノカタナ…モ……ノコッタ…ウデモ……イタダクゼ!!』
ヘイズがいきなり口を開けて……犬歯ならぬ剣歯が見えて……
――「……!きさまをたおせるなら…ひだりもくれてやる……!」
私は気にもせずにそのままヘイズの口の中に刀を突き刺して……
――『ガナッ…!?キサマ…ショウ…キカ!?…ナラ…バノゾミド…オリニ!!』
同時にヘイズの歯が左腕にくい込んで…そのまま左腕も失いそうになって……
――「フリ…ズ……ェイ…ル……!!」
――『グガ…!?アガ……ガァ……ッ……!?』
息も絶え絶えなエリスが氷の防壁術を唱えてくれて……
それのおかげでヘイズの歯が私の腕を噛み千切ることはなくて……
私はそのまま刀を無理矢理降り下ろして……
――『バ…カナ…オレハ…グレ…ト…セブ…ン……ヘイズ…ダゾ………』
結局またエリスに助けられて、けれど確かにヘイズの体を切り裂いて……
それで……確かエリスに白銀水で応急処置をして、自分には……
そうだった、近場にいた蝶のリンプンを傷口に塗って無理矢理血を止めたんだっけな……
片腕を失い、体内の気の循環が不可能になった以上、練丹はもう使えなかった。
そして白銀水はひとつだけ。ブラドテープでどうにかなる出血でもない。
残された応急処置は『傷口を石化させて血が流れ出るのを止める』……これしかなかった。
人を石化させるリンプンを持つ蝶があの辺りに生息していたからこそできた荒業だが……
なんにせよ止血を済ませ、エリスを左腕で抱えながら必死に逃げた様な曖昧な記憶がある。
そして町付近で力尽きた…と。
「エリス…私は何日寝ていた…?」
「もう5日になります。リアさんがアンゼリカケージでマナの力を強めて……
医師の方がその空間内で何度も奇跡の力を行使したのに……
ソウマ様の傷がなかなか塞がらなくて…ようやく傷が癒えても目覚めなくて、私……」
「そうだったか……」
左側のベッドを見やるとリアがすやすやと寝ていた。
おそらく、歌いすぎて疲れてしまったのだろう。起きたらお礼を言わねば……
しかし…あの森からこうして三人全員生きて帰ってこれるとはな……
……他のハントマン達はどうなったのだろうか?
世界各地には、優れた回復術を持つ人がいる。
重傷人から死人さえ蘇らせる、奇跡の力の代行者達。しかしいくら彼らでも、限界はある。
死して時間経過した者は、もう蘇生できない。これでミロス騎士達の蘇生は不可能。
脳や心臓といった、重要な器官の損傷が激しくても蘇生はできない。
これで少なくとも、私の目の前でバラバラにされたハントマンの蘇生も不可だ。
そして時間も経たず、損傷も少なく見事蘇生できた場合も、完全に回復するわけではない。
目は失ったら二度と回復しないし、臓器などはその機能が低下する。
そして手足を失った場合も同様だ。おとぎ話の大魔王の様に、失った側から再生したりはしない。
私の右腕も、もれなく再生することはない。だが正直な話、私はそれで構わない。
あの絶望的状況で、失ったのが私の片腕だけで済んだのはむしろ奇跡である。
加えて強制石化の後遺症もないようだし、実に私は運がいい。
のだが……
「……ソウマ様…ごめんなさい……」
何故私は謝られているのだろう?
「私が…私が油断したから……ソウマ様の腕が……!」
……そういうことか。やれやれ……
「よっ…と!ほら……泣くなエリス。私は全然気にしていないから……」
体を横にして、残った左手でエリスの頭を撫でてやる。少々肩に負担がくるが、そんなの無視だ。
「あ……でも!私がいなければ、ソウマ様は腕を失くすことはなかったんですよ!?」
「違うぞエリス。逆だ……」
そうとも、まったく正反対。
「あの時、エリスの防壁術があったからこそ左腕は失わずに済んだのだ。
もしエリスがいなければ、私は両腕…いや、ヘイズに出会う前に死んでいたな。
だから謝るな。むしろ私は感謝しているんだぞ?」
守られた左の腕を伸ばしエリスの体を掴んで、こちらに抱き寄せる。
「左腕まで失っていたら……こうやってエリスに触れることさえ出来なかったからな……」
「あ……ぅ…ふえぇぇぇ!!ソウマ様あぁぁぁ!!」
「あー…だから泣かないでくれ……ほら、よしよし……」
うーむ…謝らせても謝らせなくても、結局泣き付かれるのか……
しかし先程から感じるこの懐かしい感覚はなんだろうか?
病室で目覚めて、おにぎりと誤認…泣くエリスの頭を撫でる……
ああそうか。あの時……エリスと初めて話した時と同じ状況なんだ。
思えば、森で重傷を負いながら町まで逃げるところから同じ状況だな。
あの時は……こんなことになろうとは思わなかったな……
ただの一人のハントマンとして、普通に町や人々に害をなすドラゴンを退治するつもりが……
エリスと出会い、彼女のために帝竜、さらには真竜とまで戦うことになるとは……
人生というものは、まったくもってわからないものだ……
「ふっ……」
「どうしたんですか、ソウマ様?」
「いや、撫でていたら君と出会った時を思い出してな……」
「…そういえばあの時も私はソウマ様に助けられて…このカザン治療院でお話ししたんでしたね」
なんと…逃げ込んだ治療院まで同じだったか。
そういえば、ミロスの治療院は騎士達で埋まっているだろうからとカザンに走った記憶があるな。
「ソウマ様はあの時も私のせいで大怪我をされて……」
いや…あの時の怪我の殆んどは私の未熟さと父上のせいだったんだがな……
「それで自己紹介して……私はとり乱して……」
懐かしい…あの時からエリスはかわいかったな……流石にバック宙土下座には驚愕したが。
「それで私…こんな風に…ソウマ様に…奉仕しようと…したんですよね…………」
そうそう、まさにこんな感じの心地好さが下半身から……
!?
「エエエエリスッ!?」
「ふぁい?ふぁんへほうは?」
いつのまにやら、目の前にあの時の様に私の愚息をくわえるエリスの姿が!
「な…なにをしている!はやく止めなさい!」
「んぷっ…思い出したら…なんだか体がうずいて…………んむっ…………」
「ぬぐぁ……!?」
いうやいなや、エリスは再び私の愚息をくわえこんだ。
……まずい。『あの時』とは状況が微妙に異なる。
まず、『あの時』は舐める行為だったのが『今回』はいきなりくわえる行為になっている。
結果、その刺激は桁が違う。
次に『あの時』は両腕を使ってエリスを抱き寄せたが、『今回』の私には左腕しかない。
結果、刺激で力がうまく入らない片腕だけではエリスを引き剥がせない、動けない。
総合結果……私大ピンチだ!!
くそぅ!落ち着け私!あの時とは別の対応をすればいいだけだ!思い出せ!あの時の選択肢を!
A 気持ちいいので、このまま流れに任せる……それは駄目だ!
B なんとか引き剥がして、落ち着かせる……これができない!
C 攻められるよりも攻めるために、押し倒す……駄目だ駄目だ!せめて優しく…って違う!
D ナースコールと思われるボタンを、押してみる……右側にあって押せん!
E 目の前の耳を、掴んでみる……多分今掴んだら止まれない!
F 突如食われた筈の父上が乱入……あの世で母上にしばかれていたから無理だ!
……全ての選択が使えないだと!?
えぇい!人は過去に囚われずに未来を作る存在!過去の遺産が使えないならば新たに作ればいい!
A 諦めて流されるまま快楽に溺れる
B 優しく押し倒してエリスの体を貪る
C 目の前の耳を掴んだり甘噛みしたりする
駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ私の脳はもう駄目だーー!!
こうなったら出てこい第4の選択肢!コマンド入力!↑↑↓↓←→←→……ABが押せない!
などと馬鹿なことをやっている間にもエリスの攻撃は止まらない。
触れるだけの口付けから、全体を舐め回したり……
そうかと思ったら一気に根本までくわえこんだり……
情けないが、私の限界は近い。もってあと1分だ。本当に情けない。
上気した顔で私のモノに懸命に奉仕するエリスを見るだけで……もう堪らない。
妙案が浮かばない以上、先程の選択肢のどれかを実行しないと、
あと数十秒で私の汚い欲望をエリスにぶちまけることになってしまう。
しかし本気でロクな選択肢がない!あと30秒!
唯一使えそうなのはCだ。耳はエリス最大の弱点。そこに触れるなりすれば、
驚いたエリスの動きが止まるかもしれない。そして脱出!
だが同時に、エリスの耳の感触は極上である。いや耳に限らず、今の私がエリスに触れて…
その誘惑に耐えきれる保障がない。正直な話Bを選びかねない。
だが!だがしかしサムライとしてはやはり結婚後にだな……!あと10秒!!
えぇい、儘よ!迷う時間も選択肢もない!私は逆転の一手にかける!
→C 目の前の耳を掴んだり甘噛みしたりする
『ふみゅっ!』
「ひああぁぁぁぁっ!?っぁ…!耳っ…!駄目です……!」
【ソウマのりせいは自爆した!ソウマのりせいは跡形も無く消え去った…】
ああ……私はローグではないというのに、何をやっているのだろう……
許せ、エリス……
「ひぅ……!耳は…本当に駄目ですっ……!」
耳を軽く甘噛みしてあげるだけで、エリスは実にいい声をあげる。
本当に、堪らなく愛しい。手放したくない……離れたくない……
「すまないエリス……だが、君がいけないんだぞ?」
「ふぁ……っ……あぁ…!ご…ごめ……なさ…い!」
いや、本当にいけないのは脆弱な私の精神の方なんだが……エリスにも僅かに非はある。
だから…本当にあともう少しだけ。もうしばらく耳を可愛がったら、止めるから……
「ふみぃ……ソウマ様ぁ…………」
しばらく耳を可愛がったら、潤んだ瞳でエリスが私を見上げてきた。
……うん、最初からわかっていたことだ。
今の私が、エリスが、耳だけで落ち着くわけがないことぐらい。
「エリス……」
「ソウマ様……」
頭では必死に止まれ!の命令を出すが、体はちっとも止まりやしない。
あの日以来抑え続けた反動なのか、一度死にかけた影響なのか……
どんな理由にせよ、もう止まることはできそうにない。
ただただ、何故か今は無性に目の前の少女を慈しみたかった……
「エリス……脱がせるぞ?」
「は…はい」
マントを羽織っていない今のエリスは、薄いシャツ一枚のごく軽装。
そのたった一枚の服のボタンに手をかけ、外していく。
……
…………
その作業の途中で……私の手は止まった。
「……ソウマ様?」
急に動きが止まった私を訝しむエリスの声が聞こえるが、返事ができない。
「……っ!」
ギリリ…と鈍い音が聞こえる。……自分の歯噛みの音だ。
エリスの服のボタンを外してまず現れるのは、白くほっそりとしたお腹。
だが……そこには以前はなかったものがある。
まだ真新しい、腹部全体にはしった痛々しい傷痕……
私がもう少し警戒していれば、エリスが負うことはなかったであろう真竜ヘイズ戦の傷痕……
「っ……エリス……すまない……!」
やっと出てきた言葉は、役にたたない謝罪の言葉だった。
「…どうして……ソウマ様が謝るのですか…?」
「私は……君を守るなどと大言を吐きながら…こんな……」
「いいんです!この傷は私の油断のせいです!しかもそのせいで……ソウマ様の腕は……!」
再び泣きはじめたエリスの左手が、私の右肩に触れる。
「何を言う!全て私の油断、未熟さが招いた結果だ……」
「違います……!私が…私が……!」
同じ様な、自分に全ての責任があるといった言葉を、私もエリスも繰り返す。
全面的に私が悪いのは明らかだが、責任感が強く、意外と頑固なエリスも譲らない。
幾度繰り返しても、言葉の内容は変わらない。いつまでたっても平行線のままだ。
その平行線の会話をしつつ、私は考える。何故あの時エリスを庇った?
答えは簡単。エリスが危険な状態だったからだ。
では何故致命傷を負った後も、ヘイズに挑んだ?
これも簡単。エリスを助けるためにだ。左腕も失うところだったのに?
左を失くしても、同時にヘイズを倒すことは出来た。エリスはくわえてでも治療院に連れていく。
ではエリスのおかげで左腕が残った時、何故嬉しかった?
またエリスに触れることができるからだ。またエリスの頭を撫でられるからだ。
……あぁそうか…私は自分の命よりも……
「私は何よりも、エリスを失うことが怖いんだ!」
「私は何よりも、ソウマ様を失うことが怖いんです!」
不毛な平行会話を終わらせようと私の口から飛び出た言葉と、
同じことを考えたと思われるエリスの口から飛び出た言葉は、ほぼ同時だった。
気恥ずかしさからか、私もエリスも次の言葉が遅れてしまう。
若干の間の後に、再び同時に動いて、
互いの唇を重ねた。
言葉はいらない。こんなにも自分を想ってくれているのだから……
「あの……ソウマ様………」
ゆったりと時間をかけた口付けを終えると、エリスがおずおずと声をかけてきた。
「……何も言うな。私は私がエリスを助けたかったから自分の意思で行動したまで。
だからエリスが気に病む必要はない。わかったね?」
「はい……でも、ソウマ様…無茶はやめてください。あなたがいなくなったら……私は……」
「……善処しよう。しかしそのセリフは私のものでもあるな。エリスを失うのは……耐えられん」
エリスの頭をそっと撫でて、その白銀の髪に指を通す。
柔らかな感触……確かにエリスは、いまここにいる。その証拠。
……私の理性が即座に砕け散った理由も今ならわかる。
エリスが、今この場に確かにいることを、確かめたかったのだ。
そしてエリスも、おそらくは同じ感情を持ち、行為に及んだのだろう。
互いが深手を負い、死の淵をさまよい、目覚めたばかりで現実か夢かの区別もつかない。
だから確かめたかった。
互いが互いを想い、失うことを恐れた故に……互いの生存を。
ただ……
「流石に怪我人同士でこういった行為をするのはな……いやそもそも婚姻前にだな…」
「うぅ……そうですよね……」
エリスがガクリとうなだれるが、これはどうしようもない。
私は右腕を失った以外にも、全身に傷ができている。そしてそれも完治はしていないだろう。
激しい動きをして、もし全ての傷口が開いたら今度こそ死ぬ。なんとも間抜けな死に方だ。
エリスも傷は少ないが、腹部全体に負った大きな傷がある。
下手に挿入なぞしたら、これも生命の危機だ。愛する人を自分で殺すのは洒落になっていない。
しかし耳を可愛がってエリスをその気にさせたのは私なわけだし……
ここはせめてエリスだけでも満足させるべきか?
「エリス……悪いが今はこれで我慢してくれ」
「えっ?あ、あぁぁぁああ!?」
左手をエリスのスカート内に侵入させ、下着越しに彼女の秘裂をなぞる。
ただそれだけで、エリスの体は大きく跳ねた。
「だ…大丈夫か?」
「はぃ……やっぱり…ソウマ様に触れられるだけで……嬉しいです……」
むぅ……なんだかこちらまで恥ずかしい気持ちになるな。
そして少し落ち着け我が愚息。無理だから。今回は入れられないから。
構えを解け。あんまり見苦しいと明王叩き込んで再起不能にするぞ?
「ソウマ様こそ……辛そうです…大丈夫ですか?……そうだ!こういう時は……
『しっくすないん』です!」
「……?」
聞き慣れない言葉だったが、これだけは言える。何か嫌な予感がする……!
「エ、エリス……」
「な、なんでしょうか……?」
「これが『しっくすないん』か……?」
「えぇ……かなり前に覚えさせられたのですが……やっぱり凄く恥ずかしいです……」
今、私の目の前にはエリスの形のよいお尻が。
そしてエリスの目の前には、見なくてもわかるガチガチの我が愚息がいる筈だ。
互いの性器を舐めあえるこの体勢がエリスの言うそれらしいが……
どう考えても常軌を逸している。エリスにこれを教えた『主』にはいずれ双つ燕をくれてやる。
しかしなんというか……こんな至近距離で見るのは初めてというか……
いやあの日以来見ていないわけだが……とにかく凄まじい。
そして、確実に人としての道を一気に踏み外しているのもわかる。
……本当に私はもう駄目かもしれない。サムライどころか人間失格かもしれない……
「えと……それじゃソウマ様…お願いします……」
「う…うむ……」
もう後には引けぬか……
私はエリスに、エリスは私に舌を伸ばし、そして舐めあげ
【ガチャ】
「えぇい!凶刃、魔銀、戦慄!いつまで惰眠をむさぼっているつもりだ!……あ」
「やめてくださいメナスさん!彼らはまだ完治していないんですよ!?……あ」
「「あ」」
突如扉を開けて、二人の人間が乱入してきた。
一人は、そもそも私達が深手を負う直接の原因を作った諸悪の根元、メナス指揮官。
もう一人は白衣を纏ったルシェの女性。姿からおそらく私達を治療してくれた医師だろう。
そんな二人は、乱入と同時に固まった。
無論、私とエリスも。
あぁ……昔から私の嫌な予感はよくあたる……
これなら、まだ父上が乱入してきた方がマシだ……
「あー…おたのしみのところ悪かったな凶刃。といいたいところだが、
お前達にはすぐに働いてもらわねばならない!」
「……」
メナス指揮官……いやもうメナスでいいか。とりあえずまずその鼻血とにやけ顔を止めろ。
最悪のタイミングで乱入しときながら悪びれる様子もないこのメナス、
二言目にはもう私達をこきつかう話をし始めた。
ちなみにエリスは隣のベッドに正座で医師に説教されてしまっている。
医師の説教の他にも、まだやってないんです!とのエリスの抗議の泣き声も聞こえる。
私もだが、体があれだけうずいた状態で強制終了はかなり酷である。
私の愚息も、両足で挟みこんで無理矢理抑えているざまだ。
悪いのは私達なのだが、やはり色々な意味でこのメナス、許すまじ……!
「…メナス指揮官、やってもらうこととはなんだ?真竜ヘイズならば、撃破したであろう?」
「あぁ、その事に関しては感謝している。予想以上の働きだ。だが、それの礼などは全て後だ。
今は落ち着いて、私の話を黙って聞きたまえ。
……つい先程、ユグドラシルが真竜ニアラとの戦闘を開始した。
しかしそれと同時に、真竜ニアラは隠し持っていた竜数千匹を各地に放った。
あと数分もしないうちに、このカザンにも無数の竜が飛来する。
お前達には、このカザンに向かってくる竜の殲滅をやってもらう」
「はぁ!?」
思わず聞き返してしまった。
今なんと言った?数千の竜が世界各地に?それがあと数分で?それを倒せと!?
「馬鹿な!…それに何故私達だけで……!」
「ヘイズ討伐の際、集まったほぼ全てのギルドが壊滅した!
生き残りで竜をまとめて相手にできるのは、お前達だけなのだ!」
それはお前の責任であろう!?
英雄部隊の出し惜しみさえしなければ、それ程の犠牲は出なかった筈だ……!
「頼む……!もはやお前達以外ぶへっ!?」
なおも食い下がるメナスの頬に、突然棘鞭が襲いかかった。これは……
「何言ってるの……?お兄ちゃんもお姉ちゃんも……あなたのせいで死にかけたんだよ…?
私や他の治療師を庇って…ミロスの騎士団長さん達も、みんなみんな死んじゃったんだよ…?
全部……あなたのせいだよね…?それなのに……」
「そ…それはだな…ぐふぅ!?」
再び棘鞭がメナスの頬を打つ。今度は左だ。
ゆっくりと鞭を手元に戻し、ベッドから起き上がったのは、先程まで寝ていたと思われるリア。
声は荒げないが、彼女が静かに怒りの感情を爆発させているのがわかった。
「待て…落ち着け!今は時間がないんだ……!戦えるのはお前達しか……」
両頬を押さえながらメナスがうめき声をあげる。
こころなしか、目の端に涙が見える。痛いのだろうか?それとも恐怖からだろうか?
多分……両方だろう。
「……どうしてもって言うなら…私一人で戦う。
お兄ちゃんにも…お姉ちゃんにも…無理はさせられない」
「な…リア!?」
「リアさん!?」
「やめなさい!あなただってまだ足の傷が完治していないでしょう!」
突然のリアの発言に、私とエリスはもちろん、医師までもが待ったをかける。
「大丈夫だよ…もうちゃんと歌えるし、鞭も握れるし……ほら、もう立てるよ」
「そうか……ならば命じる!カザンを脅かす竜を全て殲滅してみせよ!」
メナスが声をあげると同時に、口の端を持ち上げたのを私は見逃さなかった。
この男は、わかっているのだ。
私が、エリスが、リアを一人で戦わせるわけがないと。
全ては『カザンを』守るために。利用できるものは全て利用する……か。
メナス……冷酷だが、『国』を守る指揮官としては、それが正しいのかもしれない。
私達はリアを見捨てれない。
エリスと目をあわせれば、彼女も頷いた。思うことは、同じ。
結局私達は最後まで、メナスにいいように利用される『駒』なわけか……
それが非常に癪だが、仕方がない。メナスの言うとおり、時間がないのだ。
どのみち戦える…街の人を守れるのが私達しかいないというのなら……
戦うまでだ。
私は壁にたてかけられていた母上の刀を握りしめ。
エリスはマントを羽織り、薬の入った袋の中身を確認して。
必死で止める医師を振り切って。
リアを追ってカザン中央広場に向かう。
これが、私達の最後の戦いだ。
「……なんで来ちゃったの?」
「リアさんも、私達の大切な仲間ですからね。それに、私だけソウマ様とあんなことをして…
リアさんだけに戦いを押し付けるなんてできませんよ……」
「うむ……それにアリエッタとの約束もある。『三人』で生きて帰るんだ。絶対にな……」
「お兄ちゃん…お姉ちゃん……ありがとう……」
言葉を交えながらも、私達は決して前から目をそらさない。
前方数キロ先に、こちらに向かってくる竜の群れが見える。
帝竜の様な巨体を誇る竜は少ないようだが、その数が異常だ。
その数は……軽く千を越える。
フロワロを無数に産み出すように、竜も無数に産み出すことができる……
それが真竜ニアラの本当の能力か……
人間に絶望を味あわせるためだけに、その力を使ってこなかったということなのか……?
いや…今となってはどうでもいいか。目の前の敵を倒すことだけを考えろ……
竜の群れから数匹が、速度をあげてこちらに向かってくる。
細くしなやかな紅い体…そして薄い八枚の虫羽……見たこともない竜だ。
しかし、似た様な竜には出会っている。アイゼン付近の竹林にいた、あのトンボ竜だ。
姿形が似ているなら、厄介さも似ているんだろうな……
……
………何故か全身から嫌な汗が流れる。
まるでヘイズと出会った時のような……そんな感じだ。
間違いなく、あの竜は強い。
「ソウマ様……?」
「……なんだいエリス」
「勝て……ますよね?」
すぐに返事が出来ない。
あの竜は強い。尖兵であの強さなら、群れの奥にいる竜はどれ程の……?
そんな考えが頭を横切るが、ねじ伏せる。思考は、いい方向にもっていくべきだ。
「……勝てる勝てないではない。『勝つ』んだ!」
「……はい!」
理想論でしかないのはわかっている。
気を抜けば、おそらくあの虫竜一匹にだって殺されかねない。
だから、ひたすら前を見て、勝って、生きることだけを考えろ……!
さぁ、もう敵は目の前だ。
最初の一匹目からつまずいていては話にならない。
刀はもう構えた。来るならば来い!
【来た!ドラゴンだ!!】
倒しても…
【来た!ドラゴンだ!!】
【リブロドラゴニカが現れた!】【ワイバーンμが現れた!】【イビルドラゴニμが現れた!】
倒しても……
【来た!ドラゴンだ!!】
【カノンドラグが現れた!】【グリフィナスμが現れた!】【ドラゴストナタμが現れた!】
倒しても倒しても……
【来た!ドラゴンだ!!】
【オルグドラゴμが現れた!】【ビトラドラゴニスが現れた!】【アルマノスμが現れた!】
きりがない……!
刀が虫竜の体を両断し、マナの弾丸が甲竜の頭を射ぬき、棘鞭が石竜の首を絞めあげる。
だがそれらの竜の亡骸を踏み荒らし、新たな竜が襲いかかってくる。
それを斬り伏せても、また別の竜が亡骸を吹き飛ばしながら突進してくる。
リアの月明かりの詩の力で、私達のマナはほぼ無尽蔵ではあるが……
どんな優れた刀も、使い続ければこびりついた血や油で斬れ味が鈍ってしまう。
鞭を振るう腕も、だんだんと疲労が溜っていく。
詠唱破棄をしても、絶え間なく術を行使すれば精神に負担がくる。
交戦して数分。まだ余力はあるが……このままではジリ貧だ。
『グオオォォォオオオ!!!』
……いや、それを待つ暇もないかもしれない。
轟いた咆哮はまさしく帝竜のそれ。最悪のタイミングで、最悪の援軍……!
空中という、絶対有利な戦場を持つが故に討伐が後回しにされていた、最後の帝竜……!
「空帝竜インビジブル……!?くそ!」
空を見上げれば、極彩色の翼をひろげ、こちらを見下す空帝竜の姿があった。
『翼なき愚かで哀れな人間よ…なかなかにしぶといが、ここまでだ』
空帝竜の翼が帯電しているのがわかる。止めねば、雷の嵐が飛んでくる。
当たれば、即死はなくとも体が痺れて満足に動けなくなる…その果てに待つのは死だ。
しかし空帝竜のいる位置には私達の攻撃が届かない。
仮に跳んで届いたとして、落下時に眼前の顎竜にまるのみにされるのが関の山だ。
帝竜と竜の群れ…同時に相手にすることはできない……!
これは……詰み…なのか?『死ぬがいい弱き生命体よ!いずれ貴様らの英雄も後を追うだろう!』
ここまでなのか…………!
「アースも帝竜も、みんなブレイカーなんです!必殺技、アースブレイカー!!」
『がっ!?』
天よりの謎の声、空帝竜の短い悲鳴、その後に響く、大地を砕かんとする爆音……
突然のことに、私達はおろか、竜の群れまでもがその動きを止めてしまった。
やがて土煙が晴れると、そこに立っていたのは一人のメイドだった。
空帝竜は……その後ろで頭部を完全に粉砕され、ピクリとも動かない。
「ふぅ…なんとか『今回』は間に合ったみたいですね」
「あの……失礼だがあなたは……?」
「私はただのメイドです。このカザンには少々苦い思い出がありまして……
微力ながら、カザンを守らんと戦うあなた達の手助けをさせていただきます!」
そういうと女性…ただのメイドさんは血塗れた破城槌を振り回して、竜の群れに飛込んだ。
ただのメイドが帝竜を一撃で仕留めたり、そんな物騒な得物を振り回せるのか……?
疑念は尽きないが、ひとつ言えるのは、彼女が頼もしい味方であるということだ。
「メイドは秘密が多いんです。それと、味方は私だけではないみたいですよ?」
読心術…!?本当にこの人は何者なんだ……?いや、それよりも、他にも味方が…?
「あぁ、いるぜ!ユグドラシルや、お前達みたいな無名のギルドまでこんなに頑張ってんだ!
俺達も少しは頑張らねぇと、ドリス大統領に顔向けできねえよな!!」
街の西口より、大剣を振り回し、複数の竜をまとめて薙ぎ払う赤髪の剣士が現れた。
その顔は私ですら知っている。ユグドラシルと実力を二分するギルド……
王者の剣のリーダー、ネストルその人だ。
「若僧どもだけに戦わせるわけにもいかんな……竜ども、営業妨害の罪は重いぞ?」
続いて酒場方面から、左手に剣を持ち、右手に斧を持ったキザな初老の男性が現れた。
そして、ヘキサスパイクとタイダルウェイブを同時に放つという荒技で次々と竜を倒していく。
「わしらがいればカザンは安泰だ!いくぞエリザ!」「あいよ!さぁ、どいつからペシペシされたいんだい!?」
「妹は僕が守るんだ!妹に手を出す奴は、人間でも竜でも容赦しないぞ!」
民家からもさらに数人が飛び出し、それぞれの得物が竜を斬り裂いていく。
「はぁ…はぁ…ご無事ですか!?まったく、怪我人にこんな無茶させるなんて……!」
そして治療院からは、先程の医師が息をきらせて走ってきた。
その手に持つ縄の先には全身を縛られたメナスが……これは見なかったことにしよう。
「あなた達は休んでいて!…と言っても戦うのでしょう?……それなら、私も戦います。
医師として、目の前で死者を出すわけにはいきませんからね。大抵の傷は任せてください」
「助かります!」
メナスめ……何が私達だけしか戦えないだ。
まだこんなにもたくさん、無数の竜に絶望せずに戦ってくれる人がいるではないか……!
心強い味方に、エリスとリアの頬が僅かに綻んだ。
多分私も似たような表情になっていることだろう。
さっきから妙に軋む左腕の痛みも、なんとなくやわらいだように感じる。
人は、未来への希望があれば死なないというが…本当なのかもしれない。
リアの守護歌の有効範囲はこの街全体。そしてこれだけの味方がいれば、あるいは……
いや、勝てる……!
「ソウマ様……?」
「なんだいエリス?」
「もし……この戦いが終わったら……どうなさるつもりですか?」
「そうだな……エリスと一緒にのんびりと暮らしたいな。
……それと、『もし』は必要ない。この戦いは終わる。竜ではなく、人の勝利でな…」
「…!はい!」
そうとも、もうすぐ、もうすぐ竜はこの星からいなくなる。
竜のいない、元の平和な世界……今度こそ、それは現実のものとなる筈だ。
その平和になった世界で、エリスと共に暮らしたらさぞ楽しいことだろう。
……そういえば、どこで暮らすかを考えていなかったな。
さて、少々気が早いが、どこにしたものか……
A 賑やかなカザンか?
B 故郷たるアイゼンか?
C 全ての人に平等なミロスか?
D エリスの勉学のためにプレロマか?
E 受け入れられるかはわからないが、ルシェの国ネバンか?
F マレアイア……これはまずい。
G 初めて出会った森の中に家を建ててみるか?
H 各地を転々と旅をするのもいいか?
……今は目の前の竜を倒そう。
そして……
最終更新:2013年05月04日 23:47