続きが出来たので、投下させていただきます。媚薬ネタのつもりです
やはりエロは短くぬるいです
登場人物
カルダモン(眼鏡メイジ♂)薬学LV5
アニス(紫プリンセス)今回は縛られてない
ヴァニラ(青プリンセス)とユーカリ(ルシェヒーラー)変な薬を作った
カザンの町の一等地にある、とあるギルドハウスの窓から不気味な色の煙が濛々と上がっていた。
そのギルドハウスの調理場には銀髪褐色の男と青色の髪の少女が立っている。
彼等は共に顔全体を覆う大きなマスクとごつい手袋を身につけており、呼吸をするたびにしゅこーしゅこーと音がする。
大きな鍋にモンスターから得た元から不気味な戦利品を刻んで、
更にグロテスクになった材料をぼちゃぼちゃと音を立てて入れていく。
「絡み合う根を三つ…臭い肝を二つ…魚の目を六つ…」
「長寿の髭を一束…パロメディスを二つ…あと、マナ水を五つ…」
「最後に髪を入れて…」
不気味な色の液体がぼこぼこと煮えたぎっている鍋の中に、鮮やかな紫色の長い髪を数本はらはらと落とした。
元々鍋の中身が変な色をしている為、髪はすぐに見えなくなってしまった。
木箆でぐるぐると掻き混ぜながら鍋の中身を煮込む。
長時間弱火で煮込んでいると、次第に鍋の中身は少なくなっていく。
煮込んでいる途中に何度か爆発したりしたが、なんとか完成した。
最終的に鍋の中に残った量はコップ一杯分の透明な液体だけで、ぱっと見は普通の水にしか見えない。
その為、水と間違えて飲んでしまいそうである。
とりあえず、その液体を鍋からコップへと移し替え、テーブルの上に置いておく。
それから余った材料や調理器具等々の後片付けをして、ようやく一息ついたところである。
「古今東西、人類が追い求めた秘薬…所謂、媚薬ってやつですが…」
「これを大量生産して、売り付ければ、億万長者も夢じゃないのだ」
「まあ、古い文献に書いてある製造方法で試験的に作ってみたのだけなので、効果は使ってみなければわかりませんよ」
「まあ、後は使うだけなのだ。ふふふ…」
「くっくっく…」
「ふふふ…ユーカリちゃんも悪よのぅ、なのだ」
「くっくっく…ヴァニラさんほどではございませんよ…」
怪しく談笑する二人。二人とも性根が歪んでいるのか、他人で遊ぶのが大好きで、
他人が苦労している様子をみるのはもっと大好きなのである。
「ところで、この薬は食事や飲み物に混ぜるときは、どれくらい入れればいいのだ?」
「ほんの少しで十分ですよ」
「この量で何回分もあるのだ?材料を集めるのは面倒だけど、案外安くつくのだ」
「まあ、そういう事です。ちゃんと効果が確認することができれば、すぐに次を作れるように準備しておきましょう」
そんな会話が繰り広げられているとは知る由も無く、ギルドハウスに入ってくる男が一人。
「変な煙が出ているから来てみれば…やっぱり、貴方達ですか…」
明らかに不機嫌そうな表情をしたカルダモンがやってきた。
家中の窓を開けていたので、煙が充満することは無かったが、
なんとなく臭いが残っているようで、顔を顰めて部屋の臭いを嗅いでいる。
「また何か変なもの造ってたんじゃないでしょうね?」
「もとからこの調理場ではゲテモノしか作ってないのだ」
材料からして、まともな食材を使ってないのだからまともな料理が出来るわけがない。
毎回ゲテモノ料理を作ってはカルダモンが食べさせられていた。なので、
あまり、というか全く調理場にはいい思い出が無い。
「…で、何を作ったのですか?」
「それは言えませんよ。言ったら面白くなくなってしまうじゃないですか」
「そうなのだ。秘密なのだ」
そう言ってユーカリとヴァニラは不敵に笑う。正直に話さないだろうと最初から予想していたが、
まさにその通りで呆れたと言わんばかりに大きな溜息を吐くカルダモン。
今回も嫌な予感がする。そう思う度に彼は不幸な目にしか遭っていない。
嫌な予感ばかり的中して、そしてその災難はことごとく彼に降りかかっている。
生まれ持っての宿命なのか、彼の周辺人物の所為なのか、一体何が原因かは一切不明である。
が、彼は後者に違いない、と決め付けている。
「お願いですから、私を巻き込まないで下さいよ」
「それは約束できないのだ」
そんなヴァニラの返事を聞いた途端、彼の表情は更に険しくなる。
周りから目つきが悪い、悪人面だ、と言われているので出来るだけそうならないようにと、気を付けているが一向に改善しない。
というのも、何度も騒動を起こされて、それに巻き込まれていて、不機嫌になるなと言う方が難しいくらいである。
最近では気がつけば眉間に皺が寄っている。
「まったく…巻き込まれる私の身にもなって下さいよ…」
「ぶっ倒れるあなたを看護する身にもなってくださいよ」
「私だって、好きで倒れているわけじゃありませんよ…そもそも、ユーカリ、貴方は看護なんかしてないじゃないですか。リカヴァの一つも使ってないくせに…」
「唾でもつけときゃ治りますよ」
「治るか!」
カルダモンは鼻息を荒くして恨み言を垂れるが、どれだけ文句を言われても微塵も気にしていないユーカリは何処吹く風といった様子である。
そんな様子を見ているヴァニラはふふふ、と笑っている。
「笑ってないで、貴女も何か言って下さい!」とカルダモンに怒られたでの、仕様が無いから口を開く
「カルダモンちゃんはむしろ良い思いをしているのだ」
「…はあ?」
「カルダモンちゃんは気絶してるからあまり知らないかもしれないのだが、カルダモンちゃんがぶっ倒れる度にアニスちゃんが甲斐甲斐しくお世話してくれてるのだ」
「そう、なんですか…じゃなくて、どうしてここでアニスが出てくるのですか!?」
この前の事があったからか、彼女の事を考えると自然と顔が赤くなっているのが自分でもわかる。
なにやらヴァニラもユーカリもにやにやしながら自分のことを見ているのに気がついた。
このままでは二人のペースに流されていってしまう。既に流されているのだが。
とにかく、どうにかして落ち着かなければ。
「別にヴァニラは本当のことを言っただけなのだ。本人に聞いてみればわかることなのだ。気になるなら聞いてみればいいのだ」
「自分のことを憎からず思ってくれる人が近くにいるっていうことは幸せなことではないですか。いやあ、若いっていいですねえ」
私と大して歳は変わらないでしょうが、と思っていたがあえて何も言わないでいた。
そもそも、この二人はどちらもカルダモンが苦手とするタイプである。
それを一遍に同時に相手をするとなれば、不利になるということは最初からわかっていた。
だが、この場に足を踏み入れたのが運の尽きということか、逃げたくとも逃げられない。
それはメイジという職業の素早さの低さだけが理由なのではないだろう。
「せっかくヴァニラがお膳立てしたのに、ちっとも進展しないのだ。最初のとき以降、全く手を出していないのだ」
「へたれですからね。あまり期待し過ぎても疲れるだけですよ」
本人が目の前に居るというのに、口を慎む気には二人ともならないようである。
むしろ、本人の目の前であるから悪口で盛り上がれるのである。
陰口ではない、本人に向かって堂々と言っているのだから。
黙っていては相手に好き勝手言われる一方であるが、残念ながら彼には言い返すだけの話術も、それどころか既に気力さえも残っていない。
とりあえず、気分だけでも変えようと視線を落とすと、目の前のテーブルの上に置いてあるコップの中に水が入っているのに気がついた。
彼はそれに手を伸ばし、何も言わずにコップの中の水を一気に飲み干した。
無色透明、無味無臭で味も何も無い液体だった。水なのだから当然かもしれないが。
コップをテーブルの上に戻し、シャツの袖で口を拭っていると、
ついさっきまで好き勝手喋っていた二人が神妙な顔をしてこちらを見ているのに気がついた。
「それ…飲んだんですか?」
「…?はい、そうですけ、ど…」
それがどうしたのですか?と言いたかったのだが上手く呂律が回らなかった。
それどころか、眼鏡も外していないのに視界がぼやけて、ぐにゃぐにゃと歪む。
いくらなんでも、眼鏡を外してもここまで酷くはならない。
足がふらふらするなと思っていたら、急に膝が抜けて立っていられなくなった。
膝を地面につけ、両腕で体を支えているが、それさえも不可能なくらいに体から力が抜けていき、そのまま床に倒れ伏した。
荒い呼吸音ばかりが嫌に耳に響く。突然の出来事で現在の状況が全く理解出来ない。目がチカチカする。
体温が上がっているのか、体が熱い。もしかして死ぬのだろうか、と頭の隅で考えたが、
正常な思考も出来ないようで、意識がふわふわしてきた。
遠くで誰かの声が聞こえているような気がしないでもないが、何を言っているのかさっぱり聞き取れない。
視界が徐々に暗くなり、それに連動するように意識が遠のいていき、そのまま気を失った。
「…大丈夫なのだ?」
先程の薬品を造った側のヴァニラとユーカリも現在の状況には少なからず動揺している。
先程までの様子とはうってかわってユーカリは落ち着いて対処する。
うつ伏せに倒れているカルダモンを仰向けにさせて気道を確保する。と、少々荒いもののちゃんと呼吸はしている。
それに続けて脈を測ると正常よりは高いが、異常は無い程度である。
「とりあえず、ベッドの方に移しましょう。流石にここに居させるのは良くないですから」
そう言うとユーカリはカルダモンが身につけているマントを外し、彼の両腕を持って運ぼうとし、ヴァニラは両足を抱えてその手伝いをする。
彼は割かし平均よりも細い方であるが、完全に気を失っている人間というのは結構重いものなのである。
彼が倒れたところからベッドまではそれほど距離は無いのだが、運ぶのにはかなり時間と労力がかかった。
目を覚ましたら、殴る。
「一気に全部飲んじゃったけど…大丈夫なのだ?」
「今のところ特に異常は見られませんが…正直なところ、目が覚めてみないとわかりません」
「それに、本当にあの薬に効果があるのかわからないのだ」
「少しでは効果があるかどうかもわかりませんし、全部飲んでくれて丁度よかったのではありませんか?」
「それもそうなのだ」
罪悪感さえも感じないのか、それともそんなことは忘れたのか、
二人は当人が気を失っていて聞いていないことをいいことに好き勝手なことを言って、談笑している。
少しカルダモンが魘されているみたいで、苦しそうな声を上げているが、特に気に留める様子も無い。
「…そういえば、カルダモンは薬学LV5持ちでしたね」
「そういえば、そうなのだ…」
アイテムの効力を二倍にするという便利なスキルである。
果たして先程の薬品にこのスキルの効果が及ぶかどうかは不明であるが、絶対に無い、とは言い切れない。
そのことを思い出した二人の間に長い沈黙が流れる。
町の中で戦闘中ではないが、彼にとってはドラゴン以上の強敵を相手にしていたのだ。
絶対効力が及ぶ、とは言い切れないが、その逆も然り。大量服用で更に薬学で効果二倍。
額に浮いた冷や汗が頬を伝う。
「…ま、まあ、ヴァニラ達にはどうすることも出来ないのだ」
「吐かせればいいかもしれませんが、事後処理も大変ですしね」
「アニスちゃんを宛がえばいいのだ。その後は当人達に任せるのだ!」
無責任なことを言って彼等は気を失ったままのカルダモンを置いて、ギルドハウスから出て行った。
彼が何時目を覚ましてもいいように、アニスにそれとなく言っておいたので、多分大丈夫だろう、多分。
後は野となれ山となれ。吉報を待つ。
天井が見える。しみが魚の形をして狭い天井を泳いでいる、ように見える。
体を動かさずに周辺を見てみるが、視界はぼやけてよくわからない。
眼鏡が無い、と気がついたが眼鏡を外した覚えが無い。
それどころか、記憶が曖昧で、どうして自分がベッドに入って寝ているのかさえも覚えていない。
ギルドハウスに入って、ヴァニラとユーカリと何か話していたような覚えがあるが、その後が思い出せない。
何も探してはいないが、眼鏡が無ければまともに動くことも出来ない。
体をゆっくりと起き上がらせようとするが、妙に体が重く感じる。なんだか体が熱いし、脈拍も早い。熱でもあるのだろうか。
「…起きたの?」
聞き覚えのある女性の声が聞こえたので、声のした方へ顔を向けると、ぼんやりと誰かが居るのが確認できる。
紫色の鮮やかな髪の色で誰なのかがわかる。
「アニス?」
やや掠れてはいるもののちゃんと声が出ることも確認できた。眼鏡を取ってもらい、
つけるとようやくはっきりと見えるようになったが、意識の方は覚醒しきらず、未だに彼はぼんやりしたままである。
「もう起きて大丈夫なの?」
アニスは半目のままぼんやりしているカルダモンを心配して声をかけるが、やはり返事は返ってこない。
寝かせた方がいい、と判断して起き上がろうとしていた彼を再びベッドに横にしてやり、捲れ上がっていた布団をかけ直した。
「急に倒れたって聞いたから…」
「そうですか…」
「…そうですかって、覚えてないの?」
無言のまま小さく頷いて返事をする彼の様子を見て、アニスは更に心配なる。
そんな彼女を気にも留めずに、カルダモンは再び天井に目を移す。と、先程まで魚の形だと思っていたしみは鳥の形だった。
忙しなくばたばたと羽ばたいて飛び回っている、ように見える。
「あのしみ、動いてませんか?」
彼自身も自分で何を言っているのかよくわからないが、出てきた言葉はこれだった。だが、そういう風に見える。頭でも打ったのだろうか。
アニスは普段真面目で冗談も一つも言わないような彼がそんなことを言い出すものだから、当然困惑してしまう。
「あれって、どれ?」
「あれですよ」
そう言いながら彼は片腕を布団の中から出し、天井の一部分を指で指し示す。
それでもアニスにはそのしみが見つからないので、彼と並ぶようにしてベッドの傍にしゃがんで天井を見上げる。
天井の隅から隅まで探して、ようやく鳥の形をしているように見えないこともないしみがあるのを見つけた。
「あの鳥の形のしみ?」
「それです。羽ばたいてませんか?」
「…動いてないわよ?」
私には動いているように見えます、とカルダモンははっきりとした口調で言う。
彼は未だ半目で眠たそうな顔をしている。彼の様子と言動からまだ夢の世界に片足突っ込んでいるのだろうか、とアニスは考えた。
それならば、寝させておいた方がいい。立ち上がって、ベッドの横に置いた椅子に腰を降ろした。
飽きもせずに彼はじーっと天井を見詰めている。
「眠れないの?」
「先程までずっと眠っていましたから、眠くはありません。…ベッドにはアニスが運んでくれたのですか?」
「ううん、違うわ。私はあなたが倒れたのを聞いただけよ。ヴァニラとユーカリが教えてくれたから、二人じゃないかしら?」
「そうですか…それから、ずっとここに?」
「え、ええ…」
「いつも有難うございます」
「そんな…別に礼を言われるようなことじゃないわ…」
面と向かって礼を言われるとなんだか照れてしまい、頬を赤く染めて俯いてしまう。
だがそこで、ふと気がついた。どうして彼がそれを知っているのだろうか。
毎回彼が気絶して、目が覚めたときには傍に居る。実際は倒れてからずっと傍にいるが、
最初から最後までずっと傍にいることに関しては彼には一言も言っていない。
そんな恥ずかしい事を言えるわけがない。目が覚めたときには、さっき来たばかり、としか言っていないのに。
「そのこと…誰から聞いたの?」
「ええと…誰でしたっけ?」
確かに誰かから聞いたような気はするのだが、それが誰だったかは覚えていない。それどころか、そのことを何時知ったのかも思い出せない。
老化が始まっているのだろうかと、少しばかり心配になったがあまり気にしないでおこう、と彼は思い直した。
ついさっき目を覚ましてから大して時間も経っていないが、やはり普段よりも体が熱い。
それどころか、起きたときよりも更に体温が高くなっているような気がする。
どうにかして体温を下げなければ、再び気を失ってしまう。まずは濡れタオルで額でも冷やそう。
というわけで、アニスに指示をして持ってきてもらったのだが。
「……」
タオルを濡らしたのはいいが、しっかりと絞っておらず、
水を含んでべちゃべちゃのタオルをそのままカルダモンの顔に乗せた。
せめて眼鏡は外して欲しい。そんなことはともかく、明らかにおかしいような気がする。
もしかして、彼女は今までもこのように看護していたのだろうか。
今まで全く知らなくて良かった、というよりもむしろ知りたくなかった事実である。
「あの…絞らないんですか?」
「え?…ああ、そういえばそうね」
忘れてたわ、と言いながらアニスは濡れタオルを引き剥がす。と、そのすぐ傍でタオルを絞って水を切る。
桶は無いのだろうか、とか考える以前に真横で絞られて、布団と一緒に服も濡れた。
冷たいし、寒い。このままでは本当に風邪でもひいてしまいそうだ。
彼女に任せるよりも自分でやった方がまだましだと思い、ふらふらしながらも彼は起き上がろうとした。
が、アニスに寝ていなさい、と言われて抵抗も出来ずに再び寝かされてしまった。だがしかし、彼にとっては暢気に寝ている場合ではない。
せめてこの冷たいベッドから出たい、という諭旨を告げるとようやく彼女は了承してくれた。
横のベッドに移動するだけというのに、なんと大変なことか。アニスはカルダモンの肩を担いで、
移動の手伝いをしてくれているが、慣れていないようで四苦八苦している。
起き上がらせようと肩を引っ張るが、予想以上に彼の体は重くなかなか持ち上がらなくて、
下手したら肩が抜けてしまいそうだと他人事の様に思った。
どうにかこうにか引っ張って動かしたはいいが、そのまま一緒に横のベッドに倒れ込んでしまった。
カルダモンが上に乗っているので、アニスは動きたくとも動けない。
「あんた、意外と重いわね…ねえ、ちょっと退いてよ」
「……」
「…ちょっと、起きてる?」
「…起きてますよ」
先程以上にしんどそうなカルダモンの声が後ろから聞こえる。やはりこの運び方は拙かったのだろうか。
背中にぴたりとくっついている彼がなにやらごそごそ動いているな、と思ったら抱きしめられていた。
何の真似だろうかと考え、じっとしていると体を弄られた。
きっと熱で頭がぼーっとしているから、普段しないようなこともするのだろうと思って何も言わないでいた。
何も言わないでいるが、恥ずかしいことは恥ずかしいわけで、彼に触れられる度にどきどきしてしまう。
アニスが何も言わないのをいいことに、カルダモンは好き勝手に彼女の体を弄る。それどころか、衣服を脱がそうとしている。
「ちょ、ちょっと、何してるのよ!?」
「何って…解りませんか?脱がしてるんです」
焦る彼女とは反対に、妙に落ち着いている彼は平然と言ってのける。
今更になって気がついたが、どう考えても今の彼は普段の彼ではない。
このままではいけない、とアニスは抜け出そうと懸命に暴れるが、
彼の下に居てはちっとも身動きが取れない。せいぜい手足が少し動く程度である。
「じっとして下さい」
そう言ってカルダモンはアニスの体を押さえ込むと、彼女の体を抱えたまま起き上がりベッドに腰掛ける。
彼女の体をひょいと持ち上げ、自分の方を向かして跨る様に座らせた。
先程までふらふらしていたというのに一体どういうことだ、とアニスが困惑している間に現在の体勢になっていた。
不意に抱き寄せられて、噛み付くようにキスをされる。
驚いて逃げようとするが、後頭部を手で固定されて逃げようにも逃げられない。
彼女の唇を抉じ開け、舌を口内で絡ませ、暴れさせ、強引にキスをする。
次第に苦しくなり、カルダモンの胸をどんどんと叩くとようやく解放された。
はあはあと荒い息で呼吸し、瞳に涙を溜めて、アニスはカルダモンを睨みつけるが、彼は至って平然としている。
「どうしたのですか?そんな顔をして」
「それはこっちの台詞よ!」
あんな乱暴なキスをされたのは初めてだし、普段の彼ならばあんなことは絶対しない。一体どうしたというのだ。
彼の表情は先程と全く変わっていない。目が据わっており、無表情で些か不気味だ。恐怖さえ感じる。
彼と対してこんな感情を抱いたのは初めてだ。
「一体、どうしたの…?」
おそるおそる尋ねても彼は答えを返さない。彼女の背中に腕を回して抱き寄せ、胸元に顔を埋める。
心臓の鼓動が彼に聞こえてしまいそうで、余計にどきどきする。
「動悸が激しいですね」
それはあんたがそうするからだ、と言ってやりたいが声が出てこない。ぐりぐりと胸に押し当てるように摺り寄せる。
風邪をひくと人恋しくなるというが、もしかしてそれだろうかと思ったが、ぴんぴんしている彼はどう見ても風邪ではない。
普段は恥ずかしがって手も握らないというのに、今日は一体全体どうしたというのだろうか。
子供のように擦り寄る彼を見て、アニスも優しく抱き寄せ、彼の髪を撫ぜる。
「アニス、熱を下げる方法を知っていますか?」
「へ?ええと、そうね…汗をかく」
「じゃあ、手っ取り早く汗かく為に運動でもしましょうか」
それだけ言うと彼はアニスの胸に顔を埋めているのを止めて、彼女の身につけている衣服を再び脱がしにかかった。
するすると迷いも無く脱がす彼に呆気にとられて、ただただ眺めていると、
気がついたときには上下の下着とパンストしか残っていなかった。
これ以上は脱がされまいと懸命に抵抗するが、難無くブラジャーも外されてしまい、胸が露になる。
両手で自分の体を抱く様にして隠していると「隠すほど無いじゃないですか」と言われて腹が立ったので、
平手打ちでも見舞ってやろうかと思ったが、そうすると胸が隠せなくなってしまうので睨み付けるだけにしておいた。
カルダモンはそんなことも気にせずにパンストを脱がしにかかるが、アニスが非常に抵抗するために、ちっとも脱がすことが出来ない。
脱がす脱がせないで必死の攻防が繰り広げられるが、要は引っ張る方向の違いである。
アニスは胸を隠せていないが今はそんなことを気にしていられる余裕は無い。
「…わかりました、ストッキングは脱がすものではなく破るものだということですね」
「そんなこと一度も思ったこと無いわよ」
どこかずれている彼の様子に怒鳴る気にもなれなくて冷静に返事をしても、今の彼はそんな言葉に聞く耳を持たない。
彼はパンストを手に持つと、強く引っ張り一気に引き裂いた。
きゃあ、と悲鳴を上げても聞こえているのかいないのか顔色一つ変えずに、最後の一枚の紐を解いて剥がすとぽいと投げ捨てた。
「なななな、何でこんなことするのよ!?」
「服を着たままではやりにくいと思ったので、脱がしたんです。…ああ、私も脱ぐので少し待っていて下さい」
何をだ、とは聞かなくとも大体想像は出来る。これからの展開を想像すると、
どうしてもそわそわして落ち着かないアニスとは反対に、妙に上機嫌なカルダモンは鼻歌交じりに服を脱いでいる。
やっぱり不気味だ。
先日彼と初めて繋がったのはヴァニラの策略の所為ではあったものの、決して嫌なわけではなかった。
だが、それからというものの彼と顔を合わせる度にギクシャクしてしまい、まともに会話も出来ない。
それだというのに、毎日毎日ヴァニラには「今日はどこまで行ったのだ?」とか「ちゅーくらいしたのだ?」とか聞かれるのだから堪ったものではない。
「何もしていない」と正直に言うと「そんなんじゃだめなのだ!がばーっとやっちまえばいいのだ!」
とか何とか長々と説教し始めるのだからうんざりしてしまう。
じれったいと思うのはアニスだって同じである。
「ほら、アニスぼーっとしてないで下さい」
「きゃっ」
服を脱ぎ終わったカルダモンはアニスを抱きしめると、ごろんと転がってそのままベッドに横たわった。
彼女を更に抱き寄せて素肌に直に体温を感じると共に、彼女の香りや柔らかさも堪能する。
抱きしめるだけではつまらないので、彼女の腰からお尻を撫でてあげたら、彼女にぎゅうっと手を摘まれたが、
それでも撫で続けて秘部にまで手を伸ばしたら少し大人しくなった。
調子に乗って秘裂に指を入れて弄ってあげると我慢しているのか顔を真っ赤にしてぷるぷる震えているが、時折声を漏らしているので悪くはないようだ。
空いている方の手で乳房を揉み、すっかり硬くなった乳頭を指でこりこりと擦ったり、
引っ張ったりして弄くると耐え切れずに彼女は甘い声を上げる。
「ふぁ…うぅん、あっ、そこぉ、だめぇっ…」
「だめなんですか?」
「んんっ…だめ、なのぉっ」
「そうですか…嫌がるようなら、止めますね」
カルダモンはそう言うと乳房への愛撫を止め、その手をそのまま秘部へと下ろした。
突然中途半端なままに放り出されたアニスは堪ったものではない。
先程まで触れられていた乳房が熱い。確かにだめとは言ったが、別に愛撫を止めて欲しいからそう言ったのではない。
そんなことくらい彼も当然理解しているだろう。
愛撫する手が二本に増えて、片方の手で秘裂へ指を挿入し、もう片方の手で陰核を摘み上げて刺激して快感を与える。
秘部からは絶えず愛液が垂れ、薄い茂みは濡れそぼっている。
勿論、それだけでも十分気持ちいいが、やはり乳房が気になる。だというのに、何時まで経っても彼は胸には手を触れない。
とうとう我慢出来なくなり、自ら乳房に触れ乳頭を扱こうとしたのだが、寸の所で彼の手に止められてしまう。
「アニス、嫌なのではなかったのですか?」
「うぅぅ…」
「…ちゃんと言って下さらないと解りません。アニス、どうして欲しいのですか?」
「む、胸…さわって…」
恥ずかしそうに小さな声でそう言うと、カルダモンはぺたりと汗ばむ彼女の乳房に触れる。触れるだけ。
「ちょっと…」
「触りましたよ」
「そうだけどっ、違うのぉ…」
切なげな声で訴えても、彼は触れた手で何もしてこない。
焦らして、焦らして彼女の口からどうして欲しいのかを逐一言わせるつもりなのだろう。
くつくつと耳元で笑う彼の声が腹立たしいのに、逆らえない。
「貴女の言葉通りにしますから、どうして欲しいのか言って下さい」
そんな事を言われても、答えられず黙りこくっていると耳たぶを甘噛みされて、気の抜けた声が出た。
彼女が全く抵抗出来ないでいるのをいいことに好き勝手に悪戯をし続ける。
首筋に噛み付き、吸い付き、赤い痕を残す。首筋、肩、腕、と痕を幾つもつける。
「んんっ…胸、揉んでっ…」
「それから?」
「…乳首…擦って…さ、さっきみたいにしてぇ!」
口の端を少しばかり吊り上げて笑うと、彼は優しい手つきで彼女の両方の柔らかい乳房を揉みしだく。
そして言われた通りに乳頭を指で扱き、引っ張り、潰すように強く摘む。
弱いところを執拗に責められてアニスは嬌声を上げて、
恥ずかしいのか興奮しているのか顔は赤いが、これは彼女自身が望んだことである。
口の端から涎を垂らし、瞳はとろんとして恍惚の表情を浮かべている。
「気持ちいい?」
猫が甘えるように彼の体に擦りつき、こくこくと頷いて返事をする。
カルダモンはアニスの体を持ち上げ、自分の上に跨がらせる。
興奮して硬く、熱くなっている男性器がすっかり濡れそぼっている秘部に密着し、
それが脈打つ度にぞくぞくする。これだけで達してしまいそうだ。
「いれるの…?」
「いえ、そうですね…ではまず、口でして下さい」
そう言う彼の言葉は頼む口調ではあるものの異論を許さない命令である。
ゆるゆると腰を持ち上げて、仰向けに寝転んでいる彼の足元にちょこんと座る。
早く、と促されて彼の股間に顔を近付け、恐る恐る男根に触れる。熱い。
舌でちろちろと舐め、ちうちうと吸い付く。鈴口を舌先で刺激すると、彼の口からほんの少し声が漏れた。
「お上手ですよ、アニス」
手で彼女の頭を撫で、さらさらした髪を弄って遊ぶ。鮮やかな紫色の綺麗な髪。
奉仕する彼女を穢して自分のものにしたくなる。
口に咥えて吸い付き、皮の中にまで舌を滑り込ませ、舐め上げて更なる快感を与える。
口内に溜まった唾液が口の端から零れ落ちる。
根元まで咥え込んで上下運動すると、喉の奥にこつこつと当たり苦しいが、彼も感じているようで段々と息が荒くなる。
「…っ、それくらいでいいですよ」
十分に硬くなった男根を口からゆっくり引き抜いた。涎まみれになっている彼女の口元をシーツで拭う。
はあはあと荒い息で呼吸するアニスをゆっくりと寝かせ、その上に覆いかぶさる。
優しく口付けを落とすその一方で秘部に手を延ばし、秘裂に指を挿し入れると、小さく彼女の体が震えた。
「ちょうだい…?」
切なそうな声で誘うが、なかなかカルダモンは応じず指で愛撫を続けるばかり。
秘裂に指を抜き差しして、わざとぐちゅぐちゅと卑猥な音を立ててアニスの羞恥心を煽る。
挿入した指で膣内を引っ掻き回すと、絶えることなく溢れ出てくる愛液が指に絡み付き、抜くとつーっと銀色の糸を引く。
更に挿入する指の本数を増やし、膣内を好き勝手に暴れる。
膣壁を爪で引っ掻いてやると、彼女は一際高い声を上げ、膣をきゅうっと締め付けた。
「イキました?」
赤い顔を更に赤くし、それを見られたくないと両の手で顔を隠し、こくこくと何度も頷く。
そんな彼女が愛おしくて、手を退けてぎゅっと閉じた瞼に口付ける。おずおずと目を開け、見詰め合う。
「ほしいの…い、言わないと…だめ?」
「はい」
さも当然、と言わんばかりに微笑む彼を引っ叩いてやりたいが、それでも彼が愛おしい。
「ぅ、お…おちんちん…ちょう、だい」
泣きそうな顔になりながらも懇願する彼女の姿を見て、えも言われぬ興奮を覚える。
彼女の脚を掴んで股を開き、男根を秘裂に擦り付けて焦らす。
待ち侘びる彼女の視線に気付いて、ふう、と息を吐いた。
「いれますよ」
十分に濡れて受け入れる準備が整っている膣は難無く男根を根元まで咥え込んだ。
抜けるぎりぎりまで引き抜き、勢いよく打ち付けると、堪らず嬌声を上げる。
抜き差しを繰り返しながら、充血した陰核を摘むとびくんと体が大きく震えた。
「っふ、あっあっ、あ、あ」
互いの接合部を押し当て、膣内で性器をぐりぐり動かすと更に蜜が零れ出し、シーツに染みを作る。
狭い膣内を男根がごりごりと押し広げながら行ったり来たりする度にアニスの口からは甘い声が漏れる。
彼女の弱いところを突くとびくびくと体を震わせ、身をよじるが、秘裂は男根を離したくないとしっかりくわえ込んでいる。
何度も何度も打ち付けていると彼女の声は切れ切れになり、限界が近いことを伝える。
「ふぅっ、んぁっ…ひ、あぁん、あ、あ、あ、あああっ」
大きく高い声を上げる彼女は瞼を固く閉じ、狭い膣内を締め付け更に狭くする。
それに堪らず達しそうになるのを我慢するように、脚を掴んでいる手に力を込めた。
「っく…はあっ」
達する直前に秘裂から男根を引き抜き、彼女の腹部辺りに精液を撒き散らした。
上気してほんのりと赤く染まった彼女の綺麗な肌を白濁色の粘液が汚している。
何か拭う物を、と思って周りを探したが無かったのでシーツで拭いた。
はあはあと荒い息で呼吸するアニスの髪を撫ぜる。汗をかいて前髪が額にぺたりと張り付いている。
「綺麗にしてもらってもいいですか?」
最初、彼女は何のことか解らず首を傾げたが、指で指し示すと恥ずかしそうにしながらも無言で頷いて了承した。
射精したばかりだというのにまだ硬い性器に優しく手を添えて、愛液と精液で汚れた男根を舌で舐めて綺麗にする。
鈴口をちろちろと舌先で舐め、更に口にくわえて舐め回す。
尿道に残っている精液を吸い出そうとして強く吸い上げる。そのように刺激していると男根は更に硬くなってきた。
もう十分だろうと判断したのか、奉仕を止めて荒い呼吸を整えている。
「…さてと」
一息ついたカルダモンはアニスの体をひょいと持ち上げて、うつぶせにした。
そして腰を持ち上げて尻を突き出した体勢にさせた。
「ふぇ…ま、まだするの?」
「ええ、そのつもりですけど?まだまだやってない体位が幾つもありますから」
「まだまだって…どれくらいする気よ?」
「満足するまでです」
きっぱりと言い放つ彼の言葉はあまりにも非情過ぎる。あれと、これと、と指を折って数えながら最低何回かを数える様子を見て、
アニスは自分の背中に冷や汗が流れるのを感じた。
「今までの分もありますし…」
何回するつもりか問いただしたいが恐ろしくて聞くことが出来ない。
「では、いただきます」
ぺしっと柔らかいもので叩かれた。というよりも、鋭い爪で引っ掻かれた。ふわふわもこもこ猫パンチ。
これが案外痛かったりする。
「…タマ?」
自分に寄ってくる猫は一匹しかいない。ミロスにいた闇の商人から譲り受けた猫だ。
タマは昼間は家の外で遊んでおり、御飯の時間になると帰ってくる。
枕の横に置いてあった眼鏡をかけ、窓の外を見てみると既に日は沈んでいた。
何時まで経っても飯を寄越さないので、どうやらタマは飯の催促をしに来たらしい。
「っくしゅん」
肌寒くてくしゃみが出た。見てみると裸で眠っていたことに気がついた。下着の一枚も穿いていない。
普段はちゃんと服を着て眠るのに、どうして今日は一枚も着ていないのだろうと考えても答えは見つからない。
「ん…」
自分以外の声が聞こえたので見てみると女性が一人眠っていた。勿論、裸で。
当然、彼は現在の状況が全く理解出来ない。だというのに、頭の片隅には彼女を抱いた記憶がある。何度も、執拗に。
「ん…ふぁ…おはよう…」
目を覚ました彼女は寝ぼけ眼でカルダモンを見て、暢気そうな声でそう言う。彼女の体には所々赤い痕がついている。
素っ裸でいるというのに彼女は身を隠そうともしない。寝ぼけているからそこまで頭が回らないのだろうか。
「おはようございます…夜ですけど。あの、アニス…」
「…なに?」
「その、何回しました?」
「…自分でしたことくらい、覚えていなさいよ。あ、あと…」
未だに目はとろんとして眠そうな顔の彼女は少し頬を赤くした。
「一度に何回もするのは…その、やっぱりしんどいから…ええと、言ってくれれば…いいのよ?」
「へ?何がですか?」
「だから!…その、え、えっち…し、したかったら…」
そう言ってから彼女は赤い顔を更に赤くして、何言わせんのよバカー!とか言いながらぽかぽかと彼の胸板を叩く。
ずれた眼鏡を元の位置に戻して、顔が赤いのを見られないように彼女を腕の中に閉じ込め、耳元で小さな声でありがとう、とだけ言った。
触れるだけのキスをして、お互いに照れくさそうに頬を赤く染めながら見詰め合う。
「じゃあ、アニス…その」
「却下」
「な!?まだ何も言ってないじゃないですか!」
「あんたどれだけすれば気が済むのよ!?もうこっちは足腰立たないのよ!もう無理、絶対無理!」
アニスはそう言うとぷいとそっぽを向いてベッドに寝転んだ。
カルダモンはアニスの体を抱いて何やら頼み込んでいるが、アニスは全く聞く耳を持とうともしない。
そんな二人の様子を眺めながらタマはにゃあ、と鳴いた。
△月◎日
今日はユーカリちゃんと一緒に媚薬を造ったのだ。
多少のアクシデントはあったけど、終わり良ければ全て良し、なのだ。
薬の効力の程は結局よく解らなかったけど、アニスちゃんとカルダモンちゃんの仲が進展したから気にしないのだ。
ユーカリちゃんがヤケ酒を飲んでいたのに少しだけ付き合って、潰してやったのだ。
~ヴァニラの日記より
おしまい
最終更新:2013年05月04日 23:06