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・2021時代
・導入部分、エロ無し
・侍♂・(福山声)×ルシェ♀(竹達声)を予定

――ムラクモ13班――

西暦2021年、日本においてその名を知らない人間はほとんどいない。
東京を中心に各地を侵攻したドラゴン達を、一匹残らず殲滅してみせた人類の希望。
子供たちはその武勇伝に目を輝かせ、13班に助けられた者たちはただただ感謝の言葉を述べる。
そんな、英雄と言っても過言ではない13班ではあるが……

「ええい、鬱陶しい!」

現在の構成員が、侍の青年ひとりだけであるということは、一部を除いてあまり知られていない。
僅か1年で再来した無数のドラゴンと魔物を屠っているのも、彼一人だけだと言われても、一般市民はそれを信じることはできないだろう。

「……ふん、その程度か、ドラゴン。俺一人にも勝てぬようでは……ぐっ……」

その唯一の英雄が数匹のドラゴンを切り伏せる度に、瀕死の状態に陥っているなど、さらに信じられないはずだ。

「……一度帰還して、立て直すか」

死ぬつもりはなく、しかし幾度となく死の淵に立つ青年――レオンはかつての13班のリーダーであった。
かつての彼の仲間は――もうこの世にはいない。
昨年の戦役の元凶であった真竜ニアラとの死闘で、彼らはその命を散らせ……
唯一生き延びたレオンもまた重い後遺症が残り、それでもなおこうして再び竜を屠り、新たに現れた真竜の首を狙っているのだ。


※ ※ ※ ※ ※


「俺、いつか絶対13班に入ってみせます!」
「ふん、無理な話だ。貴様が俺の領域に達することなど、未来永劫不可能なのだからな」

「おいレオン、お前また一人で狩りに行ってたのか? あんまり無茶すんなよな」
「誰に言っている? 力無き者を同行させたところで足手まといなだけだ。俺に余計な遺体回収をさせろというのか?」
「確かに俺たちじゃあせいぜい魔物の駆除が精一杯だが……
 ほら、最近はS級の力を持った新人ムラクモが何人か13班に志願しているっていうし。
 この前すれ違った奴は色々すごかったぞ。なんでも歌って踊れて戦える、ちょっとうるさいアイドル――」
「必要ない」

「お、噂の13班を発見! どうだい、戦力増強にこのスーパースターである僕を――」
「帰れ」

疲労を全く感じさせない足取りで、レオンは拠点である国会議事堂を歩く。
かけられる声は早々に切り捨て、向かうのは自室。
人で溢れかえるこの議事堂において、唯一気を張らずに済む場所だ。

「ふぅ……」

部屋に入り、扉を閉めると同時に大きく息を吐き出す。
やっと一人きりになれたと、全身に込めていた力も抜く。

「まだ……本調子には程遠いな……」

押し寄せるは、尋常ではない疲労感。
任務に復帰して以来、こういったことは日常茶飯事であったが、未だ慣れることはできないでいた。
真竜との戦いで負ったダメージは思いのほか深刻であり、今出せる力は当時の半分以下だろう。
その病み上がりの身体で、単独で雑魚はおろか帝竜まで相手どらなければならない。
かつて戦った叫帝竜と同じように、手負いであった晶帝竜にとどめを刺すのさえ一苦労した。
そんな苦労も知らず、人々は帝竜が倒れたことを喜び、『13班なら大丈夫だ』と期待を寄せる。
それを裏切るわけにもいかず、人々の前では常に気を張り、傲慢なほどに己の力を誇示する。
連日これでは、心身共にくたびれて当然である。

「弁当は……今日は無いか」

部屋の左隅に設置されたテーブルをみやるが、特にめぼしいものはない。
ムラクモの仲間からの差し入れは密かな楽しみであったが、なければないで礼を言いに行く手間も無い。
そう考えたレオンは、一気に重たくなった身体で最終目標地点へと向かった。
ふっかふか……というわけでもないのだが、何故かやすらぎ眠れる寝台へと。

「少し仮眠をとったら、いい加減にあの砂漠のドラゴンを殲滅せねばなら……ん!?」

ふとんをめくりあげた瞬間、レオンの動きはぴたりと止まってしまった。

「すぅ……すぅ……」

そこには、すでに先客がいたのだ。
穏やかな寝息をたてて眠る、白銀髪の少女が。
完全に無防備であり、短いスカートからは柔らかそうな脚やら、さらにその奥地までもが覗き……

「す、すまん! 部屋を間違えた!」

程なくして、掴んでいたふとんを放り投げ、レオンは凄まじい勢いで少女の部屋を飛び出した。
かつて奥義を会得するために戦った兎以上に、文字通り脱兎の如く、なりふり構わずに、だ。
その様子に、近くを通りかかった作業班の面々が何事かと驚いているが、それを気にかける余裕もない。

(お、俺としたことが、部屋を間違えるとは……!
 いくら疲れていたとはいえ、なんという体たらくだ! 俺は一体、どこの部屋と間違えた?
 フロアの右隅……という点においては問題ない。ということは、階層を間違えたのか!?
 信じられん……どこまで抜けているのだ俺は……ん?)

頭を抱え、飛び出した部屋の扉にかかったプレートを見てみる。



         【ムラクモ13班本部 許可のない者の立ち入りを禁ずる】



間違いなく自室だった。

「貴様あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

突然飛び出してきたかと思えば、今度はそれ以上の速さで、叫びながら部屋に突入。
レオンの奇怪な行動に、作業班の面々は頭にさらに疑問符を浮かべるが、彼らの疑問に答えてくれる者は誰もいない。
本人に聞くのが一番手っ取り早いが、修羅のような形相且つ、帯剣した彼に迂闊に近づいて貫付けされてはたまったものではない。
今見たことは忘れようと、作業班はそれぞれの仕事に戻る。

そんな作業班の優しさなぞ知る由もなく、レオンはずかずかと寝台に近寄っていた。

「むにゅ……」
「く……」

そこには相も変わらず少女が気持ちよさそうに眠りこけていた。
悪意など微塵も感じ取れず、ともすれば子供のようなその寝顔は、思わず起こすのを躊躇ってしまうほどである。
とはいえ、レオンが部屋を間違えたわけでもなく、事実少女が眠るこの場所こそがレオンの寝床なわけで。
僅かに良心が痛んだが、きつい戦闘から帰還した身体はもっと痛んでいる。
ここで休まねば、自分は倒れてしまう。風呂を沸かそうにも燃料は底をついている。

もし、この場に第三者がいたならば、きっとこう言うだろう。
『大人しく別のところで寝ろ。3つ用意してあるんだから』と。
本来三人一組で行動することを想定されている13班。
建築班の計らいで、その居室にも当然3つの寝台と、僅かながら各人用のテリトリーも確保されている。
……のだが。
生憎とこの青年は、枕などが変わると寝付けなくなる面倒な体質だったのである。

「ええい、何者だ貴様は!?
 俺の崇高なる休息を妨害するとは、大した度胸だな!?」
「ふみゅ!?」

心を鬼にし、『起こす』と決めたレオンの行動は早い。
抜刀時のような力強さで、マットレスを鷲掴み。
居合時のような素早さで、それを一気に引き抜く。
かつて披露したテーブルクロス引き芸を応用した、神業である。
当然、突然そんなことをされた少女はたまったものではない。
寝心地は布地から一気に骨組みの冷えた金属へ、しかも枕まで奪われて後頭部を強打。
彼女はなんとも最悪な目覚めを迎える結果となった。

「いつつ……な、なんなんですかぁ、一体!?」
「なんだとはこっちの台詞だ!
 この部屋に入ってもいいのは、弁当の差し入れか緊急事態の時だけだ!
 だというのに、弁当は無し! 暢気に眠り込んでいた貴様が緊急の要件を抱えてるとは思えん!
 とっとと――っ」
「あ、お弁当ですか? すぐに支度しますね!」
「な、おい貴様!?」

頭をさすりながら起き上がった少女は、起きるなりすぐに表情を変えて調理場へと駆けていく。
あまりの会話の噛み合わなさにレオンは頭をおさえ、少女を止める機会をも失ってしまった。
実のところ、会話の噛み合わなさ以上に、少女の頭部にあった――獣の耳に目を奪われたことの方が大きかったのだが。

(あの耳は……)

勝手に部屋の調理器具まで使い、本格的に弁当の作成にとりかかった少女はもはや止められない。
一瞬の隙から追い出すチャンスを無くしたレオンは、仕方なくその少女の後ろ姿を眺めることにした。


※ ※ ※ ※ ※

「でひまひたー!」
「味見で舌を火傷する馬鹿がどこにいるというのだ……いや、目の前にいたか。
 とにかく、だ。これを食べたらすぐに俺の部屋から――!?」

この食料難の時代に、用意された食事を廃棄するほどレオンは馬鹿ではない。
さっさとたいらげて、さっさとこの謎の少女を追い出そうと考えていたのだが、彼はテーブルから立ち上がることができなくなってしまった。

(う、美味い……だとぉ……!?)

その味は、凄まじい衝撃だった。
確かに、材料はそれなりにいいモノを使っているはずだ。
各地の特選品というわけではないが、入手難易度を考えれば一流の食材と言って相違ない。
一般市民や自衛隊ですら、食事のほとんどはレトルトや缶詰の類なのだから。
問題なのは、この食材を使って自分がかつて料理した時と、あまりにも味が違いすぎることだ。
自分が作った時は、全て一流の食材だからと油断したのも大きかったが、出来上がったのは……
 ● 
こんな感じのブツだった。もう少し後ろが尖がれば、魔物と見間違えるレベルの代物だった。
それがどうして、こんな立派な料理に化けるのだろうか?

「……おい、この料理……まだあるか?」
「んー、まだありますけど……これ以上食べるとお弁当に詰める分が無くなっちゃいますよ?」
「構わん。元から弁当を持っていくつもりではなかったからな」
「そうですかー。なら、お夕飯ってことにしちゃいます? すぐに追加のおかずも作りますから」
「そうだな。さすがにこうも戦い詰めだと腹も……って違う!」

危うく当初の目的を忘れかけ、出された味見分の料理を完食すると同時にレオンは正気に戻った。

「大丈夫です! お塩と砂糖を間違えるような初歩的なミスはしてませんよ!」
「そこじゃない! くそ、何故こうも俺の思い通りに会話が進まんのだ……!
 貴様、一体何者なのだ。この俺の部屋に不法侵入した以上、ただでは済まさんぞ!」
「あ、そういえば自己紹介がまだでしたねぇ。私の名前はクランといいましてー――」
「そうか。では問おうクランとやら。見たところ君はルシェのようだが、ならば来る部屋を間違えている。エメルの部屋は――」
「エメル総長より直々に、本日づけでムラクモ13班に所属することになりましたー!
 というわけですので、以後よろしくお願いします! でも、13班の部屋はここだと思ったんだけどなぁ……」
「なん……だと……!?」

間の抜けた声と、苦虫を噛み潰した表情から生み出される苦悶の声。
全く異なる声が漏れると同時に、レオンは刀を持って再び部屋を飛び出した。
向かう先は、ムラクモ本部――総長エメルの場所だ。

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最終更新:2013年05月10日 06:37