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Paradise Lost(後編) - (2009/03/17 (火) 21:11:25) の最新版との変更点
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*Paradise Lost(後編) ◆9L.gxDzakI
――逃げろ。
全神経が警告を発する。
人間の理性などではない、本能的な感覚が、絶え間なくフェイトに撤退を促し続けている。
この存在には勝てないと。どう足掻いても、こいつを倒すことは不可能だと。
これほどまでに絶望的な勝負になど、挑んだことは今までなかった。
闇の書の闇との戦いでさえ、仲間達と共に戦うことで、勝利をこの手に掴むことができた。
だが、今のこの状況はどうだ。
こちらが一方的にスタミナを削られているだけで、相手には未だ一撃も通っていないではないか。
あの手この手を駆使しても、こいつは容易くその上を行く。掛け値なしに強すぎる。
それこそ前述の闇の書の闇のような、ずば抜けた力を持った存在とは確かに戦ってきた。
だが少なくとも、魔導師に限定するのであれば、この龍は今まで戦ってきた、どんな相手よりも遥かに強い。
(強い……?)
と。
咄嗟に浮かんだ言葉を、思い直す。
強い。
そのたった一言が、彼女の記憶を揺さぶった。
今自分は、こいつを強いと思ったのか。こいつを今まで戦ってきた、どの相手よりも強いと思ったのか。
――これが私の全力全開!
強さ。
真っ先に浮かんだのは、あの朝焼けに照らされた海と空。
白きドレスをはためかせ、天使の翼で風を掴み、放つ光は桜の輝き。
桃色と黄金の杖を携えた、茶髪の少女の姿が、真紅の瞳の中に蘇る。
星々の煌き――スターライトブレイカーの破壊力は、今でもありありと思い出すことができる。
フェイト・テスタロッサにとっての最強とは、紛れもなく高町なのはだった。
だがそれは、単純な砲撃の威力だけでも、ましてやその身に秘めた魔力量だけでもない。
ジュエルシードを巡る戦いを経て、ひよっ子だったあの少女は、どんどん成長していった。
ほんのささやかだった想いが、戦いの中で磨かれていく度、より強大な不屈の意志へと姿を変えていった。
英才教育の果てに優れた力を得た自分が、ただの人形でしかなかったにもかかわらず、だ。
友達になりたい。
そう語るなのはの瞳は、常に真剣に自分を見ていた。
どんな熾烈な戦いにあっても、決して自分から逃げなかった。
高町なのはの強さとは、すなわち身体と心の強さ。
絶大なまでの戦闘力と、それに見合った鋼の精神。その2つの融合こそが、すなわち理想的な力の形。
故に高町なのはとは、フェイト・テスタロッサにとっての最強だった。
だが、目の前の龍はどうだ。
いかに圧倒的な攻撃力、圧倒的な防御力を誇ろうと、こいつにはまるで心がない。
ただ獣のように下品に吠え、ひたすらに暴れまわっているだけだ。
こいつに真の強さなどない。
こいつが強いはずがない。
真に強いのはなのはなんだ。
お前よりもなのはの方が強いんだ。
そう。
この世界の、誰よりも。
(――なのはがいちばんつよいんだっ!!!)
咆哮と共に、飛翔する。
「アルカス・クルタス・エイギアスッ! 疾風なりし天神ッ、今導きのもと撃ちかかれ!」
本能が紡ぐ呪文の言葉。
もはや自分が何事を叫んでいるのかも認識できぬまま、遥か天空へと上昇していく。
襲い掛かる破滅の熱量。追撃の爆裂疾風弾。
狂気じみた叫びを上げながら、しかし的確に回避する。
空振りの熱量は、フェイトの背後のデパートへと命中。
猛烈な破壊力がコンクリートの壁を舐め回し、深々と縦一文字の傷跡を刻み込んだ。
「バルエル・ザルエル・ブラウゼル!! フォトンランサー・ファランクスシフトォッ!!」
こんな奴なんかに負けていられない。
自分はなのはのために戦っている。
世界で一番強い、高町なのはの想いと共に戦っている。
なのはに支えられている自分が、こんな奴に負けることは許されない。
それはなのはの最強を、自ら否定することだ。
「負けないよ……」
瞬間、停止。
ぼそり、と呟きながら。
陽光を受け、眩く輝く金髪を、更なる光が照らしていく。
ぽぅ、ぽぅ、ぽぅ、と。
足元に顕現するミッドチルダ式魔法陣を中心に、生み出されていくのは無数のスフィア。
金色の魔力が形成する球体が、1つ、また1つと浮かんでいく。
先ほどまでの雄たけびとは、うってかわった静寂の中。
不気味なまでの静寂と共に、雷撃の弾丸が群れを成す。
「私は負けないよ――なのはぁッ!!!」
フォトンランサー・ファランクスシフト。
決意の絶叫と同時に放たれたのは、爆音響かせる轟雷のスコールだ。
永遠に消えさることなき決戦の記憶。なのはの収束魔法を食らう直前に放った、あの日の自分の全力全開。
魔法陣上に展開された雷撃砲台フォトンスフィア、計38基。
それら全ての連射性能、秒間7発。攻撃時間、4秒。
総合計弾丸数、実に1064発の一斉射撃。
絶え間なく響く撃発音は、1つに重なり雷鳴となる。雲霞のごとき迅雷は、さながら地上の流星群。
撃つ。撃つ。撃つ。ただひたすらに撃ち続ける。
この身に宿ったなのはの想いを、白き暴君龍へと叩き込むかのように。
光が視界を遮ろうと、煙が巨体を隠そうと、攻撃の手を緩めることはしない。
全ての弾丸を撃ち尽くすまで、一片の容赦もかけはしない。
やがて、それも、終わる。
展開した全フォトンスフィアの全弾が射出され、遂に攻撃の手が止まる。
消えゆく魔法陣。消えゆく砲台。眼前に広がり続ける黒煙。
これで終わりか。
総勢1064発の魔力弾、食らおうものならひとたまりもあるまい。理屈ではそうだ。
だが、この胸に残る違和感は何だ。
この煙の奥からちりちりと刺すような、得体の知れぬ嫌な予感は一体何だ。
(――来る!)
《グオオォォォォォォォーンッ!》
すなわち、殺気。
この雷撃の雨の中、微塵も衰えることなき獰猛なる敵意。
百万のナイフにも勝る絶叫が、黒きカーテンの奥より襲いかかる。
闇の煙を牙で引き裂き、巨大なるドラゴンの大口が迫る。
開かれた大顎には、白き光輝が未だまとわりついていた。
なんという暴力的な力か。至近距離で放った滅びの爆裂疾風弾が、全弾を相殺したとでも言うのか。
それでも、うろたえている暇はない。
ほぼゼロ距離まで迫ったブルーアイズの両顎が、フェイトの天地より迫り来る。
上下からの挟み撃ち。すなわち、丸のみの態勢だ。
「くぅっ!」
オーバーフラッグを支柱とし、口を塞ぐ。
頭上を見上げれば、眼下を見下ろせば、そこに並ぶのは剣呑なる針山だ。
だが真に恐るべきは、天より地より襲いかかるその顎の筋力。
みしみしと軋む鋼鉄の銃身。これが生物の圧力なのか。
上から下から殺意の刃が、強靭な筋肉と共にじりじりとにじり寄ってくる。
「なめるなぁッ!」
ぼん、と。
手を突き出した先で、爆発が起こった。
《ギャアァァァァァァァッ!》
悲痛な絶叫と共に筋力が緩む。長い首を振り回し、のたうち回る口腔から、一瞬の隙を突いて脱出する。
いかに堅牢な青眼の白龍と言えど、鱗のない体内に攻撃を食らっては、たまったものではない。
至近距離からその喉元目がけ、魔力弾を叩き込んだのだ。
強烈な加速と共に退避。口から煙を上げるドラゴンと距離を取る。
ここまでの戦いの中で、初めてフェイトの攻撃が直撃した。今のは精神的に相当答えたはずだ。
本気の一撃が来る。先ほどのような尻尾の攻撃などではない、あの白き大砲が来る。
怒りの炎を燃やす瞳が何よりそれを雄弁に物語っている。
蹂躙されるだけの雑魚ごときが、ふざけた真似をしてくれたな。
この一撃で終わりにしてやる。その血肉の一片までも、我が最大の一撃で消し去ってやる。
身体をのけぞらせ、大口を開け、白熱の光を迸らせ。
滅びの爆裂疾風弾を、フェイトに向かって叩き込むだろう。
そしてこの一撃に対し、フェイトが取った対応は――反撃。
まっすぐに向けられた銃口は、それも正面からの真っ向勝負の構えだ。
(もう、よけ続けるだけの余力がない……)
ここに至るまでに、フェイトは大量の魔力を消費していた。
常に最大戦速を維持し続けた飛行魔法、死に物狂いで振るい続けた魔力刃、そして先のファランクスシフト。
加えて、プレシアによる制限もある。
限界まで酷使し続けたリンカーコアには、もうほとんど魔力が残されていないのだ。
このまま攻撃を回避したところで、遠からず自分は倒れるだろう。
ならば一か八かの正面衝突で、てっとり早く決着をつける。
顕現。
オーバーフラッグの先端に、黄金の魔法陣が展開された。
「はぁぁぁぁ……っ……!」
収束される魔導の力。発動されるは砲撃魔法、プラズマスマッシャー。
己が四肢の末端に至るまで、身体中余すことなく、全身から魔力を絞り出す。
もっとだ、もっと。鋼の砲塔に力を込めろ。
この身が粉々に砕けようと、砂と消えようと構わない。あの大いなる龍を、この一撃で叩き落とせれば。
終焉は訪れる。
やがて、全身を襲う脱力感。五体全てから、生命力がごっそりと抜け落ちる感触。
魔力を使い果たした。己が持てる力のほぼ全てを、この身から出し尽くしてしまった。
もはやこの身に残された力は、砂粒ほどにも満たぬだろう。
この一撃を放った頃には、飛行魔法さえも維持できなくなり、そのまま落下するだろう。
されど、チャージは完了した。
必殺のプラズマスマッシャーを形成するには、ぎりぎり十分な量の魔力が確保できた。
だが。
「もっとだ、もっと……!」
まだ足りない。
ただのプラズマスマッシャーでは、殲滅の白光を迎え撃つことはかなわない。
がしゃん、がしゃん、がしゃん、と。
オーバーフラッグに装填されたカートリッジをフルロード。圧縮魔力を解放し、更なるエネルギーを注ぎ込む。
恐怖はある。
この雷の槍をもってしても、青眼の白龍は仕留められないのではないか。
あのおぞましき破滅の光をぶつけられ、髪の毛一本残らず消え去ってしまうのではないか。
自分だけでは、勝てない。
殺意の青眼をぎらぎらと輝かせ、今まさに白き灼熱を放たんとする、あの白き龍相手には。
弱い自分だけの力では、奴を倒すことなどできない。
(だから、力を貸して……)
故に、祈る。
遥か彼方遠き世界で、自分を待ってくれている人々へと。
闇の書事件で幾度となく激突し、互いに腕を磨き合った、桜色の髪の好敵手。
PT事件を経て孤児となった自分へと、帰る場所を与えてくれた、黒衣に身を包みし義兄。
そして、どんな時でも自分を支えてくれていた、優しく愛しい1人の少女。
皆との日々を取り戻すために。
全員で元の世界へと帰るために。
明日をこの手につかみ取るために。
最期の瞬間に向けてくれたあの笑顔を、永遠のものにするために。
放つ閃光の槍が、三つ又の大矛へと変わる。
力を貸してほしい。
わたしに最後の力をかして。
わたしに最後の勇気をかして。
みんなをまもるためのちからを。
みんなをころすためのゆうきを。
ゆうきの、ちからを――
「――トライデントォッ!! スマッシャァァァァァァ――――――!!!」
砲撃が、割れた。
解放された魔力の奔流は、発射と同時に三つ又に分かれ、そのままブルーアイズへと襲いかかる。
金色のトライデントの形を成した雷撃が、爆音と共に白熱と衝突。
黒き少女と白き龍の中間距離で、黄金と白銀の光が真っ向から激突する。
迸るエネルギー。瞬くスパーク。吹き荒れる衝撃波。
空気が焦げ付く臭いを感じた。風景すら歪む力場を感じた。
極大と極大。
トライデントスマッシャーと滅びの爆裂疾風弾。
2つのエネルギーが拮抗し、世界を激しい音と光で満たす。
負けるものか。
シグナムの、クロノの、なのはの想いを込めたこの一撃を、お前などに返されてたまるものか。
このまま押し通す。
私はこの意志を貫き通す。
なのはのいてくれたあの優しい日々が、いかに尊いものであったか。
証明する手だてを、他に知らないから。
ならばこのたった一撃の砲火に、己が命の全てを賭ける。
絶対に勝つんだ。
勝って全てを取り戻すんだ。
「……なのはああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッッッ!!!」
――この時、フェイト・テスタロッサには1つの誤算があった。
普段通りの冷静沈着な彼女ならば、絶対に犯すことのないはずの判断ミスが。
ここにいる十代達の世界とも違う、もう1つのデュエルモンスターズの世界。
同じ砂の荒野の中で、同じデュエル・アカデミアを背後にして、されど決して同じではない世界で。
成長した高町なのはとフェイト・T・ハラオウンは、目の前のものと同じ白き龍と、熾烈な激戦を繰り広げていた。
自身の持てる全力を引きだす、レイジングハートのエクシードモード。
あの白銀の龍鱗纏いし魔物とも、互角に渡り合えるだけの破壊力。
だが裏を返せば、そうでなければならなかったのだ。
フェイトの知るなのはよりも、更に10年以上の研鑽を積み、制限からも解き放たれなければ。
それでようやく五分五分だ。そうでなければ対抗できなかったのだ。
フェイトにとっては、彼女の知るなのはこそが最強だった。そう信じていた。
だが、その認識は誤りだった。
青眼の白龍は、かつてこの場に生きていた高町なのはよりも、遥かに強力な存在だったのである。
滅びの爆裂疾風弾は、ディバインバスターの火力をも凌ぐ。
砲撃・射撃のスペシャリストたる、なのはの砲撃をもってしても、その一撃には及ばないのだ。
であれば、むしろオールラウンダーであるフェイトが、いくら新技を身につけたところで、到底かなうはずもない。
爆裂。
弾け飛ぶ金色の光の向こう、迫りくる銀色の光がある。
フェイトが認識した瞬間には、既に光は視界の全てを包んでいた。
平時ならば決して犯すことのない過ちを、何故彼女が犯したのか。
それは妄執。
高町なのはという存在に対する、狂的なまでの執着心。
その盲信が、その狂信こそが、最後の最後の瞬間に、彼女の瞳を曇らせたのだ。
分かっていたはずの実力差が、記憶の外へと追いやられ、勝てるはずもない勝負へと勇んで乗り出したのだ。
もはや勇気などではない。明らかに無謀と呼ぶべき判断。
持てる魔力を全て飛行魔法に注ぎ込み、全力で戦闘空域を離脱すべきだったのだ。
もしも、彼女にまだ冷静な判断力があったならば。
いいや、彼女がここまでなのはに固執していなかったならば。
皮肉にも、高町なのはへの想いこそが。
誰よりも彼女を想う心こそが。
フェイトを敗北へと導いたのだ。
◆
「駄目っ! 待って、止まって! 止まってよぉ!」
灼熱の激流によって穿たれた、デパートの壁の風穴の傍。
十代の傍らでは、つかさが必至に呼びかけていた。
遥か上空で暴れ狂う、デュエルモンスターズ最上級モンスターへと。
だが、こうなった以上はもう無理だ。
止めることなどできはしない。
デュエルモンスターズのルールにおいては、一度下した攻撃命令を、中断することなど許されていない。
フェイトに一撃を叩き込むまで、ブルーアイズは存分に暴れまわるだろう。
たとえ守るべき主の心が、殺人の事実によって引き裂けたとしても。
そして、遂に決定的な瞬間が訪れた。
「あ……!」
「あ、あぁ……っ」
フェイトの放った砲撃と、青眼の白龍の吐き出したブレス。
空中で激突した2つの波動のうち、滅びの爆裂疾風弾が競り勝ったのだ。
トライデントスマッシャーを引き裂き、幼女の細い身体を呑みこむ、絶大なまでのエネルギー。
次いで発生する、爆発。まごうことなき完全なる直撃だ。
炎と煙の中より落ちる、黒きバリアジャケットの身体。
マントも衣服もずたぼろに引き裂け、髪をまとめるリボンは蒸発し、重力に従って落下していく。
死んだ。
死んでしまった。
攻撃力3000という莫大な破壊力を受け、生きていられるはずもない。
飛行魔法も何も使わず、無抵抗なままに落ちているのが何よりの証拠だ。
万が一生き残っていたとしても、このまま落下すれば確実に死ぬ。
つかさの召喚したモンスターが、1人の少女を殺してしまったのだ。
フェイトの落下が、恐ろしくゆっくりに感じられる。
耳をつんざくブルーアイズの咆哮が、虚しく右から左へと流れる。
そして――見た。
黒光りする銃身を。
眼前で動いたオーバーフラッグを。
その殺意の銃口が、傍らで愕然とする少女へと向けられるのを。
「――危ないっ!」
◆
一体、今何が起こったのだろう。
どうして自分は落ちているのだろう。
どうしてこんなにも身体が痛いのだろう。
砲撃を撃ち合っていたはずの自分が、何故このような状態になっているのだろう。
(ああ……)
燃え散る漆黒のリボンを見た時、ようやくフェイトは思い出した。
知覚の空白の一歩手前、暴力的なまでの白い光が、自分へと襲いかかってきたことを。
負けたんだ。
自分は負けてしまったのだ。
純白の龍王との撃ち合いに、無様にも敗北してしまったのだ。
情けない。最低だ。
己が持てる力の全てを使い、なのはの想いまで借りておいて、それでも勝利が掴めなかった。
誰よりも大事ななのはを貶めるような、最低の敗北を喫してしまったのだ。
《ウオオオォォォォォォォ―――――――――ンッ!》
ああ、忌々しい。
虚ろな視線を動かせば、あのドラゴンが吼えている。
巨大な翼と逞しき両腕を広げ、勝利の雄たけびとやらを上げていく。
役目を終えたとでも言わんばかりに、その身が光となって消えていく。
その咆哮が雄々しくて。その輝きが神々しくて。
忌々しくて、たまらない。
ふと、デパートへと視線が向いた。
そういえば、自分が本来殺すべき相手は、あの純白のドラゴンではない。
確かここの3階に、あの少年少女の2人組がいたはずだ。
殺さなければ。
激痛に苛まれた身体に鞭を打ち、必死にオーバーフラッグを持ち上げる。
砂粒ほどの魔力をひねり出し、一撃分の弾丸を形成する。
ターゲット、ロックオン。狙うは紫の髪のセーラー服の少女。
顔面直撃コースへとセット。このトリガーが引かれれば、まず間違いなく即死だろう。
意識が急速に遠のいていく。限界が近いのかもしれない。
だが、止まってたまるものか。自分は殺さなければならないのだ。
大切な人を蘇らせるために。
意識が途切れようと、この身が死を迎えようと、引き金だけは引いてみせる。
ぐ、と。
指先に力が込められた。
魔力弾の発射される音がする。
朦朧とする意識が消え行く中、最後にそれだけを聞き届けた。
成功だ。すくなくとも、1人殺した。
視界が暗闇へと染まる中、最後にそれだけを確信した。
ばしゃん。
水しぶきの音までは、もう聞こえてはいなかった。
◆
「ぐあ……!」
唸ったのは十代の方だ。
黄金の魔力弾をその身に食らい、苦痛の叫びを上げたのは、しかし十代の方だった。
フェイトが最後の力を振り絞り、凶弾のトリガーを引いた瞬間、彼がその前に立ちはだかったのだ。
未だ震えるつかさへと覆いかぶさるようにし、オシリスレッドの制服の背中で、魔力の弾丸を受け止める。
幸いにも、貫通はしていなかった。
練り上げられた魔力は明らかに少なく、十代の背中に打撲を負わせるにとどまった。
苦痛に顔を歪めながらも、再びフェイトの方へと向きなおる。
落下していたはずの彼女の姿は、もうビルに阻まれて見えなかった。
青眼の白龍の直撃を受け、相当な距離を吹っ飛ばされたフェイトと、このデパートの間には、それなりの距離がある。
加えてここは市街地だ。視界を遮るビルも多い。
にもかかわらず、彼女はこの魔力弾を的中させてみせた。
十代が庇っていなければ、まず間違いなくつかさに命中していた。
恐るべき精神力。さすがはフェイト・T・ハラオウンといったところか。
「つかささん、大丈夫か?」
痛む背中をさすりながら、腕の中のつかさへと問いかける。
しかし、無言。
言葉が返ってくることはない。
ぶるぶると小刻みに震えながら、うわ言のような音を口から漏らすのみ。
そのままどれだけの時が経った頃か。
「殺しちゃった……」
蚊の鳴くような。
「私が、フェイトちゃんを殺しちゃったんだ……!」
震える声が、鼓膜を打った。
「つかささん……」
かけるべき言葉が見つからない。
フェイトを殺したのは、あくまで青眼の白龍だ。
あのままアスファルトに落下すれば、確かに彼女の命は奪われるだろう。
だが、その原因はカードだけではない。あの白き破壊の龍を召喚したのは、あくまでつかさだったのだ。
ブルーアイズに悪意はない。ただ忠実に、主の命令に従ったまでのこと。
であればそれは同時に、つかさこそが殺人者であるということではないか。
自分が助かろうとしたおかげで、1人の少女が死んでしまった。
気弱な彼女の心では、その重みに耐えられるはずもない。
目の前で涙を流す少女に、一体どう言葉をかけろというのか。
(……『死者蘇生』……)
と、不意に、足元に置かれた魔法カードの存在に気づいた。
何もフェイトを生き返らせようと考えたわけではない。むしろその焦点は、あの白銀の暴君龍だ。
つかさが手にしていたはずの青眼の白龍のカードは、いつの間にか姿を消していた。
元々十代が飛ばされていた世界でも、カードの力はデュエルディスクによって発動すべきもの。
カード単体で発動したことによって、命令を実行したカードが消滅したのだろう。
(このカードって、こういう時のために使うものなのか……)
そこへ、先ほど発見した「死者蘇生」である。
恐らくこのカードの効果対象とは、こうして消滅したモンスターなのではないだろうか。
であれば、今このカードを発動すれば、もう一度青眼の白龍を入手することができるのではないか。
今十代が持っている武器は、木製バットと銃剣だけだ。これでは先のフェイトのような、魔導師相手には太刀打ちできない。
ブルーアイズの消滅した今では、正直自分の身を守るだけでもきついだろう。
(だけど……)
それでも、引っかかることがある。
(本当にいいのか? ブルーアイズを復活させて……)
今目撃した通り、あのドラゴンの力は強すぎる。
不用意に使ってしまおうものなら、また新たな死体を生み出してしまうのではないか。
もしまた死者が出てしまえば、柊つかさの繊細な心は、今度こそ粉々に砕け散ってしまうのではないか。
今の十代には、ただ十字架のカードイラストを、眺めていることしかできなかった。
【1日目 昼】
【現在地 H-5 デパート3階】
【柊つかさ@なの☆すた】
【状態】健康、精神ダメージ(大)、錯乱、自責、号泣
【装備】シーナのバリアジャケット@SHINING WIND CROSS LYRICAL
【道具】支給品一式、電話帳@オリジナル、パン×3、プチトマトのパック×2、キャベツ
【思考】
基本:殺し合いを避ける
1.私がフェイトちゃんを殺しちゃった……!
2.メールを返信する
3.フェイトちゃんが帰ってくるまでデパートにいる(早く帰ってきて!)
4.家族や友達に会いたい
【備考】
※十代と和解しました 。
※死者の名前は数名分しか覚えていません(なのはが呼ばれた事は覚えている)。ご褒美の話も忘れています。
※電話帳はあまり役に立たない物だと思っています。
※キングを警戒する事にしました。
※メールの差出人と内容を信用しています。
※十代から禁止エリアの位置を聞きました。
※青眼の白龍@リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)」 を消費しました。
※フェイト(A's)は死んだと思っています。
【遊城十代@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康、困惑
【装備】バヨネット@NANOSING
【道具】支給品一式、んまい棒×4@なの魂、ヴァイスのバイク@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
死者蘇生@リリカル遊戯王GX、木製バット、エアガン、パン×3、レタス、じゃがいも×3
【思考】
基本:殺し合いには乗らない。
1.つかささん……もう1人のフェイトさんも……
2.ブルーアイズを蘇生させてもいいのだろうか?
3.フェイト(StS)を待って事情を説明し、ちゃんと誤解したことを謝る
4.クアットロさんって良い人だなー。
5.余裕があればハネクリボーやネオス、E・HERO達を探す
【備考】
※参加者は別々の世界・時間から参加者は別々の世界・時間から連れて来られている可能性に至りました。
※フェイト(StS)が自分とは別の世界・時間軸から呼ばれていてデュエルゾンビではないと確認しました。
エリオ、万丈目についても断定はしないもののデュエルゾンビではない可能性があると思っています。
※この場にいる2人のなのは、フェイト、はやての片方が19歳(StS)の彼女達でもう片方は9歳(A's)の彼女達だと思っています。
※クアットロを完全に信用しています。
※PT事件の事を大まかに知りましたが、プレシアがフェイトを造った話は聞いていません。
※この殺し合いがデス・デュエルに似たものではないかと考えています。
※殺し合いの中で起こる戦いを通じ、首輪を介して何かを蒐集していると考えています。
※月村すずかの友人(=はやて(StS))からのメールの内容を把握しました。
※フェイト(A's)は死んだと思っています。
――結論から言おう。
死んだと思われたフェイト・テスタロッサは、奇跡的に生還した。
彼女の敗因を誤算とするのなら、つかさと十代の認識もまた誤解だったのだ。
まず、滅びの爆裂疾風弾の命中。
非殺傷設定などない、高位魔導師の砲撃にも匹敵するブレスを食らえば、まず間違いなく即死は免れないだろう。
しかし、フェイトが土壇場で編み出したトライデントスマッシャー――これが生存への最初の鍵となった。
彼女の決死の砲撃と正面衝突したことで、爆裂疾風弾の破壊力は減衰。
ぎりぎりまで威力が弱められたことで、ブレスによる死亡は回避された。
無駄かと思われた最後の抵抗も、ちゃんと意味を成していたということだ。
続いて、落下の瞬間。
砲撃の撃ち合いを行った段階で、フェイトはH-5の東端ぎりぎりにまで移動していた。
そしてブルーアイズの攻撃を食らったことで、そのままエリアの枠を越え、H-6へと吹き飛ばされた。
最後に放った射撃魔法により、十代は彼女を見失ってしまったのだが、この時彼は、そのまま道路に落ちたと思っていた。
だが、その認識は誤っていたのだ。
この時フェイトの真下にあったのは、硬いアスファルトではなく――川。
幼い彼女の小柄な身体にとっては、それなりの深さであった川へと落ちたことで、衝撃が緩和されたのだった。
これら2つの奇跡が重なり、彼女は一命を取り留めることができた。
そして肝心のフェイトは今、川の流れに流されて、砂浜にその身を横たえている。
「……ん……」
金色の睫毛が微かに震える。瞼がゆっくりと開かれていく。
耳に響く穏やかな音は、海鳴でもよく耳にした波の音だ。
身体が濡れている。現在も半分水に触れている。目の前には白い砂がある。
ここがエリアの南西と南東にある、浜辺であるということを認識していた。
そして同時に、自分がまだ生きていたということを認識し、僅かに驚愕を覚えた。
未だに痛む身体へと、ぐっと力を入れて立ち上がる。
これだけの怪我を負ったのに、魔力もほとんど全部使い切ったというのに、よくもまぁ生き延びられたことだ。
(なのはが守ってくれたのかな……)
やっぱり、なのはは優しいな。
のろまな身体をやっとのことで直立させると、そんなことを考えた。
ぱんぱん、と両手で砂を払う。
と、そこで、自分が身に纏っているものが、いつのまにか普段着であったことに気がついた。
バリアジャケットではない。そもそも手にオーバーフラッグがない。
きょろきょろと周囲を見回すと、少し離れた場所に流れ着いていた。
ゆっくりと歩きながら、回収に向かう。まだまだ走れるようになるには時間がかかりそうだ。
身体を引きずって目的地へとたどり着き、鋼の銃身を拾い上げる。
そしてどうやら仕込み刀をなくしてしまったらしいことに気付き、僅かに落胆した。
(ここ、どこなんだろう)
自分と得物の、一応の無事が確認されたことで、フェイトは改めて周囲を見回す。
ここは一体どこなのか。果たして自分が、何故海で倒れていたのか。
現状はまだまだ分からないこと尽くしだ。
何か目印になるものを探し、視線を右へ左へと走らせる。
「あ……」
そして、見た。
広き浜辺のその奥に、鎮座していたその物体を。
黄金と紫色に輝く、超弩級の巨大艦の姿を。
【1日目 昼】
【現在地 I-5 砂浜】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】疲労(大)、魔力消費(ほとんど空)、全身にダメージ(大)、左腕に軽い切傷(治療済み、包帯代わりにシーツが巻かれている)、強い歪んだ決意
【装備】オーバーフラッグ(仕込み刀なし・カートリッジ残量0)@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式、医療品(消毒液、包帯など)、パピヨンスーツ@なのは×錬金
【思考】
基本:皆で一緒に帰る。
1.あの戦艦(=聖王のゆりかご)は……?
2.皆を殺して最後の一人になる。そして皆を生き返らせる。
【備考】
※もう一人のフェイトを、自分と同じアリシアのクローン体だと思っています。
※なのはとはやても一人はクローンなのではと思っています(激しい感情によって忘却中)。
※新庄、つかさは死んだと思っています。
※激しい感情から小さな矛盾は考えないようにしています。追及されるとどうなるか不明。
※なのはが一番強いと思っています。
※トライデントスマッシャーを修得しました。
【全体の備考】
※H-5上空で、トライデントスマッシャーと滅びの爆裂疾風弾による発光現象が起こりました。
周囲1マス以内なら、目撃できるかもしれません。
※デパート3階に、パピヨンマスク@なのは×錬金が落ちています。
※H-6のどこかに、オーバーフラッグの仕込み刀@魔法妖怪リリカル殺生丸が落ちているかもしれません。
【リビングデッドの呼び声@リリカル遊戯王GX】
遊戯王カードの一種。デュエルディスクにセットする事で発動できる。
このロワで消費してしまったモンスターカードを復活させ、再度攻撃命令を下すことができる。
ただし、召喚した本人でなければ、復活させることはできない。
また、単体で使用した時には、戦闘後に復活させたカードもろとも消滅するが、
デュエルディスクの魔法・罠ゾーンにセットしておけば、引き続き復活させたカードを保有することができる。
しかし、このカードが破壊されるなどして、魔法・罠ゾーンから離れた時、復活させたカードは消滅する。
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|~|遊城十代|Next:[[]]|
|~|フェイト・T・ハラオウン(A's)|Next:[[]]|
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*Paradise Lost(後編) ◆9L.gxDzakI
――逃げろ。
全神経が警告を発する。
人間の理性などではない、本能的な感覚が、絶え間なくフェイトに撤退を促し続けている。
この存在には勝てないと。どう足掻いても、こいつを倒すことは不可能だと。
これほどまでに絶望的な勝負になど、挑んだことは今までなかった。
闇の書の闇との戦いでさえ、仲間達と共に戦うことで、勝利をこの手に掴むことができた。
だが、今のこの状況はどうだ。
こちらが一方的にスタミナを削られているだけで、相手には未だ一撃も通っていないではないか。
あの手この手を駆使しても、こいつは容易くその上を行く。掛け値なしに強すぎる。
それこそ前述の闇の書の闇のような、ずば抜けた力を持った存在とは確かに戦ってきた。
だが少なくとも、魔導師に限定するのであれば、この龍は今まで戦ってきた、どんな相手よりも遥かに強い。
(強い……?)
と。
咄嗟に浮かんだ言葉を、思い直す。
強い。
そのたった一言が、彼女の記憶を揺さぶった。
今自分は、こいつを強いと思ったのか。こいつを今まで戦ってきた、どの相手よりも強いと思ったのか。
――これが私の全力全開!
強さ。
真っ先に浮かんだのは、あの朝焼けに照らされた海と空。
白きドレスをはためかせ、天使の翼で風を掴み、放つ光は桜の輝き。
桃色と黄金の杖を携えた、茶髪の少女の姿が、真紅の瞳の中に蘇る。
星々の煌き――スターライトブレイカーの破壊力は、今でもありありと思い出すことができる。
フェイト・テスタロッサにとっての最強とは、紛れもなく高町なのはだった。
だがそれは、単純な砲撃の威力だけでも、ましてやその身に秘めた魔力量だけでもない。
ジュエルシードを巡る戦いを経て、ひよっ子だったあの少女は、どんどん成長していった。
ほんのささやかだった想いが、戦いの中で磨かれていく度、より強大な不屈の意志へと姿を変えていった。
英才教育の果てに優れた力を得た自分が、ただの人形でしかなかったにもかかわらず、だ。
友達になりたい。
そう語るなのはの瞳は、常に真剣に自分を見ていた。
どんな熾烈な戦いにあっても、決して自分から逃げなかった。
高町なのはの強さとは、すなわち身体と心の強さ。
絶大なまでの戦闘力と、それに見合った鋼の精神。その2つの融合こそが、すなわち理想的な力の形。
故に高町なのはとは、フェイト・テスタロッサにとっての最強だった。
だが、目の前の龍はどうだ。
いかに圧倒的な攻撃力、圧倒的な防御力を誇ろうと、こいつにはまるで心がない。
ただ獣のように下品に吠え、ひたすらに暴れまわっているだけだ。
こいつに真の強さなどない。
こいつが強いはずがない。
真に強いのはなのはなんだ。
お前よりもなのはの方が強いんだ。
そう。
この世界の、誰よりも。
(――なのはがいちばんつよいんだっ!!!)
咆哮と共に、飛翔する。
「アルカス・クルタス・エイギアスッ! 疾風なりし天神ッ、今導きのもと撃ちかかれ!」
本能が紡ぐ呪文の言葉。
もはや自分が何事を叫んでいるのかも認識できぬまま、遥か天空へと上昇していく。
襲い掛かる破滅の熱量。追撃の爆裂疾風弾。
狂気じみた叫びを上げながら、しかし的確に回避する。
空振りの熱量は、フェイトの背後のデパートへと命中。
猛烈な破壊力がコンクリートの壁を舐め回し、深々と縦一文字の傷跡を刻み込んだ。
「バルエル・ザルエル・ブラウゼル!! フォトンランサー・ファランクスシフトォッ!!」
こんな奴なんかに負けていられない。
自分はなのはのために戦っている。
世界で一番強い、高町なのはの想いと共に戦っている。
なのはに支えられている自分が、こんな奴に負けることは許されない。
それはなのはの最強を、自ら否定することだ。
「負けないよ……」
瞬間、停止。
ぼそり、と呟きながら。
陽光を受け、眩く輝く金髪を、更なる光が照らしていく。
ぽぅ、ぽぅ、ぽぅ、と。
足元に顕現するミッドチルダ式魔法陣を中心に、生み出されていくのは無数のスフィア。
金色の魔力が形成する球体が、1つ、また1つと浮かんでいく。
先ほどまでの雄たけびとは、うってかわった静寂の中。
不気味なまでの静寂と共に、雷撃の弾丸が群れを成す。
「私は負けないよ――なのはぁッ!!!」
フォトンランサー・ファランクスシフト。
決意の絶叫と同時に放たれたのは、爆音響かせる轟雷のスコールだ。
永遠に消えさることなき決戦の記憶。なのはの収束魔法を食らう直前に放った、あの日の自分の全力全開。
魔法陣上に展開された雷撃砲台フォトンスフィア、計38基。
それら全ての連射性能、秒間7発。攻撃時間、4秒。
総合計弾丸数、実に1064発の一斉射撃。
絶え間なく響く撃発音は、1つに重なり雷鳴となる。雲霞のごとき迅雷は、さながら地上の流星群。
撃つ。撃つ。撃つ。ただひたすらに撃ち続ける。
この身に宿ったなのはの想いを、白き暴君龍へと叩き込むかのように。
光が視界を遮ろうと、煙が巨体を隠そうと、攻撃の手を緩めることはしない。
全ての弾丸を撃ち尽くすまで、一片の容赦もかけはしない。
やがて、それも、終わる。
展開した全フォトンスフィアの全弾が射出され、遂に攻撃の手が止まる。
消えゆく魔法陣。消えゆく砲台。眼前に広がり続ける黒煙。
これで終わりか。
総勢1064発の魔力弾、食らおうものならひとたまりもあるまい。理屈ではそうだ。
だが、この胸に残る違和感は何だ。
この煙の奥からちりちりと刺すような、得体の知れぬ嫌な予感は一体何だ。
(――来る!)
《グオオォォォォォォォーンッ!》
すなわち、殺気。
この雷撃の雨の中、微塵も衰えることなき獰猛なる敵意。
百万のナイフにも勝る絶叫が、黒きカーテンの奥より襲いかかる。
闇の煙を牙で引き裂き、巨大なるドラゴンの大口が迫る。
開かれた大顎には、白き光輝が未だまとわりついていた。
なんという暴力的な力か。至近距離で放った滅びの爆裂疾風弾が、全弾を相殺したとでも言うのか。
それでも、うろたえている暇はない。
ほぼゼロ距離まで迫ったブルーアイズの両顎が、フェイトの天地より迫り来る。
上下からの挟み撃ち。すなわち、丸のみの態勢だ。
「くぅっ!」
オーバーフラッグを支柱とし、口を塞ぐ。
頭上を見上げれば、眼下を見下ろせば、そこに並ぶのは剣呑なる針山だ。
だが真に恐るべきは、天より地より襲いかかるその顎の筋力。
みしみしと軋む鋼鉄の銃身。これが生物の圧力なのか。
上から下から殺意の刃が、強靭な筋肉と共にじりじりとにじり寄ってくる。
「なめるなぁッ!」
ぼん、と。
手を突き出した先で、爆発が起こった。
《ギャアァァァァァァァッ!》
悲痛な絶叫と共に筋力が緩む。長い首を振り回し、のたうち回る口腔から、一瞬の隙を突いて脱出する。
いかに堅牢な青眼の白龍と言えど、鱗のない体内に攻撃を食らっては、たまったものではない。
至近距離からその喉元目がけ、魔力弾を叩き込んだのだ。
強烈な加速と共に退避。口から煙を上げるドラゴンと距離を取る。
ここまでの戦いの中で、初めてフェイトの攻撃が直撃した。今のは精神的に相当答えたはずだ。
本気の一撃が来る。先ほどのような尻尾の攻撃などではない、あの白き大砲が来る。
怒りの炎を燃やす瞳が何よりそれを雄弁に物語っている。
蹂躙されるだけの雑魚ごときが、ふざけた真似をしてくれたな。
この一撃で終わりにしてやる。その血肉の一片までも、我が最大の一撃で消し去ってやる。
身体をのけぞらせ、大口を開け、白熱の光を迸らせ。
滅びの爆裂疾風弾を、フェイトに向かって叩き込むだろう。
そしてこの一撃に対し、フェイトが取った対応は――反撃。
まっすぐに向けられた銃口は、それも正面からの真っ向勝負の構えだ。
(もう、よけ続けるだけの余力がない……)
ここに至るまでに、フェイトは大量の魔力を消費していた。
常に最大戦速を維持し続けた飛行魔法、死に物狂いで振るい続けた魔力刃、そして先のファランクスシフト。
加えて、プレシアによる制限もある。
限界まで酷使し続けたリンカーコアには、もうほとんど魔力が残されていないのだ。
このまま攻撃を回避したところで、遠からず自分は倒れるだろう。
ならば一か八かの正面衝突で、てっとり早く決着をつける。
顕現。
オーバーフラッグの先端に、黄金の魔法陣が展開された。
「はぁぁぁぁ……っ……!」
収束される魔導の力。発動されるは砲撃魔法、プラズマスマッシャー。
己が四肢の末端に至るまで、身体中余すことなく、全身から魔力を絞り出す。
もっとだ、もっと。鋼の砲塔に力を込めろ。
この身が粉々に砕けようと、砂と消えようと構わない。あの大いなる龍を、この一撃で叩き落とせれば。
終焉は訪れる。
やがて、全身を襲う脱力感。五体全てから、生命力がごっそりと抜け落ちる感触。
魔力を使い果たした。己が持てる力のほぼ全てを、この身から出し尽くしてしまった。
もはやこの身に残された力は、砂粒ほどにも満たぬだろう。
この一撃を放った頃には、飛行魔法さえも維持できなくなり、そのまま落下するだろう。
されど、チャージは完了した。
必殺のプラズマスマッシャーを形成するには、ぎりぎり十分な量の魔力が確保できた。
だが。
「もっとだ、もっと……!」
まだ足りない。
ただのプラズマスマッシャーでは、殲滅の白光を迎え撃つことはかなわない。
がしゃん、がしゃん、がしゃん、と。
オーバーフラッグに装填されたカートリッジをフルロード。圧縮魔力を解放し、更なるエネルギーを注ぎ込む。
恐怖はある。
この雷の槍をもってしても、青眼の白龍は仕留められないのではないか。
あのおぞましき破滅の光をぶつけられ、髪の毛一本残らず消え去ってしまうのではないか。
自分だけでは、勝てない。
殺意の青眼をぎらぎらと輝かせ、今まさに白き灼熱を放たんとする、あの白き龍相手には。
弱い自分だけの力では、奴を倒すことなどできない。
(だから、力を貸して……)
故に、祈る。
遥か彼方遠き世界で、自分を待ってくれている人々へと。
闇の書事件で幾度となく激突し、互いに腕を磨き合った、桜色の髪の好敵手。
PT事件を経て孤児となった自分へと、帰る場所を与えてくれた、黒衣に身を包みし義兄。
そして、どんな時でも自分を支えてくれていた、優しく愛しい1人の少女。
皆との日々を取り戻すために。
全員で元の世界へと帰るために。
明日をこの手につかみ取るために。
最期の瞬間に向けてくれたあの笑顔を、永遠のものにするために。
放つ閃光の槍が、三つ又の大矛へと変わる。
力を貸してほしい。
わたしに最後の力をかして。
わたしに最後の勇気をかして。
みんなをまもるためのちからを。
みんなをころすためのゆうきを。
ゆうきの、ちからを――
「――トライデントォッ!! スマッシャァァァァァァ――――――!!!」
砲撃が、割れた。
解放された魔力の奔流は、発射と同時に三つ又に分かれ、そのままブルーアイズへと襲いかかる。
金色のトライデントの形を成した雷撃が、爆音と共に白熱と衝突。
黒き少女と白き龍の中間距離で、黄金と白銀の光が真っ向から激突する。
迸るエネルギー。瞬くスパーク。吹き荒れる衝撃波。
空気が焦げ付く臭いを感じた。風景すら歪む力場を感じた。
極大と極大。
トライデントスマッシャーと滅びの爆裂疾風弾。
2つのエネルギーが拮抗し、世界を激しい音と光で満たす。
負けるものか。
シグナムの、クロノの、なのはの想いを込めたこの一撃を、お前などに返されてたまるものか。
このまま押し通す。
私はこの意志を貫き通す。
なのはのいてくれたあの優しい日々が、いかに尊いものであったか。
証明する手だてを、他に知らないから。
ならばこのたった一撃の砲火に、己が命の全てを賭ける。
絶対に勝つんだ。
勝って全てを取り戻すんだ。
「……なのはああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッッッ!!!」
――この時、フェイト・テスタロッサには1つの誤算があった。
普段通りの冷静沈着な彼女ならば、絶対に犯すことのないはずの判断ミスが。
ここにいる十代達の世界とも違う、もう1つのデュエルモンスターズの世界。
同じ砂の荒野の中で、同じデュエル・アカデミアを背後にして、されど決して同じではない世界で。
成長した高町なのはとフェイト・T・ハラオウンは、目の前のものと同じ白き龍と、熾烈な激戦を繰り広げていた。
自身の持てる全力を引きだす、レイジングハートのエクシードモード。
あの白銀の龍鱗纏いし魔物とも、互角に渡り合えるだけの破壊力。
だが裏を返せば、そうでなければならなかったのだ。
フェイトの知るなのはよりも、更に10年以上の研鑽を積み、制限からも解き放たれなければ。
それでようやく五分五分だ。そうでなければ対抗できなかったのだ。
フェイトにとっては、彼女の知るなのはこそが最強だった。そう信じていた。
だが、その認識は誤りだった。
青眼の白龍は、かつてこの場に生きていた高町なのはよりも、遥かに強力な存在だったのである。
滅びの爆裂疾風弾は、ディバインバスターの火力をも凌ぐ。
砲撃・射撃のスペシャリストたる、なのはの砲撃をもってしても、その一撃には及ばないのだ。
であれば、むしろオールラウンダーであるフェイトが、いくら新技を身につけたところで、到底かなうはずもない。
爆裂。
弾け飛ぶ金色の光の向こう、迫りくる銀色の光がある。
フェイトが認識した瞬間には、既に光は視界の全てを包んでいた。
平時ならば決して犯すことのない過ちを、何故彼女が犯したのか。
それは妄執。
高町なのはという存在に対する、狂的なまでの執着心。
その盲信が、その狂信こそが、最後の最後の瞬間に、彼女の瞳を曇らせたのだ。
分かっていたはずの実力差が、記憶の外へと追いやられ、勝てるはずもない勝負へと勇んで乗り出したのだ。
もはや勇気などではない。明らかに無謀と呼ぶべき判断。
持てる魔力を全て飛行魔法に注ぎ込み、全力で戦闘空域を離脱すべきだったのだ。
もしも、彼女にまだ冷静な判断力があったならば。
いいや、彼女がここまでなのはに固執していなかったならば。
皮肉にも、高町なのはへの想いこそが。
誰よりも彼女を想う心こそが。
フェイトを敗北へと導いたのだ。
◆
「駄目っ! 待って、止まって! 止まってよぉ!」
灼熱の激流によって穿たれた、デパートの壁の風穴の傍。
十代の傍らでは、つかさが必至に呼びかけていた。
遥か上空で暴れ狂う、デュエルモンスターズ最上級モンスターへと。
だが、こうなった以上はもう無理だ。
止めることなどできはしない。
デュエルモンスターズのルールにおいては、一度下した攻撃命令を、中断することなど許されていない。
フェイトに一撃を叩き込むまで、ブルーアイズは存分に暴れまわるだろう。
たとえ守るべき主の心が、殺人の事実によって引き裂けたとしても。
そして、遂に決定的な瞬間が訪れた。
「あ……!」
「あ、あぁ……っ」
フェイトの放った砲撃と、青眼の白龍の吐き出したブレス。
空中で激突した2つの波動のうち、滅びの爆裂疾風弾が競り勝ったのだ。
トライデントスマッシャーを引き裂き、幼女の細い身体を呑みこむ、絶大なまでのエネルギー。
次いで発生する、爆発。まごうことなき完全なる直撃だ。
炎と煙の中より落ちる、黒きバリアジャケットの身体。
マントも衣服もずたぼろに引き裂け、髪をまとめるリボンは蒸発し、重力に従って落下していく。
死んだ。
死んでしまった。
攻撃力3000という莫大な破壊力を受け、生きていられるはずもない。
飛行魔法も何も使わず、無抵抗なままに落ちているのが何よりの証拠だ。
万が一生き残っていたとしても、このまま落下すれば確実に死ぬ。
つかさの召喚したモンスターが、1人の少女を殺してしまったのだ。
フェイトの落下が、恐ろしくゆっくりに感じられる。
耳をつんざくブルーアイズの咆哮が、虚しく右から左へと流れる。
そして――見た。
黒光りする銃身を。
眼前で動いたオーバーフラッグを。
その殺意の銃口が、傍らで愕然とする少女へと向けられるのを。
「――危ないっ!」
◆
一体、今何が起こったのだろう。
どうして自分は落ちているのだろう。
どうしてこんなにも身体が痛いのだろう。
砲撃を撃ち合っていたはずの自分が、何故このような状態になっているのだろう。
(ああ……)
燃え散る漆黒のリボンを見た時、ようやくフェイトは思い出した。
知覚の空白の一歩手前、暴力的なまでの白い光が、自分へと襲いかかってきたことを。
負けたんだ。
自分は負けてしまったのだ。
純白の龍王との撃ち合いに、無様にも敗北してしまったのだ。
情けない。最低だ。
己が持てる力の全てを使い、なのはの想いまで借りておいて、それでも勝利が掴めなかった。
誰よりも大事ななのはを貶めるような、最低の敗北を喫してしまったのだ。
《ウオオオォォォォォォォ―――――――――ンッ!》
ああ、忌々しい。
虚ろな視線を動かせば、あのドラゴンが吼えている。
巨大な翼と逞しき両腕を広げ、勝利の雄たけびとやらを上げていく。
役目を終えたとでも言わんばかりに、その身が光となって消えていく。
その咆哮が雄々しくて。その輝きが神々しくて。
忌々しくて、たまらない。
ふと、デパートへと視線が向いた。
そういえば、自分が本来殺すべき相手は、あの純白のドラゴンではない。
確かここの3階に、あの少年少女の2人組がいたはずだ。
殺さなければ。
激痛に苛まれた身体に鞭を打ち、必死にオーバーフラッグを持ち上げる。
砂粒ほどの魔力をひねり出し、一撃分の弾丸を形成する。
ターゲット、ロックオン。狙うは紫の髪のセーラー服の少女。
顔面直撃コースへとセット。このトリガーが引かれれば、まず間違いなく即死だろう。
意識が急速に遠のいていく。限界が近いのかもしれない。
だが、止まってたまるものか。自分は殺さなければならないのだ。
大切な人を蘇らせるために。
意識が途切れようと、この身が死を迎えようと、引き金だけは引いてみせる。
ぐ、と。
指先に力が込められた。
魔力弾の発射される音がする。
朦朧とする意識が消え行く中、最後にそれだけを聞き届けた。
成功だ。すくなくとも、1人殺した。
視界が暗闇へと染まる中、最後にそれだけを確信した。
ばしゃん。
水しぶきの音までは、もう聞こえてはいなかった。
◆
「ぐあ……!」
唸ったのは十代の方だ。
黄金の魔力弾をその身に食らい、苦痛の叫びを上げたのは、しかし十代の方だった。
フェイトが最後の力を振り絞り、凶弾のトリガーを引いた瞬間、彼がその前に立ちはだかったのだ。
未だ震えるつかさへと覆いかぶさるようにし、オシリスレッドの制服の背中で、魔力の弾丸を受け止める。
幸いにも、貫通はしていなかった。
練り上げられた魔力は明らかに少なく、十代の背中に打撲を負わせるにとどまった。
苦痛に顔を歪めながらも、再びフェイトの方へと向きなおる。
落下していたはずの彼女の姿は、もうビルに阻まれて見えなかった。
青眼の白龍の直撃を受け、相当な距離を吹っ飛ばされたフェイトと、このデパートの間には、それなりの距離がある。
加えてここは市街地だ。視界を遮るビルも多い。
にもかかわらず、彼女はこの魔力弾を的中させてみせた。
十代が庇っていなければ、まず間違いなくつかさに命中していた。
恐るべき精神力。さすがはフェイト・T・ハラオウンといったところか。
「つかささん、大丈夫か?」
痛む背中をさすりながら、腕の中のつかさへと問いかける。
しかし、無言。
言葉が返ってくることはない。
ぶるぶると小刻みに震えながら、うわ言のような音を口から漏らすのみ。
そのままどれだけの時が経った頃か。
「殺しちゃった……」
蚊の鳴くような。
「私が、フェイトちゃんを殺しちゃったんだ……!」
震える声が、鼓膜を打った。
「つかささん……」
かけるべき言葉が見つからない。
フェイトを殺したのは、あくまで青眼の白龍だ。
あのままアスファルトに落下すれば、確かに彼女の命は奪われるだろう。
だが、その原因はカードだけではない。あの白き破壊の龍を召喚したのは、あくまでつかさだったのだ。
ブルーアイズに悪意はない。ただ忠実に、主の命令に従ったまでのこと。
であればそれは同時に、つかさこそが殺人者であるということではないか。
自分が助かろうとしたおかげで、1人の少女が死んでしまった。
気弱な彼女の心では、その重みに耐えられるはずもない。
目の前で涙を流す少女に、一体どう言葉をかけろというのか。
(……『リビングデッドの呼び声』……)
と、不意に、足元に置かれた罠カードの存在に気づいた。
何もフェイトを生き返らせようと考えたわけではない。むしろその焦点は、あの白銀の暴君龍だ。
つかさが手にしていたはずの青眼の白龍のカードは、いつの間にか姿を消していた。
元々十代が飛ばされていた世界でも、カードの力はデュエルディスクによって発動すべきもの。
カード単体で発動したことによって、命令を実行したカードが消滅したのだろう。
(このカードって、こういう時のために使うものなのか……)
そこへ、先ほど発見した「リビングデッドの呼び声」である。
恐らくこのカードの効果対象とは、こうして消滅したモンスターなのではないだろうか。
であれば、今このカードを発動すれば、もう一度青眼の白龍を入手することができるのではないか。
今十代が持っている武器は、木製バットと銃剣だけだ。これでは先のフェイトのような、魔導師相手には太刀打ちできない。
ブルーアイズの消滅した今では、正直自分の身を守るだけでもきついだろう。
(だけど……)
それでも、引っかかることがある。
(本当にいいのか? ブルーアイズを復活させて……)
今目撃した通り、あのドラゴンの力は強すぎる。
不用意に使ってしまおうものなら、また新たな死体を生み出してしまうのではないか。
もしまた死者が出てしまえば、柊つかさの繊細な心は、今度こそ粉々に砕け散ってしまうのではないか。
今の十代には、ただ墓場のカードイラストを、眺めていることしかできなかった。
【1日目 昼】
【現在地 H-5 デパート3階】
【柊つかさ@なの☆すた】
【状態】健康、精神ダメージ(大)、錯乱、自責、号泣
【装備】シーナのバリアジャケット@SHINING WIND CROSS LYRICAL
【道具】支給品一式、電話帳@オリジナル、パン×3、プチトマトのパック×2、キャベツ
【思考】
基本:殺し合いを避ける
1.私がフェイトちゃんを殺しちゃった……!
2.メールを返信する
3.フェイトちゃんが帰ってくるまでデパートにいる(早く帰ってきて!)
4.家族や友達に会いたい
【備考】
※十代と和解しました 。
※死者の名前は数名分しか覚えていません(なのはが呼ばれた事は覚えている)。ご褒美の話も忘れています。
※電話帳はあまり役に立たない物だと思っています。
※キングを警戒する事にしました。
※メールの差出人と内容を信用しています。
※十代から禁止エリアの位置を聞きました。
※青眼の白龍@リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)」 を消費しました。
※フェイト(A's)は死んだと思っています。
【遊城十代@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康、困惑
【装備】バヨネット@NANOSING
【道具】支給品一式、んまい棒×4@なの魂、ヴァイスのバイク@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
リビングデッドの呼び声@リリカル遊戯王GX、木製バット、エアガン、パン×3、レタス、じゃがいも×3
【思考】
基本:殺し合いには乗らない。
1.つかささん……もう1人のフェイトさんも……
2.ブルーアイズを蘇生させてもいいのだろうか?
3.フェイト(StS)を待って事情を説明し、ちゃんと誤解したことを謝る
4.クアットロさんって良い人だなー。
5.余裕があればハネクリボーやネオス、E・HERO達を探す
【備考】
※参加者は別々の世界・時間から参加者は別々の世界・時間から連れて来られている可能性に至りました。
※フェイト(StS)が自分とは別の世界・時間軸から呼ばれていてデュエルゾンビではないと確認しました。
エリオ、万丈目についても断定はしないもののデュエルゾンビではない可能性があると思っています。
※この場にいる2人のなのは、フェイト、はやての片方が19歳(StS)の彼女達でもう片方は9歳(A's)の彼女達だと思っています。
※クアットロを完全に信用しています。
※PT事件の事を大まかに知りましたが、プレシアがフェイトを造った話は聞いていません。
※この殺し合いがデス・デュエルに似たものではないかと考えています。
※殺し合いの中で起こる戦いを通じ、首輪を介して何かを蒐集していると考えています。
※月村すずかの友人(=はやて(StS))からのメールの内容を把握しました。
※フェイト(A's)は死んだと思っています。
――結論から言おう。
死んだと思われたフェイト・テスタロッサは、奇跡的に生還した。
彼女の敗因を誤算とするのなら、つかさと十代の認識もまた誤解だったのだ。
まず、滅びの爆裂疾風弾の命中。
非殺傷設定などない、高位魔導師の砲撃にも匹敵するブレスを食らえば、まず間違いなく即死は免れないだろう。
しかし、フェイトが土壇場で編み出したトライデントスマッシャー――これが生存への最初の鍵となった。
彼女の決死の砲撃と正面衝突したことで、爆裂疾風弾の破壊力は減衰。
ぎりぎりまで威力が弱められたことで、ブレスによる死亡は回避された。
無駄かと思われた最後の抵抗も、ちゃんと意味を成していたということだ。
続いて、落下の瞬間。
砲撃の撃ち合いを行った段階で、フェイトはH-5の東端ぎりぎりにまで移動していた。
そしてブルーアイズの攻撃を食らったことで、そのままエリアの枠を越え、H-6へと吹き飛ばされた。
最後に放った射撃魔法により、十代は彼女を見失ってしまったのだが、この時彼は、そのまま道路に落ちたと思っていた。
だが、その認識は誤っていたのだ。
この時フェイトの真下にあったのは、硬いアスファルトではなく――川。
幼い彼女の小柄な身体にとっては、それなりの深さであった川へと落ちたことで、衝撃が緩和されたのだった。
これら2つの奇跡が重なり、彼女は一命を取り留めることができた。
そして肝心のフェイトは今、川の流れに流されて、砂浜にその身を横たえている。
「……ん……」
金色の睫毛が微かに震える。瞼がゆっくりと開かれていく。
耳に響く穏やかな音は、海鳴でもよく耳にした波の音だ。
身体が濡れている。現在も半分水に触れている。目の前には白い砂がある。
ここがエリアの南西と南東にある、浜辺であるということを認識していた。
そして同時に、自分がまだ生きていたということを認識し、僅かに驚愕を覚えた。
未だに痛む身体へと、ぐっと力を入れて立ち上がる。
これだけの怪我を負ったのに、魔力もほとんど全部使い切ったというのに、よくもまぁ生き延びられたことだ。
(なのはが守ってくれたのかな……)
やっぱり、なのはは優しいな。
のろまな身体をやっとのことで直立させると、そんなことを考えた。
ぱんぱん、と両手で砂を払う。
と、そこで、自分が身に纏っているものが、いつのまにか普段着であったことに気がついた。
バリアジャケットではない。そもそも手にオーバーフラッグがない。
きょろきょろと周囲を見回すと、少し離れた場所に流れ着いていた。
ゆっくりと歩きながら、回収に向かう。まだまだ走れるようになるには時間がかかりそうだ。
身体を引きずって目的地へとたどり着き、鋼の銃身を拾い上げる。
そしてどうやら仕込み刀をなくしてしまったらしいことに気付き、僅かに落胆した。
(ここ、どこなんだろう)
自分と得物の、一応の無事が確認されたことで、フェイトは改めて周囲を見回す。
ここは一体どこなのか。果たして自分が、何故海で倒れていたのか。
現状はまだまだ分からないこと尽くしだ。
何か目印になるものを探し、視線を右へ左へと走らせる。
「あ……」
そして、見た。
広き浜辺のその奥に、鎮座していたその物体を。
黄金と紫色に輝く、超弩級の巨大艦の姿を。
【1日目 昼】
【現在地 I-5 砂浜】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】疲労(大)、魔力消費(ほとんど空)、全身にダメージ(大)、左腕に軽い切傷(治療済み、包帯代わりにシーツが巻かれている)、強い歪んだ決意
【装備】オーバーフラッグ(仕込み刀なし・カートリッジ残量0)@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式、医療品(消毒液、包帯など)、パピヨンスーツ@なのは×錬金
【思考】
基本:皆で一緒に帰る。
1.あの戦艦(=聖王のゆりかご)は……?
2.皆を殺して最後の一人になる。そして皆を生き返らせる。
【備考】
※もう一人のフェイトを、自分と同じアリシアのクローン体だと思っています。
※なのはとはやても一人はクローンなのではと思っています(激しい感情によって忘却中)。
※新庄、つかさは死んだと思っています。
※激しい感情から小さな矛盾は考えないようにしています。追及されるとどうなるか不明。
※なのはが一番強いと思っています。
※トライデントスマッシャーを修得しました。
【全体の備考】
※H-5上空で、トライデントスマッシャーと滅びの爆裂疾風弾による発光現象が起こりました。
周囲1マス以内なら、目撃できるかもしれません。
※デパート3階に、パピヨンマスク@なのは×錬金が落ちています。
※H-6のどこかに、オーバーフラッグの仕込み刀@魔法妖怪リリカル殺生丸が落ちているかもしれません。
【リビングデッドの呼び声@リリカル遊戯王GX】
遊戯王カードの一種。デュエルディスクにセットする事で発動できる。
このロワで消費してしまったモンスターカードを復活させ、再度攻撃命令を下すことができる。
ただし、召喚した本人でなければ、復活させることはできない。
また、単体で使用した時には、戦闘後に復活させたカードもろとも消滅するが、
デュエルディスクの魔法・罠ゾーンにセットしておけば、引き続き復活させたカードを保有することができる。
しかし、このカードが破壊されるなどして、魔法・罠ゾーンから離れた時、復活させたカードは消滅する。
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