「く…!」
「何だよ…こんなもんか?」
やはり契約モンスターの力量が勝る王蛇が優勢だ。力でシザースを押し返した。
そのままベノサーベルを突き刺そうとするが、真横から別のライダーの攻撃が飛ぶ。それはゾルダが放った銃撃だ。
彼の持つ『マグナバイザー』は、連射式の拳銃としても使用可能。それを使った銃撃が王蛇を襲ったのだ。
ベノサーベルを使い、それを紙一重で防ぐ。そしてゾルダの方に向き直った。
「そう言えば、お前もいたんだったな…北岡」
「おいおい、呼びつけた張本人が忘れるなよ」
一方その頃、真司もまたミラーワールドへと到着していた。
先に入った三人を探し、そして見つける。
「もう戦ってる…止めないと!」
『GUARDVENT』
言うが早いか、ドラグシールドを手に戦いを止めに行く。
「うわっ!」
だが、それも見慣れたサイのモンスター…メタルゲラスに止められる。
「メタルゲラス…こいつがいるって事は!」
想像通り、ガイが近くにいた。しかもメタルホーンを用意して。
「空気読めないな。せっかく盛り上がったんだから、水差さないでよ」
それと同じ頃、外では警官隊が突入を始めていた。
突入から戻ってきた警官の一人が、須藤の後から来た刑事に報告する。
「警部、中に誰もいません!」
「何?どういう事だ。ちゃんと探したのか?」
誰もいない。どういう事か。普通の人間には分からない。
この場の人間でその理由を理解しているのは、僅か六人だけだ。
『はやてちゃん、まさか…!』
いや、リィンを入れれば七人か。
「…多分、それで正解や」
「うお、小人!?」
大久保らOREジャーナルメンバーが驚いている。リィンよ、出てくるなら場所を選べ。
「あ、いや、これは、その…」
「って、今はどうでもいいか。それより令子、確かメールには『浅倉もライダーだ』ってあったんだよな?」
「はい。私も最初は信じてませんでしたけど…全員いないって事は、本当だったんだと思います」
「そうか…って、おい!どこ行くんだよ!」
大久保の注意が逸れている間に、なのは達が店の裏手へと走り出していた。
そこからミラーワールドへと入るつもりなのだろう。
霧島美穂もまた、店の近くに来ていた。
「浅倉…!絶対あたしが…!」
その目は浅倉への憎しみで満ちている。
そんな状態だから、目の前でなのは達がミラーワールドに入ったのを見落としたとしても、誰が責められようか。
「今の…いや、今はそれより浅倉だ!変身!」
そして美穂もまたファムへと変身し、ミラーワールドへと踏み込んだ。
第十四話『砕け散る鎧』
「戦いを止めろって言ってんだろ!」
メタルホーンをドラグシールドで受け止めながら、龍騎が言う。
「は?何言ってんの?ライダーは戦うもんでしょ?」
だが、ガイは聞く耳を持たず。攻撃をさらに激しくする。
「はぁ…もういいよ。戦う気無いなら死んでくれる?」
そう言うと、ファイナルベントのカードを取り出して見せ、バイザーに放り込んだ。
『FINALVENT』
先ほどまで近くにいたメタルゲラスがガイに近づき、ヘビープレッシャーの体勢に入る。
そして、ヘビープレッシャーで龍騎の方へと突っ込んできた。
防げるとは思っていなかったが、ドラグシールドを構え、防御姿勢をとる。
…だが、次の瞬間ガイとメタルゲラスが消えた…いや、空間に出来た鏡(?)に突っ込んだのだ。
「上手くいった…はやてちゃん、なのはちゃん、準備はいい?」
「はい!」「うん!」
シャマルの前には、転移魔法『旅の鏡』のために作られた、クラールヴィント・ペンダルフォルムの輪があった。
旅の鏡でガイを店の外に引きずり出し、防御魔法でヘビープレッシャーを防ごうという策だ。
…もっとも、防御魔法うんぬんの件は、ガイがファイナルベントのカードを見せた時に慌てて打ち合わせたものであるが。
…と、ガイが出てくる。ご丁寧にヘビープレッシャーの状態で。
「二人とも、今よ!」
「盾!」『Protection Powered.』
同時に防御魔法を展開し、ヘビープレッシャーを受け止めた。
だが、さすがに250トンもの破壊力は伊達ではない。多少押されているようだ。
『Barrier Burst.』
このままでは破られる。そう判断したレイジングハートがバリアバーストを行い、ガイを吹き飛ばした。
「っはー…流石にファイナルベントを受け止めるのは骨やわ」
今のではやても結構疲れているらしく、その場に座り込んだ。
「そうだね。でも、まだ仕事が残ってるよ」
「ええ。あの人を止めないと…」
そう言い、ガイの方を見る3人。その当のガイはというと、立ち上がった後不思議そうに周りを見ている。
「あれ?さっき俺店の中にいたよな…」
「あいつが消えた?」
目の前からガイが消え、驚いて辺りを見回す龍騎。
外に目線が行った時、なのは・はやて・シャマルの3人がガイと対峙しているのが見えた。
「え…みんな何でここに?」
とにかく手助けに行こうとするが、その考えはすぐに中止された。
「浅倉!どこだ!どこにいる!!」
その声に振り向く龍騎。そこにファムがいた。
「お前かぁ!」
すぐに振り向いたせいで、ファムに浅倉と勘違いされてしまう。
そのままファムがブランバイザーで斬りかかって来た。それをドラグシールドで防ぐ龍騎。
「ちょっ、違うって!浅倉はあっち!あの紫色の!」
防ぎながら店の外を指差す龍騎。その方向を見ると、ゾルダ・王蛇・シザースが戦っていた。
「そう…悪かったね、間違えて」
そう言うと、ファムは攻撃をやめ、その3人の戦いに近づいていった。
「待てよ、どうするつもりなんだ?」
「決まってるよ。浅倉を倒しに行くんだ」
「そうか…だったら、行かせる訳にはいかない!」
この男は何を言っている。ファムはそう思った。
どちらが死ぬにしろ、ライバルが減って万々歳のはずだろう。それなのに何故止める?
…まあいい、どういうつもりにしろ…
「どういうつもりか知らないけど、邪魔するんならあんたから倒すよ!」
そしてこちらはというと…
「須藤刑事、ここは一時休戦にしない?このバカ何とかしないといけないしさ」
「…いいですね、その話。乗りましょう」
ゾルダとシザースの休戦協定が結ばれたところのようだ。
「話は終わりか?」
その声に反応し、前を向く二人。すでに王蛇がベノサーベルを振り上げ、ゾルダの目の前に来ていた。
素早くバイザーを正面に向け、連射。さすがにこの至近距離では反応しきれず、王蛇に直撃する。
そして怯んだ隙にカードを装填した。
『SHOOTVENT』
ゾルダの両肩に大砲『ギガキャノン』が現れる。それを王蛇めがけて撃つ。撃つ。撃ちまくる。
王蛇もそれをかわしながら、バイザーにカードを装填した。
『STEALVENT』
武器カードを奪うカード『スチールベント』を使い、ギガキャノンを奪取したが、
「こんなものいらん!」
と、さっさと投げ捨ててしまった。
そしてベノサーベルで再び向かっていくが、ゾルダは失くした武器を別のカードで補填した。
『SHOOTVENT』
二枚目のシュートベントで特大のバズーカ『ギガランチャー』を取り出し、撃とうとする。
だが、その時には既に王蛇が目の前にいた。
「ハァァッ!」
ベノサーベルをゾルダへと振り下ろす。それを先ほどのギガランチャーで受け止めるゾルダ。
ギガランチャーで両手がふさがっている今、ゾルダに反撃は困難。それを隙と見たか、空いている左手で王蛇が殴る。
だが、突然王蛇の背中に衝撃とダメージが。驚いてゾルダから離れる。
「私を忘れてもらっては困りますね…」
シザースだ。バイザーとシザースピンチを使い、同時攻撃を仕掛けたのだ。
「なるほどね、魔法とかいうやつ?それで俺を外に出したってワケだ」
ガイがそう言う。3人とも驚くが、はやてとシャマルはすぐに納得した。
「あなただったのね、シグナムが戦ったライダーっていうのは」
「そーゆー事。それじゃ、あの赤い奴の代わりに相手してもらうよ」
そう言ってメタルホーンで飛びかかるガイ。標的はなのはだ。
「まずはお前だよ、白いの!」
そう言ってメタルホーンを突き刺そうとした。が、さすがにそう簡単にはいかない。
『Protection Powered.』
防御魔法『プロテクション・パワード』で、メタルホーンを受け止めた。
その時に出来た隙は一瞬。だが、はやてが打撃魔法『シュヴァルツェ・ヴィルグング』を叩き込むには十分な隙だ。
「このぉぉっ!」
シュヴァルツェ・ヴィルグングがガイを捉える。そして吹き飛ばした。
「ってぇ…さすがに3対1はきついかな」
そう言うと、どこからかメタルゲラスが駆け込んできた。
それを見つけたガイが、メタルゲラスに命令する。
「ちょっとあの二人の相手しててくれない?俺はこっちと戦ってるから」
そう言われると同時に、メタルゲラスがはやてとシャマルの方へと走り出した。
「な!?カードも使ってないのに何で来たの!?」
だが、そんな疑問には誰も答えず、その間にもメタルゲラスが近づいてくる。
誰も気付いていないが、モンスターの中にはライダーを契約者以上に見ているものがいる。例えば友人や主従としてだ。
メタルゲラスもガイを友人として見ているらしく、だから呼ばなくても危機を察知して現れたのだ。
「さて、コレで一対一だね?」
そう言うと、改めてなのはに向き直る。が、もうその方向にはいなかった。
高速移動魔法『フラッシュムーブ』で背後に回っていたのである。
「えぇぇぇぇいっ!」
そのままフラッシュムーブからの打撃『フラッシュインパクト』で吹き飛ばした。
「いくよ、レイジングハート!中距離砲撃モード!」『All right.』
レイジングハートを中距離砲撃モードに変形させ、構える。
『Divine Buster.』
「ディバイィィィィン!バスタァァァァァ!!」
『Extension.』
放たれるディバインバスター。そしてガイは、それに飲まれ、吹き飛んだ。
中距離とはいえ、射程は長い。かなり離れていた王蛇をも飲み込むほどに。
「ちょっと…やりすぎちゃったかな?」
『大丈夫でしょう』
「ハァァァ!」
持ち直した王蛇がゾルダへと突っ込む。
…だが、それは横から飛んできた桃色の閃光と、それに巻き込まれて飛んできたガイによって中断される。
「ぐお!?」
桃色の閃光に巻き込まれ、思い切り吹き飛ぶ王蛇。それを見たゾルダとシザースは驚き、その方向を見た。
そこには…その発生源と思われる、白衣の少女がいた。それも杖を構えて。
「冗談でしょう?あの距離からこれだけの攻撃を…」
「別に驚くことでもないでしょ?俺もギガランチャーならあれくらいの距離いけるし」
そう話している間に、王蛇とガイが立ち上がる。
まずいと思ったのか、ゾルダが一枚のカードを取り出し、バイザーに装填した。
『FINALVENT』
ゾルダの目の前の地面から、彼の契約モンスター『鋼の巨人マグナギガ』が現れる。
そして、背中のホルダーのような場所にバイザーを繋げた。
「そこのあんたら、死にたくないならどいてな!そこの銀色、お前もだ!」
そう言った直後、トリガーを引く。すると、マグナギガの胴体が開き、そこから無数のミサイルが飛び出した。
これがゾルダ最大の必殺技『エンドオブワールド』だ。
額からのビームが、胴や腕からの無数のミサイルが、攻撃範囲一帯を焦土へと変えた。
「危なかった…もう少しで巻き込まれるところだったよ」
空に避難したなのはが、降下しながら言う。
「せやな。あんなの喰らったらただじゃ済まなさそうやし」
同じくはやてが言う。
「…あ、あの人!」
シャマルが何かに気付いた。ガイだ。
ガイはエンドオブワールドの攻撃範囲に立ってい…いや、よく見ると少し浮いている。
その後ろには王蛇だ。よく見るとガイの首根っこを掴んで持ち上げている…今放り捨てた。
…つまり、ガイは王蛇が身を守るための盾にされたということだ。
「お前…せっかく俺がゲームを面白くしてやったのに…」
「近くにいた、お前が悪い…」
そう言ったとたん、ガイが王蛇へと殴りかかった。
だが、満身創痍のガイがほぼ万全の状態の王蛇に勝てるはずも無く、さっさと叩き伏せられてしまった。
…そして王蛇が一枚のカードを取り出し、装填した。
『ADVENT』
遠くから契約モンスター『ベノスネイカー』が現れ、ガイを喰おうと迫る。
だが、ガイもただではやられない。最後の力を振り絞って立ち上がり、カードを放り込む。
『CONFINEVENT』
ベノスネイカーが消えた。コンファインベントがアドベントを無効化したのだ。
「は、はは…やったぞ…!」
せめてもの抵抗ということか。だが、さすがに立つことはできてももう一枚のコンファインベントを使う余力は残っていない。
「それがどうした?」
『FINALVENT』
再びベノスネイカーが現れる。王蛇もそれに呼応するかのように、同じ方向へ、地を這うように走る。
そして、高く高くバック宙をし、ベノスネイカーのエネルギーとともに、ガイめがけて飛んだ。
王蛇最大の大技『ベノクラッシュ』である。
「させへん!刃もて、血に染めよ。穿て、ブラッディダガー!」
はやてがブラッディダガーで阻止しようとする。
十数本の短剣を飛ばし、ベノクラッシュの軌道上へと放った…
だが、ブラッディダガーが王蛇に届くより早く、ベノクラッシュがガイに届いた。
そして、水泳のバタ足のようにガイを蹴る。とことん蹴る。徹底的に蹴る。
無理にブラッディダガーの軌道を変え、王蛇に撃ち込んでも止まらない。蹴る、蹴る、蹴る。
「ぐあ…ぁ…」
それが…ガイの断末魔となった。
何度も何度も蹴られ、ついには爆散してしまったのだ。
仮面ライダーガイ:芝浦淳…死亡
残るライダー:12人
(助け…られへんかった…)
「あ、ああ…あああぁぁぁぁぁ!!」
はやてが突如、声を上げて泣き出す。
助けられたはず、でも助けられなかったという罪悪感、そして目の前での人死にのショックに打ちのめされたのだ。
「どうしてそんな簡単に人を殺せるんですか!どうして!!」
精神的に打ちのめされたはやてに代わり、なのはが問い詰める。
すると、こともなげに王蛇が答えた。
「ライダーってのはこういうもんだろ?」
最終更新:2007年08月14日 10:58