夢。

それは輝ける未来。

それは自らを映し出す鏡。

それは人を繋げる絆。

そして、それは異形の“虫”の餌…………。










数年前から第97管理外世界にて広がり始めた、異形の“虫”に寄生された人間――虫憑き――の存在と噂。

その存在――それがもたらす危険性など――を調査するため、時空管理局から数名の局員が派遣されることになる。

その中には古代遺物管理部機動六課――通称、機動六課――に所属する二人の少女の姿があった。

スバル・ナカジマ。

ティアナ・ランスター。

これは二人の魔導師と虫憑きに関わる少年少女たちが織り成す一つの物語である。










“虫”。
それは公には存在しないとされているにも拘らず、もはやその単語を知らない者はいない超常の存在。


「えっと、スバル・ナカジマです。両親の仕事の都合で転校してきました。よろしくお願いします」

「スバル、そっちはどう? 私? こっちもあんまり芳しくないわ、確証のない噂ばっかり」


“虫”に寄生された人間は虫憑きと呼ばれ、噂の範疇から抜け出ていないにもかかわらず人々の間では差別と恐怖の対象になっている。


「あんまり、無防備にこいつに近づいちゃダメよ。大人しそうなのは外見だけで、本当はいやらしい奴なんだから」
「え、そうなの?」
「転校生にいきなり妙なこと吹き込まないでよ! ナカジマさんも間に受けて距離とか取らなくていいから!」


目撃証言や虫憑きのものと思われる異常現象は年々増加し、様々な噂や憶測が飛び交っていた。


『ちょっとスバル! 今どこにいるのよ!!』
『ティア、ごめん! 虫憑きかもしれない人を追跡中!』


曰く、“虫”は夢をもつ思春期の少年少女に寄生する。


「あぁ! アンネさん、それあたしの!」
「うっさいデスネ。こういうのは早い者勝ちなんデス。とっとと食わねー方が悪いんデス」
「少しは遠慮しなさいよ、二人とも……」


曰く、“虫”は宿主である少年少女の夢を喰らい、その代償に超常の力を与える。


「ねぇ、あたしってそんなにウザイかなあ、そんことないよね? あたし、うざくないよね?」
「も、もちろんよ! 全然気にならないわ! ス、スバルもそう思うでしょ?」
「う、うん! 別にウザイとかそんなことないよ! …………多分、いやきっと」
「お前ら、思いっきり顔が引きつってるぞ」


曰く、普段は誰に取り憑いているのかまったく分からない。


「「正義の味方~その名はそうさ、ケ・モ・ノ・マ・ン♪」」
『ケモノマァァァァァン!!』
「ノリノリね、二人とも……」


曰く、虫憑きになると救急車がやってきて、黒いゴーグルの男に何処かへ連れて行かれる。


「ど、どんまい“まいまい”ちゃんっ! 一つや二つの失敗ぐらいじゃ全然へこみませんからっ! 今は失敗ばかりでも輝ける未来はすぐそ

こにっ!!」
「…………この子で本当に大丈夫なの?」
「…………言わないでくれ」


曰く、“虫”に夢を喰い尽くされた虫憑きは死に至る。







 穏やかな日常

「なに……“かっこう”くん……? また、無理矢理ひどいことさせる気……?」
「……大助」
「……大助くん」
「二人して軽蔑の眼差しを向けんな! “ねね”も誤解を招くような言い方してんじゃねーよ! つーか、前にもあったよなこんな流れ!」


 新たに出会う虫憑き


「ぺろぺろ。あゆゆーって呼んでくださいっていつも言ってるじゃないですかぁ、かっくん?」

「私のただの道具屋だ。それ以上でもそれ以下の何者でもない」

「お困りですね、ホモサピエンス」

「邪魔するならアンタもまとめてチョン切ってやるし」


 いくつもの夢と願い


「やははっ。虫憑きになりたい、そう思うことってそんなにおかしいことですか?」

「虫憑きの居場所がないっていうなら、私が虫憑きの居場所を造ってみせるわ、絶対に!!」

「今の私には彼女に会う資格なんてない」

「虫憑きだとか虫憑きじゃないとか、そんな理由で分かり合えないなんて、そんなの絶対に間違ってる!」


 深まっていく虫憑きを巡る謎


「エルビオレーネの“虫”以外に興味はないの。それ以外の“虫”は邪魔なだけなのよ」

「ですが、安心してください。ただの化け物でしかない貴方たち虫憑きを私が愛してあげます」

『力を求め……迷える者よ……我の……元へ……』

「あなたが……花城、摩理さん……?」

「私は必ず見つけ出してみせるわ。摩理が私に“虫”を残した理由を」

「ねえ、亜梨子。私の夢、貴方に預けていい?」

槍型の少女は誓い、銀色の狩人は問いかけた。


「あなたたちのおかげで……私は……まだ夢を目指せるから……」

「私は“かっこう”さんなら私達の、虫憑きの戦いを終わらせてくれると信じています」

歌姫は微笑み、妖精は願う。


「親友に託された夢、か……」

「生憎とオレ様は戦えりゃそれでいいんだよっ!」

魔弾の射手は重ね、霞を従える戦士は笑った。


「どいつもこいつふざけやがって! 途中で投げ出しちまうような夢で虫憑きになってんじゃねえぞ!!」

「俺は虫憑きが大嫌いだ。奴らにはこの世界に存在する価値すら無い」

炎の魔人が吼え、不死の存在は言い放つ。


「そんなに強いのに、それだけの力があるのに、なんで!!」
「……それが虫憑きだ」

蒼い拳士が問い、黒い悪魔が答えた。


「なのは、さん……?」


少女たちの行く先にあるのは


「スバル、あなたの夢を私に教えてくれる?」


 破滅か?


「そいつの言葉に耳を貸すな、スバル!」


 それとも、救いなのか?


「あたしの夢は…………」





ムシウタbug×なのはStS ―夢交差する道―

少年少女の夢、虫憑き、そして“魔法”。
それは最高で最悪のガール・ミーツ・ガール!





ふゆ●たる「大助くん、スバルって誰?」

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最終更新:2007年12月07日 23:04