時空管理局本局・クラナガン。
その廊下を、なのはとエリオは歩いていた。
エリオの話によると、何やらフェイトが風邪をひいて寝込んでしまったらしい。
親友が寝込んでいるというのに、無視して仕事を続ける訳には行かない。
という訳でなのはは現在、フェイトのお見舞いに行くべくエリオと共に歩を進めているのだ。
「エリオ……フェイトちゃんの様子はどうなの……?」
「……それがまだ万全では無いみたいで……なんだか声もおかしいんですよ。今はキャロが看病してますけど……」
「そうなの……早くよくなればいいけど……」
表情を曇らせながら、なのは達はフェイトが眠っているという部屋の前に到着した。
そしてなのははフェイトが眠る病室の扉を開けるべく、ドアのOpenボタンを押した。
「フェイトちゃん、お見舞いに……」
「あの……だ、ダメですよフェイトさん……まだ風邪ひいてるのに……」
「ふははは……恥ずかしがることは無い。君はよく頑張った。あぁ、その頑張りはエリオ達も解ってくれるさ。
だから、さぁ! 恥ずかしがらずにキャロも一緒にインザベッド!そして朝までぐひゃひゃひゃひゃ……!」
「ちょっとフェイトさん……あ、ほら! なのはさんが来てくれましたよ……!」
「……何ィ!?」
フェイトと呼ばれたソイツは、キャロの言葉に反応し、部屋の入り口に目を向けた。
「………………」
「……違うんだなのは。これは大いなる誤解に外ならない。私はもはや美しい……ただそれだけなんだ」
「………………。」
なのはは黙って、ドアのcloseボタンを押した。
「ピッ」と音がなり、ドアが閉まる。
なのはが見たのは、キャロを自分のベッドに引き込もうとしている金髪ロングヘアーの親友、フェイト……のはずだ。
だが何かがおかしい。なんていうか、黄色い。いや、髪が黄色いのは解っている。肌が黄色いのだ。
「(落ち着け私……! この中にいるのはフェイトちゃんのはず……今のは目の錯覚だよ、うん、間違い無い……多分間違い無い……)」
「えーとエリオ……一応確認するけど、フェイトちゃん、寝込んでるんだよね……?」
「え……はい。今寝てたじゃないですか」
「いやなんか……うん……そうだよね。うん、うん……ごめんね、エリオ? 私も疲れてるみたいで……ちょっと目が……」
「え……大丈夫ですか、なのはさん……? あまり無理なさらない方が……」
「ううん、大丈夫だよ……次この扉を開けた時、私の目は元に戻ってるはずだから。」
「はぁ……それならいいんですが……」
なのはは軽く目をマッサージした後、深く深呼吸をした。自分の中で何度も「落ち着け私!」と繰り返す。
「……よし!もう大丈夫。開けるよ……!」
そうしてなのはは、再びOpenボタンをプッシュした。
「フェイトちゃん、お見舞いに来たよ……!」
そして笑顔で部屋に入る。
「ゴホッ……ゴホッ……来てくれたんだね……なのは……」
そこにいるのは、ベッドの布団で眠るフェイト。そして看病を続けるキャロ。
ただ、なんか黄色い。フェイトの体がなんか黄色い。それに、ちょっと筋肉質だ。
かろうじて髪の毛だけはフェイトの特徴をとらえてはいるが。
「ゴホゴホッ……でもなのは……少し遅かったみたいだ……
私はもう駄目かもしれない……」
「そ、そんな……ただの風邪なんだから、大丈夫だよ……!」
「ゴホッ……いや……私には解るんだ。もう時間が無い……
回復する為には、なのはの胸に抱かれてぎゅってしてもらうしか……」
咳込みながらも唯一の解決策をなのはに伝える。
「うぅ……フェイトさん……なんて健気なんだ……」
「抱いて治る病気って……」
そんなやり取りを見て涙するエリオ。その一方で、キャロはしれっとした目で見つめている。
「あの……その前にフェイトちゃん……一つ言わせて貰っていいかな……?」
「ゲホッ……ゴホッ……な、なんだいなのは……?」
「うーん……なんていうか、一言で言うとさ……
貴方フェイトちゃんじゃなくない……?」
「ぎ、ギクゥッ!? 何を馬鹿な事を言ってるんだい!? このセクシャルがぁ!」
「……だってフェイトちゃんってそんなテッカマンオメガみたいな声じゃないし……」
「ぶるぅああああああっ!! ち、違うんだからね……!? わ、私フェイトなんだからね……!」
大量の冷や汗をかきながらも弁明を続ける黄色フェイト。「3」の字をした口が焦りのあまりいくつにも枝別れしている。
「何言ってるんですか……なのはさん。どう見たってフェイトさんじゃないですか……」
「そ、そーだそーだ! そこのチェリーボーイの言う通りだ!」
涙ぐむエリオを利用し、尚もフェイトと名乗り続ける黄色い人。
「いや、だっておかしいじゃん! 明らかに! 騙されちゃ駄目だよエリオ!」
「そうだよ、エリオくん……本物のフェイトさんなら私をベッドに引き込んで朝まで……なんてするはずないよ……」
「キャロまで……!? うぅ……僕は一体何を信じればいいんだ……!?」
「……迷う必要は無い。ただ自分の信じる道を貫けばいいじゃないか。そして気持ち良くなればいいじゃないか」
なのはとキャロに説得され、心が揺らぐエリオ。黄色い人もなんか言っている。
「なんでそこで迷っちゃうの!? っていうかどう見たらこれがフェイトちゃんに見えるのかが謎だよ……!」
「あとそこの黄色い人、余計な事言わないで下さい! 私のエリオくんを惑わせないで下さい!」
もはやキャラを忘れてツッコミに徹するなのはとキャロ。
キャロがなんとなく意味深な発言をした気がするが今はそれどころでは無い。
「えーい、もうめんどくせぇ! そっちから来ないならこっちから行ってやるってぇーの!
こっからは戦いだ、そう! 死ぬか生きるか! 先に情けない喘ぎ声を上げた方が負けだ!ヒィ~ヒィ言わせてやるぜオホッホォーウッ!!」
突如ベッドから飛び出した黄色い人は、なのはの胸目掛けて飛び込んだ!
『マスター、ファイアリングロック、解除しました』
「えっと……うん、ナイスだよ、レイジングハート!」
飛び掛かる黄色い人……!なのはのピンチに、レイジングハートが反応した……!
「ヒィィィヒイイイイイィィィーーーーーーーーッ!!!!」
次の瞬間、黄色い人の情けない喘ぎ声(?)が病室に響き渡ったという……。
数分後。
「ちくしょぉ~……頑張れ俺のメルヘンボックスゥ……!」
黒く焦げた股間を押さえながら、床を転がる黄色い人の姿がそこにあった。
なのはが放つ桜色の閃光は、高濃度に収束され、黄色い人の股間を直撃したのだ。
「うぅ……その痛み、解りますよ……!」
「もうスルーしていい……? エリオ」
「この髪の毛、カツラだったんだ……やっぱりフェイトさんじゃ無かったんだ……!」
黄色い男から外れた金髪ロングヘアのカツラ。それを拾ったキャロは、黄色い男を見下ろした。
「……で、貴方は一体誰なの?」
「どうしてフェイトさんになりすましてたんですか……?」
「僕もなんだかおかしいと思ってたんですよね。風邪にしては声が低すぎるし……フェイトさんにしてはセクハラ多いし」
「まぁ待てよお前ら! そんな一度に質問すんじゃねぇよ!
あとチェリーボーイ、お前嘘つくんじゃねぇ~よ! 散々迷ってたじゃねぇか!? 」
エリオを指差しながら怒鳴る黄色い男。
次の瞬間、黄色い男は「ボワン!」という効果音と共に、何やら丸っこい姿へと変わっていた。
「な、なに……コレ!?」
「俺はマッハボーイ・音速丸……! 無限の刹那へ誘う音速の貴公子だ」
「か……かっこいい……!」
「どこがっ!?」
両手をにぎりしめ、身を乗り出すエリオ。キャロも「どんなセンスしてんだよ」みたいな目でエリオを見る。
「……で、本物のフェイトちゃんはどうしたのかな?」
「ははは、まぁ待てお嬢さん方。俺のあまりのクールさに欲望を押さえ切れないのはわかるが、まずは話を聞くに相応しい態度をだな……」
「へぇ……話を聞くに相応しい態度……?」
「あぁそうだ。まずは俺をぎゅっと抱きしめ、そして俺をそのたわわに実った胸へと誘い、それでねそれでね、ぐへへへへ……!」
『マスター、ファイアリングロック……』
「ノォーーーゥッ! わかった! わかったから! 少し落ち着きたまえなのはさん!」
「うん、わかったから。撃たないから早く話そう……?」
にっこりとスマイルするなのは。ある意味キラースマイルだ。音速丸も「3」の字をした口を(ry
やがて、音速丸はその重い口を開き、語り出した。いや……別に重くは無いが。
「そう……あれは数日前の事だった……」
こうして時は数日前へと遡るのである。
「という訳でここからは私、フェイト・T・ハラオウン視点で物語を進めます。
さぁ、はりきっていきましょう……!!」
ここはとある管理外世界のとある場所。フェイト(インパルスフォーム)は、忍者屋敷と思しき建物付近に潜んでいた。
「あ、どうも。私はフェイト・Tハラオウン……機動六課の(ry」
誰に話しているのかは知らないが、なんかこの作品的には長いので自己紹介は省略させて貰う。
「……と、いう訳で他の次元にまで被害を及ぼしかねない音速丸という男を懲らしめにきたんです!」
「あのー……説明終わりました?」
「はッ!? あなたは……!?」
フェイトは説明に夢中になっている余り、背後に他人の接近を許してしまったのだ!
「フフフ……どうやら貴女はもう私の虜のようだ。私の名はサスケ……またの名を仮面の貴公子!」
「ま、まさかあの忍者屋敷の……!?」
フェイトはとりあえずサスケの言葉の最初の一文を無視した!
「え……? あぁ、何? お客さん? シノブちゃんの親戚か何かかい?」
「え、えぇ……? いえ、あの、私は……」
「まぁまぁ、とりあえず着いて来なよ、案内するからさぁ」
「あ……いえ、その……だから私は……」
「いやーなんかシノブちゃんみたいな声が聞こえると思って来てみれば、まさかこんな美女に巡り逢えるとは……
ふふふ、どうやら神はまだこの俺を見放してはいないようだな」
サスケは忍者屋敷へと続く階段をどんどん登って行く。何やら変な妄想を抱いきながら。
「(でも、これはチャンスかも……! こうして忍者屋敷に潜入できれば……!)」
「あ、そうだフェイトちゃん」
「な……!? どうして私の名を!?
はっ!! さっき自分で全部説明しちゃったんだ……! 何やってんだ私ッ!!」
フェイト、執務官として最大の不覚!
「そのカッコいい魔法のステッキはアレじゃないかい? いわゆる魔法少女と呼ばれるコスでは……!?」
「いやあの……コレはその……あはは……」
フェイトは、「あれ……?打倒音速丸ってバレてない……!?」とか思いながらもなんとか作り笑顔で誤魔化した。
その時であった……!
「うわ、お前何女の子と歩いてんだよ!?」
「サスケ、まさかテメー一人だけ抜け駆けか!?」
「バカな……! サスケ、俺達との友情はどうしたんだ……! 共にアニメについて語り合った仲じゃないか!」
「いや落ち着けお前ら! サスケの様な男に、こんなまるでアニメの世界から飛び出したかのような美女がなびく訳があるまい!」
なんと、ゾロゾロと他の忍者達まで現れたのだ!
この由々しき事態に、フェイトも「たはー」と頭を押さえている。潜入どころかいきなり目立ち過ぎだ。
「えぇい、落ち着けお前達! 俺はただ、親切にフェイトさんを屋敷へ案内しようとしただけだ!
決してやましい事等考えてはいない!」
「そ、そうですよ……! 私はただ、サスケさんに道案内を頼んでただけです」
その言葉を聞いた忍者達は、悔しそうにサスケを睨んだ。
「あっ、サスケてめ……ずりぃ!」
「そうやっていい人ぶってフェイトさんにセクハラする気か……!?」
「危ないフェイトさん! その男から離れて!」
「あ、あの……えーと……私はどうすれば……」
苦笑いしながら忍者達を見るフェイト。
さて、ここで一度視点を変えてみよう。
忍者屋敷付近の上空。
凄まじい速度で空を駆ける者がいた!
「今日もこの大空をパトロール!! デリカシーの無い奴を許しはしない!!
音速を越えるこの俺のスピードに! ついて来られる物ならついて来てみなってみなってぇーッ!!!」
マッハ10……マッハ20……マッハ30……いや!これはもはやファイズアクセルと呼ばれる領域!
「加速がもたらす無限の刹那!!この俺、音速丸がもたらす戦いの新次元へと!魂は、加速するぅッ!!!」
……とは彼こと、音速丸の自称である。(実質時速4、5km程度)
そんな音速丸がふと、下を見下ろすと、そこには……
「おや……!? あれは凶悪な忍者達に絡まれるか弱き金髪ツインテールの美女ッ!!
この恐怖体験に、か弱い彼女のピュアハートは耐えられやしないさァーーーッ!!!」
お前どこのクーガーだと突っ込みたくなる程の勢いで、音速丸はフェイト達の元へと突撃した!
ここで再び、視点を戻そう。
フェイトはこの、まるで長らく女子との交流が無かった男子校にでも来てしまったかのような雰囲気に、少しばかり戸惑っていた。
その時……!
「いや……あの、だから私は……」
「おい、なんか急降下してきてないか……?」
「え……?」
「あれはまさか……!ガンダ(ry」
遥か上空から舞い降りる剣。
その正体は……!
「みんなの応援……! それが僕に勇気と力をくれるんだ!
これ以上その彼女に手を出させはしないッ!!!」
「と、頭領……!? いけないフェイトさん! キミは早く下がるんだ!!」
「ああ、早く逃げるんだ! あの黄色い人は我々に任せて!」
「え、えぇっと……もう何がなんだか……」
そして次の瞬間、フェイトの前に立つ忍者達は一瞬にして吹き飛んだ!
「うわー!俺達はもうダメだ! 逃げて、フェイトちゃん!」
「負けるの早ッ!?」
そしてフェイトの目の前に立った黄色い人……いや、音速丸は、倒れたサスケ達に平手を突き出しながら言った。
「大丈夫かいお嬢さん。この僕がいる限りセクハラなんて絶対禁止さ……!!」
「いや……セクハラっていうか……あの……」
ここで、再び視点を現在のクラナガンへと戻す。
なのは達は音速丸の話をおとなしく聞いていた。
「そしてか弱い彼女……いや、フェイトは俺に抱き着き、そして言ったのさ」
「な、何を……?」
「助けて頂いてありがとうございます!音速丸さん、かっこいい!
好き! 好き! だぁ~い好き!!」
「はぁ……」
「フフフ、さっきまでの涙が笑顔に早変わりさ! この愛の手品にはタネもシカケも……」
『マスター、ファイアリング……』
「待てぇい!! 今のはあれだ、番外編みたいなもんだ! こっからが本編なんだよ! 少し落ち着けよなのは!!」
「うん、最初から素直に話せばいいんだよ」
なのはと、そしてレイジングハートの尋問には、流石の音速丸もたじたじだ!
「……まぁそんなこんなで、フェイトを屋敷に案内した訳よ」
「あっ……なんか重要なとこ省略された……!」
さて、もう一度視点をフェイトへと戻そう。
フェイトは音速丸達に忍者屋敷へと案内され、今は居間でお茶を待っている最中だ。
「(あぁ……何故か敵であるはずの音速丸と仲良くなってしまった……
何やってんだろう私……)」
フェイトが落胆していた、その時だった。なんと、廊下から自分の声が聞こえて来たのだ。
「フェイトさ~ん、お茶をお持ちしましたよ~」
「あれ……この声……」
そして現れたのは、長い黒髪をリボンでくくった忍者……シノブだ。
シノブも、フェイトを見て動きが止まる。
「え、えーと……私、シノブっていいます!」
「私はフェイト・T・ハラオウン……」
二人はお互いを見て思った。
「なんだか他人とは思えない!」と……。
二人はお茶を飲みながら、しばらく雑談と洒落込んでいた。
その時だった。
なんと、今度は黄色いシノブ……っていうかシノブのカツラをつけた音速丸が現れたのだ。
「ウワーオッ!!」
「キャーーーーーッ!?」
「やめてーーーーッ!?」
そして音速丸のとんでもない姿に絶叫するフェイトとシノブ!
だが音速丸の横暴は止まる事は無い!
「イーヒッヒッヒィ、俺からかっこいい部分を抽出してまたくっつけたら元の俺になったでお馴染みの音速丸だ!
二人の美女が俺の登場を待っている! なら行くしか無いじゃないか! 待ってろ今行ってやるさこの音速さんがぁッ!!」
「フェ、フェイトさん、音速丸が暴走してます! このままじゃ次のレスくらいでフェイトさんはとんでもない事になってしまいます!」
「え、ええと……ええい、バルディッシュ!」
『Yes,Sir Jet Zamber』
フェイトの胸目掛けてダイブする音速丸。フェイトの絶体絶命のピンチに、バルディッシュが呼応した!
「オッギャァァアアアアアアァァアーーーーーッ!!!」
次の瞬間。例の如く、屋敷に音速丸の悲鳴が響き渡った。
「ひいいいい……おめぇ~そりゃいくらなんでもハッスルし過ぎだ、少し落ち着けぇ~い……」
「あ、あの……ごめんなさい、つい……」
股間を押さえながらのたうちまわる音速丸に、謝罪するフェイト。
「音速丸、なんでいつもそんな所にばかりダメージ喰らうんだろう……」
「シノブちゃん、それは音速丸さんのあの部分の日頃の行いが悪いからだよ」
「サ、サスケさん……」
顔を赤くするシノブ。
「と、とりあえずコレ……倒したってことでいいのかな……?」
「お見事です! フェイトさん!フェイトさんのザンバー攻撃には、流石の音速丸も一撃KOです! ちょっと可哀相だけど」
「あ、ありがとうシノブ……なんか勝っても微妙に嬉しくない相手だったけどね」
シノブとフェイトは、軽く微笑み合いながら頷いた。
「うわ~すっげ、なんか一人二役してるみたいに聞こえる~」
さて、ここで回想シーンは終わり。再びなのは視点へ切り替えよう。
「……という訳だ!」
腕を組みながら頷く音速丸。
「どういう訳か解んない上に音速丸ボロ負け!?」
「フフフ……フェイト・テスタロッサ……手強い相手だった。だが俺も戦士だ。かような女に負ける訳には行くまいて。
俺の凄まじい反撃に奴は為す術なく体力を消耗してゆき、そこで俺の慈悲の心が炸裂するわけよ!
俺の男気に感動したフェイトは自ら服を脱ぎ始め、そして……」
「さて、コイツどうします?」
「オブゥッ!?」
エリオの渾身の右ストレートが音速丸に直撃した!
「うーん……取りあえずフェイトちゃん探さなきゃなぁ……」
「あ、私なら大丈夫だよなのは。もう帰ってきたから」
「フェイトちゃん!?」
「はやっ!?」
フェイトはいつの間にかなのはの後ろに立っていた。しかも真ソニックフォームで。
「っていうかフェイトちゃん、今まで何してたの? それにその格好……」
「いや……なんだかシノブと意気投合しちゃって、中々帰して貰えなくって……
あっ、でも勘違いしないでね! 私の相手はなのはだけなんだから!
もうなのはが音速丸にセクハラされてるかと思うとついついリミットブレイクしちゃって……」
「あ、あはは……そうだったんだ……ま、まぁ私なら大丈夫だよ。軽く焼いといたから」
「そっか……良かった。
エリオやキャロならまだしも、もしなのはに手を出してたら、私そいつを細胞一つ残さずこの世から抹消しちゃうとこだったよ」
「あはは~、フェイトちゃんそれはやり過ぎだよ~」
顔こそ笑顔だが、フェイトの目は終始音速丸を睨み付けていた。
フェイトの殺気に充てられたエリオとキャロは、もはや口を開くことすら出来なかったという。今の彼らにはただ、震えながらフェイトを見詰めるしか出来ない……。
そして次の瞬間、愚かにも音速丸はタブーを犯してしまった。
「フハハハハァ! やるなと言われてやらない男がどこにいる! さぁなのは! この俺を受け入れろ!
ぐひゃひゃひゃひゃ、おっぱおっぱぁ~いッ!!」
一瞬の隙を付いた音速丸が、その名の如く音速でなのはの胸に飛び込んだのだ!
………………。
その日、クラナガンの医務室ブロックは、音速丸という哀れな男と共に壊滅した。
現場を見た者は、「黄色い稲妻を纏った巨大な剣が全てを破壊した。」と、口を揃えて言った……。
「やり過ぎですよフェイトさ~ん!」
「てへっ♪ なのはがピンチだと思うとついつい」
最終更新:2008年12月26日 00:41