魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
第一話「狩人」
これはA’Sの闇の書事件が終わり、不屈のエースオブエース「高町なのは」が15歳の時のお話。
「ちきしょう…ちきしょう…」
雪山でアタシと向き合うのは昔、はやてが見せてくれた本に載っていた「恐竜」とかいうやつとそっくりだった。
黄土色と青のストライプの「ソイツ」は任務中にいきなり襲撃してきてなのはを攻撃しやがった。
鋭い爪でなのはの腹を抉り、尻尾で雪に叩きつけてグラーフアイゼンで叩いたら身体を回転させて攻撃。
アタシの身体はその攻撃だけでズタボロになってしまった。魔法があまり効かない上にバリアジャケットを簡単に引き裂く爪と牙。
なんなんだよこいつは…!!
「ゴォアァァァァァァァァァ!!」
突然の咆哮、あまりにもでかい声のためついアタシは耳をふさいで目をギュッとつぶってしまった。
迫り来る足音。今の位置だと気を失っているなのはも巻き込まれてしまうだろう。
そして爆発音。目をつぶっていてもかなり眩しかった。恐る恐る目をあけるとなのはは鎧の男に抱えられていた。
「どうしたの!早くこっちへ!逃げるよ!!」
アタシは鎧の男に手を引っ張られながらその場から逃げた。ちょっと実感はないが、助かったんだ。
無我夢中で走るアタシ達。漆黒で禍々しい鎧を着て、一見どっかのヒーローもんの悪役に見える男はなのはを抱えてアタシの手を繋ぎながら走る。
しばらく走るとテントがたっているところに着くと中のベットになのはを寝かせ、兜を外してぷはぁ、とため息。
驚いた、という表現はおかしいだろうか。助けてくれた男はエイミィやクロノと歳はあまり変わらなさそうなやつだ。
光を受けて少し光る金髪を揺らしながらなのはに緑色の液体を飲ませる。
「ふぅ、備えあれば憂いなし…とはいうけどね。回復薬グレート持ってきてよかったよ。」
誰に言ってるのかわからない言葉を呟くとその回復薬グレートとかいうビンに入った緑色の液体をアタシにも渡した。
一口だけ飲んでみる。意外と甘い。ストロベリーアイスよりは甘くはないが薬…というと苦くて飲みにくいイメージがあったから少し安心した。
「ん…!!?」
甘いジュース風味のを飲んでいると傷がどんどんふさがっていく。何かゾッとして薬を落としてしまった。
「…もしかして飲むの初めて?」
「わ…わらうな!」
「あはは、ごめんごめん。その回復薬グレートは人が本来備わっている自己再生能力をただ速くするだけのものさ。
まぁ…確かに回復はしてるだろ?」
「え、うん。」
ということは?後ろを向くとなのはが不安そうに立っていた。回復していた。不安でいっぱいだったアタシは思わずなのはの所へ駆け出していた。
なのははアタシの頭を撫でる。今回ばかりはそれが許せる。いつの間にか泣いていた。血塗られた純白のバリアジャケットを掴んで、声を殺して泣いた。
少し落ち着き、男のほうを向くと笑っていた。さっきの笑いとは違って心の底から祝ってくれている穏やかな笑み。
「あの…あなたが助けてくれたんですか?」
「助けたっていうのには程遠いけどね。逃走に無理やりつき合わせちゃっただけさ。」
「いえ、でもこうして私とヴィータちゃんの命を助けてくれましたし。」
「あー…じゃあ俺っち自前の「お節介」っていうことにしてくれない?どうもそういう扱いは好きじゃない。」
「ふふ、そういうことにしておきます。」
なんとも照れくさそうに笑うお節介な男。なのはとのやりとりでアタシも自然に笑っていた。
それから男はいろんなことを話してくれた。自分のこと。その男の故郷は三つあって、ココット村、ジャンボ村、ポッケ村。今はポッケ村に住んでいるらしい。
あの恐竜に似た竜「ティガレックス」のこと。ティガレックスのほかにもいろんな竜がいて、そいつらのことを全部まとめて「飛竜」っていうこと。
驚いたけどアタシ達を襲ってきたティガレックスを見たから信じるしかない。
お返しにアタシ達は自分のことはもちろん、ミッドチルダっていうところから来て、管理局の仕事でここに来たこと。魔導士だってこと。
男はかなり驚いていたがウソだとは思っていないらしくちゃんと耳を傾けて頷きながら、質問しながらちゃんと話を聞いてくれていた。
ふと、空に一つの箱舟。次元艦、アースラだ。
男は目を見開き、かなり驚愕していた。まぁ、無理もないが。
「ありがとうございました。ほら、ヴィータちゃんも。」
「ありがとう…です。」
お礼を言うというのはどうも照れる。
お節介な男は苦笑しながら手を振って「じゃあな。運がよければまた会おう。」と飛んでいくアタシ達に向かって叫んだ。
たった少しだけしか過ごせなかった命の恩人と、別れた。
それから四年の歳月が過ぎて機動六課が設立された。
そしてJS事件も終わって機動六課がもう少しで解散の冬。今でも「アイツ」の姿は頭に残っている。
番外「ヴィータが見た『アイツ』の姿」
防具:ヴィータが「漆黒で禍々しい」という限り可能性としてはアカムトシリーズ、あるいはドラゴンSかブラックシリーズと思われる。
武器:描写はなかったがヴィータの証言だと「バルディッシュのザンバーフォームより少し細くて小さい刀」らしい。つまり太刀類ではないのか。
顔:結構ととのっていたそうだ。髪は金髪で後ろがツンツク。おそらくレウスレイヤーだろう。
性格:「お節介」としか言いようがないという。
声:「どっかで勇者王でもやってんじゃねーの?」とヴィータが言うくらいだからとりあえずあの人だろう。
最終更新:2008年01月01日 15:00