―――何故…自分はここにいるのだろうか…一体ここは何処だ?
―――何故自分は生きているのだ、馬鹿なありえん!…俺はすでに…
――――そう、俺はあの時確かに…操られたあいつに撃たれ、あいつに踏み潰され
死んだはずでは?
クラナガンのとあるジャズバー、其の店には多くの客がいた、その客の多くはあるバンドが目的とされていた。具体的にはそのバンドのある男が目当てだろう、
その男から奏でられるメロディーは聴く客の心を掴むだろう、そしてバンドの人たちも男の影響だろう、より男の演奏を引き立たせる。
「そうそう、ここのバンドがよくてね」
ベルカ聖王教会の騎士カリム・グラシアはグラスをかたむけ5名の女性の前でにこやかに話す。
「へぇ~騎士カリムにもこんな趣味があったとはなぁ」
時空管理局機動6課の隊長である八神はやては意外そうに言う。
「あらら、私だってこれぐらいの趣味があってもいいのじゃなくて?」
悪戯みたいな笑みを浮かべるカリム
「それにしてもよくジャズバーに言って、シャッハさんから何も言われないんですね」
八神はやて率いる機動6課「スターズ分隊」もはやミッドチルダ上に名を知られているエースオブエース高町なのはも意外そうに言う。
「いえ、シャッハには内緒で」
「にゃははははは、シャッハさん頭固い固いからねぇ」
納得したように苦笑いを浮かべる高町なのは、それに『以下同文だ』と言わんばかりの顔をするシグナムとシャマル
(ヴィータは子供と勘違いされそうなので行けず…ザフィーラ?誰それ?)そしてその相方でなのはの親友である
フェイト・テスタロッサ・ハラオウンもある席で以外な人物を見つけ意外そうな顔をした。
「あれ?あの人は?」
フェイトが指した先には時空管理局地上課のレジアス・ゲイズ中将とその副官を務めるオーリス・ゲイズの姿もあった。
「おそらく中将も、あの噂を聞きつけたと思いますわ」
カリムは言う、恐らく彼の目的としたバンドもまた同じだろう。そしてジャズの演奏が終わり別のジャズのグループがやってくる、そうここの客の大半が目的としたバンドであった、
そしてそのボーカルと思えるサックスを持った男が会釈する、そして演奏を行う、皆しゃべるのを止め、飲むのを止め、静かにその曲に聞き入った。そしてその男が奏でるサックスの
バリトンを聞くものを魅了した店に居る客も、店員もそして、あのレジアス・ゲイズも…高町なのは、フェイト・ハラオウン、八神はやて、シャマル、シグナム、カリムでさえもバンドが奏でるメロディーに聞き入っていた、
そして演奏が終わると客や店員から拍手が沸き起こる、無論先に述べた人物も皆同じだ。
「ね、私の言ったとおりでしょ?」
「本当にすごいねあのバンド」
「サックスの人が本当に上手いですね」
「そういえばあのサックスの奏者結構イケメンやな」
「あら、はやて?あの人の事あんな目で見てたの?ふふ、はやてもそんな御年頃ですしね」
「ち、ちゃうがな!カリム!」
4人はそうやってやりとりしているがシグナムとシャマルはあの男が奏でていたメロディーに惹かれながらもその奏者に
対して何かしらの違和感を持っていた。
(シャマル、あの男)
(ええ、シグナム、ただの奏者って言うわけではないですね)
最近血を見る事はほぼありえないし、自ら作り出すことはほとんどないと言えるが、はやてに出会う前は多くの惨劇を作り出し、
生み出し、主の命令に従うまま殺戮に興じていた期間の長い彼女達にとってそのサックスの奏者から匂うのは音楽家だけではなく
何処かしら血と硝煙の匂い…そして暗殺者の独特の匂いが感じられた。
「カリムさん、あの奏者の名前何て言うのですか?」
なのははカリムに問う、そしてカリムは奏者の名前を瞬時に挙げる。
「ミッドパレイ・ザ・ホーンフリーク」
~誰かの為にサックスが奏でるレクイレム~
「貴方達の御蔭で客が増えて、しかもあの管理局の正義の守り手やエースオブエース達まで貴方方の噂を聞きつけてやってきてくれて…こっちは嬉しい限りですよ」
そういって笑顔を浮かべる店主から受け取ったギャラは他のバンドに比べると遥かに多かった。
「まさか、あの管理局のエースオブエースや正義の守り手まで俺達のライブを聞きに行くなんてさ、流石はホーンフリーク、あんたのお陰だぜ」
組んでいるバンドのメンバーが俺の肩を叩く。
「ああ…そうだな」
俺は答え、疑問をぶつける。
「エースオブエースって誰だ?」
その問いに皆は一斉に驚いた顔をする。
「おいおい、あの高町なのはの名前が知らないとはな」
意外そうな顔をするバンド仲間。
「知らん」
素っ気無く答える、どんな奴だよそんな大層な仇名がついた女は?それに気づいたようにもう一人のバンド仲間が言う。
「ほら、中央の丁度ド真ん中にいただろあのあの女5人組、あそこにいたのさ」
「しかもあの八神はやてやフェイト・ハラオウンまで来てくれたよな。」
納得したようにバンド仲間は頷く、記憶から引き出す、ああ、いたなそんなやつらが…まさか!どうみても彼女らはそう見えんぞ。
「旦那、彼女達の事知らないのか?」
自分の事を慕うバンド仲間は雑誌を自分に渡す、そこには先ほどの少女達がにこやかに手を振っている写真が飾られている。
表紙にはこう書かれていた『ミッドチルダの華やかなる守護天使達』と…そして彼女達の特集などを見る、確かに自由に空を飛び、
魔法とか言うファンタジーの中でしかない物を現実で使用(正直この世界にやってきた当初こそは驚いたが)するのは驚くが…
―――ナイヴズやヴァッシュに比べると対したことはないな
と心の中でそう思う、そうあの人ではないあの存在に比べれば実に矮小な存在だ
「これからどうする?皆でパァーとやるか?」
そんなこんなでバンドメンバーが言う。
「そうだな、旦那は行くか?」
また別のバンドメンバーは言う、だが…
「すまんな、今日も早く帰りたい、どうもドンチャン騒ぎは苦手なのでな」
普通に言い返す自分に向かってメンバーはつまらなそうな顔をする。
「え~~またかよ~~~旦那」
「つまんね~」
「まぁまぁ、ホーンフリークはそういった人だし、ほら家には」
「「ああ、そうだな」」
一人のバンドメンバーの取り成しに二人のバンドメンバーは頷く。
「じゃあ、今日はここまで、んじゃ俺たちは行って来ます」
「音合わせは明日の夕方って事でじゃ!」
そうして自分を置いてバンドメンバー達は町に繰り出す、それを見送り、自宅へ帰ることにした、
そしてミッドパレイは町を見る、広がる高層ビルに煌びやかに光るネオン、町行く人は皆笑顔だ…
そして道路の至る所で見る、緑…自分の居た世界では全く見られない光景だったな…そう思う、
プラントと言う遺産にすがり、緑はほとんど見られなく、高層建築物もなくネオンのなく、
暗黒に包まれた町、生きていく為に食糧や水を求め争い、町の中で銃声が響かない事は一度もなかった。
それに比べると丸で…
「天国だな」
そう呟く、うん正しく天国だ、衣食住は働いている限り保障され、気候は温暖、緑は豊富そして…あの化け物達もいない、
治安も天国みたいだ…近頃ガジェットとか言うのが現れているとかよく聞くが、時空管理局とかと言う憲兵軍組織みたいなのが
それの対処にあたっているそうだ…あの世界はどうなっているんだろう?結局滅んだのだろうか?危機を乗り越えたのだろうか?
そう思うが分からない、それを見届けないまま自分は死んだのだ、ガントレットはどうなったのだろうか?最初は憎しみに凝り固まっていたが、
最後に会った時は何かを知ったように「殺してくれ」と言ったあいつ、恐らく生きては居ないだろう、あそこに居るのは狂信者(レガート)と化け物(ヴァッシュ)
…生きている道理はない…すまないな相棒…俺だけこんな所にいて…そう思案していると家が近い事に気付く、そして目に24時間営業しているディスカウントストアが入る
…そういえば食糧買っていなかったな、そう思い店に足を運ぶ。そして品揃えを見て内心感嘆する。
「こんな品揃え…あの世界では見れなった光景だな」
そう思いつつ、食糧を籠の中に入れていく。ある程度買い物を済ましてある棚が目に入る、子供向けと思われる玩具やヌイグルミが置かれていた。
そして鎮座しているウサギのヌイグルミを手に取り籠の中に入れる、それぐらい買うだけの金は今回貰ったギャラから差し引いても充分範囲内だ。
そして店から出て、残り少ない家までの道を歩く、明かりは付いていた、まだ起きているか…ドア
を開けると待っていたように赤と緑のオッドアイの目を持つ小さな女の子が自分に抱きつく。
「お帰り、パパ」
「ヴィヴィオ、まだ起きていたのか?」
「え?うう」
怒られるのかと思ったのか少女は泣きそうな顔をする。
「ふぅ、出来るだけ早く寝とけ」
「はい…」
怒られはしなかったがシュンとする少女、そして袋の中から例のヌイグルミを取り出し渡す。
「土産だ、今日は結構な収入が入ったからな」
そのヌイグルミを手にとり目を輝かせる少女。
「パパ、ありがとう」
「ああ、分かったから早く寝ろ」
「うん、おやすみパパ!」
少女はヌイグルミを抱え、寝室へ向かう。
こうも子供の感謝がこうも温かいとはな…ミッドパレイは思う、今までは殺戮に明け暮れた…一人の目標を殺す為にその場に居た全員を殺した、
そしてあの化け物の実働部隊として…老若男女すべてを…それが今やたった一人、少女の笑顔の前に形無しとはな、皮肉めいた笑顔を浮かべる…
相棒(ガントレット)やニコラスが見たらどう思うのやら?小さなテーブルに酒と小さなグラスを置き、小さなグラスに酒注ぎ一気に煽る、
酒の魔力に一瞬魅了されるが一息つくと回想する、自分がここに来てからの事だ…
あの時自分は路地裏に倒れていた、そして病院に運ばれていた、そして窓に映る光景に驚いた、自分の居た世界では決して見られなかった光景、
死んだはずの自分が飛ばされた場所が…そして病院から出た、自分が持っているのはこの世界では禁じられていると言う質量兵器であるハンドガンと
愛用のサックス『シルヴィア』とこの世界では役に立たない$$と…染み付いた暗殺者、殺戮者として自分…確かに自分の能力をあの管理局という組織が観れば確実に食いつくだろう…
だが今更正義感気取りなんて自分の性にあわないし。正直言ってもうあの道に入るのはコリゴリだった(確かにやっていける自身はあったが)、あの化け物達(ナイヴズ、ヴァッシュ)
を見てもうコリゴリだった、それにあの化け物に対して怯える日々もない、平穏に生きたい、あの道はもうこりごりだ。…なら自分に何が出来る…客を魅了するだけの技術はある
…そして始めたストリートライブ、そして道行く人を魅了する噂を聞きつけたあるバンドが接触してきた。
「うちのバンドのサックス奏者がやめちゃったんだ、いいサックスの奏者を探しているのだが?お前はどうだ?」
そんな感じだった、そして始めたバンド活動、自分の音感をただ音楽の為に使った…人を殺める為ではなく、魅了する為に…
そして自分の音感の下指導したバンドは急成長を遂げ、今ではジャズバーに入ればそれこそ店は満員と言う超人気バンドになった…
そして最初は橋の下(金なかった)で暮らしていたものの、その収入で小さいながらも一軒の家を借りる事が出来た。
それで満足だった、自分が求めたのは実際こんな道だったかもな…苦笑する。
そしてついこの前だっただろうか、ある日町を歩いていると(赤い髪した少年とピンクの髪をした少女がデートしていたのが印象的だった)、
路地裏で少女が倒れていた、名前はヴィヴィオと言った、服は粗末で手に鎖が巻かれていた(鎖は何かを運んでいたと思わしき結び目が二つあった)
病院に運んだが…これからどうしようかと思った、警察にでも預けようかと思った…だが目を覚ました「ヴィヴィオ」と名乗る少女はちょっとだけ
看病した自分にすごく懐いた…そして色々ありバンド仲間の支援もあり結局自宅に置いている。そして彼女は自分の吹くサックスの音を凄く好んでいた、
知らない曲なのに、嬉しそうに聴く…子を持つ父親とはこんな者なのかな…そう思ってしまう、いつかは別れてしまう関係だと割り切っているが
…まぁこういったのも悪くはないだろう、ミッドバレイはそう思った。
―――――それが覆る日がやってきた…
ふと出かけていた二人、そして目にしたクラナガンが…管理局が燃えていた…
「何のつもりだ?」
ミッドバレイは少女に言う、彼の前には黒服に身を包み、紫の長髪をした少女だ。自分の背後ではヴィヴィオが怯えていた。
「聖王の器…返して…」
無表情のまま少女は言う、『聖王の器』なんの事だ?
「知らんな、関係ないことだそうそうに帰ってもらおう」
「…ガリュー」
少女は何かを呼び出す、ミッドバレイは自分の真横に何かがやってくる音が聞こえた、明確な殺意を持った音
…そこに『シルヴィア』のケースを向ける、鈍い衝撃が身体に伝わる、ガリューと呼ばれる全身黒尽くめの虫みたいな者の拳が
ケースに当たる、強力な一撃だがあの世界で作られた特殊な鋼鉄製のケースはその一撃を受け止める、
そして少女は自分に向けて指を指すそして…
「邪魔…」
指から何かが放たれた、それをミッドパレイはギリギリでかわした…ミッドパレイは歯を噛み締める、
あいつらは確実に自分を潰そうとしている、何故だ?それは…怯えているヴィヴィオに目をやる。
―――そうかこいつが、呼び寄せたのか…こいつを渡せば…
―――もう落ちる所まで落ちたんだ、こいつには何の義理もない、
…そう思うが…
―――違う!
それを否定する。
―――そこまで落ちても、足掻き続けてやる。
―――折角やり直せるチャンスが着たんだ!
――――ならやってやろうじゃないか!
ケースを投げ捨て『シルヴィア』を取り出す、そして自分は実感した、誰かの為に…守る為にこれを吹くのは初めてだと…そういえば、
ニコラスも孤児院の子供達を守る為に戦っていたんだっけ?ミッドバレイは笑う…そして息を吸い込むとシルヴィアに吹き込む
…相手を死に追いやる音響攻撃を…だが加減した、相手は子供、そしてこいつ(ヴィヴィオ)の前で殺す所を見せる事は出来なかった。
その指向性の持った殺意を持った衝撃波が少女…ルーテシアを襲おうとした、それに対し殺気を感じたガリューはミッドバレイが放つ前に
ルーテシアの前面に踊り出ると盾になった。そしてその衝撃破と殺意を持った音がガリューの全身を舐める…そしてガリューは体中の穴から血を噴出し、吹き飛ぶ…。
「ガリュー!」
ルーテシアは叫び、ガリューの元へ寄る、その隙をミッドパレイは見過ごさなかった、気付かれないように足音を様々なノイズの中から聞き分け、
自身のシルヴィアから放つ音をぶつけ合わせ無音状態にしてルーテシアの背後に回り、首筋に手刀を打ち込む。ガリューに倒れるルーテシア。
「殺しちゃいないさ…お前も…そのガリューとか言うの奴もな」
ミッドパレイは呟くと怯えているヴィヴィオを抱きかかえる。
「怪我はないか?」
「う、うん」
ミッドパレイはヴィヴィオを抱えて離れる事にしたミッドチルダから…
「聖王の器の回収に向かったルーテシアお嬢様との通信が途絶しました」
この騒動を起こしているスカリエッティの秘書でもあるウーノは現状を伝える。
「…役立たずが…」
スカリエッティは吐き捨てる、それにウーノは一瞬非難じみた目で見るが言葉を続ける。
「どうしますか?」
「ガジェットを向かわせたまえ…」
素っ気無く指示を出すが内心うめく…あの器の親とかになっている奴…ミッドパレイとか言ったなどんな奴なのだ?
調べたデータはアウノウン、そうミッドチルダに籍はないのだ。
ミッドパレイはクラナガンにある廃墟へとやって来た、そしてミッドパレイはヴィヴィオを廃墟の大人一人が入れるぐらいの
地下物入れにヴィヴィオを入れる。
「ヴィヴィオ、いいと言うまで出てくるなよ」
「うん…パパ…」
ヴィヴィオは何か言いたげだった。
「どうした?」
「帰ったら…キャラメルミルク…」
「ああ、分かった、好きなだけ飲ませてやるよ」
――――やれやれ…変わったな自分も
そうしてミッドパレイは至る所崩れ落ちた道路で立っていた…そして人間より少し大きめの球体と思われる物や
人間より若干小さめの細長い球体の物が自分に向かって飛んでいた…恐らくニュース映像で観たガジェットとかと言う奴だろう
…まぁ所詮いくら数を揃えた所でもな…、そう思いながらミッドパレイは息を吸い込みシルヴィアに息を吹き込む…。
「む、むかわせたガジェットが全滅しました!」
「な、何故だぁぁぁぁぁぁ!!?」
流石のスカリエッティも叫ぶ、馬鹿な!確かに相手の男はアウノウン、しかし観測された魔力は全然見受けられない。
少なくともBランク武装局員相手でも有利な展開にもっていけるガジェットが何の魔力を持たない人間によって瞬殺された、
不味い、このままでは私の計画が!私の理想が!私の夢が!歯噛みするスカリエッティ、強くかんで歯茎から血が出ても気にしていなかった。
「ナンバーゼロとF計画の残滓の確保は後日だ!まずは器だ!」
スカリエッティは叫んだ、それを尻目にウーノは冷静にナンバーズに指示を出す、そして指令を追加する器の確保と器の守護者(ミッドバレイ)の確保を優先させる事。
ミッドバレイを取り囲むように8人の女性が現れた、ナンバーズと呼ばれる戦闘機人…。
「見つけたぞ、演奏はそこまでだな」
リーダー格と思われる長身短髪の女性が口を開く。
「この中断…死より高くつくと思え」
ミッドパレイも憮然としたまま返す。
「別に殺してしまってもいいッスよね?」
片腕にシールド状の物を装備した赤髪の女性が言う。
「ケッ!こんなスカした野郎…嫌いなんだよ!」
同じ赤髪だが、金色の目をした女性が言う。
「待て、ルーテシアお嬢様やガジェットを退けた実力者だ。舐めてかかるな」
銀色の長髪をしているがその中で最も小さい身長を持つ少女が諌める、そして黒い長髪、同じくピンク色の長髪も
女性も両手に持った剣らしき武器を構える、そしてその後ろで短髪の一見男と見える女性と大きな狙撃銃みたいな物を構えた
女性が取り囲んでいた、そして…
「うふふふのふ~~、流石は守護者でもこうなってしまってはもう御仕舞いですわね」
それを見下ろすように眼鏡をかけた女性がクスクス笑う。
「…状況は不利だな…」
ミッドバレイは思うが、ほくそ笑む。
「だがガンホーガンズの超異常殺人集団にくらべれば!」
音を聞くと彼女達は身体の一部が機械で出来ていると実感した、そんな手合いはあの世界には沢山入る、手合わせもした。
そしてミッドバレイはナンバーズと呼ばれる女性達から攻撃をかわし始めた、それは丸で見切ったように、
彼には音を聞き分ける力があった、それは常人では出来ないほど、多くのノイズから一つの音を探り出すこと何て簡単だった、
そしてミッドパレイが居た世界…生まれた時から日夜銃弾が飛びかうあの世界、其の中で殺人者として生きてきた自分…、
銃弾を掻い潜り続けてきたミッドパレイにとってナンバーズの攻撃は児戯に等しい行為だった、遠距離からの狙撃も中距離から
の支援攻撃も、近距離での打撃攻撃も…ミッドバレイは攻撃に移ろうとしない…理由は待っていた、ある者を…
「ク!こいつ!」
リーダー格と思われる女性、トーレはうめく。こいつは何だ!こちらの攻撃がすべて読まれている、何者なんだ、たしかに手に持っている
サックスはデバイスやISと言った物ではなく、そして本人からも全く魔力というものが感じられない、だが相手の動きが止まる、
万が一に供えて地下に潜り込んでいたセインが相手の足を掴んだのだ、そしてチンクからスティンガー、セッテからスローターアームズが放たれた、
殺傷設定に変更された二つの武器は何の対魔法装備をしていない相手をいとも容易く…だがそれがミッドバレイが待ち望んだ事だ。
「かかったか…」
ミッドバレイは足を誰かが掴んでいる事を確認する、そして自身に向かってくる10の投擲物の音を感じるとサックスを咥え
息を吹き込んだ、サックスから放たれる衝撃波が10の投擲物に目掛けて突き進み相殺する、ナンバーズと言う女性たちが
驚愕の目で見たのは魔法でも掛けられた様に静止するスローターアームズとスティンガー…
「ば、馬鹿な」
チンクはうめく
「簡単な理屈だ、どんな物でも飛んでくるのは空気の振動―――『波』だ。
全く位相の『波』をぶつけてやれば相殺されて0となる…」
ミッドバレイは原理を言った。
「あ、ありえない」
トーレはうめいた、単純な事ではない、この廃墟の中を一体どれだけの音が交っていると思っている
…反響、共鳴まで混じってノイズだらけだ…それらの干渉を聞き分けただと…魔技だ…。
「茶番で塗り固めたギグもここまでだ」
ミッドバレイは息を吸い込む。
――――もう使わないと思った…
――――もうこの道は通らないと思った…
――――だが守る為ならば…
――――使おう…ほんの一回だけ…
「皆、一斉に攻撃をかけろ!」
トーレの叫びにナンバーズが一斉に攻撃をかける…だが…
「遅いな」
いつもの仕事のようにシルヴィアに息を吹き込む
…そして放たれた物理的な衝撃波に加えて痛覚を波長とシンクロさせ体の内部に
直接的に叩きつける技を出す。秒速340mの技をかわし、防ぐ術は
…一部(通用するとは思えないナイヴズ、似たようなヴァッシュ、そしてニコラス)だけだろう。そして…
衝撃波の跡は9人の女性が倒れていた、皆顔面の穴と言う穴から血を噴出して…戦闘機人と言っても所詮は人間、
体の内部を破壊されてはもはや行動も…いや生すら行えない。
「ま、まさかセインが潜っている事を知っていて…ば、馬鹿なッ…あ、ありえない…」
クアットロは怯えたように呟く…戦闘に特化したナンバーズを…姉や妹達を一撃で潰した相手を、
信じられない光景だった、そして次はどうすればいいのか分からなかった、そして男がこちらを睨む、
そう最初から自分がいた事を知っているかのように…男は姉たちを屠ったサックスを咥える。
「あ、あ・・・あ」
明らかにクアットロを狙ったものだ。だがクアットロに避け、防ぐ術はない…クアットロの顔が歪む。
「イ、イヤ…ウーノ姉…ドクタァァァァァァァ、た、助K…」
言葉は続かなかった。トーレ達を殺した衝撃超音波がクアットロを包み混む。
「…終わったか」
ミッドバレイは呟く、周りには9人の女性…そして奥に一人の女性、人としての機能は停止しているだろう
…それを無言のまま見つめミッドバレイはレクイレムを彼女達に吹いた。
演奏が終わるとミッドバレイはヴィヴィオの隠れている場所まで戻った…娘の下へ…
「お、終わりだ…何もかも…」
スカリエッティは縮こまり、ブツブツと呟く…最初の自身に満ち溢れた姿は想像できないほどに
…自慢の作品が呆気なく魔力の持たない人間の手によって屠られた…しかも全員が、自信をもって送り出した全員が
…そして自分の夢が、望みがすべて絶たれた事が…もう自分が管理局に捕まるのは時間の問題だろう…
「結局、戦闘機人達を倒したのは誰やろうね…」
八神はやての表情が曇る、あの襲撃を行っていた戦闘機人は突然方向を変え廃墟へと向かった、
そしてガジェットを駆逐して、機人たちが向かった廃墟へ向かうと、10人の機人が死んでいた、
顔の穴という穴から血を流して。死亡解剖の結果、死因は「衝撃波を当てられた事による内臓ならびに脳の破裂」。
…だがそれを行ったのは誰かとなるとはやては首を傾げる。いや、はやてだけでなくこの場にいるなのはもフェイトもカリムも。
…衝撃波を直接与える魔法なんて聞いたことがない…一体どうやって?
「どれにしても…酷いよ…あれは…」
なのはは言う、初めて目の辺りにする人の死、彼女に与えたショックは大きかった。
「そうだよね…」
フェイトも言う、あの光景にフェイトはぞっとした。しかしミッドチルダにそんな事が出来る
管理局の人間がいるのか?それに管理局の魔道士は全員本部で戦闘を行っていたはず…。
「ま、まぁ、犯人であるジェイル・スカリエッティと本部にいたナンバーズは逮捕されたんやし
…それに、久々にあのバンドの曲聴ききたんや、ああいったことはうちらの本分やない
…クロノ君達に任せよう」
そう言ってはやては、バンドのボーカルであるサックスを持つ男が曲を奏でる音に聞き入った
…その奏者がナンバーズを殲滅した男だとは誰も知らない…
最終更新:2022年09月09日 21:36