なのは×バトルサッカー×ウイニングイレブン6
魔法少女リリカルなのはイレブン~フィールドの覇者~
「きゃあああああああ!!!」
スバルはゴジラの必殺シュート『火の玉ボール一号』に体ごとはじかれ、ボールはゴールに突き刺さる。
ゴール前、スバルとゴジラの一対一のガチ勝負は、必殺シュートに軍配が上がったのだ!
しこたま地面に体をぶつけたスバルを、サイドバックのティアナがかけ寄り抱き起こした。
「スバル……!? 腕が……。腕が折れてる――!?」
「げほっ、げほっ……うん。折れちゃったみたい……。またマリーさんに迷惑かけちゃうかも……」
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
「でも……私くらいしか。私くらいしか、向こうのチームのシュートを止められないんだもん……。なのは
さんのシールドだってウルトラマンセブンさんの『アイスラッガー』はとめられなかったし、フェイトさん
はキングギドラさんと競り合いしなきゃいけない……。ここで下がるわけにはいかないよ……」
「だからって……」
「大丈夫。腕は二本あるんだし、リボルバーナックルもギンガ姉から借りてきてる……。片手でもいけ――
ごふぅっ!」
「なのはさん!?」
いつの間にか二人に近づいていたなのはが、スバルのみぞおちに拳を叩き込んだ。
「なの……はさん……そんな、どうして……」
「スバル……大丈夫だから、ゆっくり休んで」
スバルは眼に涙を貯めながら、ふるふると頭を振ったが、そのまま意識を失ってしまった。なのははばた
りと倒れるスバルの体をささえ、審判のファイター・ロアにタイムを要請した。運ばれてきたタンカにスバ
ルを横たえる。
「なのは……さん……」
うわごとのようにそう言いながら、スバルの眼から涙が落ちる。なのははスバルの頬をなぞって落ちる涙
を指でぬぐいながら、待機状態にもどったマッハキャリバーをスバルの胸に置いた。
「お願いします」
二体のラドンが運ぶタンカを見送りながら、なのはは決意を新たに、相手フィールドをにらみつけた。
「スバル……スバルの意思は私が引き継ぐからね……ロアさん! キーパー交代! スバル・ナカジマから、
高町なのは!」
観客席が一気に盛り上がる。
フェイトがなのはに駆け寄った。
「なのは……くれぐれも無茶しないで。必殺シュートの直撃で吹き飛ばないのは、ダブルゼータさんくらい
だから……」
「うん。フェイトちゃんも、キングギドラさんとの競り合いで怪我とか――もう遅いかもしれないけど――
しないでね」
「分かってる」
なのはが差し出したてに、フェイトはハイタッチをキめる。二人は正反対の方向を振り返り、それぞれの
ポジションへと帰っていった。
「今日の試合は、ラフ・プレイが多いですね~」
「気をつけてプレイしてほしいですよ」
すでに五人の退場者がでているというのに、カビラと中西は紋切り型の台詞を実況席で吐いていた。
時は三日ほどまえにさかのぼる。ジェイル・スカリエッティ事件とよばれる一連の事件を解決した機動六
課はあらたな任務と訓練をおこなっていた。
そして暗い暗い暗すぎる、裸電球一個で照らした薄暗い室内に、スターズ、ライトニングの隊長と八神は
やて部隊長の姿があった。
「へ……? 今度はサッカーやるの?」
高町なのはは今回のミッションについて、当然の疑問を六課部隊長はやてにぶつけた。
なんぞ、ロストロギア関連の事件でサッカーをしなきゃならんのか。
「はやて……このまえバトルゲートボールで大敗したばかりなのに……」
ヴィータはうつむきながら言った。先日ラドンとビギナ・ギナにゲートボールで負けたヴィータは、彼ら
――コンパチヒーローズにトラウマを持っている。
そのほかにも、機動六課は『異世界との交流』を目的としたさまざまな競技に借り出されている。
大相撲やらドッジボールやらゲートボールやらエアボードやら。
その相手となるのが各次元世界の代表選手で結成された『コンパチヒーローズ』だった。ほかにも『ラウ
ンドナイツ』や『マグナイト・テン』やら『ゼウス』やらが参加していたが、いずれも『機動六課』か『コ
ンパチヒーローズ』にやぶれさり、二つのチームはどんな競技でも頂上決戦をおこなっていた。
「最近負け続きだもんね……わたしたち」
だが、なのはの言葉と裏腹にこの一連の行事はかなり大成功していたりする。フィールドで生まれる名場
面が観客を魅了し続けているのだ。どっかのアイドルが作ったフットサルチーム以上の人気が、いまの機動
六課にはあったりする。
特に毎度繰り広げられるフェイト・T・ハラオウンとキングギドラの対決は、もはやファンのなかでも語
り草になるほどの迫力を持ち、ファンの間では貝獣大決戦と呼ばれていた。
ちなみに言われる本人達は「こ、光栄です……」「わ、私達がですか……光栄です……」と顔を赤らめな
がら言うもんだから、さあ大変。さらにコアなファン層がくっついてきた。
ほかにもスバル・ナカジマ対セブンのガチンコドッチボール対決やら(両者ともスバルとセブンを残して
全滅、両者のHPが同時にゼロになるという劇的な幕切れという決着だった。ファンの間では再び二人のガ
チンコ対決が行われるのを待ち望む声が聞こえる)、ティアナ・ランスターとザクⅡの頭脳戦(二人をチー
ム一の凡人と侮っていたファンたちをうならせた。二人を神に選ばれたライバル同士と見るファンが多い)、
エリオ・エリオモンディアルとRXの疾風対決(別名、盗塁対決ともよばれている)やらが展開されていた。
「最初は失墜した管理局のプロバガンダだったんですけど、思いのほか人気でちゃって。やめるわけにはい
かなくなったんですよ」
と、苦笑しながら語るのはコンバチバトル会長のダーク・ブレイン氏。サッカーのメッカである管理外世
界「地球」で、ガーナのサッカー協会会長ニャホニャホ・タマクロー氏と会談した折の台詞だ。
本人達のあずかり知らぬところで、かなりの興行収入をほこるこのモヨウシを、いまさらやめるわけには
いかないのだ。
「で、今回はサッカーだというだけや」
監督兼オーナーという立場のはやては、どこか他人事のように言った。
面々は同時にため息をついた。
「そんな雑な説明されても……大体、試合なんてどうでもよくて、私達の衣装やら、動きやらを見に来てる
ファンがあまりにも多いような気がするんだけど……」
実際、そんなファンも多かった。大相撲のときの衣装――Tシャツとスパッツにまわし姿という仮装みた
いな格好がどこかのだれかに大ウケし、海賊版のブロマイドが大量に発行されたという。とくにシグナムと
フェイトのブロマイドは『飛び道具』扱いされ、品薄が続いていたと、調査に入ったクロノが語った。
シグナムがふむ、とうなずきながら、
「テスタロッサの動画もアップされていたな。ニコニコに。コメ数が一日で一万を超えていたぞ。削除要請
はしておいたが」
「あ、ありがとうございます……」
フェイトがおずおずとシグナムに頭を下げる。
「その前にダウンロードしておいた……。エースと抱き合うテスタロッサの艶姿は保存ものだったからな…
…(ボソッ」
「……シグナム? いまなにか言いました……?」
「気のせいだろう。ですが主はやて。地球にすんでいたことがあるわれわれならともかく、ミッド出身の人
間はサッカーなどしらないのではないですか?」
シグナムがはやてに聞き、はやては神妙な顔をしながらうなずいた。
「そやな。でも試合はあさってやから」
「「「「「「「な、なんだってぇぇぇぇぇ!!!???」」」」」」」
「スタジアムの都合がとれなかったんよ」
「だ、だからって! あと二日の間にスバルやティアナたちにルールとフォーメーションを教えなきゃいけ
ないの? 無理だよ、そんなの!?」
いろんな意味で戦技教導官をやらされているなのはから、当然ともいえる悲鳴が上がった。
「大丈夫や。ラグビーのときなんて一日だけやったろ」
「そのせいでフェイトちゃんがキュベレイさんにとび蹴りを見舞ったでしょ!」
「あ、あれははやてとなのはが『キック! フェイトちゃん、キック!』なんて殺気めいて言うから……」
フェイトがあわてて否定に入った。
「と・も・か・く! これは上の決定や! これから三日間、全任務をほかの部隊に請け負ってもらうんで
心配あらへん! ここは心を修羅にしていくんや! 我らは阿修羅の路を往く! 大体ウイイレ6があるん
やから、ルールならやりながら教えられるやろ、なのはちゃん!」
こうしてコンパチヒーローズとの次の勝負はサッカー対決になったのだった。
前線メンバーがテレビとゲームに二日間くぎずけにされたのは、六課の面々とジョン・カビラしか知らな
い。さてさて、どうなることやら。
次回『燃える復讐鬼。キュベレイの復讐』
最終更新:2008年01月02日 13:44