「えっ・・・朱雀・・・さん・・・?」
「なのはちゃん・・・なのか・・・」

なぜ・・・こんな出逢いをしてしまったんだろう・・・
なぜ・・・彼女と戦わなければならなくなってしまったんだろう・・・
そう、全てはあの時・・・
春先に起きたあまりにも唐突な「出逢い」から全ての始まりだったんだ・・・


「それじゃ、行ってくるよ。はやて」
「うん、気ぃつけてな。朱雀兄ぃ」

僕の名前は八神朱雀、地元の高校に通う普通の学生だ
僕にははやてという妹がいる
母は妹を産んで直ぐに亡くなり、著名な建築家だった父と3人で暮らしていたんだが
妹が小学校入学の直前に原因不明の下半身麻痺を起こし、僕と父は妹の介護に追われる事となった
父は勤めていた大手の建築会社を辞め、自宅での委託設計業を興し、
僕も小さな頃から通っていた古流剣術の道場を辞めて、妹の介護を手伝う様になった
しかしその父も2年前に交通事故で他界し、親戚の居なかった僕たちは天涯孤独の身の上となったが、
幸いにも父の古い友人が僕たちの後見人を務めてくれる事となり、僕たちは施設に送られる事無く
今までどおりの生活を送れるようになった
妹の麻痺は依然として良くはならなかったが、妹も進んで家事を手伝う様になり、
決して楽とは言えなかったが、慎ましいながらも穏やかな生活を送っていた
だが・・・僕が高校2年になったばかりのあの日の夜、事件が起こった・・・

「それじゃ、気をつけて帰るんだぞ」
「はい、今日は有難うございました、高町師範」

僕は学校の始業式の帰りに以前通っていた道場の先生に偶然会い、夕飯をご馳走になって
多くの果物やお菓子をお土産に貰っていた
いつもの帰宅時間を大幅に過ぎていたので大急ぎで家に帰ろうとしていた
「すっかり暗くなってしまったな・・・だけどはやての好きなお菓子も沢山貰ったから
これで許してくれるかな・・・」
息を切らしながらようやく家の姿が見えるところまでたどり着いた時、2階の窓ガラスから眩いばかりの光が
放たれているのを目撃した
「あれは・・・はやての部屋だ!一体何が起こっているんだ!」
僕は持っていた荷物を投げ捨てて家の中に入り、土足のまま2階のはやての部屋の前まで駆け上がった
そして部屋のドアを開けようとした瞬間、右腕に凄まじい衝撃が走った
「痛ッ!何だ今のはっ!はやて、いるのか!返事をしてくれ!」
僕は無理矢理ドアをこじ開けようとするが、ドアに触れるたびに強烈な激痛に全身が襲われた
「くそっ、こうなったらドアを突き破るしかない!」
意識を集中させて僕は全力でドアに突撃していったが、ドアから火花が飛び散り
僕の体はドアの反対側の壁に吹き飛ばされた
「ぐっ・・・まだだ、もう1度・・・!」
僕は左肩に意識を集中させて再びドアに突撃していった
またもドアから火花が飛び散るが、僕は激痛に耐えながら左肩を突き出していた
「ううっ、開け、開いてくれぇぇぇっ!!!」
その時だった、僕の体が突然白く輝き、火花を押し返していった
そして大きな爆発音と共に部屋のドアは木っ端微塵に吹き飛ばされた

「ええっ!?嘘っ!私の結界を!?」
「何者だ貴様!!我が主の前での無礼は!」
全身のダメージで意識が朦朧としていた僕が見た景色に、自分の目を疑った
はやてのベッドの前に黒く光った文様・・・みたいなものが浮かび上がり、その上に3人の黒衣の人間が立っていた
しかもはやてはベッドの上で気絶していて更にその横に同様の黒衣をまとった少女が横たわっていた
「お前達こそ何だ・・・!はやてに、妹に何をしたぁ!!」
僕はその人達を睨み付けながら言い返した
「何っ!?それは真か!?」
「おい、マジかよ・・・」
4人の不審者たちは皆愕きの余り呆けていた
僕はそんな彼らを無視し、妹の許へと駆け寄った
「はやて!おいはやて!無事か!?返事をしてくれ!!」
「ん~、あっ、すざくにぃやぁ~、おはよ」
僕の言葉で妹が目を覚まし、僕は安堵のため息をついた
「なぁ~、ちょっっと聞いていいか?」
妹の隣にいた少女が質問を投げかけた来た
「あぁ~、あんたはさっきの~」
「おい!お前・・・!」
「おめーじゃねーよ、なぁ、コイツホントにおまえの兄ちゃんか?」
「うん、このひと、うちのに~ちゃんやで~」
妹の発した言葉の後に、奇妙な沈黙が流れた・・・

「もっ、申し訳ありません!主の兄君とは露知らず斯様な無礼を・・・!」
「しょーがねーだろーが、知らなかっただからよー」
「くっ、不覚!主を守護するべき立場にありながら・・・!」
「ああっ!本当にすみません!いっ、今手当て致しますから・・・!」
「何なんですか貴方たちは!いいから出てってください!」
「いや、我等は貴方達を守護するために・・・!」
「セ○ムなんて雇うお金はありません!いいから出てってください!」
「セ○ムぅ~?なんだそりゃ?」
「あの、朱雀兄ぃ、落ち着いて・・・」
今この部屋に居る人達全員が完全なパニック状態に陥っていたが、その時下から大きな物音と共に聞こえてきた声が
状況は更なる混乱をもたらす事となった・・・
「すみません、警察です!八神さんはいらっしゃいますか!?」
「なっ、何だって、警察!?」
僕はもう、何が何だかわからなくなっていた
「なぁ」
少女が声を掛けてきた
「何だよ!」
「おまえら、そのケーサツって奴に狙われてんのか?」
「はぁ!?」
「わかった、んじゃーそいつらぶっ飛ばして来てやるよ」
「なっ・・・何でそうなるんだ!?大体悪いのはあなた達の方でしょう!」
「いっいえ・・・!我等は決してその様な・・・」
「すみません・・・!私達まだ”生まれた”ばかりでこの世界の常識に疎くて・・・」
「なぁ、朱雀兄ぃ、この人達ウチ等で匿われへんやろか」
妹の言葉に、僕は耳を疑った
「なっ・・・何を言ってるんだはやて!こいつらは家に勝手に進入して来た・・・」
「それは・・・ちょっと違うんや・・・、それに、今この人達警察に突き出したらそれこそ大騒ぎになる・・・
事情は後でちゃんと説明するさかい、警察の人達上手く誤魔化してほしいんや・・・」
確かに・・・1人は大きい金槌を持った少女、1人は凄そうな剣を持ってるし・・・
こっちのブロンドの髪の人はまともそうだけど、最後の人は筋肉質で犬の耳に・・しっぽ!?
下手をすれば警察官を返り討ちにしてしまうかも知れない・・・だが、しかし・・・
「八神さん!!居るのなら返事をしてください!!」
「御願いや・・・朱雀兄ぃ・・・」
妹の言葉に腹立たしく思いながらも、僕は覚悟を決めて大きく深呼吸をした
「解ったよはやて・・・いいですか皆さん!この部屋から1歩も出ないでください!後変な物音は
絶対に立てないで下さい!」
「おい!いーのかよ!」
「みんな、御願いやから朱雀兄ぃの言うこと聞いて・・・」
「ヴィータ、主の命だ、黙って従え」
「・・・どーなっても知らねーからな!」
妹が彼女たちを宥めたのを確認して、僕は下の階に駆け下りた
「くそっ・・・どうかしてる・・・俺も・・・!」

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最終更新:2007年08月14日 09:12