――これは闇の書が終わってちょっと後のお話…なのかもしれない


「ひさしぶりだよねー。フェイトちゃんがウチにお泊りに来るなんて。」
「最近いろいろと忙しかったから…。ごめんね、なのは。」
「ううん、いいの。」
ここはなのはの部屋。闇の書事件が一段落着いてやっと落ち着いた時期になった。
というわけで久しぶりにフェイトがなのはの家にお泊りに来た。というわけだ。時間は11時50分。
小学三年生としてはこの時間、立派な夜更かしである。しかし二人はおしゃべりを続けている。
学校での出来事、管理局の仕事、先生に対する愚痴。くだらない世間話ではあったが二人にとっては二人きりで安らげる貴重な瞬間。
「それでね、アリサが…」
「にゃはははは。」
絶えず響く笑い声。なのはとフェイトはこんな瞬間がずっと続けばいいのにと思っていた。だがこう楽しい瞬間は時間が早く過ぎると感じてしまうもの。
時間を見ればすでに59分。そろそろ寝ようか。と言いなのはが電気のスイッチを消そうとした瞬間

「…!!?」

何かが胸を突き抜ける。物ではなかったが不快感を感じる。スイッチを消していないのに部屋が暗くなったのである。
フェイトと顔を見合わせて首を傾げる。
「何か…あったのかな?」
「さ…さぁ、とりあえず…下行ってみよう。」
二人はしっかり手を握りながら階段を一段ずつ、ゆっくりと下りていく。リビングに着いた瞬間、二人は唖然とした。
「何…これ…!?」
リビングも暗かった。それだけじゃなくいたるところに血痕がついていてソファーの前には血痕がこびりついた黒い棺桶。
二人は胸が圧迫されているような気がした。息苦しい。夢なら早く覚めてほしい。心には不安と警戒とわずかな恐怖。
「外もこんな風になっちゃってるのかな…?」
「出て…みる?」
「う…うん。」
靴を履いて恐る恐るドアノブに手を伸ばして、開けた。
そこには暗く、不気味に緑色に光るお化け屋敷やホラー映画に出てきそうな光景が広がっていた。車は道の真ん中で止まり、あたりには棺桶だらけ。
街灯や家の明かりはどこもついておらず、唯一の明かりは緑色に発光する箇所のみ。何故光っているのかはわからない。

…ぐちゅ…。

「!」
突然響く液体音。後ろを振り返ると視界いっぱいの影、闇。その奥から確かに聞こえる。

…ぐちゅ…。

目を凝らしてみてみると蒼く光る仮面。なんの個性もない、ただ目と鼻と口があるだけであとは蒼いだけの不気味な仮面。
その仮面が月明かりに照らされた。
「!!?」
その仮面は手に握られていて、その手が生えているのは黒い水溜りのようなもの。手は二本どころじゃない。五本ぐらい生えていた。
なのはとフェイトはこの物体のことを「化け物」というんだと思っていた。接近してくる「化け物」。なのは達は経験したことのない恐怖に思考を支配されている。
足が震えて動かない。どうしよう。接近してきた「化け物」が腕を振り上げ……、その前に乱入者によって吹き飛ばされた。
剣を構えてなのはとフェイトの前に立った青年。
蒼い髪に黒い制服を着た青年は肩越しに二人を見ると少しだけ微笑んで「化け物」のほうへと目線を移す。
ポケットから出したのは、銀色の銃。青年は銃を敵にではなく、自分のこめかみに向ける。なのは達が何をするんですか―と言い切る前に引き金を引いた。
何かが割れる音とともに青年の背後に現れる巨大な影。
「タナトス!」
青年が叫ぶと影は次第に形作っていく。黒い身体に背中に浮く幾つもの棺桶。手には細身の剣。死を司る神の名を持つ化け物「タナトス」は細身の剣を振りかざし、闇夜に舞う。
それがなのはとフェイトと「彼」の出会いだった。



P3Lyrical  始まります。

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最終更新:2008年01月17日 21:52