唐突な襲撃。
 自分よりも幼い襲撃者になのはは戸惑う。
 何故、自分を襲うのか? 理由は? 真意は?
 不意打ちの攻撃と共に現れたヴィータの攻撃をかろうじて防ぎ、襲撃の理由を問うなのはだったが、ヴィータは有無を言わせずに攻撃を続けた。



「教えてくれなきゃ、分からないってば! 話を聞いて!」
「話なんてする必要ねぇぇえーーーッ!!」



 まさに問答無用。
 なのはの呼びかけを意に介さないヴィータは返答の代わりに攻撃を繰り出す。
 かろうじてシールドで受け止め、数メートル吹き飛ばされたなのはは―――。



「……そう」



"ド ド ド ド ド ド ド……"




(……うっ!? な、なんだコイツ……急に、何か『凄み』が……!)



 ゆっくりと立ち上がるなのはの雰囲気が一変した事を、ヴィータは敏感に感じ取った。
 地の底から湧き上がるような、奇妙な重圧感を放ちながらなのはがヴィータを見据える。その瞳から迷いは消え失せていた。
 背筋を思いっきり反らした、物理的に不可能と思えるようなポーズで佇み、なのはは静かにヴィータを指差す。




「あなた……覚悟して来てる人……なんだよね。
 人の話を聞かずに一方的に襲おうとするって事は、逆にやられても言い訳を聞いてもらえないかもしれないという危険を常に覚悟して来ている人ってわけだよね……?」



"ド ド ド ド ド ド ド……"




「う、うるせーッ! カートリッジ・ロード!!」



 無力な少女から怪物へと変貌を遂げたような、なのはの変わりように圧されながらも、ヴィータは竦んでしまう自分自身を叱責して自らのデバイスに命じた。
 グラーフアイゼンがラケーテンフォームへと変形し、魔力ジェットの噴射によって加速し始めた。
 ロケットのような推進力を得たアイゼンは、ヴィータ自身を支点として回転を開始する。
 なのは、その様子を冷静に見極めていた。



(『回転』だッ、『回転』の運動エネルギーを利用して威力を高めているッ! 遠心力の理論でハンマーの先端に生じる圧倒的破壊力は、まさに歯車的魔力の小宇宙!!)



「ラケーテン……ッ!!」



 恐るべき回転の力! しかし、なのははそんな驚異的パワーを前にして……逆に思いっきり喜んだのだッ!



「それが『いい』のッ! その『回転』が『いい』んじゃない!」
「―――ハンマァ……あぐっ! 何ィ!!?」



 回転しながらなのはに向かって突撃しようとしたヴィータは、突如全身を襲った激痛に、そして同時にアイゼンにかかった強い力に、攻撃の不発を余儀なくされた。
 ヴィータの必殺攻撃を強制停止させたモノの正体! ソレは―――!




 意外ッ! それはチェーンバインドッ!!




 グラーフアイゼンの先端にいつの間にか取り付けられた鎖状のバインドが、回転によってヴィータの体に巻き絡まり、回転の運動を利用して全身を強く締め付けていたのだ。
 それはまさに、複雑に絡みついた釣糸とリール!



「こ、こんなモンいつの間に……ッ!?」
「最初の一撃を受けた時なの。チェーンバインドはユーノ君の得意技なんだけど……上手くいってやれやれ一安心といったところだね」
「う……ッ!」



 自滅の形で身動きの取れなくなってしまったヴィータに対して、デバイスを構え、完全に戦闘形態を取ったなのはがゆっくりと目の前まで近づいて来ていた。
 なのはの周囲には、すでに魔法によって具現したディバインシューターの魔力弾が四つ、発射台に設置されたミサイルのように待機していた。



「さっきの『カートリッジ』っていうヤツ? すごかったね……魔力が跳ね上がった。あれを使えば、こんなバインドすぐに解けちゃう……」
「……」



 ヴィータを横目で流し見るなのはは、一見無防備に見えて凄まじい集中力を発揮している。
 仕掛けるタイミングを、ヴィータは図りかねていた。



「そのバインドを解除するのに何秒かかるかな? 3秒、4秒? 外したと同時に『ディバインバスター』をテメーにたたきこむの! かかってきて! 西部劇のガンマン風に言うと『ぬきな! どっちが素早いか試してみようぜ』というやつなの」
「野郎……ッ! アイゼンッ!!」



 激情に火のついたヴィータ。待ち構えるなのはの前で、カートリッジをロードし、爆発的に高まった魔力でバインドを引き千切り、そのままグラーフアイゼンを振り上げた。
 その瞬間まで、なのはきっちりと待っていた。そして―――!



「ラケーテン・ハンマー!!」
「オラァッ!!」



 一閃。
 加速に入った筈のグラーフアイゼンを紙一重で回避し、逆にディバインシューターの弾丸が一発、カウンターとなってヴィータの腹に突き刺さった!



「ごはぁ……ッ!?」
「最初に、言ったよね……『覚悟』はいい? わたしは、出来ている」



 バリアジャケットの防御力を削り取った弾丸は、なのはの操作するまま元の位置へと戻る。それと入れ替わるように別のディバインシューターが発射される。それが終われば、入れ替わりに次が。叩き込んで、再び次へ。次へ。次へ!
 もはやそれは、四方から連射される機関砲。怒涛のラッシュ!



「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」



 一発ではバリアジャケットを貫けない魔力弾も連続して打ち込めば、徐々にジャケットの防御を削っていく。



「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラァアアーーーッ!!!」



 津波のように押し寄せる魔力弾の超ラッシュ。
 ヴィータの悲鳴は爆発音と打撃音の中に埋もれていった。



「SHHOOOOOOOOTTT―――ッ!!!」
「ぐがぁあああああああーーーっ!!」



 駄目押しのバスターが直撃し、ズタボロになったヴィータは『ドグシャァアアアッ』と高速でぶっ飛び、ビルに激突していった。
 窓を突き破り、幾つもの壁を突き破って、ようやく停止した時、ヴィータの姿はすでに瓦礫の中に埋もれていた。





 ―――決着ゥッ! リリカルなのはA's 第一話、完!!



「やれやれなの……」




 バ―――――z______ン!




  • 撃退成功!
  • 騎士名―ヴィータ
  • デバイス名―グラーフアイゼン
(重傷。しかし、再起『可』能)




to be continued……>








「……トモダチ」

 ちなみに登場タイミングを逃したフェイトは数分後に普通に合流した。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年01月22日 17:50