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それは小さな思いでした。
新たに始まる私達の日々。
決めたのは、戦う事を諦めない事。
誓ったのは、昨日よりももっと強くなる事。
走り出した復讐のプログラミング。
もう、二度と大切な人を傷付けないために。

宇宙の騎士リリカルなのはBLADE……
始まります。

ピピピピピピピッ……
鳴り響く目覚まし時計のアラーム音。
「……ん。」
はやては時計をパシッと叩き、アラームを止めた。
明るい朝日が差し込み、今日もいつも通りの日常が始まる。
起き上がって横を見ればヴィータはすやすやと寝息をたたて眠っている。
はやてはクスッと笑いヴィータに布団をかけ直し、そのままリビングへと向かった。

「……ん……あ?」
リビングのソファで眠っていたシグナムは、キッチンから聞こえる音に目を覚ました。
「ごめんな、起こした?」
「あ……いえ。」
キッチンで朝食の準備をしていたのははやてだ。
「ちゃんとベッドで寝やなあかんよ?風邪ひいてまう」
「す、すみません……」
シグナムは自分にかけられた毛布をたたみながら謝罪する。
「シグナム、夕べもまた夜更かしさんかぁ?」
「あ……あぁ、その……少しばかり……」
シグナムの答えに「ふふっ」と笑うはやて。
間違っても闇の書を完成させる為にリンカーコアを蒐集していた等とは言えない。
「はい、ホットミルク。ザフィーラのもあるよ」
「ありがとう…ございます。」
シグナムははやてから差し出されたホットミルクを両手で受け取り、礼を言う。
「すみません、寝坊しました!」
そうこうしていると、今度はシャマルがエプロンを付けながら急いでリビングに入ってくる。
「おはよう、シャマル」
「……ああ、もう……ごめんなさい、はやてちゃん!」
シャマルはあいさつと同時に謝罪しながらキッチンに入る。もちろんはやては「ええよ」と笑う。
「おはよう……」
次にリビングに入ってくるのはシンヤだ。
「おはよう……ってなんや、シンヤも夜更かしさんか?」
「ああ……まぁね。それより、ホットミルクはあるかい?」
やはりはやてにはすぐに見破られてしまうのか。返事を返しながら着席し、ホットミルクを要求するシンヤ。
「あ……シンヤくん、その前に顔洗ってきなさい!」
それを聞いたシャマルは腰に手を当て、まるで母親のように言う。
「朝からうるさいなぁ、もう洗ったよ」
「あはは、流石シンヤやなぁ。はい、あったまるよ」
「ああ、ありがとうはやて」
シンヤの返答を聞いて笑いながらホットミルクを差し出すはやて。シンヤも「ふふ……」と笑いながら受け取る。

「(あったかい……な。)」
シンヤは手に持ったホットミルクを見つめる。そうしていると、人間だった頃の記憶が甦ってくる。
普通の家と何も変わらない朝食の風景。そこにいるのは父さん、ケンゴ兄さん、ミユキ、フォン、そして……

タカヤ兄さん。

思い出した途端に、シンヤの中から何かが込み上げてくる。自然にカップを持つ手が震えてくる。
「(タカヤ兄さん……いや、ブレードッ!)」
強くカップを握りしめ、それにより中のミルクが振動する。そして憎しみの次に込み上げる感情は、喜び。
「(ククク……ブレードは今頃……)」
考えれば考える程笑みがこぼれる。はやて達に気付かれはしないが、ちょっと危ない笑いだ。


第4話「ペガス発進!新たなる力、起動!」



それは昨日の出来事。

「ハッハハハハハ……アーハッハッハッハッ!」
笑いながらクロノから離れてゆくエビル。
しかし……
「……ん?」
エビルの周囲から現れた、輝く鎖のような物が自分目掛けて飛んでくる。これには見覚えがある。
「人間共が使うバインドとか言う奴か……」

クロノの目の前で堂々と去ろうとしているエビル。もちろん執務官として逃がす訳にはいかない。
ましてやエビルは闇の書に関わる者。クロノとしても尚更逃がす訳にはいかない。
テッカマンとまともに戦っても勝ち目は無い。なら、バインドで何重にも拘束し、
動きを封じて転送する。今がそのチャンスかもしれない。いや、今しか無いというべきか。
詠唱を終え、『ディレイバインド』を発動するクロノ。エビルの周囲に現れた鎖はエビル目掛けて飛んでゆく。
しかし……
「消え……ッ!?」
目の前のエビルが消えた。そして一瞬、クロノの肌を風が掠めた。
「(まさか……)」
そして背後から感じる何者かの気配。クロノは恐る恐る後ろを振り向く。
そこにいたのは、自分の首筋辺りにテックランサーを突き付けて立っているエビル。
「……ッ!?」
「お前、死にたいのか?」
「何を……!」
「せっかく見逃してやろうと思ったけど……そんなに死にたいなら望み通り殺してやるよ!」
エビルはテックランサーを振り上げる。それを見て「殺される!」と思ったクロノは反射的に目をつむる。
「(………な?)」
しかし、テックランサーが自分に突き刺さる事は無かった。
ゆっくりと見上げれば、エビルはテックランサーを振り上げたまま静止している。

「…………。」
『(くれぐれも、殺さないでね。)』
エビルの脳裏をよぎるシャマルの言葉。
こんな虫けら一人、殺そうと思えば一瞬だ。だが、それはできない。してはならない。
ブレードならまだしも、こいつはただの人間だ。
「チッ……今回だけは見逃してやるよ。」
「……な!?」
「ただし……これが最期のチャンスだ。次は無いと思え……!」
「…………!」
エビルの恐ろしい声に返す言葉を失うクロノ。さすがのクロノでも死の恐怖を感じたのは初めてだった。
「それより……ブレードを追い掛けたらどうだ?」
さっきの恐ろしい声とは打って変わり、今度は少し楽しそうに言うエビル。
「……なに!?」
「ククク……行ってやれよ?楽しい事になってるかもなぁ」
最後にそう言い、また笑いながら立ち去ってゆくエビル。

「(ククク……『俺は』殺さないさ。後は知らないけどねぇ……)」
エビルはそう思いながらまた楽しそうに歩き始めた。

「そうだ……Dボゥイ!」
クロノはエビルが見えなくなった頃にやっと正気を取り戻し、空に上がる。まずはエビルが言うようにブレードを追うのが先だ。
「……にしても、なんでこんな時に!」
こんな非常時に敵から逃げ出したブレードに対し愚痴を零しながらクロノは捜索を開始した。


ハラオウン家、クロノ自室。
現在、クロノは通信中。相手はレティ提督だ。
内容は、グレアム提督の口利きのお陰で武装局員の指揮権が借りられた、という話。
『それはそうと……』
「何ですか?レティ提督」
『Dボゥイの様子はどう?』
「……はぁ。今はアースラで眠ってますよ……」
クロノは少ししかめっ面をして答える。
『そう……昨日は散々な目にあったみたいね?』
それを見たレティはクスクスと笑いながら言う。まぁ昨日といっても正確には今日だが。
「はぁ、もう……死ぬかと思いましたよ……まったく。」
『フフ……まぁ助かって良かったじゃない』
「……それはそうですけど……」
言いながらかなり不機嫌そうな表情をするクロノ。

ここで再び回想シーンだ。


「……Dボゥイ!!」
クロノはブレードの捜索を開始してすぐにブレードを発見、地面に佇むDボゥイに呼び掛ける。
「聞こえないのか、Dボゥイ!」
今度はさらに接近して呼ぶ。それに気付いたブレードはゆっくりとクロノへと目線を向ける。
この時、ブレードの瞳の色が赤くなっていることにクロノは気付かなかった。
「一体どういうことなんだDボゥイ!理由の無い敵前逃亡なんて……ッ!?」
言いながら歩み寄るクロノの動きが止まった。ブレードはクロノの目の前で肩から二本のテックランサーを出し、連結したのだ。
「D……ボゥイ?」
「うおおおおおおッ!」
テックランサーを振り回し、クロノに襲い掛かろうと走ってくるブレード。
クロノは咄嗟に空に飛び上がり回避する。
「何をするんだDボゥイ!」
「うおお!おおおおお!」
言葉は通じず、さらにクロノに追撃しようとするブレード。もちろんクロノは全力全開で逃げる。


「くそッ……本当にデンジャラスボゥイだな、キミは!」
クロノはしばらく逃げ続け、いよいよもってキレかけていた。逃げながらブレイズキャノンの発射準備に入り……
「クソ……なんでこんなこと……」
クロノの中で何かが弾けた。意識を集中させるクロノ。
そして一気に急降下……いや、落下する。ブレードもそれを追うためすぐに急降下。
「うおおおおおおッ!!」
ブレードは叫びながらクロノの顔面を狙ってテックランサーを振るう。しかしクロノはそれを顎を上げて紙一重で回避。そして……
「何なんだアンタはァーーーーーーーーーッ!!」
『ブレイズキャノン』
急降下してきたブレードの腹にS2Uを突き付け、零距離でブレイズキャノンを発射。

お互いに落下する。
「……やったか?」
ダメージは与えられないまでも衝撃は伝わったはずだ。そう思いブレードを見る。
しかし、やはりブレードは無傷。普通に立っている。クロノは「ダメか」と思った。しかし……
「うおおおおおおッ!」
「何!?」
次の瞬間、ブレードはまた両手で頭を抱えて苦しみ出したのだ。
本当に苦しそうにもがき苦しみ、そして最後はその場に倒れた。
「Dボゥイ?」
「…………。」
返事は無い。ブレードは死んだように動かない。
やがてブレードの体は緑の光に包まれ、人間の姿に戻った。
その時、近くに割れた緑のクリスタルが落ちていたという……。


『……で、拘束されてアースラに転送されたわけね』
「はい。まったく、Dボゥイの奴一体何考えてんだか……」
話をまとめるレティ。クロノは大きな溜め息をつきながら答えた。

「お、クロノ君。どう?そっちは」
部屋から出てきたクロノに、リビングで冷蔵庫を漁っていたエイミィが話し掛ける。
「武装局員の中隊を借りられたよ。そっちは?」
「よく無いね~。夕べもまたやられてる」
エイミィは昨晩の被害について説明する。昨日は魔導師が十数人、リンカーコアを持つ野性生物が5匹。
いずれもリンカーコアを奪われており、野性生物の内一匹はエビルが倒した龍だ。
「そういえば、Dボゥイ……目が覚めたらしいよ」
「そうか……。」
エイミィはリモコンのボタンを押し、さっきまで空中に表示していた闇の書の画像を別の画像に切り替えた。
「……これは?」
表示されているのは緑のクリスタル。だが、割れてしまっている。
「うん、Dボゥイが変身……テックセットだっけ?に使うクリスタル。」
「……でも、割れてるぞ?」
「うん……これが割れちゃったらもう……テックセット、できないらしいよ……」
「……そんな!」
クロノは耳を疑った。いきなり逃げ出して、いきなり襲い掛かって、いきなりテックセット不能なんて……訳がわからなさすぎる。

「……とりあえず今、艦長が事情を聞いてるらしいよ」
「…………。」


アースラ、面会室。
ガチャリとドアノブを回す音が聞こえ、リンディが入ってくる。
「Dボゥイ……。」
「…………。」
Dボゥイは何も言えない。
「理由の無い敵前逃亡……それにクロノ執務官に襲い掛かった理由、聞かせて貰えるかしら?」
「…………。」


数時間後。

「あ、メール……」
携帯の着信に気付いたなのは。
相手はクロノだ。どうやらレイジングハートとバルディッシュは来週には修理が終わるらしい。
それともう一つ、フェイトに「寄り道は自由だが夕食の時間には戻ってくるように」と伝えて欲しいとの事。
なのははレイジングハートの復活を心待ちにしながら、フェイトやアリサ達と思い思いの時を過ごす

同刻、八神家。
「カートリッジか?」
シャマルがカートリッジに魔力を込めていると、目の前で壁にもたれているシンヤが話し掛けてくる。
「うん、昼間のうちに造り置きしておかなきゃ」
シャマルが答える。
「大変だね。一人で任されっぱなしで」
「ううん、バックアップが私の役割だからね。これくらい平気よ」
カートリッジを眺めながら笑顔で言うシャマル。
「そうか。ま、俺には造れ無いしね」
「それに、お前にカートリッジは必要無いからな」
今度は外出準備中のシグナムが上着を着ながら言う。
確かにテッカマンには魔力もカートリッジも全く関係無い。
「まあね。シグナムはこれからはやてのお迎えかい?」
「ああ。お前も来るか?」
「遠慮しとくよ。俺が行く意味が無いからね。」
シンヤはシグナムの誘いを断る。
別段はやてを嫌いな訳でも無いが、ただ迎えに行くだけならわざわざ自分が行く必要も無い。
シグナムは「そうか。」と言い、そのまま部屋を出た。


一方、再びアースラ。
「Dボゥイ……そろそろ答えてくれないかしら?悪いようにはしないから……」
「…………。」
ずっとだんまりを決め込むDボゥイにリンディは半ば諦めかけていた。その時……
「俺は……」
「……?何、Dボゥイ?」
「俺が、人の心を保っていられるのは、テックセットしてから30分が限界だ。」
「……え?」
予想外の展開にキョトンとした顔をするリンディ。
「テックセットしてから30分が経過すれば、俺の心はラダムに支配され、身も心もあの化け物になってしまう。」
「そんな……!?」
リンディはあまりにショッキングな事実に口を塞ぐ。
「だから……30分が経過して、できるだけクロノから離れようとしたのね……?」
「…………。」
「でも……それならどうして貴方はまた人間に戻れたの?」
ここで疑問に思った事を質問してみるリンディ。
「恐らく、暴走する直前にエビルのPSYボルテッカを受けて体力を消耗していたからだろう」
「…………。」
今度はDボゥイの説明に言葉を無くすリンディ。
「いいえ……きっと違うわ。」
「何?」
「貴方がまた人に戻れたのはきっと、貴方が人でありたいと願ったからよ」
リンディの言葉に驚くDボゥイ。まさかこんな風に言われるとは思っていなかった。
「貴方は化け物なんかじゃないわ。だって、ちゃんとこうして戻って来れたじゃない」
「……だとしても、変身できなくなった俺にはもう生きる意味なんて無い」
「……そんなこと言っちゃダメよ。生きてる事に意味があるんだから……」
突然ネガティブな話をしだしたDボゥイ。リンディは戒めるように説得を試みる。
「……仮に変身できたとしても……もう戦いたく無い。」
「……どうして?」
「こんないつ化け物になるか解らない奴がいても迷惑なだけだろ……」
「…………。」
Dボゥイの話を聞きながら黙って深く息を吸い込むリンディ。
「それに、俺はもう誰も傷付けたく無い。これ以上戦ってまた皆を……」
「い い 加 減 に な さ い ッ ! !」
「……!?」
リンディは大きな声でDボゥイを制した。それこそ他の部屋にまで聞こえるくらいの、特大の声で。
「さっきから聞いてれば化け物だとか傷付けるとかって……あなたは誰も傷付けたりしてないじゃない!」
「傷付けてからじゃ遅いんだよ!俺みたいな化け物、いつ仲間を襲うかわからない!」
「いいえ、貴方は人間よ!化け物なんかじゃ無いわ!」
「……何と言おうが、俺にはもう変身能力は無い!もう戦え無いんだよ!」
「…………!!」
しばし流れる沈黙。リンディも黙ってしまう。いや、何か考えがあるのだろうか?
「……わかりました。」
「…………。」
だが今度はやけにあっさりと引き下がる。そのままリンディは席を立ち、面会室を後にした。


本局、メンテナンスルーム。

ピピピピピピピピッ

バルディッシュとレイジングハートの改修作業を進めていたマリーの元に通信が入る。
「誰だろ……?」
言いながらボタンを押し、相手をモニターに映す。
『久しぶりね、マリー』
「あ……お久しぶりです、リンディ提督!どうしたんですか?」
相手はアースラ艦長リンディ・ハラオウン。
『それが……ちょっと急ぎの用なのよ』
「はぁ……。」
『とりあえず、今から送るデータを見て頂戴。』
「あ、はい。」
マリーは受信したデータを見る為にボタンを押す。
同時にモニターに割れた緑のクリスタルと、そのデータが表示される。
「これは……テッククリスタル?……ですか?」
表示されている名前を読み上げるマリー。
『ええ、その割れたクリスタルを元通りに直して欲しいの。できれば一週間以内で』
「ええ!?む、無茶ですよ……こんな複雑なデータ……ロストロギア級じゃないですか!!」
モニターに表示されているだけでもテッククリスタルのデータは膨大な量となっており、それでもまだ未知の部分が多いという。
『そこをなんとかお願い!今必要なのよ、コレ……』
「う~ん……」
う~んと唸り、しばらく考えるマリー。
「……わかりました。完全に元通りになる保証はありませんけど……」
『ありがとう、感謝するわ!』

数分後、マリーの元にテッククリスタルが転送される。
「さてと……どうしようか……」
割れたクリスタルを眺めるマリー。
「そうだ……アレなら……」
何かを思い出したマリーは、ぽつりと呟いた。


その日の晩、ハラオウン家。
「……Dボゥイ、入るよ?」
言いながらDボゥイの部屋に入り、パチッと電気をつけるフェイト。
「ねぇ、Dボゥイ……」
「……何だ。」
ふて腐れたようにベッドに寝転がったまま素っ気ない返事を返す。
「その……変身、できなくなったんだって……?」
「ああ、その通りだ。戦え無い俺に生きる意味なんて無い」
気まずそうに話を持ち掛けるフェイトに、Dボゥイは冷たい口調で返す。
「前にDボゥイ……ラダムを倒すのは使命だって言ってたよね……?」
「…………。」
「その……ラダムって何なのかイマイチよくわかんないけど、Dボゥイの気持ち……わかるよ」
「……お前に何がわかる?」
Dボゥイはフェイトの顔を見ず、窓を向いたまま答える。
「使命……目的の為に、強い意思で自分を固めちゃうと、周りの言葉が入らなくなるから……」
「…………。」
「そうなっちゃうと、使命を果たすまでは一歩も後に引けなくなる……。」
Dボゥイは黙ってフェイトの話を聞く。
「……それが間違ってるかもって思っても……疑っても……」
「…………。」
「だけど、絶対間違って無いって信じてた時は……信じようとしてた時は……誰の言葉も入ってこなかった。私がそうだったからね」
「お前……」
ここで始めて振り向き、フェイトと顔を合わせたDボゥイ。
それはかつてのフェイト自身の話。フェイトは母親であるプレシア・テスタロッサの命令に従い、その使命の為になのは達と戦い続けた。
「だからこそ、その使命が果たせ無くなったら……拠り所を無くしちゃったら……どうしていいのかわかんなくなっちゃう……」
フェイトはかつて母親の為に戦い続けたにも関わらず、その母親に見捨てられ、自分を見失いかけた。
当時のフェイトは、使命を見失った今のDボゥイと似ていると、そう言いたいのだ。
「Dボゥイのとはちょっと違うかもしれないけど……強い心で、想いを貫けば……」
「ミユキ……」
「……え?」
Dボゥイがぽつりと呟いた言葉に「え?」という顔をするフェイト。
「……いや、何でもない。」
「………。」
「……少し、フェイトの姿が死んだ俺の妹の姿と被ったんだ。」
妹?そんな話初耳だ。気になったフェイトはそれについて言及することにした。
「Dボゥイ……妹いたの?」
「ああ……元の世界でな……」
それからフェイトはしばらくDボゥイの妹……ミユキについての話を聞いていた。
自分と年が近い事や、優しい性格だった事など、色々だ……。

「Dボゥイの様子はどうだった?」
「うん……まだしばらくは落ち込んだままかな……」
リビングに戻って、クロノに報告するフェイト。
妹の話など、今まで言わなかったような話をしてくれるあたり、少しずつだが心を開いてくれている。そう考えると、やはり嬉しかった。
「……あれ?」
だが、フェイトはそこで一つの矛盾に気付いた。
「Dボゥイ……記憶、戻ったのかな……?」
妹の話をするという事は記憶が残っているということになる。
つまり、Dボゥイは少しずつだが記憶を取り戻しつつあるのか……
もしくは、「最初から記憶を失ってなどいない」のか……



一週間後。
この一週間、海鳴市に住む者は皆、思い思いの時を過ごした。
なのはは毎日魔法のリハビリに勤しみ、本局でもバルディッシュとレイジングハートの改修が進む。
そしてその間にもシンヤを含めたヴォルケンリッターはリンカーコアの蒐集を続ける。
一方、Dボゥイはやり切れない思いで葛藤を続けていた。
ラダムは憎い。だがまたいつ仲間を襲うか解らない為、戦うのが怖い。さらにテックセットも不能ときた……
「ありがとうございましたー!」
本局の医務室からなのはが出てくる。すると、「なのは!」と呼びながらユーノ、アルフ、フェイトが駆け寄ってくる。
「検査結果、どうだった?」
「無事、完治!」
アルフの質問に笑顔で答えるなのは。魔力は完全に回復したらしい。それを聞いてフェイト達も笑顔になる。
「こっちも、完治だって!」
フェイトとユーノの手に輝くのは、赤い宝石と黄色い宝石。レイジングハートとバルディッシュだ。

「そう、よかったぁ!じゃあ戻ったら、レイジングハートとバルディッシュの説明しなきゃね」
二機のデバイスとなのはが完治したとの報を受けたエイミィは通信相手に喜ぶ。
「それから……Dボゥイにはこっちも説明しなきゃね……」
隣のモニターを見るエイミィ。そこに映し出されていたのは青い巨大なロボット。この世界的には傀儡兵というべきか。
「ふふ……Dボゥイ、驚くだろうな……ってコレ!?」
突如、警報が鳴り響く。モニターにはアラートの文字。要するに緊急事態だ。

「……管理局か。」
「でも、チャラいよこいつら?」
ザフィーラとヴィータ、それとエビルが大勢の武装局員に囲まれていた。
「ふん……こんな奴ら相手にしたってつまらないよ」
だがエビルは余裕な態度だ。ブレードがいない今、この世界にエビルを楽しませる相手はいないのか……
しかし、次の瞬間周囲の局員は一斉に撤退し……
「上だ!」
「スティンガーブレイド、エクスキューションシフト!!」
ザフィーラの声に上を向けば、そこにいるのは青く輝く大量の剣を従えたクロノ。
次の瞬間大量の剣は三人に向けて降り注ぎ、爆発。
眩しい光と爆煙が立ち込める。
「少しは、通ったか……!?」
はぁはぁと息切れしながら言うクロノ。しかし、ザフィーラの腕に何本かの剣が刺さっただけで、
特に大きなダメージを与えた様子は無い。しかもその剣もすぐに抜かれてしまう。

一方、アースラ。

「クロノ君、今助っ人を二人転送したから!」
『……なのは、フェイト!?』
エイミィの言葉に下を振り向くクロノ。そこにいるのはなのはとフェイト。もう完治したのかと驚くクロノ。
そして二人は新たなデバイスの名を叫ぶ。
『レイジングハート・エクセリオン!!』
『バルディッシュ・アサルト!!』
二人の体はピンクと黄色の光に包まれ、バリアジャケットの装着が完了。
二人は新しくなったデバイスを構えた。

「どうDボゥイ?あの子達の新しい力。」
「……俺には、関係無い。」
モニター越しに二人を見ていたDボゥイに話し掛けるリンディ。
「やっぱり……戦うのが怖いの?」
「ああ、その通りさ。第一今の俺は変身できない。行っても足手まといになるだけ……」
「そうでも無いっスよー!」
リンディに答えるDボゥイの言葉を遮り、大声で言うエイミィ。
「何だと?」
「Dボゥイはテックセットできるよ!」
「馬鹿な……クリスタルが無いのにどうやって?」
その質問に対し、「ふふん」と笑いながら目の前のパネルをカタカタと叩くエイミィ。
そして表示された画像。それは格納庫らしき場所に保管されている青いロボット。
「これは……!?」
「よくぞ聞いてくれましたぁ!機動兵ペガス、Dボゥイのテックセットを可能にするサポートロボだよ!」
エイミィの言葉に驚いて言葉も無いDボゥイ。
「これ元は作業用のロボットなんだけど、一週間でここまで改修するのは大変だったのよ?」
リンディが「ふふふ」と笑いながら言う。
「だが、テックセットができたとしても……もう俺は戦いたくない!」
モニターを見れば、なのは達は相手の守護騎士と何か喋っている。エビルは腕を組んで黙っているようだが……
「もう嫌なんだ……俺が弱いせいで……俺の力が足りないせいで、これ以上誰かが傷付いていくのは……!」
「Dボゥイ……」
「大丈夫よ、Dボゥイ。」
リンディが優しい口調で言う。
「貴方は強いわ。だって、強い心を持っているもの」
「……提督。」
俯いていたDボゥイはゆっくりと顔を上げる。
「そうだよ!今までだって、ちゃんと戦ってきたじゃない!」
「……エイミィ。」
今度はエイミィだ。
「そりゃあ、人間は誰だって一度くらい失敗するわ。でも、それで諦めちゃダメよ!」
「だが……俺は……」
「いい?貴方は化け物なんかじゃないわ。れっきとした人間よ!」
「……俺は……。」
確かに今自分が行かねば、なのは達がヴォルケンリッターを倒せたとしてもエビルにまで勝てる保証は無い。
「それに、もしまた暴走しても私達が絶対元に戻すから!」
エイミィが自信に満ちた表情で言う。何故か信じてみたくなるような、そんな笑顔だ。
エイミィとリンディの激励に心を揺さぶられつつあるDボゥイは、俯きながらぎゅっと拳をにぎりしめる。
『強い心で、想いを貫く。』
さらに、あの日のフェイトの言葉がDボゥイの脳裏をよぎる。

もうDボゥイの答えは決まっていた。
いや……最初から決まっていたはずだ。家族や友人がラダムのテックシステムに取り込まれたあの時から。
さっきまでのDボゥイはただ、その決意から逃げていただけ。

そして……
「俺は……俺はッ……!!」
次の瞬間、Dボゥイは転送ポートを目指して一気に走り出していた。それを見たリンディとエイミィはニコッと笑いアイコンタクト。
「お待たせしました!機動兵ペガス……発進ッ!!」
パネルのボタンを押すエイミィ。それと同時にDボゥイはアースラから姿を消した。


「話し合いをしようってのに武器を持ってやってくる馬鹿がいるか、バァ~カ!」
「いきなり襲ってきた人がそれを言う!?」
上空からグラーフアイゼンを突き付けるヴィータに、なのはが反論する。
「この感覚は……まさか……!」
しかし二人のやり取りを無視して割り込むエビル。
「あ?どうしたんだよシンヤ?」
「まさか……ブレードか?」
エビルの態度がいつもと違う事に気付いたザフィーラとヴィータ。
「いや……まさか……ブレードはもう……!」
小さな声でブツブツと驚きの声をあげるエビル。ブレードはもはや完全にラダムと化したはずだ。
まさかまたここに現れるなんてことは有り得ないはずだ。
しかし、エビルの予感は的中することとなる。

近くに現れた魔法陣から現れたのは見覚えのある男……。
「Dボゥイ!?」
「Dボゥイさん!」
「あいつ……ブレードの野郎か!」
フェイト、なのは、ヴィータもそれぞれに驚く。もちろんフェイトとなのはは嬉しそうな表情で。
「ク……ククク……兄さぁん、流石だよ兄さぁん!!ラダムの支配を脱したんだね!?」
そしてエビルは両手を広げて笑い出す。
「Dボゥイ、もう大丈夫なの……!?」
「ああ、俺はもう迷わない!
……エビル!俺は貴様らテッカマンを一人残らず滅ぼすまで戦い続ける!」
フェイトに返事を返しながらエビルを指差すDボゥイ。エビルも実に楽しそうだ。
「フン、いつラダムに支配されるか解らない兄さんにそれができるかな?」
「黙れエビル!俺は確かに人間では無いかも知れない……!」
その言葉になのはとフェイトは顔をしかめる。
「……だが、貴様らの様に人の心まで捨てはしない!俺は……俺はァッ……!!!」
次の瞬間、少し離れた空中に魔法陣が現れ、中から青いロボットが飛んでくる。
「テッカマンブレードだッ!ペガァスッ!!」
言うと同時に一気に飛び上がり、大きな声で青いロボットの名を呼ぶDボゥイ。
ロボットの名は『ペガス』。
ペガスの背中が開き、中に人一人が入れるスペースが現れる。
『マッテイマシタ。騎士ブレード』
「行くぞ、ペガスッ!!」
『ラーサッ!!』
そしてDボゥイがペガスの内部に入り、再び閉じる。次の瞬間にはペガスの頭部が変型。
そして中から現れたのは紛れも無い『テッカマンブレード』だった。
「また変身できたんだね!」
「クリスタル……直ったんだ!」
なのはとフェイトも嬉しそうな、ヒーローを見るような目でブレードを見る。

ブレードはすぐにペガスの背中に飛び乗り、連結したテックランサーを振り回しながら回転させ、構える。
そして……
「テッカマンブレェーーードッッ!!!」
テックランサーを構え、大きな声でその名を名乗った。

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最終更新:2007年08月14日 11:42