知られざる闇の書の過去。闇の書事件より十一年前、地球では決して歴史に語られる事の無い一つの戦いがあった。

「……気を、付けてね。うまく言えないけれど、今回のあなたのお仕事、嫌に胸騒ぎがするの」
 暗く憂いだ表情を見せて来る妻に、クライド・ハラオウンは息子のクロノを抱き抱えながら取り繕う様に微笑みを浮かべる。
「大丈夫さ。今度もグレアム提督にロッテとアリアも一緒だから、戦力は充実している。
──闇の書は、今度こそ封印してみせる」

「我等が鉄甲龍、復活の時は来た! 今こそ裏切り者である木原マサキの造りしゼオライマーを破壊し、
この世を冥府と化すのだ!」
 十五年という永き屈辱の時をひたすらに耐え忍び、遂に決起する秘密結社。

 そして……。

 地球の衛星軌道上へと転送を完了したエスティアとグレアム艦は、日本の富士樹海で勃発した巨大ロボットの戦闘に遭遇する。
 モニター管制を担当しているリーゼアリアの驚愕の声が、グレアム艦とエスティアのブリッジを緊張で包む。
「戦闘中の片方の地球製巨大ロボットから……闇の書が覚醒する際の魔力反応が! 父さまっ!?」
「何と言う事だ、一体何者が闇の書を……」

「負けられない! この戦だけは──!」
「……勝てる」
 深夜の戦場に迸る、破滅の閃光。
 敵の必殺攻撃に翻弄されながらも、その男は残忍な薄笑みを浮かべ、ある入力コードを打ち込んだ。
 消滅していく風のランスターの中で、八卦衆が一人・耐爬は、奇妙な紋様の光を垣間見た。
「夜天の光よ、冥府の王たる我が手に集え! 次元連結システム、闇の書覚醒プログラム作動!」
 風を司る敵ロボットを一瞬のうちに撃破した男の前に、古代異世界の騎士達が召喚される。
 まさしくそれは、クライド達が追い求めてきた因縁のロストロギアでもあった。
『我等、夜天の主の下に集いし騎士』
『主ある限り、我らの魂尽きる事無し』
『この身に命ある限り、我等は御身の下に在り』
『我等が主、夜天の王──木原マサキの名の下に』
「これで戦力は整った……最早誰にもこの俺を止められまい! ククク……ハハハハ……!」
 深い夜の闇の中に、一人の野望の男の哄笑が高らかに響き渡っていた。

冥王計画リリカルなのはA's 始まりません

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最終更新:2008年02月01日 18:03