【機動六課サイド】六話「爆走!クリムゾンウインガー!!」Aパート
【AAMON本拠地 兵器開発室】
「ようし…完成だ…!」

死神博士は、仮面ライダーアウレフを倒すべく、新型スーパーマシン・ダークセーバーを完成させた。
ダークセーバーは「CBR400F」に異常改造を施し、外装にバズーカ砲をも防ぐ特殊金属の鎧を装備した、恐るべきマシンである。(なお、この鎧はジャッカルを象っている)

「このダークセイバーに乗るのは貴様だ…現れよ!ジャッカル男!」
「グリィィィィィイ!!」

開発室の扉が開き、怪人ジャッカル男が姿を現した。

「ジャッカル男…貴様は一流レーサー級の腕前を持つ改造人間だ…このダークセーバーを乗りこなし、見事、アウレフを倒してみせよ!」
「グリイィィィィィイ!お任せください…死神博士!」

【モトクロスレース場】
その頃拓哉は、ティアナの頼みを受け、彼女のバイクテクニックの訓練のコーチをしていた。
今はティアナがゴールし、結果を報告している最中である。

「タイムは三秒縮まってる。中々良い調子だよ。」
「ホント!?」
「でも、まだまだちょっと、甘いかな。」
「あ…やっぱり…じゃあ、もう一周!」
「おいおい、これで三週目だろ?持たないぜ?」
「もうすぐあたし専用のマシンが届くの。だから完璧に乗りこなすためにも、腕を磨いておかないと…」
「ふう…わぁかったよ。もう一周ね。」
「!、うん!」

ティアナはヘルメットを被り、マシンのアクセルを踏んで走り出す。
拓哉はティアナのスタートと同時にアナログストップウォッチのスイッチを入れるが…

「…ん?」

ストップウォッチの針は進まなかった。
拓哉はなんどもなんどもスイッチを押すが、やはり針は動かない。

「…嫌な予感がする。」

拓哉は遠くなっていくティアナを見つめ、不安を募らせた。

【レース場 コース中盤】
拓哉の不安をよそに、ティアナはコース中盤まで差し掛かる。
先程より調子が良く、「この調子でゴールを…」タイムを焦るばかり、ティアナは良い結果を出すことのみに執着していた。
そしてそんな彼女のマシンに向け、一発の槍が飛んできた。

「!?、きゃ!?」

槍はマシンのタイヤを貫き、ティアナはバランスを崩して倒れたマシンの上から投げ出され、硬い地面の上を転がった。

「クッ…しまった…」
「ギィ!ギィ!」

すると槍が飛んできた方角から十人ほどの戦闘員が現れ、倒れているティアナを取り囲む。

「こいつが神城拓哉の仲間か?」
「ああ、捕らえて人質に…」
「待てぃ!」
「「!?」」

空中からシャウトが響き、拓哉が空中で一回転しながら地上に降りてきた。

「た…拓哉…」
「予感的中!ティアナ!大丈夫!?」
「神城!貴様何故ここへ!?」

戦闘員の一人が驚きながらそう言う。

「虫の知らせって奴さ!来い!!」
「ギィ!」

戦闘員達は槍を構え、拓哉に襲い掛かる。
拓哉はトリッキーなアクションで戦闘員達の槍をかわし、素早い動きを駆使して様々な技を繰り出し、戦闘員軍団を蹴散らした。
しかし槍部隊を倒したのもつかの間、次は戦闘員オートバイ部隊が現れ、拓哉に向かってきた。

「休む時間ぐらいくれってんだよ…変身!トオッ!」

拓哉は変身ポーズを取り、宙に飛ぶ。
そしてアウレフに変身した拓哉は待機していたガルベストンに空中から着席し、アクセルを踏んでマシンを爆走させる。
アウレフの駆る青いガルベストンは戦闘員オートバイ部隊と激突し、激しいバイク戦を繰り広げる。
しかし、いくら戦闘員の腕がよくとも戦闘員達が乗っているのは通常のバイク。
スーパーマシン・ガルベストンに乗ったアウレフに適う筈もなく、バイクを扱ったアウレフの攻撃の前に次から次へと撃墜されていった。
しかしアウレフは気付いていなかった。
自分のバイクテクニックとガルベストンの性能が、隠しカメラでサーチされていることに…

【AAMON本拠地司令室】
「見よ、ジャッカル男。あれがアウレフのバイクテクニックだ。」
「ハッ!」

ジャッカル男はガルベストンを駆るアウレフが写ったモニターを見つめる。

「どうだ?」
「俺とほぼ互角の腕をしていますが、マシンの性能は俺のダークセーバーの方が上です。
マシン性能の差で私の勝ちですよ。」
「クックックック…たぁのもしいぞ…ジャッカル男…」

………
「終わったか…」

敵オートバイ部隊を全滅させたアウレフは拓哉に戻り、ガルベストンから降りて戦闘員達のバイクの残骸を見つめる。

「おかしい…手応えがなさ過ぎる…それに何だ…この妙な不安は…」
「拓哉…」
「ん?ああ、ごめんティアナ!放置しちゃって!」

拓哉は右足を抑えながら立っているティアナに駆け寄り、懐から包帯を取り出す。

「うお!包帯!」
「用意は周到にってね。でも、戻ったら「ラファエル」に診せ…」
「ティィィィィィィィアァァァァァァナアァァァァァア!!」
「「ん?」」

拓哉とティアナは凄まじい雄叫び(?)を耳にし、雄叫びが聞こえた方向を振り向く。
そこにはグリンクローバーを爆走させ、こちらに猛スピードで突っ込んでくる睦月の姿が…

「誰?」
「睦月兄…」

当然ノリ的にグリンクローバーの車体は拓哉を跳ね飛ばす。
そして睦月は拓哉を跳ね飛ばした後ブレーキを掛けてマシンを止め、足を怪我しているティアナの傍に大急ぎで駆け寄る。

「大丈夫かティアナ!?俺、救急箱持ってきたから…」
「睦月兄…心配してくれるのは嬉しいんだけど…」
「え?」
「あれ…」

ティアナは跳ね飛ばされて頭を地面に強く打ちつけ、頭部からおびただしい量の血を流して倒れている拓哉を指差す。

「あれ?なにあれ?」
「跳ね飛ばした自覚がないのかい!?」

【機動六課隊舎医務室】
「…!」

享一に治療魔法をかけてもらいながらティアナの隣に立っている睦月を睨む拓哉。
当然その眼光からは憎しみの念が満遍なく放たれている。

「いやぁ…ごめんごめん!ティアナが危ない目にあってるような気がしてバイクをとばしてたら、周りの「どうでもいいもの」が見えなくて…」
「…それ謝ってるつもりですか?」
「…ごめん。」

拓哉に深く頭を下げる睦月。

「まぁ良いじゃないか拓ちゃん!助かったんだし。」
「黙れエロ医者!改造されてなかったら間違いなく死んでたんだぞ!」
「それだけ元気があれば心配はないよ。はい、治療終わり。」

享一は治療魔法を止め、拓哉の頭部に包帯を巻く。

「こっちも終わりです。」
「ありがと、ラファエル。」

ラファエルも治療魔法を止め、ティアナの足に湿布を張りつけ、テープで止める。

「まったく久々の出番かと思ったらこの程度の怪我治しか…目立たないなぁ…」

享一はそう呟くとデスクの引き出しからアダルト雑誌を取り出し、読み始める。

「お前…」
「医者がアダルト雑誌を読んじゃ駄目って法律は無いよ。」
「いや、だからといってお前…」
「失礼。」
「「ん?」」

医務室のドアが開き、橘が入室してくる。

「橘さん!」
「久しぶりだな、ティアナ。そして…」

橘は拓哉の方に向き直り、挨拶する。

「君が神城拓哉君か。俺は橘、ギャレンだ。よろしく頼む。」
「拓哉です、橘さんのお話は、ティアナから聞いています。よろしくお願いします、先輩。」

拓哉と橘は握手を交わす。

「すまないな。俺の弟子が、迷惑をかけてしまったようだ。」
「いやはや全く…」
「…」

小さくなる睦月。

「橘さん、聞きましたよ。」
「何だティアナ?」
「志村さんが…裏切り者だったって…」
「ああ…俺の不手際だ…しかし、今は志村のことを話している場合じゃない。俺たちが何故来たか…分かるな?」
「はい…」

ティアナは座っていた椅子から立ち上がる。

「完成したんですね…「クリムゾンウインガー」が…」
「ああ。ブルースペイダー、レッドランバス、シャドーチェイサー、グリンクローバー、そしてブラックファングの五台を遥かに凌ぐマシンが完成した。
まぁ、話すより見てもらったほうが良いだろう。
拓哉、ティアナ、来てくれ。」
「「はい!」」

拓哉とティアナは、橘と睦月に連れられ、格納庫に向かった。

【機動六課隊舎格納庫】
「これだ。」

橘はマシンにかけられた灰色のシートを取り去る。
するとシートの下から、不死鳥を象った紅蓮色の美しいマシンが現れた。

「「おお~!」」
「最高速度970キロを誇り、スペード9「マッハ」、ダイヤ9「ジェミニ」、ハート9「リフレクト」、クラブ9「スモッグ」の能力を備えた、スーパーマシンだ。」
「これが…私の…」
「ただし、乗りこなすには厳しい訓練が必要だ。早速だが、訓練に入るぞ。」
「はい!」

………
数十分後、橘はバイク型のシュミレーションマシンを用意し、ティアナをそれに乗せる。

「ティアナ、これも付けろ。」

橘はティアナに奇妙なヘルメットを渡す。

「これをかぶることによって、脳内に映像が送られ、クリムゾンウインガーのスピードが体感できるようになる。」
「分かりました。」

ティアナはヘルメットをかぶり、シュミレーターのハンドルを握る。

「橘さん!準備OKです!」
「行くぞ!」

橘はシュミレーターのスイッチを入れた。

【ティアナの脳内】
スイッチを入れると同時にティアナの脳内にモトクロスレース場の映像が映し出される。
当然、ティアナはバリアジャケットを装着し、クリムゾンウインガーに乗っていた。

『ティアナ、映像が見えるか?』
「はい!」
『映像のウインガーのアクセルを踏め。それでシュミレーションスタートだ。』
「分かりました!行くわよ…ウインガー!」

ティアナはクリムゾンウインガーのアクセルを踏み、シュミレーションを開始した。

………
【機動六課隊舎格納庫】
100キロ、150キロ、200キロ…シュミレーターに表示されたスピードは50キロずつ上がっていく。
しかし、ティアナは呻き声一つ上げず、シュミレーターマシンのハンドルを操作していた。

「500キロを超えた…それでも呻き声一つ上げないなんて…」
「流石はティアナ!俺の妹分…」

拓哉と睦月は感心し、微笑む。
しかし橘は、真剣な表情を崩さない。

「橘さん?何難しい顔してるんですか?」
「睦月…まだ全力のスピードで走っているわけじゃない。本番はこれからだ。」
「え?」
「ティアナ!ティアナ!」
「!?」

睦月はティアナに必死に呼びかける拓哉の声に気づき、ティアナの方を振り向く。

「う…ああああああああ!!ああああああああああああ!!」

ティアナは急に強烈なうめき声を上げて苦しんでおり、体中に汗をかいていた。
スピードは700キロに達している。

「ティアナ!!!」
「くっ…やはり駄目だったか…!」

橘はシュミレーターのスイッチを切り、機能を停止させる。
ティアナの近くに居た拓哉はヘルメットを外し、気を失っているティアナを抱きかかえ、大声で呼びかけた。

「ティアナ!ティアナ!」

しかし、何度呼びかけてもティアナは反応しない。

「橘さん!上城さん!ティアナを医務室へ!」
「ああ!」
「…」
「睦月!しっかりしろ!」
「は!…は…はい!」

【医務室】
一時間後、ティアナは医務室のベッドの上で目を覚ました。

「ん…ん?ここは?」
「目が覚めた?」
「!?」

ティアナは突然聞こえた拓哉の声に驚き、隣を振り向く。
そこには、拓哉、橘、睦月が立っていた。

「拓哉…橘さん…睦月兄…」
「おはよ♪」
「…」
「ティアナ…」
「…そっか、あたし、700キロでリタイアしちゃったんだ…」
「ティアナ。700キロじゃないだろう?もっと前からダウンしかけていたと思うが?」
「う…」

ティアナは橘の一言に黙り、少ししてから口を開く。

「…橘さんの目はごまかせませんね。本当は500キロ辺りから辛かったです…でも…マシンを乗りこなしたかったから…」
「そうか…」
「…うっ…くっ…ティアナぁ…」

睦月は膝を落とし、布団に顔を埋めて泣き崩れた。

「ちょ!なんで睦月兄が泣くのよ!?」
「俺…気付いてやれなかった…ティアナが辛いのに…気付いてやれなかった…俺…俺…」
「睦月…」
「上城さん…」
「睦月兄…睦月兄のせいじゃないよ。」
「そうだ。俺も…ティアナの異変に気付きつつあったんだ…早く止めてやるべきだった…」
「僕だって…気付けなかった…」
「うっ…うう…皆…」
「おい!大変だ!!」

医務室の扉がいきなり開き、ヴィータが現れる。

「副隊長…」
「拓哉!怪人が出た!悪いけど先行してくれ!」
「どうして?皆で行った方が…」
「その怪人、おかしなバイクに乗ってるんだ!」
「え!?」
「そのバイク、お前のガルベストンと互角かそれ以上のスピードを持ってて、ヘリじゃとても追い付けねぇ!だからお前が先行して、そのバイクを叩き潰して欲しいんだ!」
「分かりました!」
「拓哉、俺も行く。味方は多いほうが良い。」
「…!(涙を拭き取る)俺だって行く!」」
「上城さん、橘さん、失礼ですが貴方方のマシンでは、ガルベストンのスピードには到底届かない。スバル達と一緒に来てください。」
「くっ…しょうがないか…」
「チクショー!」
「拓哉…」

ティアナは心配そうな表情で拓哉を見つめる。

「大丈夫!帰ってきたらまたバイテクを教えるから、それまで休んでろよ!」

拓哉はティアナにウインクを送り、ヴィータと共に医務室を出て行った。

「…睦月、拓哉はああいったが、なにか罠がないとも限らん。念のため、お前だけでもこっそり付いていってやれ。」
「あ…はい!」

睦月は橘の命を受け、医務室を出る。

「(拓哉、睦月兄…無事に帰ってきてね…!)」

ティアナはベッドの上で、戦場に向かった二人の無事を祈った。

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最終更新:2008年02月08日 10:06