グレイおじさんの一件以来、皆はこの世界の人間として生きる道を模索していた
シグナムさんは高町師範のツテで隣町の剣道場の指南役のアルバイトを始める様になった
道場の子供達からは厳しいが優しく良い先生だと慕われている様で
僕は内心ほっとしていた
ヴィータは・・・最初は学校にでも通わせようと考えていたのだが・・・
「学校ぉ~?朱雀、お前俺がチビだからってなめてんのか!?」
と、逆に突っかかれれてしまい、それで騒ぎを起こさなければ自由にしてもいいと言って
放置していたら、いつの間にやらはやての通う病院の近くにある老人会所有の
ゲートボール場のマスコットの様な存在になってしまっていた・・・
ヴィータ曰く「お菓子をくれる気のいい人達が沢山いる場所」らしい・・・
シャマルさんは妹の介護や家事を手伝う傍らで料理や介護等の資格を得ようと
独学で勉強を始める様になった
少し抜けている所はあるが物覚えが早いと妹や病院の先生は感心しているらしい
ザフィーラさんは・・・まぁ・・・家の番犬みたいな役割、かな・・・
当人は最初は不満気だったが、妹が毎日「ふかふかや~」といってかまってくれる
らしいので今はまんざらでもないらしい・・・
僕達はそんな彼女達を進んで手伝う日々だったが、笑ったり怒ったりと本当に充足した毎日だった
7月になり始めた頃にシャマルさんが普通自動車の運転免許を取得してくれたので
病院への通院や買物が楽なったのでとても助かった
(例の少女達の事で地元の商店街での買物を避けて隣町までいってたからなぁ)
8月になると皆で山へキャンプに行ったり海に海水浴に出かけたりもした
妹の病状は未だ好転の兆しをみせなったが、今では彼女達が僕や妹の指示無しで
妹の介護をちゃんと行えるまでになっていて僕はかなり助かっていた
そんなある日の事・・・
「うひゃあっ!!・・・あっ、危なかった・・・」
「はやてちゃん!!包丁を使っての魔法の練習はしないでっていつも言ってるじゃないですか!!」
「あはは・・・堪忍なぁ~シャマル~」
「あぁ、血が出てるじゃないですか・・・本当にもう・・・」
「ん?どうしたんだい?シャマルさん」
「あっ朱雀さん、またはやてちゃんが・・・それで指を少し切っちゃって・・・」
「しょうがないな・・・あっ、そうだ」
僕は魔法で妹の体を自分の腕の上に引き寄せた
「じゃあその傷は僕が治してあげようかな~」
「あ~っ、もう・・・またウチを実験台にして~」
「うふふっ・・」
僕達がシャマルさんから魔法を教えてもらい始めてから既に3ヶ月・・・
シャマルさんの良き指導の賜物もあってか僕は近距離での念話と簡単な治療術、
そして数十キロ程度の重量の物体の浮遊移動(自分自身込み)が出来る様になっていた
妹はまだ小物程度の物体を浮かせることしか出来なくて羨ましがられていたが
シャマルさん曰く「精神修養の基礎が朱雀さんは出来ているからその差が出ている」らしい
確かにそういった類の修行を以前師範から受けてはいたけれど・・・
その日の夜・・・
僕と妹がテラスで星空を見上げているとシグナムさんが話しかけてきた
「朱雀様、はやて様、本当に宜しいのですか?」
「えっ?何がですか?」
「闇の書の纂集の事です、お二方が御命じになられれば、我々は・・・」
「それはもうええんや」
「ですが・・・闇の書の力があればはやて様の足は・・・」
「だからといって多くの人の命を犠牲にすることは出来ません、それに
それを行えば僕達はシグナムさん達と離れ離れになってしまいます・・・」
「・・・」
「せや・・・ウチは皆とこれからも一緒にいたい・・・
だから、約束してくれへんか?闇の書の纂集の事は今後一切忘れてウチらとこれからも
ず~~~っと一緒にいるって・・・」
「はやて様・・・」
「僕も、それを望んでいます、これからも”家族”として共にいて欲しいんです
僕や妹やおじさん、そして何よりシグナムさん達自身のためにも」
「・・・誓います、何があってもお二方のお傍を離れる事は無いと・・・
お二方と共にこの平穏を護り生きていくことを・・・」
そう、僕達は今のままでも十分幸せだった、この安息がずっと続いてくれたらと
心の底から願っていた
だが・・・この平穏は長くは続かなかった・・・
最終更新:2007年08月14日 09:15