俺の名はロスター、リージョンと呼ばれる空間に点在する数多の世界の治安維持を目的とする警察組織『IRPO』
の敏腕捜査官だ。しかし、何の嫌がらせか上司が俺にクレイジー・ヒューズなんて狂ったあだ名をつけやがった。
そのおかげで俺を本名で呼ぶ奴なんかいやしない。まぁ、俺も面倒臭いからヒューズで通している。
これからする話は俺の刑事人生の中でも一、二位を争う程タチの悪い事件。舞台はミッドチルダというリージョ
ン内の世界の一つ。そこは『魔法』というファンシーな凶器を操る『魔導師』というハッピーな奴らのメッカ。
おっと、俺たちも使える『術』とは別物だからそこんところは気をつけてくれよ?話はそれたがそのミットチルダ
に存在する『時空管理局』そこのとある一部隊をめぐる黒い疑惑・・・・・。
これ以上は本編内で語らせてもらうとするか。さて、捜査を始めようか。
敏腕時空捜査官 リリカルヒューズ VS 機動六課 第一話、始まるぜ。
第一話「依頼」
最後にまともな休暇を過ごしたのはいつだっただろうか。俺たちの所属する隊の忙しさは正直異常、いや狂って
やがる。ただでさえバカみたいに広いリージョン空間に、無数に存在する世界。その全てが俺たち、IRPOの管轄。
そして俺たちの扱う事件の種類、その節操の無さ。殺人事件はもちろん強盗、ヤク物、誘拐、企業汚職、害獣駆除、
交通事故、窃盗etc・・・・・果ては迷子の婆さんのお守りまで。いったい交番のお巡さんはどこにいっちまったんだい?
今日も今日とて、少ない休憩時間の中、行きつけのマンハッタンのファーストフードでランチとコーヒーを一杯
と洒落込んでたところを。はぁ、胸元から響く突然の呼び出しコールときたもんだ。
「ヒューズ、聞こえる?」
声の主は同僚のドール捜査官、ショートヘアとグラマラスなボディが悩ましい最高の美女だ。性格キツイけどな。
「おぅドール、俺の美声聞きたさについついコールしちまったってのかい?ところで今晩あたり一杯どうだい?
極上のヤツをおごるぜ」
「今のあなたの薄給じゃ、『クーロンあたりの場末のバーで粗雑な合成酒』が限界でしょ。お断りするわ。そんな
ことより午後の捜査を打ち切って今すぐ本部に戻ってちょうだい。課長が直々に話があるそうよ」
俺のお誘いを華麗に一蹴、愛してるぜドール。
「へぇ、あの年中有給モードの課長が直々に俺に話ねぇ。内容、想像つくかい?」
「そうね、ついに来るべき時が来たのかもしれないわね。もし退職金がもらえなかったらゴハンぐらい奢ってあげるわ」
「おい!勘弁してくれよ!ただでさえ劣悪な仕事環境でグチも言わずに血の汗と涙を流して働いてきたんだぜ!
いまさらクビはあんまりだ!これからの家賃と酒代どうすりゃいいんだ!」
「・・・・・冗談よ。じゃあ確かに伝えたわよ。クレイジー・ヒューズ」
あぁ、クビは嫌だ・・・・・。
ドールとの通信の後、即効で本部に戻った俺は、課長に向かって思いつく限りのへの美辞麗句を捲くし立て、
(あんまり思いつかなかったけどな)受付のカワイコちゃんに白い目で見られるのも構わず、嫌がる課長にしがみ
つき、その制服を俺の涙と鼻水で・・・・・。
結論、俺はクビにはならなかった。当たり前だ。この敏腕捜査官をクビにしてIRPOが成り立つはずがない。
代わりに与えられたのは仕事。はぁ、休暇くれよ。
俺が上司に与えられた仕事は今まで経験したことの無い、未知の領域だった。
向かえと言われた場所はミッドチルダ、俺にとって初めての世界。それもそのはず、そこはIRPOとは別の独自の治安維持機構、
時空管理局の庭の一つだからな。(そういうのが沢山あれば俺も休暇が取れるんだがね)
『時空管理局』・・・曰く、警察と裁判所の機能を兼ね備え、他にも文化管理や災害の防止、救助も主な任務としているなんて話だが、はっきり言ってキナ臭い。
なんせ、そこは魔導師と呼ばれた怪しげなヤツラを抱え込み、(俺みたいなマトモな一般人も結構働いているとの話だが、(そもそも魔導師なんてイカレたヤツの全体数が単純に
少ないだけと俺は見ている)その魔導師が使う魔法とかいうヤバゲなものを軸にリージョン界有数の戦力を保持、(この時点で軍の機能も有している)そして、極めつけにリージョン議会の意向を無視し、
聖王教会(あいにくと俺は無神論者でね、詳しくは知らない)と組んで人類の共同財産であるはずの古代遺産の独占主張、並び大量保有。(ヤツラはあろうことか、俺たちの管轄、シンロウ遺跡にまで
ちょっかいだしてきた事もあった)今のリージョン界で何かやらかすとしたらまずコイツ等だろうよ。
まあ、それはさておき今回の仕事は時空管理局のとあるお偉いさんとやらが上に直接持ち掛けてきた話らしい。
その調査、詳しい内容は現地でとある人物から聞かされるらしい。警察組織の人間が別の警察組織に仕事を依頼。
今回の仕事、いつもどおり一人での仕事になると思っていたが、(ぶっちゃけ人数が足りないため)その危険性
(時空管理局=魔導師の巣=危険)からか、課長から民間の協力者を紹介された。俺もよく知っている、おそらくリージョン界最強の術師・・・・・
「ル-ジュ!!ひさしぶりだな!あの事件以来か?今までどうしてたんだ?」
赤い衣装を着たロン毛の優男は、俺の問いかけに笑顔で答える。
「えぇ、マジックキングダムの復興を皆と協力して行っていました。今は、この力でモンスター駆除の仕事をしてるんですよ。
そして今回IRPOから捜査官の護衛を頼まれたのです」
術師の世界、マジックキングダム・・・止めよう、この話は。
ともあれ、魔導師がナンボのものかは知らないが、この術を極めた男には敵うまい。俺の知る限り
最強クラスの護衛なのは確かだぜ。
「ヒューズ、僕はあなたの仕事をお手伝い出来ることを嬉しく思います」
ルージュが俺に手を差し出す。
「おぅ!」
俺はその手をがっちりと握り返す。
そして今、俺は最強の相棒とミッドチルダにある時空管理局地上本部の一室で一人の男
と対面している。
今回の仕事を上に依頼した本人、ミッドチルダ地上部隊のトップ。レジアス・ゲイズ中将・・・とんでもないのが出て来やがったぜ。
俺とルージュの自己紹介をすませ、いざ依頼内容を・・・というところでなぜか沈黙。なんかやらかしたか俺?
気まずい空気に耐え切れず俺が質問する。
「あ、あの・・」
「ヒューズ君と言ったかね!!!」
「は、はいぃぃぃ!」
突然目の前の厳ついオヤジが大声で叫びやがった!その勢いで俺は情けない返事を返す。隣のルージュは呆気にとられる。
「君は私の敵かね?それとも味方かね?」
「ま、まぁ、依頼を受けてここに来た以上味方かと・・・特に今のところ敵対する理由も無いですし・・・」
質問の意図は不明だがそういうことだろう。多分。
再び沈黙。勘弁してくれ。
「あ、あのですね?だから・・」
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ひ、ひぃぃぃ!」
再びオヤジが叫ぶ!何がどうなってんだ!隣のルージュがこっそり逃げ出そうとしてやがる!俺を一人にしないでくれ!頼む!
「初対面の人間にこうも堂々と自分は味方だと訴えるその姿勢!私は感動した!!誇ろう!!」
「は、はぁ」
オヤジは眼に涙を浮かべ、何かに感動してるらしい。いい加減依頼内容をとっとと聞いて、おさらばした方が良いなこりゃ。
「それで、その・・・依頼の内容とかは・・・?」
「いやぁ、申し訳ありません。長年、軍人なんかしてると声を無駄に大きくする癖がついてしまって・・・びっくりしたでしょ?
本当に申し訳ありません・・・」
「へ?」
先ほどの狂った様な大声は一気にトーンダウンし、オヤジは厳ついだけの気の弱い小市民へと変貌を遂げる。
「えーっと、IRPOから遠路はるばるお越し頂いたヒューズさんと、そちらは、ルージュさんでしたね。私は
レジアス・ゲイズと申します。中将なんて身に余る階級ですが、一応時空管理局地上部隊のトップって事になっちゃってます、
いやはや私なんかがと常々思っている毎日なのですが・・・」
「はぁ、これはご丁寧に・・・それでしごt」
「軍人なんか、それも下手に偉くなっちゃうと周りがいつの間にか敵だらけ、なんてことがありえない話じゃな
いですので実際・・・。先程、敵か味方かぁ!なんて偉そうに聞いちゃいましたけど、ヒューズさんのお答え・・・
私はあなたなら信用出来ると確信しました!いやぁ、一応こんなのでもトップですから周りには結構厳しい
感じで振舞ってるんですよぉ。そのせいか私自身、周りから嫌われてるんじゃないかな?ってまぁ俗に言う
人間不信の一歩手前・・・」
低姿勢なのは多いに結構だが、このままエンドレスで話を続けそうだコイツ。
「分かりました!分かりましたから依頼内容を!」
「は!本当に申し訳ありません!いやー、私も娘から常日頃、お父さんは話が無駄に長いなんて言われてる
もので、この前も娘から・・・」
「依頼内容をとっとと言いやがれ!!!」
ヤバイ・・・キレちまいそうだ・・・
「もももも申し訳ありません!依頼!依頼ですね!」
なんか疲れた・・・帰って良いかい・・・・・?
「単刀直入に言いましょう。あなた方にお願いしたいこと、それは時空管理局のとある新設部隊に関しての調査です」
「新設部隊の調査?ちょっと待ってくれ、そんなの完全に身内の中での話だろ?俺達がしゃしゃり出て良いのかい?
オタク等管理局にだって、身内に対する調査部署ぐらいあるだろうに」
俺は軍のトップに向かって敬語を止め、タメ口で話を進める。相手が気にしてない様だから平気だろ。
「はぁ、仰るとおりなのですが・・・・・。とりあえず私の話を聞いて頂きたい。そのとある部隊、部隊名は
時空管理局遺失物管理部機動六課。あぁ、遺失物管理部というのはロストロギア、所謂、超古代の遺産ってやつです。
それの探索・調査・確保を任務とする部署なんですけど」
超古代の遺産の探索と調査!?まさか・・・ヤツ等の事か?
レジアスが話しを続ける。
「その『機動六課』というのが問題の部隊なのです」
「問題?そいつはどんな?」
「分かりません!!」
「「えぇーーーー!!」」
目の前のヤツは堂々と言い放ちやがった。今まで俺の隣で黙ってたルージュも口を揃えて驚く。
「分からないって、そりゃ一体!」
「分からないんですよぉホント!私が知らない間にいつの間にか新部隊設立の話がどっかから出て来て、
そして知らない間にいつの間にかデキちゃってたんですぅ!」
そんなアンタ、デキちゃった結婚じゃあるまいし。
「別に遺失物管理部の部署が足りないって訳じゃないんですよ。現に五つもそこだけで部隊があるんですし・・・。
設立理由も謎なんです。なんでも、一年間の期限付きの実験部隊らしいのですが、何の実験なんでしょうね?それはそうと、
何とそこの部隊長がまだ十九歳かそこらのお嬢さんなんですよ」
おいおい・・・・・突っ込みどころ満載だな。
「十九歳で一部隊のトップ・・・確かに怪しいね」
「それだけじゃないんです!えぇと、ヒューズさん達は魔導師の事はご存知で?」
「いや、魔法とかいう凶器を操る野蛮人としか理解していないが」
レジアスが苦笑する。
「まぁ、確かにあなた方からすればそう見られても可笑しくないのですが」
レジアスの話では、魔導師という連中はそのヤバさ加減でABCで格付けされているらしく、Sランクを超える連中は
一人で世界を火の海に変えることが出来るほどの力を有しているらしい。予想を超えた、いやそりゃれっきとした化物だ。
そして機動六課とやらはその化物を三匹も抱え込んでいるとの事。更にその三匹が機動六課内でいずれも重要なポスト
にあるという事実。まったく危険極まりない話だぜ。
「一部の噂ではそのトップのお嬢さん方が部隊の私物化を企んでるなんて話が・・・・・」
なる程、なんとなく読めてきたぜ。
「クーデターとか?」
俺の突然の言葉に、レジアスの顔がみるみる青ざめる。
「それはいくらなんでも!・・・まぁ極論ですが可能性も否定できない訳でも無くて、そのぉ、何というか」
いよいよ仕事らしくなってきたぜ!
「正直な話、時空管理局ってところは身内にアマアマなんですぅ・・・。互いを信頼しあってるって言えば
聞こえは良いんですがね」
「身内の調査はアテにはならず。そこで俺達の登場って訳かい?」
「はい、第三者の方から公平な目で調査をと」
「いいぜ、恐らく俺は遺失物管理部とやらと因縁があってね」
「はぁ?因縁ですか?彼等と?」
「思い出すのも忌々しい。あのシンロウ遺跡で起きた事件!」
巨大な密林に古代遺跡の眠る世界、シンロウ。いつの日かそこに遺跡の調査とやらでやって来た時空管理局の魔導師
という連中。
そこで起きた現地住民との小競り合い。そして住民の一人が殺された!!ヤツ等はアレを不幸な事故と
ぬかしやがった!勝手に事故で処理しやがった!遺体解剖の結果、住民の死因は不明。だが俺の中では
あれは立派な殺人事件だ!!!
もしかしたら、今回の捜査でヤツ等の尻尾を掴めるかもしれないな。
「そ、そんなことが・・・」
「知らなかったのか?アンタ」
俺の顔があの日の怒りを思い出し、キツく強張る。
「時空管理局の一局員として、あなたに深く謝罪致します」
「いや、アンタが謝る筋合いは無いだろう、それに謝るべきは俺にじゃあ無い」
「恐縮です・・・」
場が深く沈む。だがこのレジアスという男、案外イイ奴かもな。
「悪かったな、アンタにアタっちまって。どうだい?この続きは酒でも飲みながら別の場所で。アンタ顔は怖いが良い人
そうだから一杯奢るぜ?」
「え?いやぁ、嬉しいお話なんですが・・・お酒は私好きですし、時間も有り余ってますけど、昼間からこの界隈で、
よりにもよって中将がお酒なんて、部隊の指揮にも関わりますしぃ・・・。いえ、ほんと私友達いないものですから、
めったに飲みに誘われるなんて無いんです。だから本当に嬉しいんですけどぉ」
「ミッドチルダじゃなきゃ良いのかい?」
「え!?まぁ人に見られなければ立場上、如何という事はないんでしょうけど、さすがにそれは・・・」
俺は隣に座るルージュにニヤけた視線を向ける。
「頼むぜ、相棒」
「ふぅ、仕方ありませんね・・・場所はどうします?」
「クーロン、俺の給料じゃそこらが限界だわ」
レジアスが不思議そうに顔を向ける。
「あの、お二人共?一体何を?」
「いいからいいから、ルージュに?まって」
「お二人ともしっかりつかまっててくださいね!振り落とされたら命の保障は有りませんよ!はぁぁぁ!!リージョン!
転・送!!!いざクーロンへ!」
リージョン転送。それはマジックキングダムの術士でも使える術士が限られた、リージョン内の世界間を
瞬時に移動する超便利術!ちなみにここに来たのもこの術でだ。俺も使えたら良いのにな。
「ひいいいいい!!!何が!何が!」
絶叫するレジアス。楽しそうで結構、結構。
歓楽街が立ち並ぶ電飾看板に彩られた世界、クーロンに着いた俺達一行は行きつけの酒場『グラディウス』へ。
(まぁここなら知り合いの店だからツケが効くだろう)最初は先程のリージョン移動のせいか、妙にビクビク
していたレジアスも酒が進むと次第に饒舌になる。
「一番!不肖レジウス!歌います!あぁーーーいーーーまぁい三センチ!!!」
「下手糞ー!引っ込めー!俺が歌う!マイク貸せ!」
「うぃーっく」
ルージュは飲みなれないのかもうベロンベロンだ。
店の奥から店長のルーファスと従業員の女の子、ライザとアニーが顔を出し、いつの間にか一緒に飲んでいる。
他の客の事ほっといて良いのかよ。
「俺の華麗なピザカットを見よ!!フンッ!」
「「キャー!店長素敵ぃーー!!」」
クーロンの裏路地で医者を営む、ぬーべーこと妖魔のヌカサーンと、助手の王様(ガイコツ)もいつの間にか合流。
「おやおや、君が来るとココはいつも賑やかになるね」
「ヒューズ殿!久しぶりだのう。是非、ヒューズ殿に進化した余の骨芸を見てもらいたいと思っていた所存よ」
大酒飲みのゲンさんと、とある事件以来、俺専属のストーカーと化した元モデルのエミリアも来やがった。
「よぉ、酒飲ませろ」
「ヒューズーーー!!今までどこ行ってたのん?あのドールとかいうオバサンが意地悪してあなたの居場所教えて
くれないんだもん」
ドール、ごめんよ。
俺にへばり付くエミリア、レジアスの背中にはなぜか無機質なスライムがへばり付いてやがる。
ぬーべー曰く、スライムは新しい助手らしい。良いのかよ、あんなのが助手で。
ふと、レジアスが漏らす。
「ヒューズさん、あなたもご存知の通り、時空管理局も一枚岩じゃ無いのです。中には私の事を嫌う局員も大勢存在
するのでしょう。私はあなたが羨ましい。あなたにはきっと沢山のお友達が居るのでしょう。私は立場上、
孤独ですからね・・・」
「なに言ってんだ、あんたも今日から俺の飲み友達じゃねぇか。ほら、しみったれた事言ってないでどんどん
飲んでくれ、安酒だけどな」
「恐縮ですぅ・・・グスッ」
少々騒がしいが今日の酒は最高だ。酒は楽しく飲まなくちゃいけない。
宴も終わりミッドチルダに帰ってきた俺達は、レジアスと別れを告げる。
「今日は、本当に楽しい一日でした。あと、これは現在までに私個人で調べた機動六課とその周辺に関するファイルです」
「ああ、確かに受け取った。ところでレジアスさん」
「レジアスで良いですよぉ」
「そうかい?じゃあレジアス、金の流れは当然調査済みかい?」
「お金・・・ですか?いえ、それは」
「おいおい、地上部隊のトップのアンタを出し抜いて設立された部隊、当然、やましい事が無い訳がねぇさ。こいつは
俺の勘だけどな」
レジアスが考え込む。
「分かりました。では改めまして依頼内容を、あなた方には時空管理局遺失物管理部機動六課の内定調査をお願いします。
万一、不審な動きが有りましたなら即刻、私の方へ連絡をお願いします。それと、これは可能でしたらですが、
機動六課の全貌を知る手がかりを見つけてほしいのです。あなた方の調査の際の身分等はこちらで用意させて頂きます」
「了解!」
隣のグッタリしたルージュの横腹を軽く突付く。よくもまぁ無事ミッドチルダに帰ってこれたもんだ。
「りょ、了解です・・うぷっ」
最後にレジアスはこう言った。
「ヒューズさん・・・確かに時空管理局は一枚岩ではありません。でもそれは大規模な集団組織として当然の事なのです。
それぞれ違う意見、違う思想、それは時として集団の争いの元となり、時として一部の暴走行為への抑止力にも
なるのです。私は信じたいんですよ。機動六課という部隊の指す意味を・・・。あなたも一組織の人ですから、
理解して頂けるかと思うのですが」
俺の脳裏に浮かぶのは、とある一人の男の暴走により、壊滅した組織・・・『トリニティ』。
俺は改めて、背を向け歩き出す気の良い友人に別れを告げる。
「レジアス!また暇が出来たら飲みに行こうぜ!」
「はい!よろこんで!」
悲しい事に、その約束が果たされる事は二度と無かったけどな・・・
第一話~完~
最終更新:2008年02月23日 17:43