第97管理外世界『地球』の再調査が命じられたのは、なのはやフェイト、はやてが最後の夏休みを過ごしていた、夏の初旬のこと。管理局と『地球』を行き来する、多忙な日々を、彼女達なりの朗らかさと明るさで楽しんでいる頃合のことだった。

 新暦71年の今日までに、『地球』は幾度かの調査を受けている。
 一度目の調査は二十余年ほどまえ山奥の学園でおきた『震源のない地震』を、管理局観測室が補足。物理的被害はなかったものの、小規模の次元震がみとめられたことから、管理局は調査隊を派遣するが原因は不明のまま、捜査はうちきりとなった。

 つい数年前にも、同じ山奥の学園で再び発生した『震源のない地震』の調査がおこなわれた。
 こちらもまた成果が上がらなく、判明したのは、『震源のない地震』の震紋が、転移ゲートを使うときに観測されるゆらぎや、結界を作動させてときの反応ににている、という検証結果のみだった。

 どの調査も穴はなく、局員は自分の職務を全うした。ただし時間が限られていたこともあり、『地球』土着の文化や土着の信仰には触れられず、調査は終了することが多かった。
 しかし、わずかな時間をみつけて、調査員たちは自分達の使う魔法とは別系統の魔法が、『地球』に存在していることを探り当てていた。

 そんなさなか。観測室は『地球』の弓状列島で、膨大なエネルギー反応を観測する。
 世界を一つ二つ簡単に破壊する危険指定級のロストロギア――それには劣るものの推定されるエネルギー量は、『地球』の一地域を灰に変えるほど凶悪なシロモノ。
 しかも報告では、PT事件や闇の書事件のように、ロストロギアが『地球』に流入したのではなく、『地球』で発生したロストロギア級の物体、だった。

 事態を重くみた管理局上層部は『地球』に深く因縁のあるスタッフを再び結成し、対応に当たらせる。
 それぞれの役職や仕事状況をすべて無視する大規模な任務に批判もあったが、上層部は人事を強行する。
 『地球』製ロストロギア<便宜上>の反応は、かつて調査員たちがおぼろげにしかつかめなかった『地球』の魔法が、絡んでいると推測されたからだ。

 形を大きくたがえていても、魔法が『地球』に存在しているか、存在していないかでは、対応が大きく違ってくる。
 管理世界か? 管理外世界か? 判断を確実にするために、上層部はいま動かせる最良の手を選んだのだ。

 L級次元航行艦アースラ艦長、クロノ・ハラオウンを中心に『地球』を故郷とする高町なのは、八神はやてはいうまでもなく、一時期『地球』にすんでいたフェイト・T・ハラオウンが選出され。さらにはアシスタントとしてユーノ・スクライアが同行。
 という具合に、管理局最強をなのってもおかしくない面子がそろっていた。

 期限は――無制限。だがそれは、完全に調査が終了するまで、戻ってくるなという暗黙の指令でもあった――。


 のち、ユーノ・スクライアの調査によって、そのロストロギア級の物体の正体が明らかにされる――。


 名称、『殺生石』

 場所、水杜神社。

 『リリカグラ』――完成次第投下予定。避難所に。




※万の、古き図書館につめる、欠けし数字の古き友に謝罪をこめて捧ぐ。マコトとリンネとルナと、二人のハルカに栄光を。道は違えども、襷が最後までつながることを切に望んでやまない。

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最終更新:2008年02月28日 21:22