「悪ぃシグナム、ちょっとドジっちまった・・・」
「何も言うな、今シャマルの許へ・・・!?」
「私達は時空管理局の者です、この区域への許可無き転移は国際法、並びに
時空管理局法で禁止されています、私達と同行願えますか」
「珍しいな、シグナムが転移反応を消し忘れるなんて、平和ボケか?」
「黙ってろヴィータ・・・やはりお前達は時空管理局の手の者だったか・・・」
「えっ・・・?」
「悪いが我々はお前達に捕まる訳には行かぬ、大人しく手を退け、さもなくば・・・」
「・・・」
「シグナム、こいつらなら”大丈夫”なんじゃねーのか?」
「それは纂集のことか?だが私は奴らとの戦闘は極力避けたいのだが・・・」
「どのみちもう見付かっちまってんだからんな事言っててもしょーがねーだろ!
それにこりゃ逆にチャンスじゃねーか、今こいつら叩けば・・・」
「我等の”餌”となる者が多数現れる・・・か、だがそれは余りにもリスクが高すぎる」
「わかってるよ、でもしょうがねーじゃんか、はやての為なんだ・・・
こいつらなら今の俺らでも十分倒せる、やろう、シグナム!」
「止むを得んな・・・」
「なのは、気をつけて、来るわよ・・・!」
「うん!、フェイトちゃん!」
「不法侵入者が二人か・・・エイミィさん、データ照合、急いで」
「はい、・・・該当データ、ありました、えっ!?これって・・・」
「そんなまさか・・・彼女達は・・・クロノ、急いでなのはさん達を緊急回収、急いで」
「えっ?母さん?」
「いいから!急いで!!」
「はっ、はい!」
「では、行くか、ぬかるなよヴィータ!」
「シグナムもなっ!」
「来る・・・!!」
「ダメ!!なのはさん、フェイトさん、逃げて・・・!!」
9月初旬、シグナムさん達がついに時空管理局、いや”彼女”達と戦端を開いてしまっていたことを
僕は知る由も無かった・・・
9月中旬、僕は高町師範の経営するレストラン”翠屋”で調理師見習いのアルバイトをしていた
8月の盆前にヘルプ要員として請われたのがきっかけだったが、シグナムさんたちが
妹の介護をこなせる様になったので僕はアルバイトを続けていた
幸い妹の容態も安定してきたのでしばらくは続けられるなと思っていたのだが・・・
「すまないな朱雀、家の仕事をいつも手伝ってもらって・・・助かるよ」
「いいんですよ恭也さん、師範、じゃなかった、店長や恭也さんにはいつもお世話に
なっていますし、それに家には皆がいてくれますから・・・」
「そうか・・・まぁ剣道場に務めてたお手伝いさんが辞めてはやてさんの介護に
専念してるらしいからな・・・」
「・・・えっ?どういう事です、それは」
「・・・お前、知らなかったのか、そのお手伝いさんが”主の介護に専念したい”と
言って二週間位前に辞めたって、父さんが・・・」
「本当ですか!?剣道場を辞めたって・・・!」
「・・・そう聞いているが・・・」
「そんな・・・僕にはそんな事・・・一言も・・・!?まっ、まさか・・・
すみません、恭也さん!!今日は早退させてもらえますか!!」
「あっ、ああ・・・わかった・・・」
そう言うと僕は足早に店の外に飛び出していった
「どうしたんでしょう、朱雀さん・・・」
「・・・」
(やっぱり、シグナムさん達は・・・くそっ、どうして・・・!)
どうしようもない不安に駆られながら僕は全力で家まで走っていた
シグナムさん達を問い詰めるために・・・だが、走っている途中で僕は奇妙な違和感に襲われた
(何だ・・・この感じ)
僕がこの感覚に疑問を感じ立ち止まると、僕の目の前に一人の男が立っていた
「貴様が、八神朱雀か・・・?」
(・・・!?)
僕は、後ずさりをした
「・・・見知らぬ人間に突然名指しで呼ばれ警戒する気持ちは解らんでも無いがな・・・
私は君の”味方”のつもりだ」
「・・・あなたは?」
「私は・・・そうだな、”ジェレミア”、とでも名乗っておこうか・・・」
「それで、あなたは一体僕に何の用があるんです?」
「・・・単刀直入に言おう、貴様の供の者が現在時空管理局の者に追われ、
窮地に立たされている、理由は、言わずとも解るだろう・・・」
「そんな・・・シグナムさん達が、どうして・・・」
「・・・妹の命を助ける為だろう」
「・・・!?、命って・・・どういう事ですか!?」
「・・・知らぬのか?貴様の妹が闇の書の所為で余命幾ばくも無い事を」
「闇の書の所為って・・・一体どういう事なんです!!」
「それは貴様が供の者に直接聞けば良い、それで、貴様はどうするつもりだ?」
「どうするって・・・」
「貴様は何もせず妹や供の者を見殺しにするつもりか?妹の命を護る為に
命を懸けて戦っている者達を・・・」
「・・・あなたは僕に何をしろって言うんです?力があるわけでも無い
普通の人間である僕に・・・」
「力ならある、これを使いこなす力がな・・・」
その男は僕の前に一つの物を差し出した、それは丁度手の平程度の大きさの
アクセサリーみたいな物で、青い剣に4枚の翼がついていた
「これは・・・?」
「インテリジェント・デバイスだ、デバイスがどういうものかは供の者に
聞いたことがあるだろう・・・」
「これが、デバイス・・・」
「名を”ランスロット”と言う、これが貴様の力になってくれる」
「・・・どう使えば良いんです?」
男は僕にそれを手渡して僕の両手で握り締めさせた
「ランスロットに意識を集中させろ、そうすればこれはお前の問いに答えてくれる」
僕は男に言われるがまま、手の中にある物に意識を集中させた
(・・・所有者認証、確認・・・始めまして、我が主)
僕の頭の中に声が響いてきた
「・・・貴様に足りない知識と経験は全てこれが補ってくれる、貴様はこれを使い
貴様自身が成すべきことを為すが良い」
「・・・一つだけ教えて下さい、何故あなたは僕にここまでしてくれるんです・・・?」
「・・・運命を覆すためだ・・・」
「運命?それは一体・・・」
「無駄口が過ぎたようだな・・・、それは貴様のものだ、好きにするが良い
ではさらばだ、八神朱雀」
男は魔方陣を展開してその場から消えた・・・
「運命を覆す為、か・・・」
妹の為に頑張っている皆、それに比べて、僕は・・・!
僕に出来ること、そして望む事・・・それは・・・!
「ランスロット、僕は君の使い方を知らない、教えてくれないか」
(はい、ランスロットの基本組成並びに使用方法の全情報を主の肉体に伝達
続いて主のリンカーコアとランスロットのシステムを接続・・・)
ランスロットがそう言うと僕の頭の中に様々な情報が入ってきた
いや、それだけじゃない、まるでこれを使うのが初めてじゃない、昔から使い込んでいた
馴染みのあるものだと、そんな感覚に襲われた
「ありがとう、ランスロット、それで、みんなが何処にいるか分かるかい?」
(ドルイド・システム発動、検索開始・・・見つけました、データ、転送します)
ランスロットは皆の現在位置を僕の頭の中に叩き込んだ
「日本海近海か・・・遠いが、いけるか?」
(我々の推進力なら10分で行けます)
「わかった、いこう、ランスロット!」
(はい、我が主、バリアジャケット、セットアップ)
ランスロットの合図と共に僕の服装が中世の貴族が着ていた様な白い礼服へと
変化していった、
両腰には2振りの剣、両腕の手甲にはそれぞれに翠色の宝石が付いていた
両肩の肩当と両足のブーツには魔力を放出するためのバーニアみたいなものが
装備され、右手の手甲の中には巨大な魔力結晶体”エナジーフィラー”を使用するための
特殊なベルカ式カートリッジシステム”ユグドラシル・ドライブ”が組み込まれている
セットアップが完了し、僕は右手を地面に付けて前かがみの態勢をとった
「いくぞ、ランスロット!」
(はい、我が主)
両肩と両足からすさまじい量の魔力が噴出し僕は大空へと飛び出した
だけど恐怖は感じない、今の僕にはこれが当たり前のことだと、そう認識できる様になっていた
いこう、みんなを助けに、そして真実を聞き出すために・・・
「行ったか・・・どうだ、そちらの首尾は?」
「八神朱雀、はやてのこちらの世界、並びにミッドチルダ内に存在する個人情報は全て削除済みだ・・・問題は無い」
「そうか・・・これで幾分かは時間が稼げるか・・・」
「今は彼がランスロットを使いこなせるに足る者か否か・・・それを見定めなければならない」
「ああ、わかっている・・・我等の計画の為にもな・・・」
最終更新:2007年08月14日 09:16