『魔法中年アヴェンジャるでる』 別離の章

 空が、燃えていた。

 破壊神級空戦魔導師が二柱、ハンス・ウルリッヒ・ルデルとベルカの聖王の戦いは熾烈を極め、聖王の母艦、『ゆりかご』は撃沈一歩手前になるまで痛めつけられていた。

 ルデルが両手には槍型のデバイス、右にヘンシェル、左にロースマン。
 因みに、以前使っていたシャルノブスキーを与えた騎士ステーンはすでに敗れている。

「聖王よ、とうとう顔を見る事もなく貴様を倒す日が来たようだ……なっ!?」

 その驕りが隙を生んだか、周囲を取り囲む20匹余りの有翼蛇の放つ高圧水弾がヘンシェルを貫いた。
 迎撃しようとするも同時攻撃の負荷に耐えかね、ロースマンが機能不全に陥る。
「どどどどうしよう!?ルデル!」
「騒ぐな!まだお前がいる!」
 ユニゾンデバイスのガーデルマンが慌てふためくのを一喝、その拳に魔力を貯めようとしたその時!

「ルデル、お前の負けだ」

 彼の真上から、若い女の声がする。

 ルデルと、彼がベルカの地に沈めようとした自らの座艦を真上から眺めつつ、聖王はその手に高圧の魔力を握り締めている。
 彼が肩越しに振り返った時には、彼女は翠と紅の瞳を輝かせ、必殺の一撃を放つ直前であった……

「う、美しい……」

 自分が顔も知らず敵対していた相手が、斯様な美少女であったか。その驚愕が、回避行動を取らせなかった。
 自分は逃げられぬと悟ったルデルは、咄嗟に融合騎を分離して逃がし、そして魔力光の中に消える……

「く、ルデル!ルデルー!!」
 そして、“烈火の剣精”として知られたそのユニゾンデバイスも、爆風に吹き飛ばされ……

 そして、時は流れた。
 聖王の治世も今は昔、大乱を鎮め世を治めるは時空管理局。

 とある研究施設に、かつて“烈火の剣精”と呼ばれた融合騎が捕らえられていた。
 過去の戦いと過酷な実験の果てに自らの記憶の大半を失った、そんな彼女の前に現れたのは、死せる騎士と、感情を置き忘れた少女……

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最終更新:2008年03月20日 15:17