魁!! 魔法学園リリカル男塾 第一話「大波乱!! 男塾VS機動六課!!!」


「日本男児の生き様は~! 色なし恋なし情けあり~!!」

時は早朝、場所は機動六課のすぐ隣の木製の校舎、響くのは男達が野太い歌声で奏でる自分達の塾を謳う塾歌、それは六課のお隣さんのある学校のいつもの風景だった。

それはただの学校ではない。
あえて言うならば学校とは名ばかりの狂気の戦闘集団、世に男塾と呼ばれる男の中の男を鍛える為の最狂最悪の学校組織である。

男塾ミッドチルダ分校の校庭に集まった男塾塾生一同は日課の塾歌唱和を以って朝を迎えていた。
男塾で鍛えに鍛えぬいた屈強な男達の歌声である、無論だがウルサイことこの上ない。
だが相手は“アノ”男塾である騒音はこれに終わらない事は説明するまでもないだろう。
塾歌を歌い終えた塾生一同の前に着物を着た一人の男が現われた、その男こそが男塾の塾長である江田島平八その人である。


「ワシが男塾塾長、江田島平八でああああぁぁる!!!!!!」


凄まじい怒声、本当に人類が発しているのか疑いたくなるような声量である。
その声の大きさに男塾の窓ガラスが次々に砕け散り、お隣の機動六課隊舎の窓ガラスも割れていく。

ちなみにこの壮絶な騒音公害はなにも今日が初めてという訳ではないのだ。
男塾のミッドチルダ分校が出来てからというもの数ヶ月の間、ほぼ毎日こんな調子で朝を迎えている始末である。

いい加減に我慢の限界を迎えるのが自然の成り行きな訳だろう。


「ああもう! うるせえええええぇっ!!!!!」


ヴィータは叫んだ力の限り、基本的に気の短い彼女にはもはや毎朝恒例のこの騒音地獄にこれ以上耐える事はできない。


「毎朝毎朝、うるさ過ぎだっつうの! もう我慢できねえ、あいつら全員まとめて叩きのめしてくる!!」


グラーファイゼンを肩にかついだヴィータが鼻息を荒くして殴りこみをかけようとする。
そんな彼女にスバルとティアナがしがみ付いて必死に止めようとしていた。


「ダメですってヴィータ副長、あの人達は絶対ヤバイですから!」
「だからデバイスは収めてください!」
「放せ! あたしはもう我慢できねえんだあああ!!!」


しがみ付いてなんとかヴィータを宥めようとするスバルとティアナだが、ヴィータは問答無用で二人を振り払いグラーファイゼンを振りかぶって隣接する男塾に向かう。
そしてそんな彼女の前に立ち塞がる一つの影。


「なんだよ、なんか文句あるのか!?」


立ち塞がったのは緋色の髪をポニーテールに結んだ美女、それはヴィータと同じく夜天の守護騎士である烈火の将シグナムである。
ここでヴィータを止めてくれるかと期待した周囲の六課メンバーだったが、次にシグナムが発した言葉にその期待は容易く覆った。


「実は私もあの連中のやかましさには辟易していたんだ。行くならば私も行って文句の一つでも言わせてもらおう」


シグナムは炎の魔剣レヴァンティンを構えて瞳に爛々と怒りの炎を燃え上がらせながらそう言った。
もはやこの場に怒りに燃える二人の騎士を止められる者はいなくなった。




「「たのも~う!!!」」


男塾の校門前、ヴィータとシグナムの二人はデバイスを手に構えてそう叫んだ。
もはや気分は前線で戦うくらいに興奮して意気揚々と高まっている。
そして凛とした澄んだ美少女と美女の声に反応した男塾の面々が校門に殺到した。


「見ろ~、女じゃあ! 女がおるぞ~!!」
「ホントじゃあ! なんで女がこの男塾(ミッド分校)におるんじゃあ!?」


走り寄りながらそう叫ぶのは男塾一号生、松尾鯛雄と田沢慎一郎の二人である。
そしてその二人の後を追って続けて走ってきたのは極小路秀麻呂という小柄な青年。


「見ろよあのボインちゃんを、ありゃあお隣の機動六課の姉ちゃんだぜ。きっと俺たちがあんまり良い男なんでわざわざ誘いに来たんだ」
「ほ、本当か秀麻呂!?」
「ああ、きっと間違いねえぜ」
「よっしゃあ!! それじゃあさっそくお近づきの印に俺がデートに誘っちゃる~!!」
「待て~い松尾! 抜け駆けは許さんぞ」
「うるせえ、早いもん勝ちじゃあ。お姉さ~ん、俺とステキなデートして一緒にステキな朝を迎えてくれ~い♪」


松尾のその叫びと共に“我先に”という男塾の面々が凄まじい形相で以ってヴィータとシグナム(主にシグナム)の二人に全力で駆け寄る。
それは気の小さい人間ならば軽くショック死してもおかしくないくらいの迫力だった。
なんせ男塾で狂的なシゴキを耐え抜く男塾の屈強な男達が目を血走らせて、鼻の下を伸ばし、野太い声を上げ、口からは飢えた野獣の如く涎を垂れ流して大群で押し寄せてくるのだ。
これではヴィータが手にしたデバイスを振りかぶったとて致し方あるまい。


「うわっ! な、なんだこいつら!? こうなったら‥‥アイゼン、殺られる前に殺るぞ!!」


カートリッジを排夾し魔力をたっぷりと満たした鉄の伯爵の名を冠する鉄槌のアームドデバイス、グラーファイゼンが唸りを上げて振るわれ群がる塾生を薙ぎ払った。

ちゅど~ん!

「ぎゃあああっ!!」
「ぐああああっ!!」


最高クラスのベルカの魔道騎士の一撃に大地が砕けて抉られ、塾生達が吹き飛ばされていく。
悲鳴を上げて吹っ飛ぶ塾生、普通の人間なら魔力ダメージのショックに気を失ってもおかしくない(というかそれが普通)なのだが屈強さが売りの男塾の面々は倒れてなおシグナムに這って近寄って行った。


「女じゃあ~、モノホンの女じゃあ~」
「こんな近くで女を見るのは久しぶりじゃのう‥‥‥お姉さんそこの喫茶店でお茶でもせんかのう~」
「ひいっ!」


濃ゆ~い形相と野太い声そしてやたら汗臭い身体で以って這いずりながらシグナムに近寄る男塾の塾生達、その迫力たるやシグナムを恐怖させるのに十分すぎるものだった。
彼女が思わず悲鳴を上げるのも無理は無いだろう、いかに歴戦のベルカの騎士とて一人の女なのだ。
シグナムは手にしたレヴァンティンの刃を咄嗟に振りかぶる。

瞬間、甲高い金属音を立てて炎の魔剣の刃は長大な日本刀に止められた。


「おい姉ちゃん、俺の後輩に随分とふざけたマネしてくれてるじゃねえか?」


2メートルは軽く超えるだろう長身とそれにも勝らん長大極まる長さの日本刀を軽々と振りかざし、眼光は手にした刀に負けず劣らずの鋭い凄まじい気迫の男。
名を赤石剛次、男塾二号生筆頭を務める男塾最強の剣士である。
赤石の剣にシグナムは即座に一歩引いてレヴァンティンを構え直した。


(この男‥‥できる、それもかなりの使い手だ)


赤石はそのシグナムを軽く見下すような目で眺めながらヴィータに視線を移す。
そして手にしていた豪刀を肩に担いでいた鞘に戻すと口を開いた。


「おい小せえ嬢ちゃん、今からワビ入れるんなら許してやらん事もねえぜ? だがこれ以上俺の後輩をいたぶるってんなら俺が相手だ、手加減はしてやるが少しばかりオシオキさせてもらう事になる」


完全に見下したような態度にヴィータの怒りに一気に火が付いた。ヴィータは手にしたグラーファイゼンを突きつけて吠え掛かる。


「誰が“小さい”だコラッ! だいたいてめえらがキモイから思わずデバイス使っちまったじゃねえか!! そもそも毎日ウルセエんだよ!!!」
「まったく気の短いチビだぜ、そんなに怒鳴ったってお前の背丈が伸びる訳でもねえだろうが」


気にしている背丈の事を言われてヴィータは思わずカチンときた。


「チビ言うな!!!」


唸りを上げるグラーファイゼン、だがそこに天を裂き地を割らんばかりの怒声が鳴り響いた。


「ワシが男塾塾長、江田島平八であああああぁぁる!!!!!」


続く。

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最終更新:2008年03月23日 18:32