例えば軍人などにとって、士官学校の教官という人種は例えどんなに互いの立場が変わろうとも一生頭の上がらない相手である。
 スバル・ナカジマやティアナ・ランスターにとっては陸士学校の三輪先生やキヨマツ一尉がそうだ。

 また、それとは別に、その背中を見つめ、追いつき、並び、追い越したいと願う相手もいる。
 スバルにとってそれは、あの日であった二人、高町なのはであり、天花寺大悟であった。

 因みに、スバルの姉ギンガにとってそれはフェイト・T・ハラオウンであり、ティアナにとっては亡き兄・ティーダである。

「へぇ……スバルが高町一尉の写真をぶら下げているのはそんな理由があったんだ」
「大悟さんの写真もあればよかったんだけどねぇ。流石に無いから」
 ここは、陸士学校の女子大浴場の更衣室。たまたま学友が、スバルがお守り代わりにしているなのはの写真に目を留めたのが切っ掛けで、彼女の思い出話が始まっていた。
「だから私、決めたんだ……あの人みたいな、“快男児”になる『ちょっと待て』……って何?」
「何じゃないわよ、女が快男児は無いでしょーが」
「快男児が男だから……快女児?そんな言葉は無いわよねぇ……」
「うーん、男らしいのの反対で女らしい……佳人や麗人……」
「淑女や令嬢になるのが普通だけど……」
 相棒のティアナはじめ皆からの突込みが入る。だが、何と呼べばいいのかとなると皆考え込んでしまった。
 最初に挙げた快女児はともかく、その後の四例は明らかに、目の前のシューティングアーツ使いの目指す方向性には相応しくない。

「何だ、何の話題だ?」
「あ、キヨマツ一尉。実は赫々云々で」
「ふむ、なら、三輪先生の叡智を当てにしてみようか。もしもーし」
『はい、三輪です……ぶばぁっ!!』
 空間に浮かんだモニターの中の三輪先生が、盛大に鼻血を噴出して仰け反る。
 当たり前だ。陸士学校随一のプロポーションを誇る一尉を筆頭に、着替え中や半裸全裸の女子生徒達が映し出されていたのだから……

 ミユキ<パッツンパッツン>キヨマツ一尉、減点1。

 かくして協議の結果、スバルには『猛女』、キヨマツ一尉には『The.ガッツ』、三輪先生には『ラッキースケベ』というあだ名が付く事になったのである。

「じゃあ、ティアには……」
「つけなくていい!」

『ダブルクロス・リリカル・トワイライト 天からの快男児』
 第1話 再会の時、出会いの時 ~二人の二挺拳銃~

 ホテル・アグスタ。ここはクラナガンでも有数の一流ホテルである。
 この日、ここで行われる古代遺物(ロストロギア)品評会並びにオークションの警備の為、機動六課の面々が派遣されていた。
 本来彼女らは『レリック』と呼ばれる物件に関わる捜査が専門ではあるが、様々な思惑や諸般の事情、政治的配慮その他諸々により、連続レリック窃盗・強盗及び未遂犯が出没する可能性ありとしてやって来たのである。

「アレ?なのはにフェイトにはやてじゃないか。ああ、今日の警備だね」
 八神はやて以下三名の前に現れたのは、彼女らの幼馴染にして無限図書館司書長、ユーノ・スクライアである。そのすぐそばには、秘書らしき金髪碧眼の女性が一人。

「……誰?この女、ユーノ君に馴れ馴れしく(あ、ユーノ君、お久しぶりだね)」
「……ユーノの愛人?とすると、邪魔者が減ったのか(ええ、お久しぶりね)」
「なんや、面白い事になりそうやわぁ(や、警備に来たったでぇ)」

……三人とも、本音と建前が逆なんですが……

「あ、紹介するよ。ウチの司書兼秘書のクリステル・フォン・エッシェンバッハ君」
「クリスです。よろしくお願いします」

 そこを流すなよ、この淫獣。

「クリス、彼女達は僕の古くからの友人で、今回の警備を担当してくれる機動六課の……」
「存じていますわ。司書長の三人の恋人だとか」

 ハッ○リ自重しろ。第一にこの作者の身の安全の為に。

 さて、会場となる大ホールの客席に、一人の男がいた。
 その名はギヨーム・ド・ノートルダム。遺失文明の保護を謳うギヨーム財団の代表にして設立者であるディレッタント、一部の噂では魔法怪盗或いは強盗紳士、そして辣腕の管理局嘱託空戦魔導師である。
 今回彼が買い付けを狙う最大の目標は、選ばれし者にしか読み解けないと言い伝えられる預言書、『真・レ・サンテュリ』である。
 何しろこの預言書、かつてはこのギヨームの所有物であり、諸般の事情により一度は手放したものの、何の因果かオークションに掛けられるとあっては、今一度取り戻し、然るべき継承者をもう一度探さねば、という義務感が働いたのである。

 度重なるレリック事件、そして出没するガジェット・ドローン。
 撃墜され、そして回収されたそれらは、徹底的に分解され、解析され、そして研究し尽くされ、新たなハイパーテクノロジーとして還元された。
 そして、それらを再利用して戦力にしよう、というプランが提出され、安全かつ合法的な魔力電池と非殺傷及び対機械用攻撃魔法端末を搭載したサブデバイス、或いは半自立式警備用ガジェット・ドローンとして試作が行われた。

 通称、パトドローンの誕生である。

 そして、パトドローン計画の責任者を務めるのは、若き天才科学者、フィン・ブースロイド。
 この日、彼も自分用に調整したパトドローン2機を従え、会場警備に派遣されたのである……

 そして、事件は起きた。

 ホテルに迫るガジェットの大群。迎え撃つ機動六課。
 六課フォワードとして、スバル・ナカジマとティアナ・ランスターは戦っていた。
 だが、多勢に無勢、徐々に押し込まれていく。もう一組のフォワードも、部隊長達も、それぞれに手一杯。
 この、不利に傾きかけた天秤を揺り動かし、押し返す何かが……

「でやぁぁっっ!!」
 スバルの鉄拳がガジェットの装甲を貫き、崩れる様に倒れたその陰から、別の一機が現れ、飛び掛かる。
 ティアナのフォローも間に合わない……その時、

「ふんっっっ!」

 横合いから飛び出した黄色い影が、その敵を殴りつけ、粉砕する。
 それは、例えて言うならチベット僧の様に黄色と橙色のローブをまとった巌の如き漢、いやさ快男児。

「敵は多いな、スバル。いや、大した事は無いか……俺とお前で戦えば、な」
「え……ハイ、やりましょう、大悟さん!」

 そして、クリスがモーゼル拳銃型デバイスを構え、ギヨームの魔術が冴え渡り、フィンもパトドローンを操作して戦った。

 この日の戦闘については、グリフィス・ロウランの日記のこの一文に集約される。すなわち、
「この日は、ガジェット・ドローンにとって最悪の日であった」と。

 だが、

 この日はそれで終わりではなかった。

 ぱぁん、と、音高く頬を打たれたのはせr……ティアナ・ランスターであり、彼女の頬を叩いたのはめr……クリステル・フォン・エッシェンバッハである。
「な……」
「な、じゃありません。
 敵の位置、味方の位置、そして自分の射線。それらを完璧に把握するのは射撃の基礎です。
 それを何ですか!ヴィータ三尉がカバーしてくれたから良いものの!」
「えと、クリスさん、私は気にしt(ぱぁん)」
「あなたもです!スバル。
 味方の射線に飛び込むなんて、どういうつもりですか!

 後大悟、貴方も何故止めない!」
「お、俺も怒られるのかよ……!?」
 ティアナの誤射に対する説教は連帯責任でスバルや大悟まで飛び火し、射線や位置把握に関する臨時の講義は延々と続き、

「あー、それ、殆ど大体あたしの台詞……」
 言いたい事を粗方クリスに取られたヴィータは壁の花であった。

「ふむ……天花寺大悟、か……面白い。こうでなくてはな……」
 自らのアジトにて、ジェイル・スカリエッティは事のあらましを聞いていた。
 彼こそ、レリック連続強奪事件の主犯格、様々な非合法の実験を重ねてきた次元犯罪者にして狂的科学者である。

 今回、紆余曲折は兎も角目的の品を手にする事は出来た。が、それ以上に興味を引いたのが大悟ら協力者の存在である。
 故に、彼の脳裏では新たな陰謀野望その他諸々が大車輪の如く渦巻いていた。

「彼らが六課と関われば自体はある局面で加速を見せ、そしてあの“器”や“彼”にも多大な影響を与えるだろう。
 その時、果たして何が起きるか……くくく、ふ、ふはははははは……」

 数日後、機動六課医務室。
 模擬戦中なのはに撃墜されたティアナが目覚めると、そこにクリスがいた。
「……ティアナ、どうやら、私や高町一尉が言った言葉の意味を分かっていないようね……」
「クリスさん……」
「一尉の方からもお説教はあると思うけど、私が貴女に言えるのは……
『ティアナ・ランスターが気にするべきは、分隊長がフォーマンセルを志向しているのに八神隊長はツーマンセル二組を考えているというズレについてである』
かしらね?」
「そ、それはどういう……?」
「極端に言えば、あなたは直接打撃力を期待してもされてもいけないのよ」

 それは凄く極端過ぎると思うのだが……

「例えば私や大悟達が組んでいた時もそう、大悟が最前衛、ギヨームが防御、私が後方からの射撃でフィンがその支援。
 あなたたちの場合はスバルやエリオという前衛二枚、キャロちゃんとフリードという火力、そしてあなたは彼女達を束ねる指揮・管制という役割分担があるのよ。だからね、あなたはあなたがするべき事をしなさい」
 それだけ言うと、クリスは席を立ち、医務室から出て行った。

「わたしが、するべき事……」

 後に残されたティアナは、じっと自分の手を見つめていた……


付記:その1、大悟達のデバイス設定

天花寺大悟(♂32)近代ベルカ式、陸戦AAA(実質S+)

 アームデバイス『餓骨杖R』錫杖/巨大手甲型、待機時腕時計型

 まぁ、仮面ライダークウガでいう格闘型と俊敏型の使い分けですね。今回はずっと手甲でしたが、ああ描写し忘れてた。
 因みに彼の餓骨杖はレプリカ品でして、オリジナルはロストロギアに匹敵するとも言われるという、まったく使う予定の無い裏設定が。
 形状はかって一休宗純禅師が手にしていた骸骨付きの杖と『テラ:ザ・ガンスリンガー』のハードガントレットがモデル。

クリステル・フォン・エッシェンバッハ(♀22)ミッドチルダ式、陸戦AA(実質S)

 ストレージデバイス『スーパーマウゼルM17/D』モーゼルC96型、二挺拳銃、待機時認識票型

 スーパーマウゼルはやっぱりテラガンに登場する特殊兵士用の超大型拳銃。でもここでは普通サイズ。
 因みに、ラストではマウザーM1918に変形してでっかいのを撃つ予定。

ギヨーム・ド・ノートルダム(♂41)ミッドチルダ式、空戦AA

 インテリジェントデバイス『α=α(アルファルファ) Type112改 Avenir(未来)』ステッキ型、待機モード無し
 インテリジェントデバイス『真・レ・サンテュリ』預言書型

 肩書きが何故か凄い事になってしまったギヨーム。イメージ的に一人だけ空戦、飛ぶと言うか、跳ぶ?
 彼の杖、アヴニールはメーカー品をフィンが彼に合わせてカスタマイズしました。地下スレ某SSで言うところの“ポン付け”です。

フィン・ブースロイド(♂16)ミッドチルダ式、総合AA

 ストレージデバイス『α=α Type137』片手杖型、待機時腕時計型

 本業は管理局の技術者。戦闘系でないので総合タイプで。
 第一話時点でこれは“まだ”新品のストレージ、という設定。何時の間にかインテリジェントになっている予定です。

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最終更新:2008年03月29日 13:52