機動六課所属、グリフィス・ロウランのメモより抜粋、メモにつき敬称略

魔法防御リリカルラッセル



 ラッセル・バーグマンは機動六課に招かれました!
 ラッセルはヒリュウ改オクトパス隊で隊長の背をまもる縁の下の力持ちです。
 刈り込んだ茶毛髪に、常時こまったようにへの字を描く眉、自信なさげな口もと。
 情けない柴犬をみているような気分になるのは――いえ、なんでも。

 たとえばこんなときに、ラッセルは役に立ちます!

――
「スバル!」
「え……!?」

 ティアナが『必中』の意思のもとに放った魔力弾の一つがウィングロードをはしるスバルへむかった! 直撃コースだ!

「スバルさん! ここは自分が!」

 量産型ゲシュペンストmkⅢが暴走したクロスファイアシュートを受け止めました! ゲシュペンストの装甲が特に固い部分――増加中空装甲『チョバムアーマー』で魔力弾をうけとめ、自機のダメージを最小限におさえつつスバルを守ったのでした!

「ラッセルさん……ポッ」
「ありがとう、ラッセルさん」
「いえ、これが役目なので! そちらもがんばってください!」

 ラッセルは『応援』と『激励』をふたりに投げかけ、逃げ回るがジェットドローンにフル改造したマシンガンを叩きつけました。
 予断ですが、ラッセルの『応援』と『激励』をもらったふたりは、高出力の魔法を自在に使い、二倍の速さで経験地をかせぎました。これもラッセル効果のひとつです!

――
「おかしな……どうしちゃったのかな、ふたりとも」

 高町なのははレイジングハートをモードリリースし、ティアナの魔力刃とスバルの拳をうけとめました。虚ろな、目線――そばに見なければわからないほどですが、彼女の瞳はうるんでいました。

「わたしは……強くなりたいんです! ファントム・ブレイザー!」


「なのは隊長! あぶない!」


「え? わたしいま迎撃しようと思――!」

 突然の援護防御におどろいたなのはは、クロスファイアシュートを発動できませんでした。
 逆にティアナはファントム・ブレイザーを完成させました。魔力の奔流がラッセルと量産型ゲシュペンストmkⅡに叩きつけられますが、ラッセルは『ハイブリットアーマー』を盾に砲撃を受けきりました。ついでに『鉄壁』も掛かっていたそうです。

「ラッセルさん……ぽッ!」

 高町なのははラッセル・バーグマンに感謝以上の感情を抱きながら、ティアナをやさしく諭し、なのはとティアナの関係は良好なものになったそうです。
――
 ユニゾン・インしたリィンフォースと呼吸をあわせ、騎士ゼストと戦っていたヴィータは、うまく時間をかせぎゼストを撤退にまで追い込んだ。
 しかし融合騎アギトはゼストとの融合を解除し、ヴィータの頭上で火球を構成しました!
 ヴィータはアギトへむかいギガントシュラークをふりかぶりますが、騎士ゼストは彼の槍をフルドライブさせヴィータを撃墜しようと迫りました!


「ヴィータ副隊長! あぶない!」

 どう考えても援護が間に合わない状況でも、援護防御にやってきてくれるのがラッセルと量産型ゲシュペンストmkⅡです。
 疾風怒濤の勢いで迫るゼストとヴィータの間に割り込み、『オリハルコニウム』が装備された箇所でゼストの槍を受けきりました!
 いきなり現れたパーソナルトルーパーに度肝を抜かれたゼストは、ヴィータの機転で捕縛され、ルーテシアともどもレジアス中将に保護されました。彼はいま、首都防衛隊の隊長をやっています。

――
 ラッセルの効力について、三つほど上げさせていただきました! どうでしょう、みなさまの部隊にパーソナルトルーパーを配備し、
 格闘系/防御重視のパイロットを育てればたとえばこんなことも――。


――
 さて、こうしてラッセルは六課のお嫁さん――否、人気者にになりましたが――

「ラッセル……はやく戻ってきてくれ……」

 ヒリュウ改のコクピットで、カチーナ隊長は涙ながらに言ったそうです。やはり彼女も女の子のようで――(血でよごれて読むことができない)

 いえ、あのちょっとタコ殴りは――(血でよごれて読むことができない)

 いや、ですからカチーナさんにもかわいいところがあると――え? ラッセルに言われないとうれしくもなんともない? なんてこ――(血でよごれて読むことができない)


 ――こうしてラッセル・バーグマンはヒリュウ改にかえっていきましたとさ。めでたしめでたし。(どうやら折れた指で書いたようだ。字が汚い。)


戦史教科書p58
<学習と解説>
 これが、グリフィスメモとよばれる走り書きの内容である。
 ラッセル・バーグマンによって構築された援護防御技術体系を最初に言及したメモとして残っている。

 この六課出向後、ラッセル・バーグマンはすさまじいまでの二つ名を持ちえることになる。
 パーソナルトルーパーやアーマードモジュールだけではなく、等身大の人間を援護防御したことが、彼の防御才能を大きく開花させたのだ。

 偉大なる彼の二つ名は――『管理局の

「あ、そろそろ時間だ」

 ヴィヴィオはザンクト・ヒルデ魔法学園支給の教科書をパタン、と閉じた。まったくもう、ぜんぜん興味のない話だった。
 母親の所属していた機動六課のなまえがあったから読んでみただけ――。
 買い物かばんをもち、学園をでて商店街に入るころには内容を忘れてしまった。
 八百屋に寄って朝方なのはに頼まれたキャベツを買う。そこでヴィヴィオは、漫才を食い広げる男女をみつけた。

「あ、こら。そっちのキュウリよりもこっちのキュウリのほうがおいしそうだろ」
「でもそっちは高いので……」
「あぁん?」
「え、あの、すみません……」
「ふん……わかりゃあいんだよ、わかりゃあ」

 綺麗なオッド・アイの女性とどこか情けない感じの男性が、手をにぎりながらキュウリを物色していた。スカートが大人っぽくて、化粧の綺麗な女性だった。顔には笑みがこぼれている。男性に悪態をついているとはとても思えない。
 男性もまた、どこか自然に女性をエスコートしていた。たとえば、強盗やなにかにおそわれたとしても、男性は『鉄壁』となって、女性を守る気がした。

 なんか、いいな。

 ふたりの姿をみてヴィヴィオはそうおもった。
 しあわせな気分をわけてもらったヴィヴィオは、足取りも軽く自宅へと帰っていった。

 ママにもあんな、守ってくれそうな男の人ができたらいいな――犬の人はいやだけど。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年03月29日 14:33