「……クソッ! またなのか!? また助けられないのか!? ……なんとか、ならないのか!?」
隊長である以前に、消防員として助けに行きたい、なのに助けにいけない。何も出来ない苛立ちを地面に打ち付けた
「……誰かぁ! 誰か娘を!? 娘を助けてぇ!」
母親の悲痛な叫びが響く
だが誰もが呆然と見上げるしかない
懸命な消火活動も実を結ぶことなく火は轟々と燃え続ける
ホテルを焼き尽くし、溶けた硝子が炸裂し、黙々と黒煙が吐き出される
誰もが子供の生存を絶望視した、誰もが子供の死を幻視した。
――コレが絶望
だが居るのだ
そんな絶望を打破し、希望にへと塗り替える規格外が
どんな場所にでもたどり着き、必ず取り残された人を助け出す規格外が確かに存在するのだ
「た、隊長! 特救です! 特救が到着しました!!」
「特救だと? 何を今更! こんな大火事じゃ魔導師だろうと耐え切れる筈が無いんだ!」
「シェルビ! シェルビィー!!」
「大丈夫です、必ず助け出しますから」
蹲って泣き叫ぶ女、母親の肩に手をかけた
女が泣きはらした顔で見上げる
「私が絶対に助け出しますから」
「あ、……貴女は?」
女性は立ち上がり振り返る
目の前には燃え盛るホテルがまるで炎の壁のように立ち塞がっている。だが―――
「往くよ、マッハキャリバー」
『Standby Get Ready』
呼ぶは相棒の名、成るは魔導師、思いは此処に
炎の壁すら飛び越えて、立ち塞がる全てを打ち倒し、助けを求める手を掴み、絶対に助け出す! 助けて魅せる!
「セットアップ!!」
白い鉢巻を風に揺らし、銀色のバリアジャケットに身を包み
青いローラーブーツ型インテリジェンスデバイス「マッハキャリバー」が土煙を上げ
右腕のカートリッジ式アーム度デバイス「リボルバーナックル」が火花を散らす
湾岸特別救助隊所属「スバル・ナカジマ」一等陸曹
準備を整えたスバルの隣に緑色の魔導師が歩み寄り
ちょいちょいと人差し指で手招きをした、それに気が付いたスバルが振り向くと
額にデコピンが炸裂した
「あ痛ぁ!?」
「お前……また一人で突っ込む気だったろ、いい加減こっちの身にもなってみろってんだ」
「い、痛いですよスッティ~」
「……それは兎も角だ」
スティングレイの切れ目がさらに絞られ、険しい表情を見せた
此処からが本題だとスバルも身構える
隊長が取り出したPADにはホテル見取り図、進攻ルート及び脱出ルートと危険地帯
この救助に裂ける限界時間が映し出された
「いいかスバル、要救助者はこの劇場だ。 先ほどのサーチで大方の場所は割り出せたがどの辺りに居るのかは正直掴めん
幸いにもまだこの辺りは火の密度が薄い、それに非常用面体を付けているから炭素中毒の心配は無い
だがに思ったよりも火の廻りが早すぎる、突入後俺とお前の一人二組で劇場を探索する。判っていると思うが
制限時間が来たらどんな事があっても撤収する。時間はセットしておくが……と言っても無駄なんだろうけどな」
「わかりましたスッティ!」
「ばっかスティングレイと呼べ、スティングレイと…!」
「はい! スッティ!」
クラウチングスタイルを取るスバルの目の前には青白く輝く光の道がホテルに向かって一直線に伸びていく
「それじゃ援護宜しく頼むぜお前ら?」
「往きます!『ウイングロード!!』」
『特救が突っ込むぞー!!放水で援護しろーー!!』
輝く道を走る二人を見て隊長はポツリとこぼした
「スバル・ナカジマ………まさか8年前のあの子が湾岸特別救助隊に居たなんて」
炎の壁に向かって今!
「リボルバーシュート!!」
魔法少女リリカルスバル、 「め組のスバル」 ―――さようなら。
予告”終”
ミッドチルダに浮かぶ二つの月。
互いの引力で引き合いながらミッドチルダの周りを巡る二つの月
その青白く輝く二つの衛星が何時からあったのかというのは誰も知らない。
だが誰も知らなくても過去から今、そして未来
ミッドチルダの夜空に在りてじっと星の営みを見守り続けるのだろう
片方の月の名前は「Moon」
そしてもう片方の月の名前は「Mond」
読み方の違う二つの月は今日もミッドをじっと監視し続けています……
予告 真 終了
最終更新:2008年04月02日 22:08