高町なのはは、違う世界で教導官として働いている。
フェイト・T・ハラオウンは執務官として働いている。
八神はやてはは、課長として働いている。

みんなは覚えているだろうか。かつて彼女たちは3人組ではなく、5人組の仲良しグループだったことを。

そう、魔法関係者三人と魔法使いとは関係のない二人の仲良しグループ。

そのグループにいたのはアリサ・バニングスと月村すずか。ある家のお嬢様である二人で平凡に大学に通う女性たちが。
平凡、そう、これは平凡な話。だけど少しおかしな話。

池袋、そこで起きる奇妙な人間たちが繰り出す喜劇さ。


短編『リィリカル!』 上編
―――――1――――――
『とある寿司屋での一風景。~黒人と白人の店員と、美女とバーテンダー~』


 奇妙な名前の寿司屋。名前こそは奇妙だが、味は確か。しかし、奇妙なのは名前だけではなく中にいる人間も奇妙だ。
寿司屋にも関わらず白人と黒人が寿司を握っている。黒い肌に青と白の割烹着。何とも不思議な服装だろうと初めて来た人は言うだろう。
しかし、今ここにいる二人は初めて来た人間ではない。二人は出てくる寿司を待っている。

 美女の服装、それは気合いが入った服装だ。胸が軽く開いているので少し谷間が見える。
ただ、谷間がすごく出ているほどの裕福な胸でもないので出しても悲しみが増えるだけなのかもしれないがそれを補うプロポーションと容姿。
どこかのバーで一人飲んでいても絵になるような女性。いや、女性というにはまだあどけなさが少し残っている。彼女こそ、花の大学生、アリサ・バニングスだ。

 その横にいるバーテンダーの服を着た男はボーっと彼女の話を聞いている。二人だけを見るようにするとそこだけバーの様だ。少し、視界を開くと混沌の状況である。

「ねぇ、静。いつも思うんだけど私の話を聞いていて面白い?」
「いや、そんなに」
「なら、何でいつもずっと話を聞いてくれるのよ」
「暇つぶし、それに友人と話すときに面白い必要はないよ」

サイモンが静雄の言葉を聞いて大きく笑った。

「ハハハ、アリサとシズオは仲良しグループだナ」

 そういって、彼らはまたアリサにお酒を渡す。今日は奢りだ。どんどん飲んでくれと言い、サイモンは静雄にお酒を渡し続けていく。

 静雄が仕事で事務所に戻らなければいけない頃にはアリサは酔いつぶれて寝てしまっていた。静雄はそれを見て、軽くため息をつくと背中に担いで事務所へと運んでいく。
事務所に入るとトムさんは静雄が女の子を連れてきたことに少し驚いきを隠せないと言った感じだった。トムさんの勧めで奥にある休憩所に横になっていてもらうということで静雄たちは仕事へと出ていった。

 これがアリサのはじめての所在不明となる“お泊り”の原因であり、またなのはとフェイト、それにすずかがこの狂気の街・池袋に来る理由となる。


―――――2―――――
『とある道路での風景 ~首なしライダーと一緒にバイクにのっちゃったの~』

アリサちゃんが一日、どこにいるかわからない状況で家に帰ってきてないという知らせを聞いたのは今日の朝だった。
朝、久しぶりの休日である今日。私は久しぶりに家族と過ごすために家で寝ていたのだ。
横になりながらも眠たい目をこすりながら、私は自分の携帯電話がなっていることに気がついてそれを手に取ったんだったっけ…。
寝ていたから記憶が正確ではない。ただ、すずかちゃんが言っていたことはすぐにわかった。

『アリサちゃんが池袋に行ったまま帰ってこないの』

『池袋』、私たちからしたらの都会の街であり、夜は東京だから少し怖いところというイメージがあるけど。
そこからアリサちゃんが帰ってこないとなるとそれは心配になるのだろうと私も思った。それこそ、私自身も心配だったから。1時ころに一緒に池袋で落ち合うって探しに行く約束をして、私はそこで電話を切った。


でも、今の状況は何でこんなことになっているのだろう。
私は黒いバイクの後ろに乗っている。真っ黒で、ライトもついてないバイクに乗る女性だと思う人の後ろに乗っているのだ。経緯はこんな感じだった。

 彼女を追ってきた悪い人たちが彼女を見失ったときだと思うの。その時に私を見つけて話かけてきたんだ。
最初は無視を決め込んでいたんだけど無理に腕をつかまれて体をひっぱられた所で男の方によろめいてしまった。
魔法を使うにもこんなところで使ったら被害も大きいからうかつに使えなかった。
でも、私にもこれを回避するだけの力はあったし、こんな状況よりももっとも危険な状況に陥ったことはいくらでもあったから。

 でも私が何かをする前に、黒い影が。すべてを覆い、そして私の前に現れた。
携帯電話のようなものを見せてそこの文字を私に見せる。そこに書いてあった言葉は


『●●●●●=~…乗って!』

前の部分は早すぎてよくは見えなかった。
だけど、急を要しているということだけがわかったので私は彼女に言われるがまま黒いバイクの後ろにまたがった。

そして、今の状況。

「す、すみません! なんで、私をのせたのですか!?」

ヘルメットの向こうにある耳に向かって私は声をかけた。
彼女から声が聞こえてくると思っていたが彼女はおもむろにまた携帯電話のようなものを取り出して、それを打ち込み私に見せてくれた。

『あそこに置いたままだったら、たぶん私が助けた後も同じことを繰り返されると思ったからだよ』

あー、なるほど。そうか、私は普通に見ればあのようなことには対抗できない女性に見えるのだろう。
それはしょうがないことだと思う。久しぶりに女性扱いされてうれしかったなんて言うのは気にしなくていいの。
そんなことを考えてると私の前にまた画面が現れた。そこに書いてあったのは
『どこに行こうとしてたの?』
「あ、池袋駅!」

そう言われると彼女は急にバイクを止めて、急旋回した。急すぎる動きでついつい、私は振り落とされそうになる。

『池袋駅か、反対方向に進んじゃったな。今からそっちに急いでいくから、ごめん』
「あ、いえ。いいんです、助けてもらったのはこちらですし。それとあの…聞いてもいいですか?」

急旋回したときにヘルメットの中がちらっと見えた気がした。いや、正確には何も見えなかったのだが。
いや、もっと正しく言えば、普通は見えるはずの顔すらみえなかったのだ。

「もしかして、今噂の…?」
そう言うと彼女はおもむろにヘルメットをはずしてくれた。そこにはあるはずのもののない存在。
『化け物に送られるのはいや?』
「い、いえ。とんでもないです!ただ、きになっただけで」
『そう、よかった。そしたら急ぐからもう少しつかまっていて』

そう言われるとバイクは急に唸り出し、スピードを上げた。

ねぇ、みんなに自慢できるかな。私、噂の首なしライダーさんと一緒にいるよ?

―――――3―――――
『とある公園での風景  ~名前すら与えられないSランク魔道師と白バイ~』

 くそっ!見失った…、
エースオブエースを見返すためにあいつの弱点を探るために俺はあいつを追いかけていたはずなのにいつの間に見とれていて…じゃなくて、あいつに目をとられていた。
なんてこった。あいつを見返すのじゃなかったのか。そのために弱点を調べる必要があったんだ。
同じランクにもかかわらず、男にもかかわらず、負けた俺に手を差し伸べたとき俺はあいつにの笑顔に惚れ…じゃなくて、いらつきを感じたんだ! だから見返す。
見返すんだ。しかし、なんだ、先ほどの罠は! 突然現れたチンピラ。そいつらからまるでマンガのようにエースオブエースを助けてラブストーリーに発展す…じゃなくて、恩を着せようとしたのに風とともに突然現れたあいつは!? 
あの風で待ったエースオブエースのスカートがめくれ、中にはいていたTバッ…じゃなくて、下着が見えててしまって眼がとられて…じゃなくて、砂が目に入ったじゃないか!

 これでまた彼女を見失った。くそ、あとを追わなくては。彼女のこの後のは予定は何だ…たしか、池袋という地名の場所に行くと話していたな。
それなら、今からそこに…


「おい、あんた」

 何かエンジンの音が後ろでするのはなんだ? やけに近くないか?

「あんただ、そのポケットに入っているものと手に持っているものを見せてもらおうか」

 確かに、私のバイクのエンジンもかかっている。でももう一つあから様にエンジン音が聞こえるじゃないか。後ろをふりむくとそこには白いヘルメットをかぶった男が一人。

「新手の下着泥棒か、ストーカーのたぐいだな。管轄は違うかもしれないが捕まえさせてもら」

 言い切る前にアクセルを私は切っていた。なぜだ、なぜ私は彼から逃げようとしたのだ。やましいことなど何もないはずなのに!

「道路交通法違反…俺の管轄か。先日、黒バイクを逃がして機嫌が悪いんだ。早めにつかまってくれよ」

 いやいや、目が怖い! 目がおかしいだろ!なんだその強い人を見つけたときのシグナムさんよりも鋭い眼は! 
いや、あれは違う!強い人を見つけた時のあの人の眼じゃんくて、八当たりの相手を見つけたときの目じゃないか!?
いやいや、っていうより早い!なんで、普通のバイクが管理局特製のバイクに追いつけるんだ!?

「おい、スピード違反に、信号無視。これはかばいきれない暴走運転だ」

 いやだぁああああああああああああああああああ!!!!

「はん! 速度を上げようが逃がすか!」

 最強白バイ、逃走する犯罪者を追跡中。

―――――4―――――
『とある駅での話 ~金髪美女と紫の美女~』

 二人は目立っていた。それこそ、周りから見たら相当なものだ。

 モデル体型の二人。豊満なバスト、整った容姿。それにくびれた腰と柔らかそうな尻。それは道行く男たちをひきつけていた。
男たちはほぼ順番に声をかけていき、順番に撃沈されていく。それがまる1時間近く続いた。


「…まだ来ないね。なのは」
「フェイトちゃん、さすがにここで待つにしては不便だし…携帯電話にメールを送って、すぐ近くの店で待たない? なのはちゃんもあと少しでくると思うから…正直、もう疲れちゃって…」

 そういうのは顔がつかれているすずかだった。フェイトの顔もどこからしら疲れている。
しかし、この街ではただのナンパとは違った話しかけた方をしてくるやつらがいる。

 そう、今彼女の前にいる二人みたいに。女性と男性。男性は手に何やらアニメのキャラクターが印刷されたビニール袋を持っている。それを急にフェイトの方に向けて彼は頭を下げた。


「よろしくお願いします!」


 急に何かをお願いされたフェイトはきょとんとした顔で相手を見た。よくみると相手の男性はどこか日本人離れをしたような趣を感じる。いや、日本人離れどころか…

「いや~こんなところで金髪できれいなまるで二次元の世界から出てきたような女性に出会うとは思いませんでした。
なので、この魔法少女の服装してください。よろしくお願いします。なおかつ、この服のモデルになっている魔砲少女リリカルマジカルの主人公の友達にそっくりなあなたにやってもらうきわどい服装がみたいです。
そのキャラはどんどん進むにつれ闘う服装が薄くなっていくんですよ。真ん中ぐらいの時が実は一番エロくて、それが何とも言えないほど」

「ちょっと、遊馬ちゃん。それは違うよ、あのソニックウェーブフォームのすごいのは腰にまかれたベルトだよ。あれこそ、真のエロであり、至宝だと思うの」

人間離れで泣く3次元離れの人間である。


 フェイトの眼は丸くなるばかりキョトンとしていた眼はそれはそれはどんどん丸くなて行く。
 無理やり押し付けられた服装もいつの間にか手にとってしまっており、断りづらい。そんな状況でどうしろと? と思ったところで思わぬ方向から助け船が入ってきた。

フェイトの前で話し続けていた二人組の後ろから違う男性がきて、その二人を止めた。

「おまえら、自分の感性を押し付けるのもやめろと何でいついってもわからない。それと、そのコアな話とか、変な話を道の往来で話すな。そして突然人に話しかける内容じゃないだろ」
「いやいや、そこは! …ごめんよ、ドタチーン」

その男は二人組を車のようにいくように促すとフェイトとすずかに声をかけてきた。ただし、その言葉はナンパではなく、謝罪。

「すまない、こちらの連れが迷惑をかけた」
「い、いえ…」
「悪気はないんだ。許してくれ、多分あんたみたいなきれいな人を見て舞い上がってしまったんだよ。そう思いたい。おれでも少し緊張しているぐらいだ。それじゃ」

彼は軽い言葉を残してそこを去っていった。
すずかはため息をついて、もう一度店に入ることを進めた。
次は何も邪魔が入ることなく、そのケーキ屋に入ることができた。しかし、ケーキ屋はあまりにも混んでいた。
さすがに相席でないと待つ時間が長いといわれ、なおかつここが一番わかりやすいところなので、そこ以外を探そうとは思わない彼女たち。
そもそも、疲れているので座ることさえできればいいと考えているのだ。だから彼女たちは相席でいいからそこに案内してほしいと頼んだ。

そう、相席。ある人物との相席。


「相席、よろしいでしょうか?」
「あ、構わないよ」
店員の言葉に軽く、微笑んでいるはずなのにいやな笑みを浮かべる男。つい、フェイトはその顔を見てスカリエッテを思い出してしまった。

相席した男、その男は池袋では関わってはいけない二人の男達の一人。新宿に拠点を移しているはずの男、折原臨矢だった。

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最終更新:2008年04月24日 18:45