0076年 4月
『レリック回収事件』が幕を閉じ、何時もより穏やか風が吹き始め。その事件において力を尽くした時空管理局の部隊・機動六課は役目を終え。
春風が吹くなかで解散することになった……。
皆を召集しての挨拶も済ませ。
勝利の鍵達が別れと新な門出を祝うために手加減なしの最後の模擬戦を開く。
なのは「全力全開!行くよ!」
スバル「はい!!行こう皆!」
が、そこに新な嵐が迫っていることを誰も気付きはしない……。
シャマル「何かしらこの力……」
今まさに模擬戦が始まろうとしていた何かの変化にシャマルは怪訝な表情を浮かべて呟く。
ヴィータ「何だよ、今からって時に……。」
楽しみを邪魔され、ヴィータは不満そうに声をかける。
フェイト「っ……空が……」
一同「!?」
フェイトの言葉に皆は空を見上げる、すると先程まで晴天であった天候は突如として雲り初めていた……。
それもビデオの映像を早送りするかのように。
なのはは、それがただの天候の変化でないことを悟っていた。
……一体何が起きているの?
なのは「……っ!?」
曇り空を見上げていたなのは、それに皆は。更に訪れた変化に目を見開く。
何……あれ?
それは雲りだした空に大きな穴がぽっかりとあき、辺りの大気を巻き込むように渦を成し初めていた。
そして……。
その渦から紫色の光が注がれ、さらに地震に似た大きな揺れが起きる。
はやて「何や……何が起こって…………皆、とにかく飛ん----。」
リイン「はわ、皆さん早く!」
シグナム「くっ!?」
地面がバウンドしているような感覚にはやては皆に空を飛ぶように促すが足が地面を離れる刹那、光が身体を呑みこんでしまい。皆の意識はそこで途切れてしまう。
そのまま光はミッドチルダ全土を呑み込んでいく……。
※海上隔離施設
ギンガ「何……この光?」
チンク「引き寄せられている……?」
※聖王教会
クロノ「……次元震に似ている。これは貴女の能力にありましたか?」
カリム「いえ、こんなことが起きるなんて……。」
そして、こことは違う場所で。彼女達の姿を水晶球に映し出して眺めている男がいた。
???「ククク、強者よ。集うが良い。」
男の名は魔王・遠呂智。
太古、遠呂智は、境界無く世界に乱を招いた罪により、永劫の生、果てることのない罰を科された。
仙界に幽閉され業苦を与えられ、ゆるゆると悠久を生かされる。
周りの者から永遠に忌み嫌われながら……。
それを見ていた妖魔・妲己は遠呂智を手引きし、仙界から脱走させた。
そして。遠呂智は三国志、戦国史、ミッドチルダ。
時代、国、境界すらも超越した異世界を創り、そこに猛者を集結させた。
遠呂智の目的はただ一つ……ただ一つの目的のため。
すべてを戦いへと呑みこんでいった。
遠呂智『強者達よ、我に挑め。』
リリカル無双OROCHI-導入-
※宛城
なのは「ここは一体……」
光が晴れ、視界が回復し。気付けば私は見知らぬ場所に居た。
辺りにはテントのような寝所や、木で造られた食糧庫が列び。それら全てを囲うように石造りの壁がある……。
それはまるで城壁のようで……。
ここはミッドチルダじゃないことは解る。やっぱりあの光が原因だね……。
??「ようやく来たんだ。待ちくたびれちゃったなー。」
っ!
背後からの声に振り向くと、そこには恐ろしいくらいの白い肌の女の人がいた。
辺りに人の姿は無く、この人が声をかけたんだと理解できた。
なのは「どうゆうことですか?」
今の言葉は何かを知っているような……そんな言葉。だから、私はレイジングハートを構えて彼に向ける。
なのは「私は高町なのは。お話、聞かせてほしいの。」
妲己「私は妲己。よろしくねー。」
可笑しそうに妲己さんは名乗り返し、瞬時に私の目の前に現れて大きな玉を私に放つ。
なのは「っ!?」
咄嗟にレイジングハートで払い、当たらずにすんだけど。
速い……。あまりの速さに私はそんな印象しか浮かばなかった……。
妲己「ホラホラ、どうしちゃっの~?そんなんじゃ、貴女死んじゃうってば~あははは。」
なのは「くっ!」
彼女から間を置くために離れ、私は空に飛び。アクセルシューターを出来るだけの数で放つ。
しかし、踊るかのように移動する彼女に魔力は一つも当たらない。
一つ、また一つ。
上、横、下。あらゆる方向から狙う攻撃を回避しながら彼女はアクセルシューターを破壊していく。
彼女は強い。でも、そのまま壊させはしない!
避けきる彼女の動きを目で追い掛け、私はレイジングハートを再び構える。
全力全開じゃいかないけど……私は捕まるわけにいかない!
なのは「ディバイーン……」
レイジングハートの先に魔力を集束し、私は出来る限りの魔力を彼女に放つ……。
なのは「バスター!!」
妲己「っ!気を取られ過ぎちゃった!?」
レイジングハートから放たれた私の魔力は彼女に襲いかかり、妲己さんは回避しようとしたけど……遅かった。
ディバイン・バスターの光に包まれ。彼女の存在が消えたことを私は確認し、彼女がいた場所に近づいてレイジングハートを後ろに向ける。
妲己「非殺傷設定とかつまんないなぁ~。でも、なかなかやるじゃない。なのはちゃん。」
なのは「私は時空管理局員だから!あグッ!?」
彼女は玉も動かしていないのに。腹部に重いなにかがぶつかる。
な、何……!?
なのは「かはっ、……け、結晶…」
足元から伸びるように飛び出した大きな紫の結晶体が私のお腹を殴ったんだ……。
妲己「はぁーい。で、これはオ・マ・ケよ♪」
楽しそうにそう告げ、彼女は二つの玉を私に向けている。
く、回避しないと……。
でも。頭でそう考えても、身体が思うように動かない。
先程の結晶体の一撃が身体に大きなダメージを負わせてしまった。
妲己「ああ、そうそう。今の攻撃で貴女の魔力をすこーし貰ったから♪」
なのは「そんな!?」
妲己「貴女達の世界じゃ、魔導師って魔力取られたら何も出来ないんだっけ?不便だねー♪」
なのは「魔力が無くても……戦え「無理無理」
妲己「貴女の今の身体じゃあ無理よ♪」
見ただけでそこまで知っている彼女の言葉に私は返せなくなる。
確かに、今の私は傷がある。でも、それでも……。
なのは「私は「貴女、飽きちゃったからもう寝ててよ♪」
彼女にそう遮られたのが耳に入った時。
あの時、私達を包み込んだような紫の光が魔力砲撃のように玉から放たれ。
直撃した。
なのは「きゃあぁぁぁっ!?」
身体を焼くような痛み。魔力砲撃とは違った衝撃が身体を、意識を襲い。音を立てて私は地面に倒れ込む。
妖しく曇った空を眺めるような形で……。それはここが異世界だと思わせて……哀しかった。
なのは「ぐっ……」
妲己「あららしぶと~い。」
痛みを押し、なんとか逃げようと立ち上がる。けど、あの光の攻撃を受けたからか力が入らない……。
なのは「……この世界は……貴女たちが?」
妲己「ここは遠呂智様が創りあげた異世界。貴女達のミッドチルダの他にもいっぱい別世界からの人達が居るわ♪」
なのは「私達の他に……?」
妲己「そう。三国志と戦国、ミッドチルダが合わさった世界になったの♪」
なのは「一体なんのために……っ……う。」
妲己「貴女は知らなくて良いの♪な・の・はちゃん♪」
痛々しそうに言ってるのがかわいくて。つい、倒れている彼女のお腹を踏み付けちゃった♪
妲己「なのはちゃ~ん。起きてる~?」
呼び掛けてもなのはちゃんから言葉は返ってこなかった。
あらら~、気を失っちゃったんだ~♪
妲己「こっちはまずまずね。他は……と。」
※ミッドチルダ東部 森林地帯 スカリエッティのラボ跡付近
フェイト「やあぁぁぁっ!!」
??「ふんっ!!」
宛城にて、なのはが気を失った頃。
この森林において一人の魔導師と一人の武将がデバイスと戟を交わらせている。
エリオ「あの人、強い……。」
少し離れた場所でその闘いを見ているエリオ・モンディアルはそう呟く。
遡ること1時間前……。
あの光に包まれ。晴れ渡った時。
二人はこの場所に居た。そこに青白い肌の人の軍団が二人に襲い掛かり、それをフェイトが一蹴し。
終わったかに見えた……だが、フェイトの闘いぶりを見ていた赤い巨馬に跨がった一人の武将が彼女に勝負を挑んできたのだ。
呂布「俺は呂布、字は奉先。お前の名を教えろ。」
フェイト「フェイト、テスタロッサ・ハラオウンです。何故、貴方は私に闘いを挑むんですか……?」
呂布「フン……上なる獲物よ。俺を楽しませろ!!」
フェイトも、彼がただ者ではないと悟り。バリアントジャケットをソニックフォームへと変え。
プラズマザンバーを振るい。彼の戟によって弾かれて突き放される。
それを利用してフェイトは何度も何度も呂布に攻撃する。
それが何度も繰り返され、今に至っていた。
フェイト「くっ!!」
再び、突き放される形でフェイトは身体を吹き飛ばされる。
本当に強い……。
奉先から発せられる力は半端な魔力砲撃よりも強力だ……少しでも気をやればあの戟で貫かれてしまう。
なら!!
フェイト「この間合いを利用すれば!!」
なんとか、態勢を立て直し。ソニックムーヴを使った速度を利用して馬上の彼の背中に回転斬りを放つ。
だが……。
ザンバーは空を切る。
呂布「俺をのけ反らせるとは……面白い!!」
呂布は身体を素早くのけ反らし、水平斬りを回避して愛用の方天画戟をフェイトに振るう。
エリオ「な……今のを避けた。」
確実に直撃すると思っていたのに……。
今までフェイトの闘いぶりを見てきただけにエリオの衝撃は大きいものだった。
フェイト「っ!?」
呂布の攻撃は鋭く、回避する先に方天画戟が襲い掛かってくる。
避け切れない!!なら障壁で!!
しかし、それは間違っていた。
呂布「おおー!!」
ガシャァン!!
呂布の一撃を受け、障壁は音を立てて破壊されてしまう。
フェイト「そんな!」
障壁を破壊するなんて……。
でもこれほど強力な一撃だから動きに隙が出来る。そこを今狙うしかない!
再び、私はソニックムーヴを使って奉先の頭上に飛びザンバーを構え。振るう。
でも、後で私はどこか彼を侮っていたんだと思うようになった。
奉先は私に追い付き。バリアントジャケットの襟元を開いている左手で掴んでいた。
呂布「寝ろ!!」
そう叫び、奉先は掴んだ状態で私は地面へとたたき付けられた。
フェイト「っぁあ!!」
地面が砕け散り、私の身体をいいようのない衝撃が襲う。
それ以外、わからない……。
エリオ「フェイトさん!!」
今の闘いを見るかぎりあの人にたたき付けられて大丈夫なはずはない。
ただ、それだけしか考えられなくて……。僕はフェイトさんの元に駆け寄る。
エリオ「フェイトさん!」
バリアントジャケットはもはやボロボロになり、フェイトさんは瞼を閉じて呼吸しているだけ。
気を失っているだけだった。
でもそれは僕達の終わりを意味していた。僕も闘える。
しかし、あの人に勝てることなど出来ない……。
兵士「ヘッヘッヘーようやく殺せるぜ!」
青白い肌の兵士達が口々にそう言いながら僕達に歩み寄り、刀をぎらつかせている。
兵士「死ねー!!」
シャリオ「っ……」
刀や槍を振り上げられ。
死んでもかまわない。フェイトさんを護る!そう決意した。
兵士「ギャアァ!!」
兵士「ウガァァッ!!」
え……。
僕はフェイトさんを倒したあの呂布が、戟で兵士達を貫くのを目撃する。
呂布「獲物に下らん真似をするなら……殺す!!」
兵士「ひ、ヒイぃ!」
見る者すべてを射殺してしまうような威圧に兵士だけじゃなく、僕も彼に恐怖を感じた……動けば殺されるとさえ思えた。
エリオ「な、何で……」
呂布「フン、殺すには惜しい獲物だからだ。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン……俺の袖鎧を砕くとはな。」
なんとも嬉しそうに答える彼になんとなく誰かさんに似ているなと思う。
誰ナムさんだったっけ……?
エリオ「あの、僕たちはこれから「お前達はこれから魏に連れて行くそうだ。檻車に入っていろ……」
エリオ「くっ!」
そんなわけに行かない!!そう思って、僕はストラーダを起動しようとしたけど。
あの目が、僕を捕らえる……。
呂布「小僧、良い目をしているがお前では俺を倒せん。」
エリオ「……そんなこと!わからないですよ!」
呂布「下らん」
エリオ「下らなくなんて「相手にならんからだ。」
……く!!
遮るような言葉にエリオは動きが止まる。
呂布「高順、連れていけ。」
高順「はっ!」
そして呂布の言葉通り、高順さんは用意していた檻車を僕たちの前に持ち出す。
フェイトさんを抱えて逃げ出すなら今しかない……でも。この人からは逃げられない。
どうすれば良いんだ?
呂布「俺には関係ないが。来たるべきときがずれくる。そのときは貴様の相手をしてやろう……。」
来たるべきとき?
呂布の言葉は、その時の僕にはそれが「その女の為に今は従え。」そういうふうに思えた。
フェイトさんを助けたい。でも、この人から逃げたくなかった。
複雑な気持ちが僕の心にあった。
恐らく、いや。今まで見てきた人達よりもこの呂布という人は強い。
彼の赤い馬が輝かしく見える。
エリオ「わかりました。フェイトさんは僕が運びすから……。」
また、フェイトさんを抱き抱えることになるなんて……。
ゆっくりと檻車に入り、扉が閉まろうとするとき。
僕は振り返る。
エリオ「呂布、僕は貴方を越えたい。」
呂布「フン、期待せずに待ってやる。」
そして、それらすべては妲己の手の平のうえに浮かべた鏡で見られてた。
妲己「エリオくんかわいい♪呂布さんやるじゃなぁい……これで二人のエースはこっちのものね。こっちは……」
鏡が映す人を切り替える。そこに映しだされていたのは……。
八神はやてちゃん。かぁ……。ま、手札はこっちにあるし小次郎さんに孫策さんを手伝わせよかな。
妲己「フフ♪」
あーダメダメ。笑っちゃいそう、この小さい女の子の事どれだけ大事なのかなぁー?
再び、映すものを切り替えて確認し。妲己はなのはと共に宛城から姿を消す。
こうして、二人のエースは遠呂智軍に囚われるの身となる。
遠呂智にとってそれはミッドチルダから選ばれた者達にとって思ってもみない試練の闘いの準備として……。
続く
最終更新:2008年06月09日 18:42