魔法少女リリカルなのはStrikerS-選ばれし
ジェダイ騎士-
プロローグ
慌ただしく兵が脱出の為に行き交う銀河帝国要塞内。
それは、支配していた銀河帝国皇帝ダース・シディアスが右腕として従ってきたジェダイ騎士アナキン・スカイウォーカーに戻った弟子のダース・ヴェイダーにより反応炉に落とされて姿を絶ったあと。
宇宙、惑星での帝国軍の指揮系統が乱れたからであった。
しかし、いまわの際に皇帝から放たれた死の光をヴェイダーは浴び……生命維持装置を破壊され。
もはや、生きて地を踏むことは出来ない。
彼の息子、ルーク・スカイウォーカーは父を助けようと要塞内の港まで運びだし。小型の宇宙艇に乗せるべく父を降ろして声をかける。
「父さん、今からこれに乗って脱出しよう。」
ルークの言葉にヴェイダーは静かに首を振って答える。
「私はもう助からない……。お前だけで行け。」
不気味であった呼吸音は今のヴェイダーの命の灯のように掠れていた。
気を持っていなければ涙を流してしまいそうに胸が熱くなり、ルークは悲痛な声で父に話し掛ける。
「駄目だよ、父さんを置いていけやしない……。」
「ルーク……頼みがある。マスクを外してくれないか……?」
父の口から出た言葉に「何を馬鹿なことを。」とルークは思い、悲憤な声で反対する。
「そんな……父さん、それじゃあ死んじゃうよ!」
「死ぬ前に……息子の姿を。ダース・ヴェイダーとしてでは無く、アナキン・スカイウォーカーの眼に焼き付けさせてくれ……。」
力のない声にルークは父がもう長くないと悟りたくないのに悟ってしまう。
震える手で父のヘルメットを、マスクを外し……ルークは父の素顔を見る。
かつての兄のような存在であり、師であったオビワンとの闘いでおった火傷で髪や眉すら生えなくなった父の素顔。
だが、なんとも優しい笑顔をしていた。
「フフ、昔の私よりもハンサムだな……ルーク。」
ルークの頬を残った左手で撫で、ヴェイダーは語りかける。
「もう、思い残すことは……ない。」
「嫌だ、父さんを助ける!」
消して曲げない息子の優しさにヴェイダーは笑顔を絶やさずに「いいや……。」と否定する。
「すでに助けてくれた……お前の勝ちだ。お前が正しかった。
娘に伝えてくれ……あいしていた……と。
ぐ……」
頬を撫でていた手から力が抜け、するりと落ちてしまう。
ルークは眼から涙が溢れながら父の穏やかな顔を見て旅立ったのだと感悟し……理解した。
選ばれた者……アナキン・スカイウォーカーはジェダイに帰還した。と
そして、父・アナキンを乗せ。
宇宙艇で大切な妹や友人達が待っている惑星へと降り立ち。
ルークは悲哀に包まれながらも枯木で組んだ寝台に漆黒の甲冑に身を包んだアナキンを乗せ。
別れの火を点ける。
「父さん……」
哀しみの気持ちのまま、火に包まれる父親をルークは眺めていた。
(っ、父さんの……フォース!?)
だが、突然。アナキンからフォースが辺りを吹きすさぶ。
火を巻き上げ始め……ルークは視界を遮られてしまう。
次第にフォースの波は穏やかになり、途切れた。
ゆっくりと瞼を開けた瞬間、ルークは驚く。
「父さん!?」
燃える火だけを遺して、アナキン・スカイウォーカーが居なかったのであった。
辺りを見回すが父の身体やフォースも感知出来ない。
(父さん、どこへ……?)
空を見上げ、語りかけるが虚しくも返事は帰ってこない。
しかし、アナキン・スカイウォーカーは消えたのではない……。
新たな世界に呼び寄せられたのであった。
静寂を保つ夜空が広がっている世界。
この地に古き造りで荘厳さを思わせる大きな教会があった。
そのなかにある中央教堂で一人の女性が希少技能を使用し、紙の束から一枚一枚光を発し、古紙が女性の周りを囲むようにして回りだしていた。
希少技能『プロフェーティン・シュリフテン』
最短で半年、最長で数年先の未来、それを詩文形式で書き出した預言書の作成を行うことができる力。
女性は周っている紙の中から一枚に書き出されたとある未来を見て、それを取り出す。
『遠い古 はるかかなたの銀河に暗黒世界をもたらした者と、その暗黒に光をもたらし。世界を救った漆黒の騎士が現れる。』
「…………選ばれし者。」
その預言はそれから後……新歴0071年4月に一致する。
第162観測指定世界
今この世界において次元航行艦・アースラからかつて「PT事件」、「闇の書事件」をはじめ。
いくつかの事件、出会いを経験した時空管理局の魔導師達が遺跡発掘先から発見されたロストロギアを確保するために転送してきた。
その同じタイミング。魔導師達が目指す発掘先に突風が巻き起こる。
「なんだ……つむじ風か?」
しかし、それはただの風ではなかった。
砂が風により巻き上げられ、そこで作業をしていた発掘員達の視界を砂埃が遮る。
そして……風が止んだ瞬間。不気味な呼吸音が響き渡る。
遺跡に音の波が反響し、呼吸音は鮮明に耳に伝わっていく。
その呼吸音を発する何かがすぐ傍にいることを理解し、確かめるべく彼らが閉じていた瞼を開けたとき。
舞いっていた砂埃の中を漆黒のマントを翻し、漆黒の甲冑に身を包んだ大男が立っていた。
よく見れば右手が手首から切り落とされたのかそこに無く。切断面からコードのようなものが見える。
「っ!?」
「誰……だ。」
男は辺りを見回していた……。
そして、呼吸音が止んだ瞬間。辺り一帯をカプセル型の機械兵器が多数姿を現し、青空を埋め尽くしだす。
「あ……ああ……っ!」
「ウソ……何!?」
連続に起きる突然に発掘員は混乱してしまう。
そして、機械兵器の群れはこの場に居る者が邪魔。と言うかのように大男や発掘員に飛び掛かる。
「「っ!?」」
「近くの障害物から離れるな……。」
低い男性の声が彼らにかけられたその時。
大男は静かに左手を掲げていた。
発掘員へと襲い掛かってきた機械兵器に向けて大男が左手に力を篭めて握り締める。
すると音を立てて機械兵器は空き缶が握り潰されたかのように大きく凹み……壊れた。
呼吸音を発し、静かに大男は空に浮かび自分達を見下ろす機械兵器を見据える。
〔〔現場確認、機械兵器らしき未確認体と黒の魔導師が抗戦しています!〕〕
〔〔ん!〕〕
北部の定置観測基地から到着した三人の魔導師達は発掘先のこの場所にいた大男を見て、ただの人ではないと悟る。
〔〔フェイトちゃん!救助は私が回る!〕〕
〔〔私はその魔導師とで遊撃する!はやてとリインは上から指揮をお願い!〕〕
〔〔了解!〕〕
その魔導師達のイメージをフォースで感じ取り、大男はブラスター射撃で迎撃してくる機械兵器に左手を向けて再び握り締めながら……囁く。
「救助は彼女達に任せよう……。さあ、どぎつい交渉を始めるか。」
自分は死んだはずだ。という考えを今は捨て。
ダース・ヴェイダー(アナキン・スカイウォーカー)はフォースグリップを使って眼の前のカプセルを握り潰す。
ジェダイに帰還した男は未知なる世界で再び、闘いに身を投じていく。
最終更新:2008年07月01日 18:49