突然室内に警報が響いた。
暗い部屋に赤い光が不規則に点り、警報の音は一級警戒体制を知らせる。
モニターには赤くアラートと映し出され、すぐにはやてから通信が入った。
内容は教会の追っていたレリックらしい物を積んだ山岳リニアレールが、ガジェットに襲われたと言うことだ。
しかも悪いことに、リニアレールのコントロールがガジェットにやられて制御不能、暴走状態に陥っている。
確認できているだけでも車内に約30体。
さらには新型の出現の可能性もあるらしい。
教会本部からの緊急出動要請に、はやてはすぐさま指令をくだした。
「機動六課フォワード部隊、出動!!!!」
それから数分後、
暗く、窓から光がさす狭いとも言えない室内……ヘリの中で、フォワード4人になのはにリィン、そしてアムロが座る。
なのはとリィンは敵戦力について話し合い、フォワード4人は、初の実戦ということだろうか、戸惑いや不安を抱いているようだ。
そしてアムロは新しいデバイス、サイコフレームを持って、
「……俺の…デバイスか………」
そう呟いていた。
《よろしくお願いします、マスター。》
サイコフレームからは、まるで女性のような声で挨拶される。
しかしアムロも「ああ、頼む。」と返して、外を見た。
「空か………」
静かにに呟く。
宇宙(そら)をかけた男は、懐かしむかのように青い空を眺め、6人を見る。
かつての悲劇を繰り返さないためにも、皆を守って見せる………
そう心に誓って………
第05話
ファースト・コンタクト
「うわっ!」
突然ヴァイスが奇声をあげた。
「どうしたのヴァイス君?」
山の影からリニアレールの確認できる位置に飛行していただけだったはず。
ヴァイスはコクピットに入ってきたなのはに前を指差した。
彼女が先を見ると、
「ガジェット!?」
新型の飛行タイプ、2型が十数機編隊を組んで飛んでいた。
さらに、
『こちら本部、周囲にも反応を捕らえました!』
モニターに地図が出され、現在地とガジェットの配置を映し出す。
「何て数………」
正面に後ろ2方向。
囲まれた状況だ。
だが、
「アムロさん、このヘリと彼女達をお願い。」
「了解した。」
そういうと今度は、
「ヴァイス君。」
「ウィッス、なのはさん!」
まさに以心伝心、アムロもヴァイスもなのはが言おうとしていることはすぐにわかった。
《Hatch Open》
このヘリのデバイス、ストームレイダーが後部ハッチを開ける。
機械音と共に外の風景と風が一気に入ってくる。
「それじゃあ皆、先に行っちゃうけど、ズバッとやっつけちゃおう。」
ハッチに立つなのはは、そういった。
フォワード4人は緊張しながらも返事を返すも、キャロだけは何か様子が違った。
なのはは元気付けようと近づこうとした。
その時だった。
ドォン!
軽い爆音と共にヘリが軽く揺れる。
立っていたなのははバランスを崩してその場に座る。
ガジェットの攻撃だ。
ここから微かに見える前方には、ガジェットが後数百メートルにまで近づいていた。
「チィ……ガジェットか………」アムロは急いでハッチに向かい、
「なのは、後は頼んだぞ。」
といってハッチに立った。
「お願い、アムロさん!」
そうしてアムロは、
「頼むぞ、サイコフレーム。」
《Yes Master》
サイコフレームを片手に、
「ロンド・ベル01、アムロ、行きます!!」
空に飛び立った。
《Stand by Lady Set Up》
そうサイコフレームがいうと同時に緑の光が放たれ、その光はバリアとなってアムロの周りに展開した。
サイコフレームはアムロの手から離れると緑の光を纏いながら上に舞い上がり、T字の上の部分に様々なパーツが合体していく。
黒、白と合体し、完成するとそれはライフルのような形となり、T字の下の部分が軽く後に傾く。
そう、銃で言うところのグリップとなった。
《1st Forme. Berrier Jeaket and Shield》
さらにそういうと、アムロの青い制服に緑の光が被さると、身体に黒い鎧、白いズボンに一瞬で変わった。
さらに上半身と腰になのは達が着るようなバリアジャケットが前を開けた状態で現れ、肩と左右腰、腕にプロテクターが現れる。
肩は白くかくばっており、左肩にはアムロの赤いエンブレム。
腰はシグナムなどが付けている騎士甲冑のような形の白い装甲。
腕は篭手の位置に騎士甲冑のような物を上だけ付けている。
右腕は白く鮮やかに3枚の装甲が装着されたが、左腕は少し違い、上の2枚が黒く、残りの1枚は黄色くなって、さらにその篭手に棒状の物がはまるように装着された。
そして足に騎士甲冑には見えない不思議な靴が装着される。
ももの部分と靴の下部は黒く、他は白く塗装される。
最後に右手に質量を持った白い盾を持つ。
その盾にも赤いアムロのエンブレムが入る。
そしてライフルになったサイコフレームを手に取る。
ここに、新たなデバイスを持った白き魔導士が誕生した。
装備が終わり、緑色のシールドが砕ける。
その中心にある魔法陣に彼は立っていた。
「…これは………」
装着されたバリアジャケットとも騎士甲冑ともとれない服と、ライフルになったサイコフレームを見る。
服、色、形、武器、盾、
多少違えど見覚えのあるその姿。
アムロにとっては見間違えるはずもない。
「…ν……ガンダム………?」
そう、
かつてアムロが設計し、アクシズでシャアとの死闘を繰り広げた愛機が、姿を変えて自分を守る服となっているのだ。
《これがマスターの新しい防護服、1stフォルムです。》
「1st?」
その言葉を聞き返すと、
《これは「1st」と呼ばれるフォルムで、さらに「2nd」、「3rd」、「Final」まであります。》
と語った。
恐らく、この上位のバリアジャケットが存在するのだろうと仮説を立てた。
その時、
《このまま私のスペック説明等を続けようと思いましたが………》サイコフレームはそういい、
《敵が接近中の為、戦闘を行いながらやろうと思います、許可を。》
といった。
前を見るとそこには接近してきているガジェットの姿。
アムロはそれを見て決意する。
「許可する。行くぞ!」
《Yes Master. Rising Wing》
サイコフレームの飛行魔法でアムロはガジェットの部隊に突撃した。
しかし、その速度はかつてのアムロを凌ぐスピードを出す。
ライジングウイング。
サイコフレームの飛行魔法、高速の光の翼である。
だがその間にも、サイコフレームは自分のスペックを淡々と語っていく。
《私は、サイコフレームと呼ばれる材質と魔力との互換性を前提に開発されました。
そのため、私は自分の性質を利用して魔力の増幅、強化を行う特殊なデバイスとして生まれました。》
「ということは、魔力リミッターがかかっていても魔力ランクが上がるのか?」
気になりアムロは聞くと、
《そうです。ちなみに現在のマスターは、推定1ランクアップのAAランクです。》
と言われた。
つまりはリミッターを外せばかなりの魔力になる。
かなりの戦闘能力を手に入れた。
が、
《しかしながら、従来のデバイスのように攻撃が出来なくなりました。》
突然の一言。
だがさらに、
《そのために形状変化機能を搭載しています。》
と付け加えた。
《この能力はマスターの記憶と魔力、想像力によって完成します。無論、私自身のメモリーからの再現も可能です。》
そこまで聞いて、アムロは考えついた。
「つまりはデバイスで行っていた攻撃が出来なくなったかわりに、ある一つの攻撃に特化した武器になれるのか?」
《そうです。》
「だが、可能なのか?」
《魔力の増幅量が多ければ理論上なら可能です。》
そういわれた。
結論だけをいうと、このサイコフレームは魔力を増幅するかわりに、デバイスによる攻撃が出来なくなった。
だが、サイコフレーム本体が変形し、特化した魔導武器になれるということである。
《……正面、敵影関知。》
気がつけば敵との距離は100メートルを切っていた。
《次は武装のスペック説明を行います。》
そういって《まずはライフルです。実際に使用してみてください。》といわれた。
だが、トリガーと思えるものは無い。
そこに、
《魔力を微量でもいいので供給して、射撃のイメージをしてください。》
そういわれたため、言われた通りにアムロは、身体から微量の魔力を供給し、敵を狙いながらライフルを構えてイメージをする。
すると、
バシュン!!
一筋の桃色の光線。
かつてのビームライフルのように敵をとらえ、そして、
ドォォォン!!!!
撃墜した。
ガジェット2型を一撃で撃墜する威力。
魔力はほんの僅かしか供給していないのにこの威力。
頼もしいかぎりだった。
だがその爆煙からさらに4機。
サイコフレームは《続けて攻撃を、》といった。
無論、アムロも断る理由も無く「ああ。」と答えた。
まわりには4機の2型。
その後ろにも5機の編隊が2組続く。
だが、新しいデバイスを手に入れた彼には無駄だった。
右から、左からと襲われるもライフルを撃ち、あっという間に2機を撃墜、一気に上昇する。
《このライフルモードは魔力射撃武器です。誘導弾とは異なり誘導機能はありません。》
戦闘しながらも黙々と説明を続けるサイコフレーム。
《代わりに出力変更機能が搭載されており、限界はありますが強力な砲撃が可能です。》
そういわれて、アムロはその場でライフルを下に向け、チャージした。
そして、
「落ちろ!」
《Buster Shoot》
その言葉と共にライフルが火を噴いた。
先ほどよりも太い光が敵を飲み込み、一気に後の編隊をも巻き込み数機が落ちた。
だが、残りのガジェットが攻撃を仕掛けてきた。
そして、
ドガァァァァン!!!!
「アムロさん!!」
ガジェットの攻撃を受けたのだろう。
その攻撃が彼に当たったと同時に、スバルはアムロの名を叫んだ。
その爆発はものすごく、スバル達のいるヘリの中からも見てとれた。
「そんな………」
絶望に似た表情でティアナは呟く。
だが、その爆煙からアムロが飛び出した。
「アムロさん!」
だが、何かがおかしい。
2人……3人………
なぜかアムロが3人、残りのガジェットに飛んでいく。
「え、なんで?」
それを見てティアナが気付く。
「ダミーシルエット………」
そう、彼女の得意とする幻影魔術である。
ガジェットの砲火がアムロのシルエットを貫く。
当然シルエットの為貫通したと同時に消える。
そして全てのシルエットが消え去った。
この魔法は通称フォーミュラシルエットと呼ばれるアムロのダミーシルエットだ。
3つの中には本物はいなかったのだ。
途端に後方から攻撃を受けるガジェット。
いつの間にか背後にまわっていたのだ。
「通常魔法は使えるのか………」
《通常、デバイスを通さない魔法は使えます。》
そういって残りをあっという間に撃墜する。
そして………
「スターズ3、スバル・ナカジマ!」
「スターズ4、ティアナ・ランスター!」
「ライトニング3、エリオ・モンディアル!」
「ライトニング4、キャロ・ル・ルシエとフリード・リヒ!」
「「行きます!!!!」」
フォワード陣の初めての実戦が始まる………
残りの空戦部隊を撃破したアムロは、先に降下したフォワード4人の援護にまわっていた。
未だに速度を落とす気配の無い列車上部にいたリィン。
その近くに着陸する。
「状況は?」
「スターズF、ライトニングF両部隊は既に取り付いて交戦中です!」
そういわれて見回すと、前部車両上部からスバルが飛び出した。
その瞬間を見たアムロは、
「あれなら大丈夫か………」
と聞く。
するとリィンは「はいです!」と答えた。
「なら、ライトニングFの援護に向かう。」
そう告げて後部車両に向かった。
スピードの出てるリニアレールの車両上。
ライトニングFと合流するために急いでいた。
3両目、4両目と通過していき、6両目、中心の車両を通過した。
その時だった。
バゴォォン!!!!
さらに先の車両の天井の一部が吹き飛んだ。
「何っ!?」
その途端に、その攻撃でできた穴から2人の人影。
《ライトニングFを確認。敵と交戦中の模様。》
エリオとキャロ、さらには敵の一部と思われる黒い物。
コードでもワイヤーでも無い物体。
まるでグフのヒートロットを横に広げたような形をしている。
「エリオ、キャロ、無事か?」
「アムロさん、今の所は………」
そういってエリオの横に飛ぶ。
穴から見えたのは丸い球体のガジェット。
今まで見たことの無い形だ。
《八神部隊長の言っていた、新型だと思われます。注意を。》
そういわれて武器を構える。
「2人ともいいな?」
「はい!」
「大丈夫です!」
いい返事が返ってきた。
その時だった。
グォォン!
先ほどのガジェットのロットがこちらを狙ってきた。
同時に俺達は跳び上がる。
キャロは後方に跳び、
「フリード、ブラストフレア!!」
強化したフレアを放つ。
が、攻撃も虚しくそのロットに軽く弾かれた。
弾かれたフレアはそのまま右にあった崖に当たり、爆発を起こした。
だがその隙に、
「おりゃあぁぁぁ!!」
エリオとストラーダがその本体を狙う。
高々と空を舞うエリオ。
雷を纏ったストラーダがガジェットの本体を狙う。
しかし、
「ていっ!!」
掛け声と共に降り下ろされたストラーダは、ガジェットの丸い表面に激突した。
だが、一行に傷もつかない。
さらには、周囲にフィールドを張る。
「!?」
突然ストラーダの尖端から光が消え、キャロの足元にあった魔法陣も跡形も無くなった。
「チィ!」
上空にいた俺はすぐさまライフルを構え、攻撃した。
だが、3発撃った魔力弾はあっという間に消え去った。
「AMF!?こんな広範囲に!」
そして、
ドカッ!
「エリオ!」
途端に攻守が逆転した。
エリオはストラーダを横に持ち、敵のロットを防ぐので精一杯だ。
魔力はあっても、体力は子供である。
力勝負では勝ち目は無い。
そこに、
「このぉ!」
《Sabel Mode》
サイコフレームを変形させて飛び込んだ。
イメージは剣。
サイコフレームは、すぐさま形状を変えた。
上についていたライフル本体が緑の光になって消えると、同時にT字が棒状に変わり先端に長く、反対側に短いピンクの魔力刃が現れる。
かつてのνガンダムのビームサーベルになったのだ。
増幅した魔力のおかげで、サーベルは消えないでガジェットまでこれた。
そして剣を切り付けた。
が、
ギィン!!
「!?」
刃はガジェットに届くことはなく、かわりにオレンジ色に鈍く光る刃が剣を受け止めた。
それは斧を構えた緑の人影。
単眼を光らせ、左右非対象の肩をし、身体の至る所にある動力パイプの数々。
サイズは違えど、忘れるはずが無い。
かつて初めて戦い、いくつも落としてきた相手。
そう、
「ザク…だと………!?」
《メモリー内データと照合、全データ一致しました。》
サイコフレームはすぐさま答えを出した。
だがアムロは、未だに信じられない表情で刃を交えていた。
そこに、
《後ろです。》
その警告を受けてすぐさま横に転がった。
そして、さっきまでいた場所を見ると、
「ザクがもう1機!?」
《間違いありません。両機ともMS-06ザクです。》
アムロは信じるしかなかった。
事実、目の前にいるのは確かにザクだ。
その2機は、アムロを見据えると背中から武器を取り出した。
丸い円盤状のドラムマガジンを上に取り付けたマシンガン、ザクマシンガンだ。
「!?」
咄嗟に盾を構えるも、2機はお構いなしに撃ちだした。
「くっ………」
執拗に何十発も撃ち込まれ、身動きがとれない。
その時、
「ぐあっ!」
一際大きい音と共に叫び声が響いた。
そこにはガジェットのロットに捕まったエリオの姿がある。
そしてガジェットは、そのまま開いた穴からエリオを投げ捨てた。
投げられたエリオは、そのまま放物線を描きながら谷底へ落ちていく。
そして、
「エリオっ!」
「エリオ君ーーーっ!!!!」
アムロは敵の弾丸を防ぎながらも外に跳び、キャロは後を追うかのように飛び込んだ。
「キャロ!?」
アムロはその事態を見て、助けるために2人に向かった。
落下する2人、キャロがエリオの手をとった。
その時、2人をピンクの光が包んだ。
そして、
「龍魂召喚!!!!!!」
その叫び声と共に、白き翼が現れた。
大きく、強くはばたく。
それは、真の姿をした白銀の龍、フリードであった。
アムロはフリードの背中に乗っている2人を確認し、すぐに駆け寄った。
「大丈夫か!?」
「はい、キャロのお陰で何とか………」
エリオはさっきの攻撃がきいてるようだが、大丈夫だと立ち上がる。
そこに、
ダダダダ!!!!
「うわっ!?」
近くを弾丸が掠めた。
「あの人型ガジェット………」
例のザクが2機、こちらに向かって来てるようだ。
それを見てアムロは、
「……エリオ、俺が飛び込んであの2機を落として、中のガジェットを打ち上げる。」
とエリオに告げる。
エリオはいきなりの発言に戸惑うも、その話を聞く。
「打ち上げた瞬間を狙って撃破しろ。いいか?」
「はい!」
アムロは作戦を立てていたのだ。
そして、
「いくぞ!」
「はい!」
「わかりました!」
アムロは敵に突っ込んだ。
正面にザクが2機、上方から降下して来ている。
手前のはヒートホークを構え、その後のはマシンガンを構えている。
これほど好都合な状況はない。
俺はサーベルと盾を構えて突撃した。
まずは手前のザクからだ。
ウイングで急接近しサーベルをザクの左脇腹目掛けて叩き込む。
だが相手は機械、反応速度は相当のものだ。
瞬間にヒートホークでサーベルを防いだ。
だが武器を持っている手は右腕、右脇腹ががら空きだ。
「このぉ!」
その空いた隙間に、かつてのコクピット、正面腹部に盾の先端を突き立てた。
めり込む盾、その瞬間に、
《Missile Shoot》
盾から4つの赤い弾丸が貫いた。
その後、盾に突き刺さったザクを振り落とす。
落下する機体、そして爆発。
爆光に照らされ、もう1機は行動できずに射撃に貫かれた。
一撃で、確実に。
わずか10秒程の出来事だ。
その攻撃をしたのは全て盾に内蔵された武装、νガンダムの盾についていたミサイル、ビーム砲まで再現されている。
ビーム砲は出力は低いが汎用性の高い低出力魔導砲に、ミサイルは質量のある物理貫通誘導弾に変更されているのだ。
俺は撃破したザクの爆発を尻目に車両内部に再度侵入した。
そこには以前と変わり無いガジェット3型の姿。
睨み合う俺とガジェット。
そして、
グォォン!!
先手を打ったのはガジェットだ。
2本の黒いロットと無数の赤いワイヤーが俺目掛けて延びてきたのだ。
だが、サーベルを上から縦に1撃、まずロットを切り落とす。
それと同時に床を蹴り急接近。
そこに無数のワイヤーがこちらを捉えようと向かってくる。
だがこれも下にさがっていたサーベルを上に切り上げ、一閃。
ガジェットは無防備となった。
その隙に切り上げたサーベルをガジェットの表面に叩きつける。
だが手応えもなく、刃は触れる直前で消えてしまった。
AMFである。
だが、
「うおぉぉ!」
左腕の盾を変形させる。
腕から拳までを守るかのように変形した篭手、ナックルモードだ。
確かにAMFは強力でサーベルでも倒せなかった。
だが、物理攻撃を一番脆いカメラ部分に叩きつければ勝機はある。
勢いのついた左ストレート、それをガジェットのカメラ目掛けて叩きつけた。
一撃、カメラにヒビが入る。
さらに連続で二、三撃と殴り続け、
バキャッ!!
カメラ部分が砕け散った。
オレンジ色の破片が飛び散り、スパークを起こす。
それを確認して右足を蹴り上げた。
その蹴りはガジェットの下部に当たり、上に空いていた穴から飛び出した。
「我がこうは聖銀の剣、若き槍騎士の刃に、祝福の光よ………」
フリードの上でキャロは強化魔法の永唱を続けていた。
手の甲にあるデバイス、ケリュケイオンは、永唱を続けるごとに光を増していく。
「たけきその身に力を与える祈りの光よ………」
《ブーストアップ、ストライクパワー》
完全に永唱を終えたキャロ、
「いくよ、エリオ君!」
攻撃準備を終えたエリオ、
「了解、キャロ!」
2人の息は、ピッタリとあっていた。
そして彼等の目の前に、ガジェットが打ち上げられた。
「今だ!」
そういってストラーダを構え、
「たぁぁぁぁぁっ!!!!」
飛び込んだ。
それと同時に、キャロがストラーダに強化魔法の援護を行った。
「ツインブースト!スラッシュアンドストライク!!」
ケリュケイオンから出た2筋のピンクの光は、真っすぐにストラーダの刃に当たり、
《受諾》
ピンクの魔力刃が現れる。
その大きさは、ストラーダを合わせてエリオの約3倍以上の長さとなった。
「一閃必中!」
バシュ、バシュ、と2回リロードされ、ブースターに火が点く。
エリオの足元には黄色い三角のベルカ式魔法陣、そこから稲妻を発しながら一気に加速をつけ、
ズドン!!!!
割れた真ん中のカメラから、真っすぐに中心を貫いた。
反対側には刃が少しだけ出ている。
そして、
「でぇぇぇりゃぁぁぁぁっ!!!!」
叫び声と共に、ガジェットは上に向かって切られ、
ドゴォォォォン!!!!
完全に爆砕した。
その爆発に飛ばされるエリオ。
満面の笑みだが、現在位置は車両上空。
無論、飛行魔法は使えない。
「えっ………」
残念ながら落ちるしか選択肢は無い。
「うわぁぁぁぁぁ!?!!」
落ちる、真っ逆さまに崖の奥底に向かって。
だが、白銀の龍とそのマスターが彼の落下位置に待っていることは言うまでもない………
戦いが終わり、リニアレールも停止している。
車両の上にはその戦いを征した魔導師、機動六課の面々が立っていた。
そこには、他の航空隊を全滅させた2人の姿もある。
その中の1人、オレンジ色の髪の少女は銃を下におろしながら青い髪をしたハチマキの少女と話している。
そのハチマキの少女の手には重厚な小さな箱。
赤い宝石、レリックの入った箱である。
だがその戦いを崖の上から見ていた人影は、それより赤い髪をした少年と金髪の女性を見据える。
独特な形をした頭部に3つの目。
偵察用人型ガジェット、MS-06E-3、ザク・フリッパー。
目のひとつひとつが思い思いにズームをする。
そして、もう一つの目が捕らえたのは、茶色い髪をした男の持っているデバイス。
T字を基本形状とした最新型デバイス、サイコフレームを見据えた。
薄暗い室内。
至る所にある機械の数々。
そして正面にある大きなモニター。
まさに研究所の一室と言える場所に、その男はいた。
紫の髪。
いかにも科学者と思える白衣。
と、そこに、
『ドクター、No.9のレリックが護送体制に入りました。』
新たなモニターが現れ、一人の女性がそう告げる。
だが、ドクターと呼ばれた男は、ザク・フリッパーの写している画像を見ながら、「ふぅん………」と小さな返事のようなものを返した。
その女性はさらに続け、
『追撃戦力を送りますか?』
と聞く。
だが、
「やめておこう、レリックは惜しいが彼女達のデータだけで十分だ。」
そういって先程の戦闘映像を見る。
「それにしても、この案件は実に素晴らしい………」
うっとりするような声で戦闘を見る。
ガジェットの働きを見るのではなく、魔導師達に目を奪われているようだ。
「興味深い素材をもっている上に………」
モニターに写される4人の魔導師、なのは、キャロ、スバル、アムロの4人。
さらにモニターを変えて写したものはフェイト、そしてエリオの2人。
「生きて動いているプロジェクトFの残滓を、手に入れるチャンスを………」
歪んだように笑う、
「そして………」
そういってモニターを変えると、そこにはサイコフレームが写る。
「こんな物があるとは………」
そういって振り向く。
そこには金髪の男。
「素晴らしいとは思わないかい?」
だがその男は、
「私はそんな物に興味は無い………」
とあっさり返した。
「そう言うな、No.0。」
ドクターはそう呼ぶと男は、「その名で呼ぶな。」といい返す。
その姿を見て笑いながら、
「ならこう呼べばいいのだろう?」
といい、その名を呼んだ。
「……シャア・アズナブル………」
最終更新:2008年08月10日 17:18