黄色い悪魔前半
私は平和の為に、弱きものを守る為に戦った…
祖国を愛し、想う若人を殺し…
祖国と利権を売り渡す豚を守り…
守るべき民には侮蔑と憎悪と嫌悪を受け…
私の戦友が守るべき人達によって殺される…
私は…
私は一体何の為に戦っているのだ!
―――とある管理局からの独立蜂起運動を鎮圧したランクS魔導士(後に精神を病み除隊)の言葉
―――かなり前、辺境世界の道
一台の車が走る、それを確認する3人の女性そして待ち伏せするように動く。そんな事を知らずに車は走る。
「しかし…」
運転手は言う。
「何で閣下みたいな人を辺境世界に追いやるんですかね?」
運転手は後部座席に乗る男を知っている。
『ヴィルヘルム・カナリス中将』
管理局において小さな部門であった情報局を拡大させ、日夜他世界の情報収集を行って多くの危機を直前に防ぐなど大きな功績を打ち立てていった、
恐らく彼がいなかったら管理局に対して多発するテロやクーデターに対処出来ず混沌時代が再び幕をあけるかもしれなかったのだ。
「まぁ、敵を作りすぎたんだな」
自嘲するようにカナリスは言う、カナリスもかなり黒いものを持った男だった、当時最大の障害であったラインハルト・ハイドリヒ総務統括官をテロに見せかけて暗殺し、
予算を確保する為に対立組織例えば海や空の将官を事故死に見せかけて暗殺したり、スキャンダルを用いて揺さぶりをかけてかなり黒い手を使って組織を拡大していき、
優秀な人材を集めていった。本局にいる宗方玲士やリンディ・ハラオウンやレティ・ロウランを始めとする人達の協力があったとは言えカナリスを敵視する人達は多い、
そして「辺境世界の状況をしかと見てこい」の辞令の元辺境世界への追放、つまりは左遷。抵抗すると思いきや本人はすんなりと受け入れた。
「閣下がいなくても大丈夫なんですか、情報局は?」
「何、心配はいらないよ」
カナリスは言う、情報を得るために支援も無く単独で敵地に向かい情報を手に入れる、時には金、時にはこちらの情報、
そして時には権力者に自らの身体を売る(男女問わず)、多分なのは達がみたら卒倒しそうな事を行ってまで手に入れる、
無論地味な任務などで褒められはしない…だが彼らは黙々と任務をこなした、ただ自分の仕事が良き未来を作ると言う空想を信じて…
多くの部下の死を目の当たりにした、拷問され、文字通り奴隷にされ、撃ち殺され、あらゆる苦痛を受けながら死んでいき、
生物に吸収されたり、喰われたり、それらを目の当たりにしてもカナリスは顔色一つ変えずに仕事をこなした…無論心の中では全く違うが…
だが、部下は皆優秀だ、すでに後任も育てている。ある時は局からスカウトし、
あるときは他世界の政府や軍人を口説いて手に入れた宝石より貴重なスペシャリスト…
総合的情報収集を任とするラインハルト・ゲーレンとハンティントン・シェルドン其の妻アリス・シェルドン、
外交的情報部門のアレン・ダレス、ウィリアム・ドノヴァン
暗号解析(通称ブラックチェンバー)ジョセフ・ロシュフォート、ジャック・ホルトウィック、ハーバート・ヤードリー
特殊工作員オットー・スコルツェーニ、ジャック・キャノン
…彼らは自分達がいなくても今以上に仕事をこなす事が出来るだろう。
―――自分はやるべき事はやった、あとは若い人に任せよう…新しい酒は新しい皮袋という諺があるしな。
そうカナリスは思った、この任務が終われば、辞職して、そうだな自分を陰から支えてくれた妻と共に趣味のクラシックに没頭する日々を送ろうとするか…
そう思っていた矢先である。車に向けて砲撃が放たれる、魔法防護を施しているにも関わらずその攻撃はそれを容易くぶち抜き、エンジンを破壊した、
そして車はコントロールを失い岩に激突する。
「閣下、ここは危険で…」
非難を促した運転手は飛んできたナイフが心臓に刺さり倒れる、即死だ…、痛む肩を押さえながらカナリスは車外に出る、
救援を呼ぶ無線もすべてジャミングされている。まぁどっちみち今から救援が来ても遅いだろうな。
そう思いカナリスは目の前に降りて来た女性に目をやる。
「やれやれ随分と乱暴な御出迎えだな」
その余裕に似た口調に若干驚くも短髪の女性は淡々と言う。
「ヴィルヘルム・カナリス中将、我々と来てもらいましょう…抵抗は無意味だ」
「戦闘機人か…ジェイル・スカリエッティの差し金と言う所か…」
「なるほどそちらは知っておられましたか」
「ああ、そして狙う物もな…」
カナリスはデバイスを起動させる、ハンドガン型のデバイスだった。
「先ほども言いましたが抵抗は無意味です」
短髪の女性は言う。
「ふん、君の言う抵抗とは偉く単純なものだな…」
カナリスは言う、かつて情報局員として働いていた時に捕まり、その後看守の首を締め上げて脱走したが、
それもこの現状では不可能になった、そして彼の不可解な言動に女性は顔を顰め…そして気付く。
「いかん!チンク、ディエチ、奴を止めろ!」
そして自身と飛び出したが遅かった、カナリスは銃口を口の中に入れると躊躇無く引き金を引いた。
何故か、理由は分かる、おそらくジェイル・スカリエッティは情報局の中枢を勤め、多くの管理局内や管理世界、
管理外世界の情報を欲したに違いない、そして自分に対する敵対要素の排除も含めて。
そして後頭部に大きな穴があき頭蓋骨の破片や細かく砕けた脳髄が吹き飛び地面に赤い染みをつける。
「ちぃ、遅かったか…」
女性、戦闘能力において最強と名高い戦闘機人ナンバー3「トーレ」が顔を顰める。
「こちらトーレ、捕獲対象178の確保に失敗…」
「どういう事?」
モニターに映る女性は顔を顰め言う。
「ウーノ、奴は私たちの目的を悟って、自殺した…脳髄を完全に破壊してな…」
モニターに映る女性ウーノは顰め面をしながらも帰還命令を出した。
「ごめんさい、トーレ、阻止できなくて」
チンクと呼ばれる小さな女性は謝罪する、そしてディエチと言う女性も似たような事を言い謝罪する、それに首を横に振るトーレ。
「いや、これは私の責任だ…迂闊だったな」
トーレは頭が吹き飛んだカナリスの死骸を見やる。今までの戦闘経験から管理局員は惰弱と決め込んでいたが、
少なくとも目の前にいた男は、最後まで自分の任を果たそうとした男だ…
「覚えておけ、博士の敵はあのような連中ばかりでは無い事を…」
そう言うとトーレはカナリスに向けて敬礼する、それは彼女が最後まで自分の務めを果たそうとした
…敬意に値する男だった。
「そうか、確保に失敗したか」
男は淡々と言う。
「申し訳ございません、この責は…」
そう言い頭を下げるウーノ
「まー仕方ないよ、彼が自殺を選ぶなんてまさか私でもそう思わなかったからねぇ」
男、狂人、ジェイル・スカリエッティは言い、トーレ達に責はないと言う。
「これで振り出しか…」
スカリエッティにとってスリルとは楽しむべきものだが、流石に管理局が口出しされると色々と迷惑なのだ…
その筆頭がヴィルヘルム・カナリス率いる情報局であった、スカリエッティの存在と最高評議会との繋がりを
恐らく何らかの状況で知っていることだろう、其の為スカリエッティは評議会を通じて情報局の封じ込めを行った、
それだけではなく情報局の情報すら手に入れようと考えていた。流石に安易な流出はそれこそ情報局だけではなく
多方面からの猛反発も避けれない。ドゥーエも本部と評議会との繋ぎとめで動けない、そしてクアットロによる
ハッキングは逆襲を喰らってカウンターウィルスを流し込まれ昏倒、現在も修復中であった。
「まぁいいか、少なくとも有能なトップを失った事で情報局の動きは制限される、それに次の局長は若手らしいじゃないか…大丈夫さ」
スカリエッティは満足そうにいった…だが情報局はすでにラインハルト・ゲーレンと言う優秀な若手がすでにトップについていたことを彼は失念していた。
―――管理局内のある将官達の会話
「オークションに出したロストロギアがぱくられたんだって」
「おいおいおい、何やってんだよ、というか何でロストロギアをオクションにかけるんだよ、あれか?ヤフ〇クで転売でもするのか?」
「んな事知るかよ!」
「というか警備に就いていた機動6課の連中はどうしたんだ」
「隊長揃って警備名目でのパーティー内で飲み食い、そしてまともな指揮の取れない副隊長たちの行き当たりばったりの迎撃、計画なんぞ立てていない、
あまつさえド新人たちの味方撃ち、それに対する連帯責任もオール無視…もう何もかもがダメダメ」
「フッ、数ヶ月しか訓練していない新兵をセレブ達の護衛につけようなんて、あそこの隊長はバカだな」
「あんな隊長の下で戦いたくねぇな」
「「「「「「全くだね」」」」」」
「それで次の模擬戦が何故新人を暴走した理由分からずに私的制裁かまして其の上連帯責任すら負わせねぇ」
「何考えているんだよ、一体」
「八神はやては今回の経験に鑑み予算増額を請求だって、訓練に力と資材入れたいからとか」
「うがぁ~~~~金食い虫がぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「くっそ~~~何考えているんだ、で、それはどうなった」
「…承認だってさ、もちろんそれは俺たちの部署から削るんだとさ(泣」
「「「「「「「「「もう嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」」」
―――とある管理世界
モニターを見る二人の男
『不屈のエースオブエース「高町なのは」、美しき雷光「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」、夜天の王にして偉大なる守護者「八神はやて」、
彼女達がいる限り時空の平和は―――』
「ちっ!不快だ」
男はモニターを強制終了させてはき捨てる。
「何がエースオブエースだ、何が守護者だ、何が雷光だ、ケッ『篭中の御姫様達』のどこが偉大だって言うんだよ」
男の言う『篭中の御姫様』はとある局員達で交わされている言葉でもある。
「やめておいた方が宜しいですよ、ここの司令官である貴方が言うと部隊の士気にかかわりますし、モラルの点も…それに彼女達は」
抗議というより嗜めるように老けた男は言う。
「確かにPT事件、闇の書事件を解決したのは認めるがな…だが所詮それだけ、親の七光りや老害の後ろ盾でやりたい放題やっている餓鬼どもさ」
「まぁ、プロパガンダに使える分、士気向上、そしてそれにつられ入局しようとする人…うってつけですな」
「そうだなそれと俺とおやっさんの仲だ気楽にいこうか」
「失礼したな坊主、しかしちょっと前の坊主とは全然違うな、以前の坊主は…」
「管理局の正義を純粋に信じ、人々を救う事に理想とし道を進んだランクS+魔導士…確かにね、
だけどあんな現状見たら『正義なんてクソ喰らえ』になりますよ、管理局上層部とこの世界の
政治家や企業などはつるんで利権を貪り、富を民から収奪する、だけど管理局からの恩恵は上流階級と
そのおこぼれに与れる都市部の人間ぐらいなだけ、それで怒り狂った民はテロやゲリラ的行為を行う…」
男は少し前を思い出す、続発するテロに管理局はテロ撲滅を謳いテロリストのアジトを強襲、ボス
と重要幹部を除いて全部射殺された、だが射殺されたのは貧民層の人々、その中には女子供も含ま
れていた。
「そして管理局内の常識が他世界に通じると思っているバカが増加しているのもテロ行為を続発させていますよ、民衆が昔から信奉している宗教を、
昔から行っている習慣を野蛮と蔑み差別する。もう見てて駄目だなと思いますよ、この世界の住人にとって我々はあくまでヨソモノなのだから」
老けた男は頷いて言う。
「その通りだ、そのお陰でテロを行う為の人材を確保するなんて容易、宗教と貧困、どの世界でも斬っても斬れぬ存在、それが絡むと本当に恐ろしい、
教養のない連中は宗教を教え込ませ立派な殉教者に仕立て上げる、謳い文句は『管理局員、政府の役人を殺せばパライソにいける』
とでも…そしてインテリ層も厄介だな、此方には笑顔で接しているけど隠している手にはナイフを忍ばせているなんて結構あるからな」
「上は版図を広げる事に御執心、とばっちりは俺達のような下っ端、そして俺達のようなランクが高い奴らは必ずやらされる汚れ仕事、
ランクの低い局員では手におえないようなゲリラ組織を一つの村を殲滅してまでの討伐、反管理局的思想を持つ政治家とかインテリ層の暗殺とか…はぁ」
「だが管理局にいる以上それは仕方ないだろう、坊主、全てが全て綺麗事とは限らないだろ」
「まぁ、仕方ないと割り切っていますがね…時々思うんですよ何の為に戦っているのかって、俺はなんだろうって…
でも御姫様達はなんだろうって思いますがね、俺を含めて他の連中がどうやっているのかも知りもしないのに
自分の主張や思想がすべて正しいように押し付けて、間違っていると指摘しても自分は決して間違ってはいないと
頑なまでに意見を変えない。そして『お話をきいて』と自分の意見を認めない奴らには力押しで自分の考えを
無理矢理押し付けて、そして自分はすべて正しいんだと言う顔をする。自分の手を血で汚した事もない癖に、
その理由を知らずにやたら偉ぶる、自分は人を死なせずに救っていると誇ってな。なまじ力があるから手が付けられない…
バカにしているとしか言いようがないです。確かに個人の思想を持つことは構いませんし、彼女達の思想は立派なものですよ、
ですけどそれを人に押し付けようとする時点でだめだめだな」
AAAランク以上の持つ魔導士は少なからず、汚れ仕事を行う、そうでもしなければ治安どころか次
元間の平和も守れない場合も多々あるのだ。時空の平和を守るのは彼らのようなAAAランク以上
の圧倒的な暴力によって辛うじて押さえつけている、つまり憎悪と怨恨、血と肉と言う土台によっ
て平和は支えられている、だからこそ司令官を含むAAAランク、いや本当の実戦に出ているベテ
ラン(一部は除くけど)達は高町なのは、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン、八神はやての3
人の魔法使いを密かにこう呼び馬鹿にして、その場の憤りを一時的に晴らす。
「篭中のお姫様」
3提督やリンディ・ハラオウンやレティ・ロウランなどの有力な上層部と言う籠の中で本当のAAA
ランク以上の局員としての仕事をほとんどせずにただ自分達に出された特別課題、彼らから見れば
鼻で笑う生ぬるい任務をこなすだけ。丸で固い城の中で守られるお姫様のように…
重い空気を打破するように一人の若い男が入って来る、そして部屋に入ってきた男は、二人の男に
敬礼すると「今回この世界に着任する事になりました」、自分の名前、前の所属、「出身地はクラナ
ガンラン」、そして「貴方のような司令官の下につけるとは光栄です」と下らない御世辞を言い、「よ
ろしくお願いします」
と言う。
「よろしい、君の配属を歓迎する」
若い男、司令官はいつもの言葉を言うと、ふと思いついたように若い男に問う。
「君は何故管理局に入局したのかな」
その問いに若い男は誇りを持つように言う。
「ええ、あのエースオブエース『高町なのは』彼女のような素晴らしい人が人の救う道と言うのを教えられて…
そしてかっこいいんです、彼女みたいに強く逞しく優しい人が…自分もそうなりたくて」
「ん、そうか、分かった」
内面で「このバカが」と言う表情を前に出さず司令官は頷く、そして退室する若い男を見て司令官
はぼやく。
「データでは優秀だが、実戦はランクC事件の解決ね、地はいいけど温室育ちの御坊ちゃまか…おやっさん、何日持つかな」
「数ヶ月持てばいい方じゃないんですか?」
老けた男、補佐官はサラリ言う。
「全くだ、ゲリラに殺されるか、本当の現場がどういうものを知ってしまい、夢が壊れて局を辞めるか」
プロパガンダに影響されて入る人達による離職率は高い、何故だって?答えは簡単、現実を知って
しまうからだ、何せ情報では友好的なのに管理世界にいるけど周りの住人は全然友好的じゃない
よ、や、何で周りから敵視されるんだよ、や、子供が武器を持って襲い掛かられる事にショックを
受けたり、人を殺してしまいショックになるなり鬱になる…意思が弱い(その分なのははかなり異常)。
その分「金の為」とか「家族の生活の為」とか「犯罪を犯した親類の罪を少しでも軽くする為」とか
「人を殺したい、壊したい為(時々いるんだこんな奴が)」の方が多少の問題はあれどもまだマシ=使える
…それが司令官の認識であった。
「前来たと女性局員もあのエースオブエースに影響されたクチ、高町なのはみたいになると言っていたな」
「まぁ、高町なのはの影響を受けすぎて、彼女に振り回される部下が哀れで哀れで…何度も泣き付かれたよ、『彼女と仕事できない』って」
「まぁ最終的には我らの黙認の下、部下達が後ろ弾撃ちこんで事なきを得たんですがね」
「ふん、無能な士官は排除されて当然だ」
管理局における士官の死傷原因
3位 任務中における敵からの攻撃(とりわけ狙撃攻撃に対する対抗策は難しい)
2位 自爆テロを含むテロ攻撃(民間人を装ったテロの撲滅はほぼ不可能)
1位 後ろ弾(無能な指揮官のみならず、元犯罪者に対してよくみられる)
―――数日後
爆発する管理局の駐屯基地の敷地と門…
「またテロリスト御得意の嫌がらせ攻撃か」
司令官は全く動じない、もう彼は慣れているのだ、今司令部の部屋で慌てているのは先の新人だ。
「一体何が…」
「ゲリラがいつも行う攻撃さ、どっかから手製迫撃砲なり、手製バズーカを使って砲弾を基地に撃ち込むもしくは爆弾テロってね…」
「え、何で」
「決まっているんだろ、俺達が嫌いなだけ」
「そんな、管理世界の皆は幸せに暮らしているってそう教えられて…」
新人はただ教えられた事を言う、司令官は思う、『ケッ、だから純粋培養は・・・』だがそれをおく
びにも出さずに言う。
「人は常に人の不幸を踏みにじって生きているんだよ、若造…現状を見てみろ、管理局の維持費は管理世界からの税収で賄われる、
無論見返りはあるけど、そういった利権はこの世界の上流階級や局の上層部によって押さえられてな、貧困層にはそういった
恩恵は中々受けられないのさ」
新人はただ沈黙する、そして司令官はモニターを一瞥するとすぐに自分の銃型可変デバイスを機動させスナイパーライフルモードに変えて、構える。
「司令なにを!」
新人の声を無視して司令官は混乱に乗じて敷地に入ろうとする女性に向けてデバイスを向ける。
「…狙い打つぜ」
Sランクの名は伊達ではない、収束された魔力弾がその女性の頭部に向けて放たれる、それは非殺
傷ではない・・・殺傷設定の魔力弾を撃ち込まれて頭が西瓜のように破裂する女性、その光景に仰
天する新人、そして怒る、人を、民間人を平然と殺す目の前の男に、そして階級の差も無視して新
人は司令官に掴みかかる。
「司令!何で民間人に殺傷設定を!何で撃つんですか!」
抗議する新人、無理もない…だが司令は掴んだ手を振り払うと部下に連絡を取ると射殺した女性の
身につけている物をとって来いと言う。そして女性と思しき脳漿や血糊や骨片がこびりついたコー
トの下から大量の爆弾が見つかった。
「軍用爆弾だ、かなり強力な奴だな…施設の一つなら軽く吹き飛ばせるな、ま、さっきの混乱に乗じて侵入しようとしたつもりだな」
淡々という司令官
「何も殺さなくても・・・」
「コートを見てみろ、奴の腕が動けばすぐ起爆するようにセットされている…それにこの世界でテロは死刑だし、奴は自爆覚悟だ、
今死ななくても、後で死ぬ…かわらんさなにもな」
納得が出来ない表情をする新人、そして司令官は言う。
「受け入れろ小僧、これが現実だ…そして士官学校で覚えた役に立たない常識は捨てろ」
「捨てなければどうなるんです?」
「…貴様が死ぬ、忘れるな、この世界では我々はあくまでヨソモノだ」
「でも高町なのは一尉達は…」
「あんな奴らの奇麗事なんて忘れろ」
「…分かりました」
納得しがたい表情をするものの、その表情に司令は驚いた、噛み付く事をあっさり止めた事、そし
て自分の尊敬する人達を踏みにじる発言しても何も言わない事、司令は思った「こいつは使えるか
もな…」と柔軟性はどこの組織でも必要なのだ。
「一つ質問があります」
「どうした?」
「何故彼女がテロリストだと分かったんです?」
「コートが奇妙な形で膨らんでいた、あの膨らみ方は爆弾を縫い付けているのに間違いない」
流石にそれに対しては感嘆する新人。
「凄い…」
だが司令はどこか悲しそうな目をしていった。
「それを判断するために多くの友や知り合いや部下を失ったよ…」
「で、どうかなあの若造は?」
「まぁさっきからの言動から…まぁ使えそうかな?」
「では明日にはテロリスト鎮圧作戦でも?」
「ふん!まだ早いな…しばらく世界というものを覚えさせてからだ、しかし上からはテロ殲滅の催促か…原因を作り出している元凶が何をほざく!」
―――聖王教会 かなり前
対峙する老年の男と若い美男子…
「何だと!ゆりかごの設計図をそちらに引き渡せだと!」
聖王教会に響き渡る大司祭の声、その大声を全く無視するように男は言う。
「ええ、そうですよ…今後の備えの為にね」
「あれは我が聖王教会の保有する最高機密レベルだ…だがゆりかごは旧暦以前の船だそれに、あれには…」
大司祭の言葉を防ぐように男は言う。
「ええ、聖王がいなければ機動はしない…だが今の科学力では機動する事は出来る…そうプロジェクトFをご存知ですか大司祭様」
それに顔を引きつらせる大司祭。
「まさか君は…」
ええと男は頷くと二枚の写真を取り出す…かつて司祭だった現大司祭がハニートラップに引っかか
る写真、聖骸布をこっそりと盗み出す写真…
「聖王教会の長でもある大司祭様はハニートラップに引っかかり、貴重な聖骸布をお盗みになられた…さてその情報を流されたらどうします?
…しかし大司祭も随分と精力旺盛ですね」
「君は私を脅しているのかね?」
「いや、違いますね…取引ですよ、貴方がこちらの条件さえ飲めば、この写真とネガはあげますよ…だから…」
「ゆりかごの設計図を渡せと…」
黙り込む司祭、男、時空管理局情報局局員である沖田静は内心で目の前の司祭をバカにすると同時
に感謝する、色欲に負けるボンクラで助かった、もしそれが厳格な宗教者だったらちょっと骨だからだ。
「貴方にとってそれぐらい簡単な事だと思いますがね、それに折角手に入れた地位と名誉…むざむざと失いたくないでしょう」
人間、地位と名誉を失う事を極度に恐れる、それは管理局でもどの世界でも当たり前、自分の地位
を守る為に他者を犠牲にする事も当然ある、だからこそこのような俗物は操り易いし、ボンクラで
あった方がこちらの利益にかなう。
「分かった、ゆりかごの設計図はそちらに引き渡す、だから…」
懇願するように大司祭は言う。
「ええ、貴方の不祥事は全部なかった事にしてあげますよ」
沖田は言う。
「ではこれからも友好的な関係を大司祭様」
沖田は一礼すると教会から立ち去った。そして教会内では一人の男が怒り狂って叫んでいた。それを尻目に
―――本局の食堂
「すまない…」
提督は階級の低い男に頭を下げた、本来なら考えられない光景だが、その提督は心の奥底から男に
謝った、提督の名前はクロノ・ハラオウン、男の名前はカール・ライカー、あの時クロノが提督と
言う立場を忘れて怒鳴りつけた男だった。
「俺の不注意で君を閑職においやって」
「いえ、気にする事はありません」
ライカーはそっけなく言う。
「まぁ彼の下で中々楽しくやっていますから」
ライカー自身にも非があることを薄々感じていた、参謀は指揮官を美味く補佐し、適切な判断に導いていくものだ、
しかし彼自身も己の職責を超えて勝手な判断をした事もまた処罰されるべき対象なのだから。
「そうか・・・だが、俺にはどうも理解できないんだ」
クロノはこれだけは分からないように言う。
「人の命を軽く見る君には、いや軍属には」
元々人助けをしたいとするクロノに対して命を奪う事に平然とする軍属にはあまり理解出来ない、
いやしたくないのだ、それは認識の差かもしれない、ライカーは徹底した合理主義、
任務の為なら人の命は軽い(無論自爆攻撃とかは論外)と考える軍事的な考えに対して、
クロノは管理局の理念に基づいて人の命は大事であり例え敵であっても出来るだけ殺さず、
捕え罪の意識を植え付けるといった警察的な考えなのだ、だから二人は相容れない存在なのだ、ライカーは言う。
「貴方らしくありませんな、PT事件の時における提督の行動とは思えない」
クロノの顔が一瞬歪む、あの時自分は今の妹でもあるフェイト・テスタロッサが消耗しきるまで待ってから捕えるつもりだった、
無論あの場にライカーがいたら確実にそう判断しただろう。だがそれは結局「高町なのは」による「勝手な判断」によって覆される事となった。
その時からもしれない、「高町なのは」と言う存在に影響され続けたのは。
後の闇の書事件においてはグレアムの考えもある意味理に叶っていたかもしれない、だが結局それも「高町なのは」と言う存在によって覆され…
恐らくそれがきっかけなのかも知れない。
「提督、貴方は人を殺せますか?」
ライカーからの質問、その質問は刃の如く自分の心臓に突き刺さる。
「管理局の理念に基づく、大いに結構、ですが時空はそういった理念で管理できるほど生易しくはない」
「分かっている」
でもクロノには問いを出せない、人を殺す…禁忌とも思える事、それは自分にとって踏み出せば自分が自分でなくなるのではないかと思ってしまう、
人を救うと言う自分の信念を完全に否定するものではないのか…だが否という答えは出せなかった、だが応と言う答えもまた出せなかった…。
「俺は…」
クロノは答えを言う。
後半投下させていただきます
―――宗方の部屋
「管理局とは元々どんな組織か分かるか?」
管理局の悪党宗方は夏目とベイツに問う。
「確か次元世界の秩序と平和を守る為と」
ベイツはさらっと言う、それは管理局に入局すれば誰でも叩き込まれる答えなのだ。
「確かにそうだ、だが今の管理局はどう思う?上層部の事は無視して」
そう言うと夏目は言う。
「…どうみても治安維持というより進出に血道を上げているって感じですね」
「その通りだよ夏目君、だが他次元世界の進出を求む理由は何か知っているかね?」
「よく聞くのはロストロギア回収や他世界に逃げ込む次元犯罪者の確保とか…」
「違うな」
宗方は首を横に振る。
「では何故?」
「予算だよ、よ・さ・ん」
悪魔の如き笑みを浮かべる宗方にただぽかーんとする二人
「「は?」」
「予算を確保する為、海は予算確保の名目で決まり文句を言うんだよ『この次元世界は常に危険に満ち溢れている、だからこそ他次元世界にも進出し、
犯罪を未然に防ぐと共に管理世界に組み込む、次元世界安定の為予算が必要だ』と…それで自分達じゃ手におえない世界は勝手に管理外世界と名前を付けて見向きもしない、
そして目に付いた世界にはあの手この手でこちらに取り込んで、治安維持は陸課にほっぽり投げてはい、御仕舞い、
それで自分達の成果は拡張されて、予算確保できて万万歳!とな。
そうして華々しい成果を上げる海や空に対して陸は治安維持や紛争鎮圧など色あせたものになる、当然予算においては派手で発言力の高い海=本局が持っていく…」
二人の顔が歪む…まぁ仕方ない事か、そう思い宗方は言葉を続ける。
「そうだ、予算の事に少々熱が入ってしまった、元来管理局は「次元世界の相互防衛組織」つまりは旧世紀からのミッドチルダと同盟を結んでいる国との安全保障条約機構なんだよ」
まだ管理局が完成した時はそうだった…各地に続発する暴動、クーデター、ベルカ残党の攻撃、それを抑える為に管理局は成立したが…自分達の世界が安定すると世界に進出し始めて今に至ると。そして宗方は言う。
「何故、管理局は質量兵器廃絶を謳ったかわかるか?」
ベイツは言う。
「旧暦の戦争においてベルカが大量破壊兵器を使用して、多大な被害を齎したから」
宗方は問う。
「では何故ベルカは大量破壊兵器を投入した?」
「ミッドチルダを始めとする同盟軍に追い詰められたからだと」
ミッドチルダの歴史においてはそう記されている、同盟軍の英雄的活躍によってベルカ軍は撃破されたのだと。
「違うな…」
宗方は首を振る。
「実は戦争の時同盟軍はベルカ軍に只管敗北を重ねていたんだ、理由は簡単だ、ベルカは聖王と言う絶対的力を得たものの人的資源では同盟軍に圧倒的劣る、
そこで彼らはランクの高い者はただ魔法兵器を使わせ、下級ランクの者には質量兵器を装備させて柔軟性を生み出した、それによって魔法兵器と質量兵器を
組み合わせた新戦術を生み出したベルカ軍に対し魔法兵器、確かに質量兵器はあったがそれは極少数で魔法のみに頼る硬直した戦術を取れない同盟軍は敗退を繰り返した」
真実の歴史、次元戦争においてミッドチルダを始めとする同盟軍は敗退を繰り返した、それでも降伏しなかったのは、人的資源を始めとする様々な資源が豊富であったが、それをすり減らしながら同盟軍は苦戦した。
「では、何故ベルカは突然敗退を始めたのですか?」
夏目は問う。
「答えは簡単、ベルカは目覚めさせてはけないものを目覚めさせた」
「「目覚めさせてはいけないもの?」」
首を傾げる二人、そして宗方は言う。
「第1特別管理不可能世界ダル・セーニョ、ならびに第2特別管理不可能世界スフォルツェンド…
言っても分からんか…管理局でもトップシークレットの世界だからな」
「特別管理不可能世界…それは一体」
「要約すれば簡単、旧暦と新暦の管理局の技術を遥かに上回り、独自に次元航行技術を保持する世界…
つまりは軍事や技術のレベルが高すぎてこちらが介入すれば即座に滅ぼされる世界の事」
「本当ですか!」
ベイツは言うがふと思う、他しかにミッドチルダの出版物や映画でも管理局を遥かに上回る技術を
持っている世界が接触(大半は侵略で大体は勇敢な管理局はその侵略を打ち破るといった物である)
してくるというのは見た事はあるが…そうだこの次元世界は無限だ、管理局の技術を遥かに上回る
世界なんていくらでもあったっておかしくはないじゃないか!その表情に満足したのか宗方は言う。
「スフォルツェンドは魔法技術が発達した、そしてダル・セーニョは科学技術が進歩した…旧暦の戦争中ベルカは資源確保の名目で他世界に押し入り、資源などを強奪した、
しかし押し入られた世界は圧倒的技術を誇るベルカの前に何も出来なかった…ベルカは慢心していた、そうだからベルカは両世界にも押し入った、そして…」
「当然激怒した両世界はベルカに抵抗した」
「そうだ、そしてベルカは躊躇無く大量破壊兵器を両世界に撃ちこんだ…現状を知らずにな…そして、対話を望んだ世論は一気に強硬論に変化、まぁ無理も無いか…両世界は艦隊をベルカに向けて派遣した」
「そしてベルカ軍はすべてに敗北した」
「其の通り、アルハザートの技術によって生み出された聖王のクローンによるゆりかご艦隊も赤子の手をひねるように潰されて、特に大量破壊兵器迎撃に成功したスフォルツェンドに対し、
初動の遅さなどの不運が重なって、都市を吹き飛ばされたダル・セーニョの怒りは凄まじかった、彼らは情け容赦なくベルカ艦隊を殲滅した。
ベルカは初めて知ってしまった、自分達は眠れる獅子ならぬ、眠れる神を起こしてしまったと、
だが対話の道も先に撃ちこんだ大量破壊兵器のせいで両世界は全く応じない、進退窮まったベルカは残る大量兵器のありったけと残存と急遽製造した聖王クローンによるゆりかご艦隊を使い暴走した…」
「それがドゥームズデイとなったと…」
「両世界はそれを呆気なく殲滅し、ベルカの都市をいくつか吹き飛ばした…聖王の力を持ってもどうしようもなかった、
進んだ技術は聖王を上回るものだったのだから…そして両艦隊が撤退した時ベルカは壊滅し、大量破壊兵器のとばっちりを受けた同盟軍は恐れた、
自国の被害と特に阿修羅の如くベルカ艦隊を殲滅する質量兵器を満載したダル・セーニョ艦隊に…」
「それがベルカ戦争の真実と質量兵器の根絶」
「そうだ…それが旧暦の終わり」
「しかし、何故、ダル・セーニョは兎も角スフォルツェンドは管理局に加盟しなかったのですか?魔法技術が進んだあの世界なら…」
「確かに、戦争後の混迷期ではミッドチルダを始めとする両世界に支援を要請したよ…だが返答はこうだった。『全部自分達のまいた種だろ、自分たちでどうにかしろ』って」
「…」
真実とは知ってしまうと恐ろしいものだな…二人はそう思う共に同時に疑問に思った、そしたら何故両世界は進出をしないのだと?そのような疑問を読み取り宗方は言う。
「ベルカ戦争を得て両世界は交流を重ねているよ…結局魔法も科学も行き着く先、ちょっと形は違えどもほとんど一緒だ…だが目立った次元進出はしない理由は簡単、『コスト』だよ、
次元世界に進出するにも金がかかるし、そこで開拓するのも金がかかる、それを運び出すのも金がかかる、まして住民がいるのなら、殲滅するのも教育するにもコストがかかる、
そんなんで採算がとれるか?何度か彼らに接触しているけど…こう言われたよ」
仰天する二人、この悪党…どんだけパイプを繋げているんだ?こいつは一体何なのだと。宗方は続ける。
「笑われたよ『次元世界進出?ああ確かに出来るよ、だけど目の前に無限に広がる世界があるのに何でわざわざ高い金払って他の世界なんぞに進出しなきゃいけないんだ?
それで変な問題起きたらたまったもんじゃないよ』ってね…それどころか同情されたよ、管理局の情報は彼らにすべて筒抜けにされているからな。
そんなしょっぱい技術と人員でよく他世界を治められるなんて、『人手不足だろ?なら俺達の旧式兵器とマニュアルと生産プログラムを譲渡しようか?それだけで随分変わる
ぞ』ってね、そうしたいが御偉方は拒否したよ…まぁ認めたくないわな、此方の技術が劣っているなんて権威が落ちると言って許さないからな」
クククと笑うように宗方は言う。そしてベイツは問う。
「閣下、貴方は何を企んでいるのですか?」
真剣な表情で宗方は言う。
「…管理局が第二のベルカにならないように…それと未来」
だがベイツは喰らいつく
「そしてあなたは何を得るのですか?権力?名誉?地位?金?」
宗方は首を横に振った。
「そんなもの、もういらんよ…それにそれらの権利はすべて失った…あの戦争で」
「クリムゾンバーニング…」
「そうだよ、ベイツ2佐」
「では貴方の言う未来とは何ですか?」
「あらゆる世界の人種でも、管理局を運営していける柔軟な未来」
管理局が出来た頃は権力闘争の暇なんてなく、それどころか崩壊寸前の次元世界維持の為にそれこそ
最良の人材を最良の部署につけるのが当たり前だった、しかし平和が安定すると緩やかな腐敗が起こり、
そしてミッドチルダ出身者による権力独占…まぁまだ1世代目と次元紛争を見てきた2世はまだマシであった、
しかしそれらの子や孫は揃ってバカ(クロノなど一部は優秀であった)揃いなのだ、プライドだけは高く権力に対する貪欲、
さらに親の庇護を受けている為にタチの悪さは半端ではない。
「未来ですか、ではその未来は誰を対象にしたものですか?」
夏目は問う。
「管理局の明日を担う者すべてだ」
「それは例の機動6課の面子も含まれると」
「其の通りだ」
宗方はぴしゃりと言った。二人とも意外そうな顔をしていた。
「まさか、中将は嫌っていたはずでは?」
「嫌ってなんかいないさ…、未来への道は開いとく、それでどうするかは自分次第だ、自分が成すべき事をよく考える、
ただ老害達のお人形として使われるぐらいはならな」
―――時間は飛んで地上本部襲撃後
―――地上本部 中将室
二人の男が対峙していた。
「で、私を呼んだのはどんな理由です?レジアス閣下?」
「ゲンヤ、昔のままでいい…楽に行こう」
「では、何で俺を呼んだレジアス?」
「お前に全てを打ち明けたいからだ」
真顔でレジアスはそう言うと、引き出しを開けると一丁の銃を取り出す、数少ない古くからの戦友である市川二佐から護身用に送られた拳銃だった。
そして弾倉を取り出し中にちゃんと弾が入っている事を確認すると弾を装填し、それをゲンヤの目の前に差し出した。それをゲンヤは一瞥すると言う。
「どういうつもりだ、レジアス?」
「何、これから話す事を聞いて、多分君の起こそうとする事を予測してな…」
淡々とレジアスが言うとゲンヤは鼻を鳴らし問う。
「先の地上本部襲撃をひっくるめて全部話してもらおうか」
ゲンヤの内心はかなり憤っていた、何故なら先の襲撃で地上本部と機動6課は壊滅状態に陥り、二人の娘、
長女は戦闘機人に捕獲され、次女も重傷を追い本局に搬送されている。多分今にもレジアスの顔面に1発2発を撃ち込むつもりであった。
そしてレジアスはすべてを話した、最高評議会を通じてジェイル・スカリエッティに通じていた事、そしてゼスト、クイント、メガーヌを半分見殺しにした事…
すべてを古くからの戦友に打ち明けた。
「俺がいう事は全てだ…後は好きにしろ、ああその拳銃には指紋がつかないように特殊コーティングしてあるし、
お前と二人きりで話す事は内密だ」
そしてレジアスはゲンヤを見る、そしてゲンヤは拳銃を取る…そして…
「レジアス中将、失礼します…」
そう言うとゲンヤは拳でレジアスの顔面を思い切りぶん殴った。レジアスはその衝撃で椅子から投げ飛ばされ無様にガラスに全身をぶつけた。
「死んで責任を取ろうとしますか?そして負うべき責任をすべて投げ捨てるつもりですか?冗談ではありません、
今あんたが死んで喜ぶのはあの腐れ外道だけだ!だが俺はアンタが憎い!妻を殺し、娘を連れ去った原因を作ったアンタが憎い!
だが、アンタはまだ生きていかなきゃならん!やらなきゃいけない事をやれ!やるべき事をやってから存分に首を吊るなり、
崖から飛び降りるなり、毒物飲むなり好きして下さい、それまで、この拳銃は私が預からせていただきます、
あの狂人はなんらかのアクションを起こすでしょう、では私は事後の対策を練るために…」
そう叫ぶとゲンヤは踵を返そうとする。
「待て…」
思い切り顔面を殴られ、痛む口を無視するようにレジアスは立ち上がりゲンヤを呼び止める、
そして一枚のIDカードを渡す、ゲンヤは受け取った。
「何ですかこれは?」
「例の質量兵器倉庫のキーだ…、恐らく通常の魔法ならガジェット相手には苦戦する、
だが質量兵器なら奴らを容易く打ち破る事が出来る…情報局からの連絡だ」
「これを私に?」
「私の周りにはただ追従するしか能がない馬鹿ドモだ、だがお前なら信用出来る」
それを受け取るとゲンヤは笑みを浮かべる。
「そうですか、ではありがたく使わせていただきましょう」
それを胸ポケットにしまうと、何かを思い出したように言う。
「市川二佐と1課の姿が見当たらないのだが…」
「ああ、奴らならある訓練を受けている」
「訓練?」
「まぁ時期に分かるだろう…」
「そうか…」
「ああ、そうだ…」
レジアスも何かを思い出したようにゲンヤに言う。
「…ゼストが生きていた」
「!!!!」
これにはゲンヤも驚いた。
「恐らく、ワシに真意を聞くためだろうな…ひょっとするとクイントやメガーヌ達も…」
「分かりました…では」
そして去ろうとしたゲンヤにレジアスは言葉をかける。
「ゲンヤ…いいパンチだったぞ、奥さん譲りだな…」
「ええ、結構な鬼嫁でしたからなぁ」
互いにフッと笑うとゲンヤはレジアスの部屋から去った。これがレジアスとゲンヤの今生の別れとは
…二人とも薄々分かっていたかもしれない。
――――そして時間は飛んでゆりかご起動
―――本局
モニターに映り、ゆりかごはなんたらかんたらと行って、自分は天才だと喚いている白衣を来た狂人を見て、
唖然とする本局の皆を尻目にただアホらしい顔をする一同がいた。
「あほだ」
「あほだな」
「ああ、救いようの無いアホだな」
「とんだ、間抜けに振り回されたな」
宗方一同と一緒にいる斎藤三弥である。
―――最高評議会
長年にわたって管理局いや次元世界を牛耳っていた3人の男、肉体が滅んでも自分自身が滅ぶ事を拒み続け、
そして自分たちが次元世界を守る(支配)するに相応しいという妄想を今でも抱えている哀れな存在、
そして彼らは子飼いの起こした反逆に命の灯火が消えようとしていた。彼らはただ言葉を繰り返す
「畜生畜生!スカリエッティめ!我らの恩を忘れおって」
「こんなはずではなかった、こんなはずではなかった」
「死にたくない、死にたくない」
生と権力に尚もしがみつこうとする愚かな者達の末路であった。助けを呼ぶ事は出来ない、手段はあっても念話を送るだけの力ももうない…
絶望に身を焦がし死への階段を上る彼らに救いが舞い降りた。重厚なドアが開き入室する二人の男。
「おお、きてくれたのか…助けてくれ」
脳髄は二人の男に助けを求める。
「…無様だな」
「権力と命にしがみ付いた者の末路か…こうはなりたくないな」
男は見下した声で言う、そして脳髄は悟る。
「ゲーレン…シェルドン…」
だが脳髄は助けを求める。
「助けてくれ、まだ培養液のタンクはある…もう時間が無い!頼む!助けてくれ!」
懇願であった、だがゲーレンは嘲笑じみた笑みを浮かべると言う。
「もう充分に生きたでしょ?もう安らかに逝かれてはよろしくはないですか?」
「まったくですね、滑稽でしょうがありませんよ」
凍りつくような冷徹な声、そして脳髄は過去を思い出し言う。
「カナリスの事は悪かった、だが水に流そう、そうすれば次から情報局には今以上の予算と資材を分け与える、悪くない条件だ、な、頼む!」
「カナリス前局長は私やシェルドンの恩人でもありましたが、彼は自分の死期は悟っていましたよ…ですが…」
「ですが…」
唾を飲むような声で脳髄は言う。
「簡潔に述べさせていただきます…さっさとくたばれ老害!」
感情を表に出さないゲーレンが発した罵声、そして踵を返し退室する二人。
「待ってくれ!」
「行かないでくれ!」
「死にたくない!」
「精々、残り少ない時を過去の栄光でも思い出して愉悦に浸っておいてください」
命乞いをする脳髄にシェルドンも冷徹に言う、尚も懇願する声は閉まるドアによってかき消される。
「しかし、局長も相当溜まっていますね」
やれやれとした表情でシェルドンは言う。
「ふん、老人がいつまでも未来を担う若者の歩む道を防いではいかんさ…
宗方も始めた、我々も我々の成すべき事をしようではないか、ハンティントン・シェルドン副局長」
「ええ、そうですねラインハルト・ゲーレン局長」
二人にはこれから老害の罵声を浴びた後自室に戻り資料を纏めるのだ、権力にしがみ付く豚を排除する為に。
―――宗方の部屋
「やれやれ、すべては予定通りだな」
ライカーは言う。
「オメガも配置に付、防衛部隊も配置に付、ドレッドノートも配置についた、いつでも出撃できますよ、中将」
夏目は言い、そしてベイツは疑問に浮かぶ。
「何であのスカリエッティの存在場所知っているのに、特殊バンカーバスター型ミサイルを撃ち込まなかったんですか?」
「ああ、確かにそう思ったが、スカリエッティは捕える…そしてすべてのボロを出してもらわないとな、いくら情報局とて奴の全てを知っているわけではない」
そう情報局のドノヴァンが言うと一人の男が入ってきた、ジョセフ・ロシュフォート、情報局における暗号解析のプロだった。
「どうだ、状況は?」
「ええ、上層部では暗号でいろんなやり取りをしていますよ…まぁ内容は察し出来ますが」
「ふん、まぁまさかこんな事になるなんて思わなかっただろうな」
宗方は悪鬼のような笑みを浮かべて言う。
「ところで、ゲーレンとシェルドンが見当たらないが?」
「ええ、中将らは奴らの最後を見届けて、ちょっと上にガミガミ言われてくるから」
ドノヴァンは言う、それについて心当たりの言う宗方は頷くと指令を出した。
「作戦名『E・O・P エンドオブプロジェクト』発動、各員の活躍を期待する」
―――クラナガン沖
大海原に巨大な鋼鉄の鯨が浮いていた…
制式名称『時空管理局所属対深海戦用時空航行艦 リムファクシ級潜水戦艦 4番艦ドレッドノート』
時空航行こそ出来るが潜水機能を特化させた艦船は極めて珍しいものだろう、本来如何なる環境でも運用が出来る時空航行艦であるが、
海中などにおいては極めて作戦能力はおちる、何せアルカンシェルを筆頭とする各種武装では撃てないOR威力が凄まじく減少する、
機動性もすごく落ちるなどの大問題を抱えていたのだ。そして海中索敵任務についたL級やXL級が事故などによって次々と沈んだ事に
より慌てて建造したのがリムファクシ級だ、潜水艦建造技術が皆無(だって海より次元の海の方が)なミッドチルダでは建造できず。
潜水艦などを建造、運用していた管理世界やこっそり呼び出した管理外世界の設計士などを基に建造し、高性能な巨大潜水艦となったのだ、
無論戦場を選ぶ事から生産数は極めて少なく、このドレッドノートは出来立てのほやほやなのだ。
「やれやれ、やっと寒い所から解放されたよ」
黄色系の艦長がそう言うと。
「ええ、海中では無敵の艦長は寒さには弱いからですね」
白人系の副長がクスリと笑う。
「しかし、今回の任務はただ図体がでかい飛行物体に対艦ミサイルをぶち込むだけだとはね」
つまらなそうに黄色系の艦長、藤井隆三佐はぼやく。
「課せられた任務はどんな時でも行う…」
白人系の副長ハンス・エーベル・ヴェルナー二尉は言う。
「分かっているさ、何あの時を懐かしんでいるのさ」
藤井は言う。
「ええと、第108管理外世界のウィルキア国における超兵器『ノーチラス』との一騎打ちですか?それとも解放軍を支援して『フィンブルヴィンテル』撃沈…
もしくは85管理外世界における「夜明けの船」もしくは「キュベルネス」との戦闘、そしてこの前ロストロギアを守護していたランクSS級巨大海洋生物との戦闘…どれですか?」
「全部と言えば…?」
「貴方らしいと言えば貴方らしいですね」
藤井につられ笑い出すヴェルナー、元々ヴェルナーはミッドチルダ出身系によく見られる管理局に所属する他世界人差別主義者、
ミッドチルダ至上主義者で人種差別主義者であったが、藤井との出会い、戦場における藤井の的確な(そして命がけ)指示に惚れこみ、藤井を尊敬している。
差別主義者というヴェールは無くなった。
『ドレッドノート』とは勇敢な者や猛者を表すがもう一つの意味がある『恐れを知らぬ無鉄砲者』という言葉・・・正しく藤井にうってつけの言葉であった、
しかしそれを可能にするのは本人の緻密な計算のおかげなのだが。
「EOP発動しました」
「現在、クラナガンにおいて陸士とガジェット群との戦闘が開始されました」
「ゆりかごは現在の移動中」
OPの声が響く。
「では我々の仕事を始めるか」
藤井は指示を出すと先ほどまでのんびりしていた艦内の空気は張り詰める。
「ミサイル充填確認しました」
「よし、では発射準備」
「カウント…5…4…3…2…1…スパーク!」
「フォイア!」
藤井が言うと、ドレッドノートのVLSハッチから二発のミサイルが発射される。
「他のも続けてぶっ放せ」
そして他のVLSからも続けてミサイルは飛び出す。
「しかし、一体何処からあんなミサイルを持ってきたんですかね、本局は?」
首を傾げるベイツ、何せ打ち出され、もしくは発射されようとしているミサイルのリストを見たヴェルナーは驚いたのだ…
管理局には存在しないものばかりだからだ。
「情報局と鬼畜が裏で手を引いているからな」
藤井は言うとヴェルナーは納得したように頷いた、成る程あの御仁ならやりかねん。
―――L級時空航行艦「アースラ」 現機動6課本部…
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
一人の少女が溜息をついていた。
「何でこないな事になったんやろ…」
過去を見て自分が思うのは後悔であった。新人たちの訓練しかり、アグスタしかり、地上本部しかり…
「ずっと過信していたやろうな…うちら」
言葉どおりだったのかも知れなかった、思えば集団戦と言うのは10年前の海鳴以降全然行っていなかった、だからこそ自分、
いや自分たちは集団戦を舐めていたし、うちらの知り合いの誰かがいれば何とかなるやろ…
「甘い考え方やったなぁ」
機動6課隊長八神はやてはただ呟く。結局過去省みれば、指揮と言う物が全然取れていない自分、
突撃するしか能の無い隊長、副隊長、連携のとる為のイロハを教えていなく個人主義に走る新人達
それで今まで何とかやってきたのは豊富な予算(不思議な事に増額要請しても何故かすんなり入った)
によって湯水のように消費できるカートリッジ(なのは達のカートリッジは特別製で従来よりクソ高い)、
そして力押しのゴリ押し…
「市川さんがいてくれれば何とかなったんやろうか…」
自分の父親的存在でもある副官に抜擢(だけど本局からの指示で渋々外す事になったけど)していれば…
少なくとも最悪の事態は避けられた、いや起きなかったのかもしれない、アグスタの時に
3人でドレス着てはしゃいでいた時に注意して、最低でもなのはちゃんかフェイトちゃんのどちらかを
無理矢理外に引き釣り出したかもしれない、新人達にチームワークのイロハを教えてくれたのかもしれない。
だが彼との連絡はつかない…一度アグスタ事件の後会ったが…冗談で色気出して誘惑したらシカトされた
(さらに「下手な娼婦の方がもっと上手く誘惑出来るぞ」と言われる始末、ムキー)…あれは仕方なかったが。
「いない人を頼ってもどうにもならへん、それにまだ最悪の状況にはなっておらへん」
妄想を止める、そして彼の言葉を思い出す
「そやな、何時までもミスをくよくよ悩んでいてもどうにもならん、なら指揮官としてやる事をやらへんと」
そう思いこれからやるべき事…ゆりかごを阻止し、ジェイル・スカリエッティを逮捕し、クラナガンを救わなければならないと言う、
無理難題であった。状況からゆりかごや研究所には強力なAMFが張られているとされている…
という事はスバル、ティアナ、エリオ、キャロは役に立たない…そして残った私たちでゆりかごか研究所に
「オールハンデットガンパレード」をかますか…だが研究所を選ぶと、ゆりかごを迎撃する手段はないし、
クロノ提督率いる主力艦隊は間に合わないし、かといってゆりかごに挑めば、あのキチガイ黄金勇者オレンジを逃がしてしまい
第2、第3の悲劇が起きているに違いない…
そして新人達も新人達で戦力に不安残りまくりで…まさにないないづくしであった。
「う~~~~~ん、ほんまにどないしよ…なのはちゃんはヴィヴィオ、ヴィヴィオやし…しょうがあらへんか」
多分この指示を出した自分は生涯に渡って「無能」「ボンクラ」「アホ司令」の名を背負うかもしれない、
つまり、戦力の分割、しかも二つじゃなくて、三分割…もし宗方の陰謀が分かればはやては問答無用で
研究所にオールハンデットガンパレードをかましたのかもしれない…まぁ彼女にそのEOP何て知らされていないのだから。
まぁ途中で「私も突入する、誰か指揮交替」なんてバカな真似をしないようにと…
指揮は全部グリフィス君に任せるつもりだ、アースラ電子兵装は最新型だからだ
「後はやるだけの事をやるだけ…」
八神はやてはそう言うと、作戦説明を行う為に戦友達の前に立った。
廃墟区―――
「点火!点火!点火!」
陸士の一人がスイッチを押す、そうすると両脇に立っていた廃墟ビルの基礎部にしかけられたC4が起爆し、瓦礫がガジェット群を飲み込む…だがガジェットの数は絶える事無く、
こちらに向かってレーザーを撃ち込んでくる、負けじと陸士の一人が手に持ったAK-47で反撃を試みる、そして銃弾によってガジェットの薄い装甲はぶち抜かれ爆発する、
だがそれも気にかける事無くガジェット群は侵攻を止めない。
「退避!退避!ここの防衛線を放棄する、後ろに下がるぞ!」
バリケード内に篭っていた陸士隊員達は雪崩をうって逃走する、追撃をかけるガジェットだが、アンチマテリアルライフル、
PSG-1やドラグノフ、果てはそんなもんどこにあったの38式歩兵銃を装備する狙撃班や後方から放たれる迫撃砲、
そして陣地にしかけられたクレイモアなどの対人地雷でガジェットを足止めする。
―――陸士臨時指揮所
「第2防衛ライン突破されました、現代第3防衛ラインで何とか持ちこたえています」
「ポイントA23、B32に戦闘機人、数6!」
「くそ!6体もか!そこにいる守備隊じゃ持ちこたえられんぞ!」
罵声が響き割る、ひっきりなしに入る無線、そして響き渡る銃声、全部例の倉庫から根こそぎ持ち出した物なのだ、とりあえず数だけあって故障しにくいAK-47(数は多い)は守備隊に優先配備され、
狙撃をやっていた者には狙撃銃を渡され、どうせ従来の無線は妨害(当然された)されるのだから小隊長事に無線を持たせてと…なんとかおっかなびっくりで防衛戦を務めている、それが陸士部隊の現状だった。
「AKとRPG、手榴弾はまだ弾はありますが、迫撃砲、重機関銃、対空機関銃、MAT、TOWの弾薬はかなり減っています」
冷静な声で状況判断する副官。
「くっそ~~~、バカスカ撃ちやがって!少しは節約しろって!」
歯軋りするゲンヤ、だが仕方なかった、無論若干の訓練を受けているとは言えやっぱりその場しのぎの訓練ではボロが出る。
確かにAKは1型の装甲を簡単にぶち抜くが、装甲の厚い3型と改では当たり所がよくなければぶち抜けないのだ。
其の為有効な重機関銃や対空機銃などの弾薬は凄まじい勢いで消費されるのだ。
「6課はまだかぁぁぁぁ」
「6課より入電、これより支援隊を回す、ヘリで飛ばすのでもう少し時間がかかる…と」
「あの馬鹿狸!敵が航空優勢握っているのにとろいヘリとばしてどうすんだぁぁぁぁぁぁ!」
「根こそぎ航空部隊持ち出しやがって!制空圏なんかとれるかぁぁぁぁ!!」
罵声がまた響き渡る。
「ところで、その腰に取り付けている小刀はどうしたんですか?」
副官はゲンヤに問う。
「…最終防衛ライン突破された時にあそこ(元公園の広場)で腹を切る…」
ぽつりとゲンヤは言う。
―――とある場所
「諸君、奴らに血の代償がどれだけ高いか教育してやれ…」
本局にいる斎藤中将からの訓示…それを胸に陸士とは思えないBJを着込んだ男達が配置につく、そして狂人のいる研究所に所属不明のヘリが飛ぶ。
そしてゆりかごに向ってミサイルは進む。
そしてとあるビルの屋上でアンチマテリアルライフルを構えた特殊部隊隊員のスコープがオットーと言う戦闘機人の頭を捕え、吹き飛ばした時、
そしてゆりかごにミサイルが着弾した時、更地となった研究所の地上にヘリが降り立った時…
驚愕するリンディ・ハラオウンとレティ・ロウランが振り向いた先にいる鬼畜王が不気味な笑みを浮かべていた。
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