閉じ込められた隊長陣。
敵の数に翻弄されて手が回らないフォワード達。
AMF環境に不慣れで一方的とも言えるやられっぷりの武装局員達。
地上本部の管制室は沈黙。
結界を維持する動力室も沈黙。
絶望的な状況の地上本部と同様に、機動六課も似たり寄ったり。
ただ、最悪寸前で踏みとどまっている。
ワンサイドゲームになりかねなかった状況を膠着にまで持ち込んだのは1人と1匹。
ザフィーラとシャマルの2人だけでは絶対に生まれなかった攻勢防御という選択肢。
それが膨大な経験に基づいた1人と1匹のコンビネーションで支えられている。
まるで精密機械のように繰り返されるその動作が次々と装甲を突き破り、
ガジェット達をジャンクという名のオブジェに変えていく。
ずらりと並んだジャンクの群れ。
とどまるところを知らぬガジェットの群れ。
永遠に続くかと思われたこの状況。
知っているだろうか。
精密機械はほんの少しの狂いから全部壊れてしまうって・・・・・・。
魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めようか。
第17話 大破
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
「らぁぁぁぁぁ!!!!」
すれ違いざまに打ち合っては離れるといったやり取りを何度繰り返しただろうか。
地上本部へと向かうゼストと戦っているが一向にケリがつかない。
状況は膠着していた。
激しい鍔迫り合いに互いのデバイスから火花が散る。
「ゼストっつったか。なにたくらんでるか目的を言えよ。納得できる内容なら管理局はちゃんと話を聞く!」
「・・・・・・若いな。」
あたしの言葉を軽く笑い短く応えるだけのゼスト。
同時にゼスト周囲に収束を始める魔力。
これはまさか・・・・・・。
リインが気がついたのか同じように魔力を収束させる。
ほぼ同時に炸裂する両者の魔力。
「だが、いい騎士だ。」
互いに距離を取り、再び向き合う。
本当ならば間に合うはずの無いタイミング。
だが、それが間に合ったと言うことは・・・・・・。
「リイン。気がついたか。」
新たなカートリッジが排莢される。
再び繰り返される打ち合い。
その最中にリインが返事を返してくる。
「はいです。向こうのユニゾンアタック。微妙にタイミングがずれています。融合の相性があまりよくないと思います。」
どちらもベルカ式。どちらも融合機とのユニゾンアタック。
技量も大差ないと見ていいだろう。
ならば、ユニゾンの一致率の分だけ勝機はこっちにある。
再び距離を取ったとき、ゼストがなにか呟いたようだが、いったいなにを・・・・・・。
同時に槍型のデバイスの穂先に収束を始める炎。
早くコイツをどうにかして他のやつら助けにいかねぇと。
持ちこたえてろよ。お前ら・・・・・・。
========
「ちぃっ。ちょこまかと・・・・・・。」
「ウェンディ。このグズ!!さっさとしとめろ!!」
言われなくたってやっている。
だが、コイツ・・・・・・速い!!
弾速が一番早い精密射撃用のエリアルショット。
なのにそれを連射してもひらひらとかわすのだ。
機械仕掛けの目に搭載されたFCSや照準機よりも遥かに早く動き回る赤毛のちっこいの・・・・・・。
演算された予測射撃さえもかすらないなんて・・・・・・。
「っ!!」
ノーヴェの戸惑いの声に視線を向けると、消えていく敵の姿・・・・・・。
「幻影?」
視界のモードを変更。
そんな子供騙し、ドクターが対策していないと思っ・・・・・・そんな!?
全てを実体として認識なんて・・・・・・。
「うっそぉ・・・・・・。」
1つ2つならどうにかなった。
でも、いつの間にか冗談のような数の幻影が私達を取り囲んでいる。
「あたしらの目を騙すなんて、この幻術使い、戦闘機人システムを知っている!?」
「幻術だろうがなんだろうが、ようは全部潰しゃいいんだろうが!!」
ノーヴェ、そんなモーションの大きい攻撃は・・・・・・。
言葉にするよりも早く掛け声と共に背後から駆け抜けてきたタイプゼロ・セカンドにノーヴェが殴り飛ばされる。
「ノーヴェ!!くっ。」
地面に亀裂を作りながら転がっていくノーヴェから目を離し、感じた気配に見上げればデバイスを振り上げるちっこいのがいる。
デバイスが帯電を始めていることに気がついたが、迎撃のほうが早い。
周囲のガジェットも動員して迎撃するべく構える。
だが、その目論見は外れた。
「Form Drei. Arschloch Unwetterform. (訳:サードフォーム、クソッタレ ウンヴェッターフォルム)」
「サンダーーーーレイジ!!」
くそったれってどういうことっス!?
いや、それ以上に帯電の勢いが桁外れ。
迎撃から防御に変更するコンマ数秒の切り替えが結果を分けた。
直撃なら大破確実の一撃を受け止めると、薄暗かったフロアが迸る紫電に青白く染まる。
肌や髪がピリピリと逆立つのを感じる。
ヤバイ。抜かれたら落ちる。
くそっ。重い・・・・・・早く終われ。
って、まだ出力があがるっスか!?
ちっこいのが飛びのいたのと同時に凄まじい重さから開放された。
だが、その衝撃だけで後ろに吹き飛ばされる。
雷の衝撃と撒き散らされた高出力の電磁波の影響で身体のあちらこちらが異常を発している。
再起動まで12秒。
ガジェット達は言うまでも無く大破どころか残骸すら残らないほどに木っ端微塵。
どういう火力してるッスか。
「てったーーーーーい!!!」
幻術使いの言葉が響き渡り、四方八方に散り散りに逃げていく。
早く追わないと・・・・・・。
そう重い体を起こしたとき、チンク姉から通信が入った。
「2人とも、ちょっとこっちを手伝え。もう1機のタイプゼロ。ファーストのほうと戦闘中だ。」
了解ッス。
ノーヴェも悪態ついてないで急ぐッス。
姉のピンチッスよ。
========
「高町一尉!!」
フェイトちゃんとエレベータを滑り降りて、一刻も早くみんなと合流するべく走っているとき後ろからわたしを呼び止める声。
「シスターシャッハ!」
「シスター。どうして・・・・・。会議室にいらしたんじゃ・・・・・・。」
「会議室のドアは有志の努力によってなんとか開きました。それで、私も急ぎ2人を追って・・・・・・。」
「はやてちゃん達は?」
「お三方ともまだ会議室にいらっしゃいます。ガジェットや襲撃者達について現場に説明を・・・・・・。」
了解とばかりに頷いたとき、背後からこっちに近づいてくるジェット音?
見えた姿はフォワードのみんな・・・・・・ってなにしてるの?
見ればストラーダに飛ばされているエリオとエリオに必死でしがみついているティアナ達。
すごいスピード・・・・・・ってこっちにくる!?
私達に気がついたのだろう。
ストラーダの穂先についた噴射口が反転し、バックブーストで制動をかけている。
自分の足とスバルのマッハキャリバーも必死で止めているみたいだが、それでも殺しきれないみたい・・・・・・。
そういえば3倍ソー・・・・・・じゃなくて早いんだっけ。
ちょっと横に避けたほうがいいかも。
結果としては、わたし達の横を5mくらい通り過ぎた辺りでとまったからよしとしよう。
それよりなによりいいタイミング。
「いいタイミング。」
わたしと同じ事をフェイトちゃんの呟き。
今は1分1秒が惜しい。
「おまたせしました。」
「お届けです。」
「うん。」
「ありがとう。みんな・・・・・・。」
スバル達に預けていたわたし達のデバイスを受け取る。
これで前線に立って指揮が取れる。
救助も容易になる。
「こちらは私が責任を持ってお届けします。」
「お願いします。」
残るレヴァンテイン達がシスターシャッハに預けられた。
はやくはやてちゃん達に届けてあげて欲しい。
完全に後手にまわってしまっている。
遅れたら遅れただけ天秤は最悪のほうへ傾いていってしまう。
それとも、もう遅いのか?
「ギン姉?ギン姉!!」
突然響いた声にみんなが呆然とスバルを見つめる。
なにをそんなに焦っているの?
「スバル?」
「ギン姉の通信が繋がらないんです。」
「戦闘機人2名と交戦しました。表にはもっといるはずですから。」
「ギン姉・・・・・・まさか、あいつらと・・・・・・。」
不安げな顔をしているスバル。
フェイトちゃんがロングアーチに状況を確認している。
今の状態は目隠しされたまま道を歩いているようなものだから。
少しでも情報が欲しい。
「ロングアーチ、こちらライトニング1。」
「ザザッ・・・・・・ライトニング1。こちらロングアーチザザッ・・・・・・。」
「グリフィス!どうしたの?通信が・・・・・・。」
驚きの声を上げるフェイトちゃん。
ノイズ交じりの通信。
まさか!?
「こちらは今ガジェットとアンノウンの襲撃を受けザザッ・・・・・・・。
ハンター1、ハンター2とシャーリーさん達が戦線を膠着させていますがいつまで持・・・・・・ブツッ・・・・・・。」
電話線を引き抜いたように途切れたグリフィス君の言葉。
動揺するフォワード4人。
最悪の状況を想定しながらわたしは判断を下す。
「二手に分かれよう。スターズはギンガの安否確認と襲撃戦力の排除。」
「ライトニングは六課に戻る。」
戦力の分散なんてなにを考えていると、
はんた君どころかわたしとフェイトちゃんをこてんぱんにやっつけたファーン校長にも言われそうだが今はこうするしかない。
地上本部がAMF環境での戦闘にあまりにもなれていないのは今の状況が証明している。
相手の目的がなんであれ、排除しないことには救助も作戦立案もおぼつかない。
纏まっていて地上本部にいる敵を排除したら機動六課が壊滅していましたなんて認めたくない。
それなら地上本部を見捨てるのか。
それも出来ない。わたしは管理局員なのだ。
フェイトちゃん達ならオールレンジアタッカー、ガードウイング、フルバックと増援の構成として最適。
それに飛行スキルをフォワードの4人は持っていない。
キャロだけがフリードで飛んでいけるというのも現状にあっている。
10年前にユーノ君が飛行は基本スキルみたいなこと言っていた気がしたんだけどわたしの勘違いかな?
今はどうでもいいか。
いずれヴィータちゃんも駆けつけるだろう。
はんたくん達が戦っているのだ。
誰よりも現実的で実力主義者で刹那的なまでの戦闘思考をした人が、
その人を飼い主に持つ戦いの猟犬が、
ヴォルケンリッター湖の騎士が、
ヴォルケンリッター盾の騎士が・・・・・・。
大丈夫。持ちこたえている。
間に合うに決まっている。
そんな思いの中、わたしは気がついていなかった。
わたしの思いの矛盾について。
それは管理局のあり方と正反対のもの。
大を救うために小を切り捨てようとするのが管理局。
それはPT事件、闇の書事件で知っていたはずなのに・・・・・・。
誰も彼も手の届く限り助けたいと思うわたしの思いに刃を突きつけられる日が来るなんてこのときは思ってもみなかった。
========
考えるより先に身体が動く。
何機撃破したかなんて数えていない。
全ての思考はクリアなままに幾千万と繰り返した戦いの技が炸裂する。
俺の役割は相手の動きを封じること。
それが約束を破らぬ精一杯のライン。
数を倒すに最適な特殊兵装は防衛なんて状況のせいで使えない。
万が一使ったなら、速やかにガジェット達は掃討できるだろう。
それ以上の滑らかさで機動六課が瓦礫の山か更地に変わってしまうだろうが。
ゆえに1機1機倒していくしかない。
何十発目か何百発目か忘れた砲撃音の後にエレキ弾が紫電を迸らせる。
そうして動きを封じた次の瞬間、淀みと言う言葉を知らぬかのようにミサイルを叩きつけていくポチ。
姿は四六時中消しっぱなしのポチだが、俺の弾に当たる可能性なんてかけらほども考えていない。
それだけの信用も信頼もあるから。
RAMはカートリッジが無くて使えない。
CIWSでは小回りが利かぬ。
ゆえに左腕に展開した20mmバルカンで飛び交うミサイルを薙ぎ払うように迎撃する。
僅かに届かぬ射程の外から回り込んだ数発の流れ弾。
しかし、シャマルが風の護盾で食い止める。
さらに大外から回り込もうとするガジェットはザフィーラが近接戦闘で叩き潰していく。
潰しても潰してもガジェットに減る様子はない。
戦闘機人はセンサーにひっかかっているが今しばらくは静観というところか。
機数は3。
仕掛けてこないのは疲弊するのを待っているのか、それとも・・・・・・。
広範囲攻撃を持つ相手がいたらゲームオーバー。
その現実だけは変わらない。
それを理解しているからこそ早々に潰しに行きたい。
しかし、ここを離れればこの状況は簡単に崩壊することが火を見るより明らか。
まさに状況は千日手。
ただ、包囲殲滅を相手は仕掛けてこないという奇跡的な状況。
それこそが今を生み出している。
このまま朝まで延々とルーチンワークを繰り返せば・・・・・・。
そんな甘い幻想が叶うはずがないと知っているのに1000000分の1秒ほど考えてしまった。
そんなとき、突如訪れた感覚に全身が凍りつく。
視界がじわじわと端のほうから闇に侵食され始める。
火を落とされたエンジンのように、急激に奪われていく体温。
そして、まるで力が入らない身体。
緩慢になっていく心臓の鼓動。
躍動していた肉体から生み出されていたオーケストラのようなサウンドが一斉に不協和音を奏で始める。
それはただの1度だけ味わったあの瞬間とまさに同じ感覚・・・・・・。
全身から血を抜き取られるような、風船の空気を抜いたような、
ざわりとした感覚と共に刻々と四肢の感覚が無くなっていく。
蝕むように視界の端から迫る闇は留まる様子がない。
躍動していた肉体の力の衰えも・・・・・・。
この感覚にそっくりの感覚を覚えたのはただの1度だけ・・・・・・。
それが意味するところに感じたのは紛れもない恐怖。
死ぬのは怖くない。
人間の死がダースやグロス単位で売られている世界があの荒野。
いつかは自分の順番が回ってくる。
それが今来ただけのこと。
ゆえに死ぬことは怖くなかった。
ただ、思っていたのはたった1つのこと。
まだ終わりたくない。
まだ何も手に入れていない。
まだ何も分かっていない。
心に浮かぶのはハンターになりたいという切欠を導いた父でもなく、
修理代を無料にしてと言った俺に自分で稼げないならハンターなんかやるんじゃないと戒めた母でもない。
レッドフォックス。
色あせぬ記憶に刻まれた自分が手にかけた憧れの女性。
彼女のことだけが頭に浮かぶ。
今の状況も全て忘れてただそれだけで思考が埋め尽くされる。
やがて視界は闇に埋め尽くされた。
トリガーを引くことさえできぬ木偶人形に成り下がる。
それでも針の先ほどの誤差で持ちこたえている意識を蜘蛛の糸ほどにか細い糸を手繰り寄せるように繋ぎとめて、
うんともすんとも言わなくなった身体を必死で動かそうとする。
だが、最も信頼する己の身体は沈黙したまま・・・・・・。
耳元でアルファが何か叫んでいる。
いったいなにを言っている・・・・・・。
ああ、もうなにもわからない。
まだ、終わりた・・・・・・。
コンセントを引き抜かれたテレビの映像のようにブツリと意識が断裂した。
まるで壊れた人形のように地面に転がったことを俺が気がつくことはなかった。
========
「御主人!!!」
最悪の想像が脳裏によぎる。
だが、全ては後だ。
目の前の全てを壊滅させなければどうしようもない。
あの機械娘がついているのだ。
御主人は無事に決まっている!!
腕を引き千切られようと全身が直径2cmの穴だらけになろうとキャタピラに轢かれようと生きたままバーベキューにされようと、
ソニックブームを食らおうとハラワタをぶちまけようとだ。
ならばオレサマがやることは、敵の群れを統率するボスの撃破。
1分1秒でも早く喉笛を食いちぎらねば・・・・・・。
彗星のような勢いで加速し、木偶人形どもを体当たりで吹き飛ばし、戦闘機人とかいうやつを視界に捕らえる。
その数は・・・・・・2機?
残りの1機はどこに行った?
どうでもいい。さらに加速をしようとした瞬間、不意に横に飛び出てきた戦闘機人。
既に兵装を無意識で選択している。
デバイスが変形を終えると同時に身体は方向転換の予備動作。
ドッグジャベリンでぶち抜くべく、速やかに行動に移す。
無駄の無い動作で荷重移動を行い、ドッグジャベリンを突き立てるべく飛び掛かろうと相手を視界に捕らえた瞬間、戸惑った。
「な!?お前は・・・・・・。」
似ているなんてものじゃない。
目の前にいるその女の姿はまさしく御主人が殺したあの・・・・・・。
ゆえに動揺なんていうありえないことをしてしまった。
それは致命的すぎるミス。
ステルスの恩恵を失うには十分すぎるミス。
今更、気がつく。
1分1秒でも速く。
そうして直線で移動してしまったという最大級の大馬鹿に・・・・・・。
タイミングさえ分かってしまえば音速でも光速でも対処しようはあるというのに・・・・・・。
結果、レスポンスが遅れた。
時間にすればコンマ数秒に過ぎない。
しかし、高速戦闘においてはあまりにも大きすぎる。
抉られていく部位にかんじられるのはレーザー特有の感触。
切られている最中、焼かれている感じはしない。
ただ、なにかがじりじりと焼ききりながら動いているという認識だけ。
あまりの高熱に焼かれた毛と肉の臭いが鼻腔をくすぐるよりも速く、
肉を抉られる感覚の中、ミサイルをゼロ距離で爆破。
巻き起こる爆風にオレサマの身体が宙を舞う。
緊急回避に成功。
だが、まずい。
四肢が言うことをきかない。
想像以上に深く抉られてしまった。
抉られた部分から出ている紐はオレサマのハラワタか。
脈打つように噴出す血よ。早く止まれ。
臓器修復と傷口の修復が自己修復だけでは追いつかない。
回復しようとした次の瞬間、ゴム鞠を蹴り飛ばすように身体を蹴り飛ばされた。
やはり容赦がない。
さすが、御主人の認めた・・・・・・。
地面に転がった挽肉寸前の身体で今にも消し飛びそうな意識を必死に繋ぎとめ、デバイスから伸びるダクトを口にくわえる。
あと一呼吸でいい。
ベルナール、タロウ、ラリー。力を・・・・・・。
========
「マスター!!!マスターの行動不能を確認。緊急時により単独戦闘に移行。」
人間の焦りとはこのような思考なのだろうか。
あらゆるシークエンスを強制中断。
最優先タスク、マスターの生命維持および目の前の敵勢力の殲滅。
たった2つのことだけに私のリソースが全部つぎ込まれる。
兵装、全種の稼動を確認。
ジャンクヤード以外に帰れると思うな、木偶人形風情が!!
フロートシステムで僅かに浮いた身体がはじけるように加速し、射程外にあった敵を75分の1秒よりも早く射程に捕らえる。
回避運動なんて取らせない。
超高密度テクタイト製のパイルバンカーがガジェットの対して厚くない装甲をゼリーに串を刺すより容易に貫く。
ダイヤモンドも豆腐も超高密度テクタイトの前には大差なくなる。
まして薄い装甲なら言わずもがな。機能停止を確認。
次の敵へ串刺しにしたモノを放り投げ、行動を制限。
再加速からアイアンクロウへ兵装を移行。
タングステンカーバイド製のアイアンクロウが重なったままの敵をジャンクごと膾切りにする。
西洋刀でいうところの切り潰すという表現そのままに装甲が引き裂かれていく。
金属が引き千切れる特有の残響音が響き渡り、ショートした配線が散らす火花を横目に膾切りになったそれを廃棄。
撃破を確認する傍らで人間で言うところの肩甲骨を変形。
視界に移る全機にロックオン完了。
嵐のように吐き出されるホーミングミサイルの群れに次々と食い殺されていくガジェットという名前のジャンク。
レーダーには抉り取るような勢いで局所的に減少する光点が映っている。
並列でホーミングミサイルの生成。並列で思考。並列でマスターの生命維持。
戦況の維持は可能か?
Negative(否定)。
タスクを満たすことの出来る条件の検索。
Negative(否定)。
再検索。
Negative(否定)。
再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索
再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索
再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索
再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索
再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索
再検索再検索再検索再検索再検索再検索再検索・・・・・・・・・・
Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative
Negative NegativeNegative Negative Negative Negative NegativeNegative Negative
Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative
Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative
Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative
Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative
Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative Negative
NegativeNegative Negative Negative Negative Negative Negative Negative
Negative・・・・・・OK。
ポチのバイタルサイン、コンディションブルーからレッドに移行を確認。
マスターとポチを回収後、速やかに撤退。
全てのことを放り出して、タスクをこなすべく身体を加速させた。
約束のことがタスクに残っていたが削除。
約束?
それはマスターが約束したことです。
私は約束していません。
人間風に言うのなら・・・・・・マスター以外がどうなろうと知ったことか。
========
はんた君が倒れたところから戦線の崩壊が始まった。
傍から見て明らかに危険な倒れ方。
いったいなにが?
けれど事態は考える余裕を与えてくれない。
食い止められていたガジェット達が一斉に暴れ始める。
わらわらと終わりを知らぬような物量で湧き出てきたガジェット達が機械的にミサイルの雨を降り注がせてくる。
「クラールヴィント。守って!!」
風の護盾の上で炸裂するガジェット達のミサイル。
でも、このままじゃどうしようもないって分かってしまった。
ミッド式もベルカ式も一部の魔法を除けばその大半が行動中には使えない。
当然、私の風の護盾も・・・・・・。
そして、幾ら強固だと言っても限界がある。
必死に魔力をまわして支えるがいつまで持つか・・・・・・。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお・・・・・・。」
雄たけびと共にザフィーラがガジェット達を叩き潰しているけれど焼け石に水。
1機落とせば2機。2機落とせば4機。4機落とせば8機・・・・・・。
落とした以上の速さで増援が来てしまう。
そして、この場における最大の私のミスは正面の敵にだけ注意を払ってしまっていたこと。
施設にガジェット達が侵入したのと同時に、敵の魔導師の侵入を許してしまったことを私は気がつけなかった・・・・・・。
========
「OK。撃てる。腕はまだ鈍っちゃ無いぜ。」
ストームレイダーから放たれたヴァリアブルシュートに貫かれ、
ガジェットがまた1機残骸となって転がる。
額に浮かんだ汗を拭い、呼吸を整える。
大丈夫だ。手は震えない。
現役時代に比べれば遥かに劣っているが、
トラウマを抱えてからずっと撃っていなかったことを差し引いても通用するレベルは維持できていたのが奇跡みたいだ。
1日サボれば自分が気がつき、2日サボれば周りが気がつき、3日サボれば客が気がつく。
そんな言葉が第97管理外世界にはあるらしいが、
どうやら六課を襲ってるお客さん達には俺の腕でもまだ通じるようだ。
ここからみんなのいるところへは1本道。
スナイパーにとって願ったり叶ったりの環境だ。
人間相手なら釣りが使えるのに・・・・・・。
いや、欲張るのは止めておこう。
思考を追いやり、カートリッジをリロード。
再びヴァリアブルシュートを連射。
ガジェット達を残骸に変えていく。
なのはさん並の砲撃をぶち込まれたらアウトだな・・・・・・。
瓦礫を遮蔽物にどうにかこなしているが、ぶち抜かれたらどうしようもない。
なんせ逃げ場も無いのが1本道なのだから。
大丈夫だ。必ず持ちこたえてみせる。
なのはさん達が戻ってくるまででいいんだ。
外には凄腕さん達もシャマル先生もザフィーラもいる。
俺達の家を守るんだ。
そんなとき視界に移ったのは、1人の少女・・・・・・。
極限の状況とあいまって俺のトラウマがフラッシュバックする。
放たれた弾丸。
貫いたのは犯人ではなく、俺の妹の左目。
回線越しに聞こえた妹の悲鳴が頭の中に鳴り響く。
目の前にいるのは妹じゃないのに、妹に見えてくる。
動悸が始まり、冷や汗が滝のように流れ出す。
震えていなかった手は痙攣したように震えが治まらない。
守らなければ、だめだ撃てない、守らなければ、だめだ撃てない・・・・・・。
「邪魔・・・・・・。」
少女の呟きと同時に右手から放たれる閃光。
その瞬間思い出したのは、凄腕さんの後姿。
孤高と言ってもいいほどに、全てを拒絶する在り方。
突き詰められた鋼の心。
それでも歪な心で戦い続けるのはなんのためだ?
後ろにいるものを守りたいからじゃないか。
手の震えが止まり、正気に返った次の瞬間、凄まじい衝撃が全身に襲い掛かり俺は意識を失った・・・・・・。
ただ、最後に覚えていることは・・・・・・。
========
「ガリュー。大丈夫?」
頷くガリューだけど、その左腕のブレードが折れている。
シュートバレットにしては物凄く強い威力。
カウンターのように放たれたあの一撃は避けられない1撃だった。
もしもガリューが庇ってくれなかったら、私はどうなっていただろう。
左目が撃ち抜かれていただろうか。
ドクターが新しい目を作ってくれそうだけど、お母さんが目を覚ましたとき少しでも多く元通りのままでいたい。
ううん。今はそんなことどうでもいい。
早くドクターにお願いされたお仕事を済ませよう。
「聖王っていう子を連れて行けばいいんだよね?」
コクリと頷くガリューを確認すると私は歩みを進めた。
========
「たった4人でよく守った。だけどもう終わり。僕のISレイストームの前で抵抗は無意味だ。」
「クラールヴィント、防いで!!」
「Ja。」
立ち上がり風の護盾を展開する。
嵐のように荒れ狂う力の奔流を必死に魔力を流し込み支える。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
ガジェット達の攻撃を掻い潜り、ザフィーラが目の前の戦闘機人に飛び掛る。
だめっ!!まだ2機残っている!!
「ディード、ロッソ・・・・・・。」
「ISツインブレイズ・・・・・・。」
「・・・・・・。」
ザフィーラの横に突如現れた2機。
長い髪の戦闘機人が両手に持った剣で叩き落されたザフィーラが目の前に叩きつけられる。
そして、燃えるように赤い髪をした戦闘機人は無言のまま銃口を私達のほうに向けると
トリガーを引いた・・・・・・。
衝撃で吹き飛ばされるのと同時に強度が限界に至った風の護盾が自壊する。
破壊されていく機動六課施設。
なにかに引火したのか立て続けに爆発が巻き起こる。
そんな状況の中で意識を失う直前に、どうしてこんなことを思ったのか。
一番最後の戦闘機人がはんた君とそっくりだなんて・・・・・・。
========
姿を消した敵の使い魔に襲われて、一方的な戦いが繰り広げられた。
そしてヴィヴィオが攫われてしまった。
なのはさんに頼まれたのに・・・・・・。
気がついたときには、私は壁によりかかっていた。
まだ朦朧とする意識の中、シャーリーは状況を整理していく。
周りに倒れているのはみんな・・・・・・。
アルトさんやグリフィスくんを初めとしたまだ動ける人が必死に救助活動をしているけど・・・・・・。
私達はもうおしまいかもしれない・・・・・・。
「これより5分後に上空の大型ガジェットと航空戦力による施設への殲滅作戦を行います。
我々の目的は施設破壊です。人間の逃走は妨害しません。」
流れた敵のアナウンス。
ふざけないでよ。どうやって逃げろって言うのよ。
施設が壊されれば施設の倒壊で私達はおしまい。
逃げ出そうにも唯一の逃げ道である1本道をこの人数の怪我人を連れてたったの5分でどうやって逃げ出すというのだ。
つまるところ、私達を生かしておくつもりはないらしい。
こっち側には戦う力は誰も持っていない。
非戦闘要員しかないのだから。
まともに動いている時計も無い。
いつ敵が現れるか。
逃げ場も無いここで誰もが悔しさに歯を食いしばり、間近に迫った死に震えていたときだった。
ガサゴソと音がする。
排気ダクト?
そこから出てきたのは・・・・・・。
「バトー博士!?」
朦朧とする意識が一瞬で吹き飛んで叫んでいた。
誰もがこの口の悪い乱入者を見ている。
状況を分かっているのか?と言わんばかりの目で・・・・・・。
そんな中、空気も読まずにいつもどおりにバトー博士が口を開いた。
「やぁ、シャーリーとその仲間達。揃いもそろって不細工な面ならべてレミングスよろしくピーピー泣き喚いてるんじゃないかって思って
ゴキブリ顔負けな這いずりっぷりでえっちらおっちら排気ダクトを通ってきちゃったよ。」
「・・・・・・バトー博士、状況分かっています・・・・・・よね?」
「ウジが湧いたシャーリーのクサレノウミソがついに恐怖でクソッタレペーストにでもなっちゃったのかい。
分かっているに決まってるじゃないか。」
「じゃあ、なぜ・・・・・・。」
「助けに来たに決まってるよ。そんなことも分からないのかい?でも、大丈夫。どんなにナキムシでクソムシのムシケラみたいな命でも助けてあげることに変わりは無いからね。
なんたってシャーリーはボクの弟子だろ。先生は弟子を助ける。弟子は先生に助けてとピーピー泣き喚く。おまけで先生は弟子の仲間も助ける。
これが正しい師弟関係ってやつだもんね。」
「だけど、バトー博士、退路なんて・・・・・・。」
私の言葉と同時にそこかしこで響き始める爆音。
始まった。
「あるじゃないかそこに・・・・・・。メガネ見えてないんじゃないの?」
指差された方向を縦に亀裂の入った視界越しに見るとそこにあったのはドラムカン。
・・・・・・ドラムカン?
それはあまりにも奇妙なオブジェ。
あまりにも溶け込んでいて気がつかなかったけど、なんで局内にドラムカンが置いてあるの?
「よいしょっと・・・・・・。」
おもむろに近づいて掛け声と共に動かされたドラムカンの下には・・・・・・隠し通路!?
いったいいつの間に。
そもそも設計にはこんな・・・・・・。
「暇つぶしにつくっておいたんだよ。
さて、くたばりたくなかったらネズミが逃げ出すみたいにチューチューじゃなかった、とっととそこに逃げ込みなよ。
ケツに火がついたみたいな勢いでさ。さぁ、急いでよクソムシども。
チンタラやっててスリッパで潰されたゴキブリみたいに瓦礫で潰されたくないんだったらさ。」
信じられない。
こんな状況さえ予見していたと言うのか。
改めて私が師事した人の底知れなさを思い知る。
誰も死にたくは無いのだろう。
怪我人をつれて速やかに隠し通路のタラップを降りていく。
そして避難が終わり、最後に残ったのは私とバトー博士。
「バトー博士も早く!!」
けれど、タラップに手をかけながら声をかけた私にバトー博士は眉間にしわを寄せたかと思うとにかっと笑った。
「残念だけど、それはできないんだよね。」
そういったかと思うと私の手を蹴り飛ばした。
滑り落ちそうになる身体を壁に押し付け必死に踏ん張って支える。
「バトー博士。なにを!!」
「追っ手を防ぐためにも偽装するためにも爆発の被害を抑えるためにも誰かがドラムカンで閉めなきゃいけないからね。
好き勝手絶頂に改造してよかったならもうちょっと丁寧なつくりに出来たんだけどさ。
気がついたのが遅くて本当に突貫工事になっちゃったのが致命的だったよね。天才らしからぬ仕事ってやつさ。
ハハハハハ、ハハハハハハハ、ハハハハハ・・・・・・。」
そう言って私の頭上がドラムカンで塞がれる。
敵はすぐそこまで迫っているのに。
つまり、そんな・・・・・・。
「バトー博士!!バトー博士!!バトー博士!!」
「ハハハハハ、ハハハハハハハ、ハハハハハハハハ・・・・・・。
そろそろボクのボディが寿命ってやつだからね。根性見せても1週間持てば奇跡じゃないかなって状態だったんだから
最後ぐらいどうやって終わるかぐらい選ばせてよ。」
「バトー博士!!バトー博士!!バトー博士!!」
「ああ、後のことはサースデーに伝えてあるから聞いてね。僕の研究室だけは要塞も真っ青な耐久度にチューンナップしてあってきっと無事だからさ。
さてと、最後に弟子を守ってくたばる。
一人寂しく研究室でくたばるよりもこっちのほうが安物の三文小説みたいで実に安っぽくて使い古されててお涙ちょうだいでしらけるけどカッコイイ終わり方だよね。」
ドラムカン越しに響く爆音が次第に近づいてくる。
もう、私の声は言葉にならなくなっていた。
「さて、身の程知らずの木偶人形共。罠にはまったと気がつかないスカタン振りをせいぜい後悔するといいよ。
それと、誰に喧嘩を売ってしまったのかをね。」
それが私の聞いたバトー博士の最後の言葉・・・・・・。
なにかのスイッチを押すような音が聞こえた気がした。
突如巻き起こった凄まじい爆音に聞こえたはずがないのだけど・・・・・・。
はんた君がばら撒くように配っていた戦車のフィギュア。
それが全部プラスチック爆弾だったって知ったのは救助された後・・・・・・。
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打ち捨てられた人形のような人ははんたさん・・・・・・。
その傍らにお腹から赤いものを見せながら転がっているのはポチさん・・・・・・。
あっちで倒れているのはザフィーラさん・・・・・・。
一緒に倒れているのはシャマル先生・・・・・・。
傷ついて倒れたエリオ君とフリード。
攫われてしまったヴィヴィオ。
そして、この目の前に広がるこの瓦礫の山は・・・・・・機動六課?
「なんで・・・・・・こんな・・・・・・・。」
辛すぎる現実に涙が零れ落ちる。
嗚咽が止まらない。
スライドショーのように思い出される記憶。
村から追い出された私。
親のよう接してくれたフェイトさん。
機動六課に来て出合ったフォワードのみんな。
厳しいけど優しくて頼りになる隊長さん達。
いつもみんなをサポートしてくれるロングアーチのみんな。
そんなみんなの家・・・・・・機動六課。
私の頭の中の何かが焼ききれるような感覚。
周囲を我が物顔で飛び回っているガジェット・・・・・・。
邪魔だ。私達の家を壊した。許せない。壊そう。全部消えてしまえ。私達の家を壊さないで。
「龍騎・・・・・・召還・・・・・・。」
足元に描かれるのは特大の召還魔方陣。
私の呼びかけに応えて・・・・・・。
私は絶叫する。
「ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーール!!!!!!!!!!!」
炎に包まれ廃墟となった機動六課に私の声が木霊する。
そして召還魔方陣から吹き上がる火柱。
同時に召還魔法陣から這い上がるように姿を現すのはアルザスの守護龍・ヴォルテール。
『大地の守護者』と畏敬され、『黒き火龍』と恐れられた古代希少種のドラゴン。
山のような巨体が地上に出ると、ヴォルテールの目が意思の光を放つ。
2対4枚の翼を広げてその活火山のような漆黒の身を躍動させる。
雄たけびに共鳴するかのように吹き上がる炎。
黒き火龍の名をそのままに体現する。
アルザスの村で忌み嫌われた私の力。
でも、今は、今だけは、力を貸して。
「壊さないで。私達の居場所を・・・・・・・壊さないでーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
私の意を読み取ったかのようにヴォルテールが放った砲撃が、
上空を飛び回っていたガジェット達を1機残らず吹き飛ばしていった。
容赦なんて言葉なんて知らないかのような勢いのままに・・・・・・。
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「ミッドチルダ地上の管理局の局員諸君。気にいってくれたかい。ささやかながらこれは私からのプレゼントだ。」
大写しになったディスプレイに映し出されるのは時限犯罪者ジェイル・スカリエッティ。
「治安維持だのロストロギア規制だのといった名目の元に圧迫され、正しい技術の促進を促進したにもかかわらず罪に問われた稀代の技術者達。
今日のプレゼントはその恨みの一撃とでも思ってくれたまえ。」
芝居じみた身振りを交えて悦に入ったような口調でスカリエッティは言葉を続ける。
「しかし、私も、人間を、命を愛するものだ。無駄な血を流さぬよう努力はしたよ。
可能な限り無血に人道的に。忌むべき敵を一方的に制圧することのできる技術。それは十分に証明できたと思う。」
悔しいがその言葉は正しい。
なすすべも無く一方的にやられてしまったのだから。
思い上がっていた自分の愚かさ、管理局の脆さに臍をかむ。
「今日はここまでにしておくとしよう。この素晴らしき力と技術が必要ならばいつでも私宛に依頼をくれたまえ。
格別の条件でお譲りするよ。」
狂ったような笑い声が響きわたる。
これだけの力が証明されてしまった。
次元世界の覇権さえ手に入れることさえ可能かもしれない力。
欲しがる人間は山のようにいるだろう。
こんな力が氾濫すれば管理局のシステムは・・・・・・。
誰1人として言葉を発しようとしない。
そんな中、傍らにいたカリムさんが呟いた。
「予言は・・・・・・覆らなかった。」
「・・・・・・まだや。」
カリムさんの悔しさが滲み出した声を打ち消すように私が口を開く。
予言もまだ終わってない。
だから、まだ間に合う。
視界に移るのは端末越しに映し出される瓦礫の山となり、燃え上がる機動六課施設。
「機動六課は、私達は・・・・・・まだ終わってない。」
そうや。まだや。
なのはちゃんを筆頭に、機動六課の人間は誰1人として諦めがいい人間なんか存在しないんだ!!
最後の最後まで這ってでもあがいてやる。
最終更新:2008年08月31日 13:13