レアスキルとSランク揃いの集団を裏技的に組み上げたキメラじみた部隊。
ゆえに機動六課は疎まれている。
もしもなにか問題を起こせば地上本部のレジアス中将が嬉々として潰しにかかるだろう。
一部の隙も見せられない。
ゆえに内部監査への対策は練りに練ってまさに完璧というレベル。
受け答えも意表をついたものまでありとあらゆる想定をし尽くした。
これでだめならなにをやっても無理。
そんな状態だったはずなのに・・・・・・。
突然舞い込んだみんなの休暇。たまにはみんなで温泉旅行。
魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めようか。
第15.6話 たまにはちょっと一休み―温泉旅行へ行こう―
「監査にひっかかったーーーー!?」
絶叫のようなヴィータの悲鳴が部隊長室に響き渡る。
集まってもらったみんなも呆然とした表情。
「で、で、でもどうして?あれだけ万全に対策練ったのに・・・・・・。」
「せやな。フェイトちゃん・・・・・・。」
「ルールはきっちり守るように身体で覚えさせたのに。」
「せやな。なのはちゃん・・・・・・。」
「クルマ叩き壊したり施設叩き壊したり人叩き壊したり訴えられるような問題は起こしてないな。」
「せやな。はんた・・・・・・・。」
「人体実験も最近はやってないし・・・・・・。」
シャマルの言葉に波が引くような勢いでみんなが一斉に距離を取る。
もちろん私もリインも・・・・・・。
いつかやりかねないと思っとったが、まさか本当に・・・・・・。
「あ、あはは。やだな。もう、冗談よ。空気が重かったから冗談を言ってみただけよ。」
「あー、本当にびっくりしたわー。シャレになっとらんよ。」
「まったくだぜ。いつかやりかねないと思ってたからな。」
「はやてちゃんとヴィータ、後で私が作ったイチゴショート御馳走してあげるわね。」
「「謹んで遠慮します。」」
「遠慮しなくていいわよ。みなさんもいかが?」
シャマルの黒い笑みに全員が必死に首を振る。
もげるんじゃないかってくらい必死に・・・・・・。
「それならご馳走になるとしよう。」
「ワン。」
命知らずがいたよ。
1人と1匹も・・・・・・。
でもバレンタインのチョコ普通に食べ取ったし、平気なんかなぁ。
部屋の雰囲気が和やかなものに変わりつつあった。
「それで、なんで監査とかいうのにひっかかったんだ?」
「「「「「「「「「あっ・・・・・・。」」」」」」」」」
はんたの言葉に全員が思い出したかのような相槌をうったのはどうかと思う。
気を取り直して私は口を開いた。
「監査にひっかかった理由やな。なぁ、なのはちゃん。」
「なに?はやてちゃん。」
「昨日何時から何時まで働いとった?」
「んー、早朝にフォワードの朝練やって夜にフォワードの訓練見てデータまとめて資料整理して報告書書いてたから・・・・・・。」
「フェイトちゃんは?」
「私も同じくらい・・・・・・かな。」
「ヴィータは?」
「私もそんなもんだな。」
「シグナム。」
「私もだ。」
「はんた。」
「フルタイム。」
「フォワード4人。」
「「「「同じくです。」」」」
「ええと、その、つまり・・・・・・。」
どこかなのはちゃんが申し訳なさそうに口ごもりながら申し出てくる。
ティアナも薄々感付いたのだろう。
もっとも他のみんなは首を傾げるばかりだが。
思わずため息が漏れる。
「そうや。平たく言えば『前線メンバーのお前ら働きすぎ。過労死してマスコミに騒がれると面倒だからちゃんと休めやゴルァ』ってところや。」
後ろめたそうに皆が一斉に目を逸らす。
まったく冗談みたいな話や。
サボってて監査にひっかかったんならともかく働きすぎで監査にひっかかるなんて・・・・・・。
まぁいい。今回呼び出したのは次の用件が本命や。
「それでや。皆揃って休み取ることになったんやけど、せっかく皆一緒なんやから温泉旅行なんてどうや?って思って呼び出したんよ。」
反対の声は上がらなかった。
========
「くぅーーーー、生き返るわーーーー。」
「はやてちゃん、もう少し言葉選ぼうよ。」
「ええやないか。せっかくの貸しきりなんやから。」
「シーズン外れでねらい目だったよね。でもあの垂れ幕はどうにかならなかったの?」
海鳴温泉といえば読者には分かってもらえるだろうか。
無印原作5話のあの温泉のことだ。
平日のど真ん中、シーズン外れのこの時期に1泊2日の小旅行。
働きすぎということで与えられた休暇を消化しながらみんなのリフレッシュとレクリエーションにもなるこの企画。
さすがはやてちゃんだと思う。
ただ、はやてちゃん・・・・・・。
「時空管理局様御一行って垂れ幕はさすがに・・・・・・。」
「手配したんはシャマルやて。シャマル?」
「ええと、その、ついうっかりいつもの癖で・・・・・・。」
あははと苦笑いしているシャマルさん。
バスで到着した一行を出迎えた温泉宿の入り口にでかでかと『時空管理局様御一行』なんて垂れ幕があって
全員が引き攣った顔をしたのは見間違えじゃなかったらしい。
まぁ、不思議な名前の一行が度々訪れているみたいだから向こうも詮索しなかったのだろう。
宿帳をみたら明後日からナンバーズ様御一行という人達が止まるみたい。
ナンバーズって宝くじの会社の人かなとか思いながら、温泉に浸かる。
そういえば以前にみんなでこうやってゆっくりしたことっていつだったかな。
記憶に全然無いことに今更ながら気がつき、日々の疲れを癒す。
「そういえば母さんとレティさん、どうしてここに?」
長い髪をタオルで束ねたリンディさんとレティさんにフェイトちゃんが尋ねる。
あれ?そういえばなんでいるんですか?
物凄く自然にいたから気がつかなかったけど。
「あら、フェイト。私達がいるとまずい?」
「ええと、そうじゃなくって・・・・・・。」
「なんてね。冗談よ。レティがグリフィス君から聞いていたからちょうどいいって便乗させてもらったの。
クロノもミッドにいたら引きずってこれたんだけどね。」
「まったく、グリフィスに事の顛末を聞いたときは呆れてものが言えなかったわ。
働きすぎで監査にひっかかるなんて冗談もいいところね。」
「ええと、その、すみません。」
「ほらほら、今日は休暇なんだから仕事の話はなしよ。たまにはこうやってのんびりしましょう。ね?」
リンディさんの言葉に皆が思い思いにくつろぎ始める。
スバルなんかたれぱんだみたいに今にもたれてしまいそうなほどにくつろぎモードに入っている。
その横にいるティアナも同様に。
お風呂から上がったら宴会で、その後は・・・・・・。
そのとき、カラカラっと露天風呂の仕切りが空けられる音が響く。
あれ?貸切じゃなかった?
湯煙の向こうから現れた金髪の見事な肢体の持ち主は・・・・・・・ってええ!?
「あら?もしかしてはやてさん達?」
「カリムさん!?なんで!?」
「ああ、私が報告がてら手を回しておいた。」
レティさんが言うには騎士カリムも働きすぎらしい。
シスターシャッハが常々休むように行っていたのだが聞き入れないので今回の強攻策になったらしいが・・・・・・。
ただ、シスターシャッハ。
寝起きでヴィンデルシャフトを叩きこんで昏倒させて連れて来るってどれだけ・・・・・・。
目が覚めたカリムさんはもう開き直って休暇をとるしかなかったらしい。
あははと笑い声が露天風呂に響き始める。
そんなとき、はやてちゃんのアレが始まった。
「しかし、みなさん。たいそうなものをお持ちで・・・・・・。」
はやてちゃん、本当にその癖はどうにかならないのかな。
私達の身体の一部を凝視しながら手をわきわきさせて近づいてくるはやてちゃんに皆が距離を取り始める。
知らないはずのティアナとスバルも何かを感じたのだろう。
もっとも大まかな推測はついているのだろう。
「あれ?そういえばキャロは?」
逃げた矢先、ふと気がついたスバルの声に皆が辺りを見回す。
あれ?そういえばいないね。
露天風呂の前までは皆一緒だったから迷子ってことはないはずなんだけど・・・・・・。
「エリオくーん。一緒にお風呂はいろー。」
竹で作られた衝立の向こうにある男湯のほうから声が聞こえてきたのは気のせいですか。
========
「キャ、キャロ。こっち男湯、男湯!!」
「でも、11歳以下なら大丈夫ってほら・・・・・・。」
慌てたエリオに応える声。
思わずティアナは頭を抱えた。
まぁ、薄々は感じてはいたけど、羞恥心はないのだろうか。
辺境育ちとか差し引いてもちょっと問題があるように思える。
冗談抜きに管理局の教育プログラムに組み込むよう上申しようかしら。
「だったらこっちで入っていくといい。洗うからそこに並べ。」
「あ、はい。」
「わかりまし・・・・・・ってはんたさんの・・・・・・すごく大きいです。」
エリオ!!主語を消すな主語を!!
いったいなにがすごく大きいのか。
隊長たちもさっきまでのざわめきがパタリと止んで、耳をダンボにしている。
「そのうちエリオもこうなるさ。」
「でも、僕のは指1本ぐらいで・・・・・・。」
「エリオ君。1本半はあると思うよ。」
「でもはんたさんみたいに拳1つはないよ。それにほら、ぼこぼこで血管が浮き出てるし。」
はい?いまなんておっしゃりやがりましたか?
指1本とか拳1個の大きさのもの・・・・・・。
ぼこぼこで血管が浮き出ている・・・・・・。
リンディ提督がレティ提督の肩をきゃーきゃーいいながらバシバシ叩いている。
カリムさんはシャッハさんにいろいろ耳打ちしているが、刻々と顔の赤さが加速している。
まじまじと自分の拳を見つめている隊長達。
いやいや、そんなことがあるはずはない。
思い浮かべた身体部位を頭をふって振り払う。
そんな私達に追い討ちをかけるように会話が進む。
「あの触ってみてもいいですか?」
「かまわんぞ。」
「うわぁ。すごく硬いです。まるで鋼みたいだ。」
「わー、本当だ。すごい・・・・・・。」
「僕ももう少し硬くしたいんですけど、まだまだ柔らかくて・・・・・・。」
「成長すれば大丈夫。」
「わふ。」
硬いってなんですか!?
成長すればってちょっと・・・・・・。
キャロもどこ触ってるのよ!!
いや、きっと聞き間違えたんだ。
きっと身体を洗うのに軽石なんか持ち出して洗ってるから硬いとかいってるんだ。
そうだ。エリオもキャロもスポンジだった。
きっとはんたのはビッグサイズの軽石なんだ。
ぼこぼこなのは軽石なんだ。
こすりすぎて血管が浮き出ちゃったんだ。
うん、そうに決まっている。
「やっぱり大きくて硬いほうがいいんでしょうか。」
「どれだけ使えるかが重要だな。大きさや硬さは二の次でいいと思う。」
「わー、ポチさんのもとっても硬くて、フリードよりすごいかも。」
キャロ、アナタなにをしているんですか。
ってフリードよりっていったいなにが!?
ぶんぶんと首がもげそうな勢いで必死に頭を振る。
「あの、その、ぶらさがってみても・・・・・・。」
「かまわないが?」
「あの、私もお願いできますか?」
「いいぞ。2人いっぺんで。」
「「わー。すごいや。」」
どこにぶらさがってるんですか!?!?!?
子供とはいえ体重40kg前後はあるのに。
というか持ち上がるんですか!?
折れないんですか!?
「いつか僕もそうなりたいです。」
「エリオ君ならきっと大丈夫だよ。」
「わふ。」
悶々とした想像が頭に残ったまま、会話がぱたりと止んだ。
あれ?そういえば妙に皆静か・・・・・・って。
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーー。隊長たちしっかりしてー!!!!!!!!!!。」
顔を真っ赤にして気絶しているなのはさん達の姿思わず悲鳴を上げた。
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「あー。一生の不覚やったわ。せっかくのチャンスが・・・・・・。」
「なのはちゃん、大丈夫?」
「ええ、だいぶ収まってきました。フェイトちゃんは?」
「私はもう平気。でも、母さん達、タフですね。」
「タフじゃなければ生きていけないわよ。」
「スバルは?」
「うー、だめー。」
湯上りの女の子の群れ。
そう書けば色っぽいはずなのに、その半分が顔を真っ赤にして横になっているあたり色気がない。
中でも一番熱いお湯のところにいたスバルが一番重症だった。
ゴシップ好きが女の子のサガとはいえ、こんなことに自分がなるなんて・・・・・・。
まったく恥ずかしいところをみせてしまったものだ。
でも、本当にあんな会話・・・・・・。
思い出したら顔が再び熱くなってくる。
指一本とか拳1個ってきっとたぶん・・・・・・アレだよね。
小さい頃に見たお父さんとかお兄ちゃんのものを思い出してさらに顔が熱くなってくる。
「ただいま戻りました。」
「同じく戻りました。」
「いったいどうしたんだ?」
「わん。」
そんなとき、戻ってきたはんた君達3人と1匹。
視線は自然と下半身に向いてしまう。
「どうしたじゃないだろ。てめぇ、いったいエリオ達になに触らせてやがるんだ!!」
ヴィータちゃんとはんた君、本当に相性悪いのかな。
そんなときだった。
真っ先に突っかかっていったヴィータちゃんの背後からシグナムさんが口を開いた。
「しかし、私も是非触らせてもらいたいものだな。」
レティさんとリンディさんが口に運んでいたビールを勢いよく噴出す。
あ、シャマルさんが転んだ。
唖然としたような表情のティアナとフェイトちゃんとはやてちゃん。
あ、あのシグナムさん、今なんて・・・・・・。
「あ、シグナム副隊長もですか。やっぱり興味ありますよね。」
「ああ、鋼のような硬さとは実に興味深い。」
「ちょちょちょちょちょシグナム。おま・・・・・・なにいってやがるんだ!!」
「だから、温泉の会話の続きだろ?ヴィータ。」
「違う。そうじゃなくてどこ触ろうとしてやがるんだよ。このムッツリ!!」
「・・・・・・?二の腕を触るのがムッツリになるのか?」
「「「「「「「「二の腕?」」」」」」」」
はんた君達とシグナムさんを除いた全員が一斉に疑問の声を上げた。
「ええ、そうですよ?力瘤つくっても僕のはまだこんなに小さくて・・・・・・。」
「でも指1本半は絶対にありますよ。」
「拳1つって・・・・・・」
おもむろに浴衣の袖を捲り上げて力瘤を作ってみせるはんた君。
あ、本当だ。たしかに拳1つある。
「硬いとか柔らかいとか!!」
「僕のはまだ少しぷよぷよなんですよ。でもはんたさんのは凄いですよ。」
「ほう。これは凄いな。硬くてしなやかで、まるで鋼のワイヤーが詰まっているようだな。」
「・・・・・・ぶらさがるとか。」
「こうやってぶら下がらせてもらったんです。こういうことしてもらった記憶がないので・・・・・・。」
「私もちょっと憧れがあったんです。」
そう言ってはんた君の二の腕にエリオ達がぶら下がるとなんでもないかのように持ち上げる。
ああ、なるほど。
エリオ達って肩車とかそういうこと、してもらったことないんだ。
それなら納得・・・・・・って。
「それで、二の腕じゃないならなんだと思ったんだ?ヴィータ。」
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・。」
「ああ、ヴィータ。ちょっと落ち着いてー。」
自身のバリアジャケットのように真赤な顔をして奇声を上げて暴れはじめるヴィータちゃん。
いや、気持ちは分かるけどさ。
シャマル先生が必死で止めているけど、またシグナムさんが当身で黙らせるのだろうか。
それにしても・・・・・・。
「バトー博士がいなくてよかった。」
「ハハハハハハハ、まったく四六時中盛ることしか考えてないムッツリスケベのエロガキがこんなにいたなんて天才のボクも想定外だったよ。
機動六課あらためムッツリスケベ小隊にしたらどうだい。ハハハハハハハハハハハ・・・・・・。」
慌てて辺りを見回すけど当然バトー博士はいない。
ああ、幻聴が聞こえる辺りもうだめだ。
このカオスな場をどうすればいいんだろう。
狂乱しているヴィータ達とは正反対にしげしげと興味深そうにはんた君の腕に触れているレティさんとリンディさんが
あまりにもミスマッチで・・・・・・。
さっさと寝てしまおう。
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「それにしても紛らわしい会話だったわね。」
「あの、みなさん、いったいなんだと思ってたんですか?」
「それはその・・・・・・。」
「まぁ、あれだ。」
「その、ねぇ。うん、あれよ。あれ。あはは・・・・・・。」
純真なキャロの言葉に私やヴィータ副隊長、シグナムさんが歯切れ悪くどうやってごまかしたものかと口ごもっている。
リンディ提督たちはまだ宴会場でお酒を飲んでいるみたいだからここにはいないし。
なのはさん達がフェイト隊長に視線でなんとかしろと訴えているのがはっきりわかる。
私もすがるような目を向けているのだろう。
昏倒しているスバルがうらやましい。
みんなの前に押し出されるように出てきたフェイト隊長はしばらく考え込んだかと思うと口ごもりながら言葉を紡ぎ始める。
「ええと、キャロ。あの、ええと・・・・・・男の子と女の子の身体の違いってわかるかな?」
「はい。男の子にはオチ・・・・・・むぐっ。」
「言わなくていいから。」
フェイト隊長の言葉に口を塞がれたままのキャロがこくこくと頷く。
「それで、みんなはそれの話だって勘違いしちゃったんだ。間違いは誰にでもあるでしょ?」
「はい。」
「うん。いいお返事。それじゃこの話はここでおしまい。」
「あの、フェイトさん・・・・・・。」
「なに?キャロ。」
「それじゃ、ええと大きさとか硬さって重要なんですか?」
ああ、キャロもきわどい質問を・・・・・・。
助けを求めるようなフェイト隊長の視線。
なのはさんやはやて部隊長は視線を合わせないようにしている。
ヴィータ副隊長達も同様に・・・・・・。
そして私も・・・・・・。
「ティアナはどう思う?」
「教えてください。ティアナさん。」
そこで私に振るんですかー!?
ああ、ほんとうにどうしよう。
ええと、うーん、あー、そうだ!!
「それよりエリオ達のはどうだったの?指1本や拳1つなんかじゃないんでしょ?」
ヲイヲイと言わんばかりの視線が突き刺さる。
でも、しかたないじゃないですか。
他にどうやって切り返せって言うんですか?
「はい。指1本や拳1つどころじゃなかったです。」
「そうよね・・・・・・はい?」
なんかおかしいところがあった。
指1本。これは大丈夫。
拳1つ。これも大丈夫。
どころじゃなかった。これも大丈・・・・・・夫じゃない!!
本当に!?
そんな視線を感じたのか戸惑いながらキャロは言葉を続けている。
「エリオ君のはえーと、うん。クロスミラージュって感じでした。」
ちょ、ちょっと待ってキャロ。
クロスミラージュって・・・・・・まじですか!?
キャロの言葉は止まらない。
「ポチさんのはグラーフアイゼンって感じで、はんたさんのは・・・・・・うーん?」
え?ちょっとなんでそこで悩むのよ。
いったいどんな大きさなのよ。
ちょうどいいものがあったのか、ぽんと手を打つキャロ。
そのまま拳を握り締めると天高く突き上げた。
「ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールってかんじでした。」
「・・・・・・ヴォルテール?」
「違います。ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールです。」
拳を突き上げて叫んでいるキャロ。
ええと、龍召還で呼べるフリードともう1匹のほうがそんな名前だったか。
どれだけ大きいのよ?
「分かりますか?ティアナさん。ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールなんです。」
「ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールなのね。」
「そうです。ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールなんです。」
突き上げる拳に何の意味があるのか。
高々と突き上げる拳が重要らしい。
あと、ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールのアクセントも・・・・・・。
まぁ、なにはともあれ、この話はここで終わったからよしとしよう。
その後、休暇が終わっていつもの機動六課に戻ったのだけど、
数日間はクロスミラージュやグラーフアイゼンを見るたびに顔を赤くする隊長達の姿と、
ヴォルテールを見てみたいと訴えるヴィータ副隊長の姿が見られた。
追伸
エリオのをヴァイス陸曹とグリフィスさんが興味本位で覗き込んだところ心を圧し折られたらしい。
最終更新:2008年08月31日 15:48