リリカルなのはStrikers×HELLSING×TRIGUN 「ヴィヴィオと十字架な先生達」
どうもこんにちは、あたしたかまちヴィヴィオっていいます。
せいおうきょうかいサンクトヒルデまほうがくえんにかよう、ごくごくふつうのしょうがくせいです。
きょうはあたしのかようがっこうのことをしょうかいするね♪
<例えば朝のホームルーム>
聖王教会系列、サンクトヒルデ魔法学園。
様々な少年少女が日々青春と苦悩を謳歌する神に祝された聖なる学び舎である。
そして、その中のとある一年生の教室では朝から生徒同士がケンカをしていた。
なにぶん一年生の子供のケンカである、大したことは無いが当の本人達からすれば実に真剣。
ポカポカと飛び交う小さな拳に、周囲の子供らは心配そうな視線を投げかけていた。
特に少女、高町ヴィヴィオは友達の様子に目を涙ぐませている。
そんな時、朝のホームルームの為にやってきた先生に少女は縋りついた。
「おやおやぁ、どうしたのですか高町さん」
「アンデルセンせんせい~、ネピスとマークがケンカしてるの、とめてください」
「それは大変ですねぇ、よしよし、では先生が止めてあげますから涙をお拭きなさい」
一年B組担任、アレクサンド・アンデルセンはヴィヴィオに満面の笑みを浮かべると、少女の頭を一度優しく撫でてケンカしている子供達に近づいた。
「コラー、二人ともやめなさ~い。いったいどうしたというのです」
「マークの奴が先に殴ったんだ」
「ちがわいッネピスが僕の本を……」
「何だとコイツー!」
アンデルセンがケンカの仲裁にきたにも関わらずまたケンカを始めようとする。
その様子にアンデルセンはやれやれといった様子でもう一度声を張り上げた。
「やめなーい! 暴力を友達にふるうなんていけません! そんな事では二人とも天国には行けませんよぉ」
「え~」
「神父さまゴメンなさい」
アンデルセンのこの言葉に態度を改める子供達、そして彼はもう一つ大事な事を付け加えた。
「いいですか? 暴力を振るって良いのは、化物共と異教徒共だけです」
<例えば 算数>
「人生は絶え間なく連続した問題集と同じだ。揃って複雑、選択肢は極少、加えて時間制限がある。
一番最低なのは夢のような解決を待って何一つ選ばない事だ。最良の選択を瞬時に選べ、私達は神とは違うのだ、万能でないだけ鬼になる必要がある」
男は自分の考える信条を、いや、むしろ世界の真実とでも言うべき真理を述べた。
その言葉に眼前の少女は息を飲む、彼の言葉の全てを理解している訳ではないが、その意味はおおよそ察した。
彼は自分に早く選べと言っているのだと。
「え、えっと……」
「さあ、答えろ高町」
「こ、こたえは6です」
「正解だ」
ヴィヴィオの答えに男、サンクトヒルデ魔法学園教師であるチャペル・ザ・エバーグリーンはにやりと笑った。
黒板に書かれた“リンゴが4こありました、そこにもう2つリンゴをくわえたらいくつでしょう?”という問いに少女が正解したからである。
「では次の問題だ、次は引き算を混ぜた問題だぞ。さてリンゴが6こありました、これにリンゴが……」
<例えば 体育>
「何をやっている!」
各所に髑髏や十字架の形をしたパーツを組み込まれた不気味な車椅子に乗る老人、マスターチャペルは吼えた。
目の前で繰り広げられる戦いの生温さに耐えかねての事だ。
彼からすればたとえそれがどんな場所だろうとも、戦いの場での軽率で愚昧な行為は許し難い、それが己の生徒ならばなおの事である。
「まず何よりも先に急所を抉れ! 死体を盾に動揺を誘え! 最大効率で死を与え続けろ! 全て叩き込んだ筈だ!!」
「チャペルせんせい、ドッジボールでそんなことできません」
年端も行かない子供が体育の授業でやっているドッジボールの時間だというのに、このオッサン普通に殺しの教育のノリになっていた。
これには流石にヴィヴィオも突っ込まずにはいられない。
「ああ、つい癖でな」
以下略。
と、こんな感じでザンクトヒルデ魔法学園ではミカエルの眼やイスカリオテの個性的な先生が教鞭を取っており、子供達に理想的な教育を行っているのである。
ヴィヴィオちゃんも優しくて面白い先生達が大好きだった。
「アンデルセンせんせい、さようなら~♪」
「ええ、さようなら。道に気をつけてくださいね」
今日も担任のアンデルセン先生に元気に挨拶し、彼の満面の笑みに見送られて学校を後にする。
友達と明日の授業の事を話して、遊ぶ約束をして、少女は息を弾ませて家路に着く。
家では母が甘くて美味しいキャラメルミルクを作って待っている、それが待ち遠しくて知らずの内に歩く足は速さを増していった。
そんな時だった、ヴィヴィオの足元に凄まじい閃光が炸裂したのは。
「きゃあっ!!」
そして突如として少女の身体は地面に引き倒された。
強襲の主は特殊なボディスーツに身を包んだ美少女の集団、戦闘機人ナンバーズである。
ヴィヴィオを取り押さえた少女、ナンバーズ12番ディードは実に機械的に対応した。
「聖王の器、確保しました」
「やぁっ! はなしてぇ~!!」
無理矢理取り押さえられて暴れるヴィヴィオだが、そんな事など構わずディードは少女の手足を拘束する。
そしてディードは隣にいた姉、六番セインに捉えた少女を渡す。
このまま捕獲した聖王の器ことヴィヴィオを自分達の基地まで連れ去る作戦である。
そしてセインはヴィヴィオを掴むとそのままISを発動し始めた……
「よし、じゃあこのまま私がISで運ぶ……」
だがしかし、それは叶わなかった。
「がはぁっ!?」
セインの喉に、どこからともなく飛んできた一本の“銃剣”が突き刺さった。
しかもそれは一本に終わらず、次々と雨の如く降り注ぎ、セインの身体を串刺しの磔にする。
「いぎぃぃ……ぁはあぁぁっ!」
あまりの激痛に声にならない声で叫ぶセイン、ナンバーズは周囲をこの奇襲に警戒する。
だが奇襲の主は事も無げに悠然と現れた。
「随分とまぁ可愛らしい声を上げて苦しむのだねぇお嬢ちゃん。だがそんな事ではお前達(戦闘機人)は死ねんよ? 心臓には一本たりとも突き刺してはいないのだからぁ」
現れたのはメガネをかけ、顔に傷が刻まれ、両手に銃剣を持った神父服の男。
囚われの少女は男に助けを求め叫んだ。
「アンデルセンせんせい~、たすけてぇ~!」
聖王教会ザンクトヒルデ魔法学園教師にして、聖王教会第十三課特務機関イスカリオテのゴミ処理屋、アレクサンド・アンデルセン。
曰く“殺し屋”、曰く“銃剣(バヨネット)”、曰く“首切り判事”、曰く“天使の塵(エンゼルダスト)”。
聖王教会が持つ最強最悪の戦力がそこに立っていた。
「その子が狙われているとは噂に聞いていたがまさか本当に来るとはなぁ……」
悠々と、まるで散歩でもするような軽やかさでアンデルセンは銃剣を十字に構えてナンバーズ達に迫る。
だが彼には殺気刀身に満ち、微塵の隙もない、さながら人の形をした“死”そのものだった。
「貴様ら……俺の生徒に手を出してただで死ねると思うなよ?」
声に込められたあまりの殺意にナンバーズの背筋が凍りつく。男の持つ説大なる戦闘力が空気越しに伝わってきた。
「我等は神の代理人、神罰の地上代行者。我等が使命は我が神に逆らう愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅する事――」
そして“彼ら”は叫ぶ、神への祝福を。
「「「「「AMEN!!!」」」」」
瞬間、幾つもの声が周囲から響いた。
そう、彼女らは既に狂える猛者共の胃の腑の中だった。
アンデルセンの背後から彼の部下、二丁銃を持った神父服の女と刀を持ったシスターが現れてナンバーズの正面に。
そしてナンバーズの背後には巨大な十字架銃を持った別の集団が現れて挟み撃ちの形を作り上げる。
十字架銃の集団の先頭にいる男、車椅子の聖王教会教師にして教会最高の暗殺集団、死天使(ミカエル)の眼に名高き暗殺者(アサシン)マスターチャペルが静かに口を開く。
「牢記せよ、自分が何者であるかを。聖王教会であると同時に我々こそ……」
言葉と共に、マスターチャペルの後ろに控えた男達は各々の得物、それぞれが十字架を模した巨大な銃火器を展開する。
そして響き渡る金属音と漂う硝煙の臭いと共に、マスターチャペルは言葉を続けた。
「……ミカエルの眼である」
その刹那、圧倒的戦力差の戦い……いや狩りは始まった。
全てが終わるのにそう大した時間はかからなかった。
聖王教会が誇る最強最大最高の戦力、イスカリオテとミカエルの眼に仇なせる者などこの世にありはしない。
△
「ヴィヴィオ~!」
「なのはママ~」
ヴィヴィオは迎えに来た母に抱きついて彼女の抱擁を思い切り受けた。
娘の無事に、彼女の母、高町なのはも眼にいくらか涙を溜めている。
なのははヴィヴィオを抱きしめながら、娘を“保護”してくれた学校の先生に視線を移す。
「ありがとうございました、先生……ヴィヴィオを助けていただいて」
「いえいえ~、当然の事をしたまでですよぉ、高町さんのお母さん」
「我等は教師、生徒の安全が第一故に」
アンデルセンは満面の笑みで、マスターチャペルはいつもの仏頂面でそう答えた。
そして彼らはなのはと二・三言葉を交わすと、そのままその場を去って行った。
明日も朝から生徒達の面倒を見ねばならぬ彼らには、色々とやる事が多いのだ。
最後に、去り行く彼らの背中にヴィヴィオが手を振りながら言葉を投げかける。
「さようなら~せんせい~、またあした~♪」
「ええ、また明日」
「うむ、気をつけて帰るが良い」
アンデルセンとマスターチャペルはヴィヴィオに振り返って、元気に別れの言葉を言う生徒に手を振った。
△
というわけで、きょうはがっこうのせんせいがわるものからヴィヴィオをたすけてくれました。
アンデルセンせんせいもチャペルせんせいもすごくカッコよかったです。
ヴィヴィオもおっきくなったらせんせいみたいなカッコよくてやさしいきょうかいのせんせいになりたいな♪
終幕。
最終更新:2008年11月12日 17:26