「100万回生きたスカリエッティ」
100万年もしなない男がいました
100万回も死んで、100万回も生きかえったのです
りっぱな悪の科学者でした
彼はいつも何かを求めていました
ある世界では巨人たちを従えて、他の巨人たちと
伝説のバナナを求めて戦いました
ある世界ではみょうにペラペラしたどこか憎めない悪の秘密結社と協力して
世界征服をたくらみました
ある世界ではふしぎなナマモノがいっぱい住む島で
騒動を起こしては鼻血ばかり流していました
ある世界では伝説の傭兵といっしょに戦って
珍しくかっこいい人になりました
どの世界でも彼は有名になり、ともだちや伝説も増えていきましたが
彼は満たされないままでした
100万個めのある世界で、彼はそこに住むことを決め,ひとりの女性を
世話係として雇いました
青紫の髪の美しい女性です
彼は女性にいいました
「私は100万回も死んでいるのだよ!」
といいました
紫の髪の女性…ウーノは「そうですか」といったきりでした
スカリエッティは愉快げにわらいました
なんせ変人ですから
次の日も、次の日も、彼は彼女にいいました
「きみはまだ一回も生き終わっていないのだろう?」
彼女は「ええ」といったきりでした
ある日、彼は段ボールをかぶりながらいいました
「私はスニーキング・ミッションをしたこともあるのだよ」
彼女は「そうですか」といったきりでした
「私は…」といいかけて彼は「そばにいてくれるかい?」
とたずねました
彼女は、「はい」といいました
彼は彼女のそばにずっといました
彼女はかわいい娘を11人も生みました
スカリエッティは、ウーノとたくさんの娘たちが
自分よりも好きになっていきました
やがて娘たちは大きくなって、それぞれどこかに行きました
「娘たちもりっぱになったなあ」と、彼は満足していいました
「はい」と彼女はいいました
彼の足りなかったものは満たされました
ある日、ウーノはスカリエッティのとなりで
しずかにうごかなくなりました
彼はわらいながら、はじめて泣きました
夜になって、朝になって、100万回も泣きました
朝になって、夜になって、ある日のお昼に、彼は泣きやみました
彼はウーノのとなりで、しずかにうごかなくなりました
スカリエッティはもう、けっして生きかえりませんでした

おしまい

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最終更新:2008年12月29日 21:38