「これは……っ! 本気で言っているのかっ?!」
その文書に目を通したレジアス・ゲイズは、思わずそう叫んだ。いや、叫ばずに入られ
なかった。
なぜなら、その文書には……
その日、時空管理局は、地上本部を民間企業に託す事を発表した。その理由は……
ひ・み・つ♪
……であった。
「いや、予算やろ? 予算の関係なんやろ?! なぁっ?!」
「……いや、僕にも立場上言えないことがだな……」
そんな子狸と某提督の会話があったとかなかったとか。
しかし、そんな発表をまともに受ける一般企業は、一社も現れなかった。治安維持など
と言う非常にリスクの大きい分野に一般企業が参入するはずがない、と言うのが世間の常
識だが、それが通用しない業界もたまにある。
芸能界である。
「……つまり、陸士をアイドルとしてデビューさせる、……と言うことですか、レティ提
督?」
「そう言う事になるわね。
正式な辞令は、今週中に出るでしょう。心して置きなさい」
「……単なる噂やと思いたかったんですけどね……
……そう言えば、もう1つ噂を聞いたんですが」
「どんな?」
「……レティ提督がリンディ提督と共に、地上本部に転属願いを出したとか何とか……」
「…………根も葉もない噂ね」
「いえ、こっちを見て言ってください」
「そんな噂に踊らされるなんて、あなたらしくないわよ、はやて」
「何でそんなに嬉しそうに言うんですかぁっ?!」
「……熟女を甘く見ないほうがいいわよ」
「戻ってきてくださぁいっ! レティ提督ぅっ!!」
各プロダクションはこぞって陸士達をアイドルにしてしまい、新しいアイドル陸士とい
う業界が生まれた。
「ドゥーエからの緊急通信? 珍しいね。何かあったのかね?」
「それが……『女優にされそうで困っている』と……」
「……本当に、何があったのかね……?」
ここに、アイドル黄金期が再来する。
「……つまり、ドクターは私たちにアイドルとして活動しろ、と言うのか……
……トーレ、本気だと思うか?」
「本気だろうな。
もっとも、私は早々に辞退させてもらった。純然たる戦闘用の私では、そんな事をやっ
ても似合いはすまい。
……(ボソ)確かに、あの衣装は着てみたい気もするが……」
「……トーレ……?」
「ウーノとクアットロも辞退したそうだ。だから、そちらの活動での実質的なリーダーは
チンク、お前になるそうだ。
……って、どうした、頭を抱えて」
「……いや、何から突っ込めばいいのかと思ってな……
大体、私もアイドルにはむかんだろう。こんな眼帯持ちのアイドルなど、人気が出ると
も思えんが?」
「ドクターも考えがあっての事だろう。
それに、眼帯の事なら気にしなくてもいい。そこまで考えて衣装は作ってある」
「いや待てちょっと待て。
……作ってある……?」
「私の自信作だぞ?」
「トォォレェェッ!!」
そして動き出す新部隊(プロジェクト)。
「……と言うんが、新部隊の概要や」
「大筋はいいんだけど……はやて……
……やっぱり、私たちもアイドルやらないといけないの?」
「いやぁ、お偉いさん方のたっての希望でな。『陸の管轄でやる以上、いくら実験部隊と
言えども、やる事はやってもらわないと困る』なんて言われてもうて、断りきれんかった
んよ。
大丈夫っ! 二人やったらすぐにでもトップアイドルになれるっ! 私が保証するっ!」
「う~ん……戦闘訓練に、歌やダンスのレッスン、営業もやらないといけないだろうし、
新人達の教育も必要だし……スケジュール調整が難しそうかな?
そのあたりは、はやてちゃんに頼んじゃってもいいかな」
「……って、なのはっ?! 何でそんなに乗り気なのっ?!」
集い始める人材。
「……あたしは執務官になるためにここにきたはずなのに……なんでアイドルなんて……」
「え~、いいじゃん。ティアかわいいし」
「うっさいっ!」
湧き上がる問題。
「……関西弁キャラとして、一人称は『うち』の方がよかったやろか……?」
「……主はやて、それは今更です……」
深まる溝。
「いやぁ、あたしらの人気もなかなかのもんっスねぇ」
「さすがに、チンク姉とルーお嬢様のユニットほどじゃないけど、元気なのが集まったか
らね。
……って、どうしたのノーヴェ? おなか痛いの?」
「いや、そうじゃなくてさ……
恥ずかしくねぇのかよ、こんな格好」
「な~に言ってるんっスか。これが若さの特権、ってやつっスよ」
「だよね~。19歳にもなったら、アイドルとしちゃトウが立っちゃうんだから、今のうち
に楽しんどかないと」
「……そう言うモンかよ……」
「……なんか今、6番と11番を叩きのめさなきゃいけない気分になったの」
「奇遇だね、なのは。私も手伝うよ」
「ちょい待ち、お二人さん。その作戦の指揮は私が取る」
忍び寄る魔の手。
「フェイトさんっ! 助けてくださいっ!」
「エリオ? どうしたの、そんなに慌てて」
「そ……それが、部隊長が……」
「何で逃げるんや、エリオっ! これなら、絶対売れるってっ!
あぁ、フェイトちゃん、ちょうどいいところに。一緒に説得したってぇな」
「……今度は何を企んでるの?」
「企むなんて人聞きの悪い。ただ単に、エリオのステージ衣装を考えただけや。ほら、こ
れ」
「……はやて、これ、どう見てもスカートだよね……?」
「わぁ~、私の衣装と色違いなだけなんですね。
かわいいと思うよ、エリオ君。これなら絶対に人気者になれるよっ!」
「キャ、キャロまでっ!」
「……二人とも、ちょっとそこに正座」
そして、最後のステージへ。
「ヴィヴィオ、本当の気持ち、聞かせて」
「私……私は……なのはママのことが……大好き……
なのはママにプロデュースして欲しいのっ!」
「……そっちぃっ?!」
あふれる想いを歌に乗せて、今、大空へと羽ばたく!
……どう始めろと……
最終更新:2009年06月21日 21:15