…スカリエッティの合図の下、まずはクアットロがドゥーエから得たセキュリティ情報を元に地上本部のセキュリティを解除、更にシルバーカーテンを起動させジャミングをかけると、
 次にセインがディープダイバーにて地上本部の地下駐車場へと赴く、そして地下駐車場に辿り着くと爆弾を仕掛けその後爆発、
 その爆発を合図にガジェット及び不死者達が動き始めるのであった。
 
 
                                 リリカルプロファイル
                                 第二十一話 崩壊
 
 
 一方機動六課ロングアーチは不意の襲撃により泡を食った様子で混乱しており、
 その中でオペレーターがガジェット及び不死者による襲撃を確認、だが謎のジャミングにより数を把握しきれていない様子であった。
 それでも初期反応による推測ではあるが、少なく見積もっても100は下らない事を伝えると、はやてはリインと組ませたヴィータとシグナムを早急に現場に向かうように指示、
 そしてスバル達はなのはとフェイトが現れるまでの間、その場で待機する事を命じた。
 その頃クロノ率いるエインフェリアチームもまた襲撃の連絡を受け、広域攻撃型のゼノンとカノン、
 防衛戦型のイージスとミトスを残し、他は現場に向かうように命令を促していた。
 
 一方陳述会会場ではガノッサが一早くこの場を後にしており、なのは達もまた会場を抜け、
 入り口にて待機していたスバル達からデバイスを受け取り起動させると現場へと繰り出す。
 それを確認したスバル達もまたロングアーチの指示の下、早急に現場へと向かうのであった。
 
 現在襲撃を受けている地域は中央区画、北部、西部と至る所に存在しており、
 高速戦型のクレセントとセレスは西部の現場に赴くとセレス達は剣型アームドデバイス・シルヴァンスを起動させ、
 青白い魔力を身に纏うと敵に突進、次々に撃破していった、ミスティックファントムと呼ばれる技である。
 更に次のターゲットに向け撃ち出すが、此方はフェイクであったようで陽炎のように消滅する。
 先日と同様にフェイクも含まれた戦況の中、エインフェリア司令部から中央区画と北部に更なる増援が現れたと伝えられ、
 中央区画への増援の一部は司令部にも向かってきており、其方はゼノンとカノンが応戦するとの事である。
 そこで遠距離戦型のリディアとリリアは増援があった中央区画へ、そして接近戦型のエーレンとアドニスは北部へ向かうように指示すると、それぞれは指示された現場に向かう事になり、
 そして機動六課のヴィータとシグナムもまたロングアーチの指示の下、中央区画をスバル達に任せ北部の増援に対し早急に向かっていくのであった。
 
 
 一方クアットロは増援を確認した後、各地域の戦況をモニターにて観察していた。
 
 「ガジェット及び不死者の損傷率20%まで来ましたぁ、どうしましょう?ドクター」
 「……では、そろそろ第二陣を起動させたまえ」
 
 スカリエッティの指示にクアットロ頷くとトーレ、セッテ、チンクのチームは陳述会に存在する量産機の破壊、
 ノーヴェ、ディエチ、ウィンディのチームは街中で行動している局員の中に存在するタイプゼロの捕獲、
 オットー、ディード、ルーテシア、ベリオンのチームは機動六課の隊舎へと赴き隊舎に存在するであろうレリックを強奪、
 セインは引き続き地上本部へ赴き内部を破壊しつつ、地上本部が回収したレリックの強奪、
 そしてゼストはセインの地上本部の襲撃による混乱を利用し、スカリエッティを嗅ぎ回っているレジアスと
 アインへリアル計画を立てたガノッサの抹殺を指示すると一斉に動き出すのであった。
 
 その頃中央区画にいるスバルとティアナは廃ビルが並ぶハイウェイにて次々と不死者を殲滅させていた。
 その中上空を見上げるとエインフェリアのリディアとリリアが、弓形アームドデバイス・エルヴンボウを用いて黄色い衝撃波を撃ち出し
 瞬く間にガジェットを殲滅させていた、スターダストと呼ばれる技である。
 すると更に40~50はいるであろう三群れの増援が姿を現し二人は増援を確認した後、カートリッジを二発消費し足下に円上の魔法陣を展開、するとデバイスが魔力に覆われ始め――――
 
 『クランブルガスト!』
 
 次の瞬間、大量の光の矢がガジェットと不死者に襲いかかり、一瞬にして三群れは消滅していった。
 その実力に思わず目を疑いたくなるスバル達、何故ならばこれ程の実力者だとは思っても見なかったからだ。

 そしてこの地域の敵を殲滅させたエインフェリアは他の地域へと移動、スバルとティアナも別地域に向かおうとした瞬間―――
 
 「見つけたぜ!ハチマキ!!」
 
 突然の叫び声に驚き顔を向けた瞬間、ノーヴェの右ハイキックがスバルの顔面を直撃、スバルはハイウェイの道路脇へと激突する。
 いきなりの襲撃にティアナは戸惑うもノーヴェを迎撃する為、魔力弾を撃ち出すがウィンディの盾により攻撃を防がれる。
 するとスバルがゆっくりと起きあがり二人を睨みつけた。
 
 「まさか戦闘…機人?」
 「ご名答ッス!私の名はウィンディ、んでこの赤髪がノーヴェッス!」
 
 ご丁寧にウィンディは名乗るとライディングボードをスバルに向けエネルギー弾を撃ち出す。
 スバルはプロテクションでウィンディの攻撃を防ぐが、その攻撃に合わせてノーヴェが腹部目掛けてミドルキックを蹴り出す。
 ノーヴェの一撃によりスバルのバリアは砕け吹き飛ぶが、後方ではティアナが迎撃の為に構えていた。
 
 「ディエチ!足止めを頼む!」
 「…了解」
 
 ノーヴェは叫ぶとエネルギー弾がティアナの足下を撃ち抜く、ティアナは驚き撃ち出された方向を見ると
 廃ビルの屋上でイノーメスカノンを構えたディエチがティアナを狙っていた。
 そしてノーヴェとウィンディがスバルを追いかけ、それを見たティアナは…いやにスバルに執着していると感じるのであった。
 
 
 一方機動六課隊舎はシャマルとザフィーラによって進撃を押さえており、その中でエリオとキャロも参戦し此方が有利になっていた。
 そしてロングアーチは戦況を確認しているとオペレーターが一つの影を発見する、その影はレザードの姿で真っ直ぐ聖王医療院に向かっていた。
 はやてはレザードの目的がヴィヴィオの捕獲ではないのかと考えを述べると、それを聞いていたなのはが現場を離れ早急に医療院へと向かっていく。
 すると今度は地上本部へ大柄の男が向かっているのを確認、男の肩には先日見かけたアギトの姿もあった。
 するとそれを聞いたヴィータがリインと共に男を追い始め、現場はシグナムとエインフェリア達で押さえる事となったのだ。
 一方はやては大柄の男に見覚えがある印象を受けていた、そこでロングアーチをグリフィスに任せ、単独で地上本部へ赴くのであった。
 
 
 一方でトーレ、セッテ、チンクの三人は陳述会会場に存在する量産機も下へ赴くと局員が多数で囲うように護衛をしていた。
 其処でトーレとセッテが彼らの陣形を崩し、その隙にチンクが量産機を破壊する事となった。
 作戦が決まるとまずはトーレが先陣を切る、トーレはライドインパルスを用いて敵陣の中央に飛び込むとインパルスブレードを展開、
 そして裏拳のように左を振り抜くと局員の首を跳ね、右手を振り下ろすと身を割り、更に左回転により次々と局員を切り裂いていく。
 すると局員は反撃に魔力弾を撃ち出すが、いとも簡単にインパルスブレードで切り落とされ、右のけさ斬りにより斜めに切り落とされたのであった。
 次にセッテが左に持っているブーメランブレードを投げると、局員をデバイスごと斬り倒していく。
 更に右のブーメランブレードにて局員を斬り上げ、首を落とし、心臓を貫く、そして戻ってきたブーメランブレードを掴むと交差させ振り下ろし局員は肉塊と化した。
 二人の活躍により陣形に穴が開くと、チンクは右手にナイフを三本握り締め量産機へと向かう。
 だが量産機の周りには未だ局員に守られていたが左手でコートからナイフを取り出し投げると局員の脳天、喉、心臓などの急所を貫き続いて高々と飛び上がる。
 そして右手に握られたナイフを量産機の魔導炉目掛け投げ、深く突き刺さった事を確認するとランブルデトレーターを用いて爆発、量産機を破壊した。
 
 三人は任務を終えた事をスカリエッティに伝えると新たな任務を受け取る。
 その内容はトーレとセッテは地上本部に居るセインと向かっているゼストの援護
 そしてチンクはもう一体のタイプゼロの回収を伝えると三人は了解する。
 新たな任務を得た三人はそれぞれの役割のこなす為に向かおうとしたところ、上空から一つの閃光が姿を現す。 
 その正体はフェイトであった、フェイトはロングアーチから陳述会会場が襲われている事を受け、早急に戻って来たのだ。
 
 「…チンクとセッテは先に行け、此処は…私が抑える!」
 
 トーレの言葉に頷くと二人は分散するように移動、だがフェイトは二人目掛けハーケンモードからのハーケンセイバーを撃ち出すが、
 トーレがインパルスブレードにてハーケンセイバーを弾き飛ばすのであった。
 その動きにフェイトはかなりのスピードを持つ存在だと判断していた。
 
 「貴様の相手はこのトーレが相手する!」
 
 トーレはそう名乗ると前傾姿勢で構え、フェイトもまたバルディシュをトーレに向け構え対峙する。
 先陣を切ったフェイトは大きく振りかぶりトーレに目掛け振り下ろすが、トーレは左のインパルスブレードでフェイトの攻撃を防ぐ、
 すると今度は即座にザンバーモードに切り替えもう一度振り下ろす。
 今度の攻撃にトーレはバックステップにて回避すると即座に接近、右のインパルスブレードを振り抜いた。
 しかしフェイトはブリッツアクションを用いて手の動きを早めトーレの一撃を防ぐ。
 するとトーレは右手の出力を上げインパルスブレードが徐々に肥大化すると、ライドインパルスを用いて一気に振り抜きフェイトを吹き飛ばす。
 フェイトはなす統べなく吹き飛ばされ陳述会会場であるホテルに直撃したのであった。
 
 フェイトが直撃したホテルの一角は土煙に覆われ、その光景を見つめるトーレであるがその瞳には未だ警戒心の色が宿っていた。
 すると土煙の中から突き抜けるように金色の直射砲がトーレに向かって延びていく。
 トーレはとっさに両手のインパルスブレードを肥大化させると羽織るように交差させ、直射砲を弾き飛ばした。
 
 そして直射砲が撃ち抜かれた先には左手をトーレにかざし右手には一回り小さく、
 グリップエンドにカートリッジバレルがついたライオットブレードに変え佇むフェイトの姿があった。
 
 そして吹き飛ばされ開いた入り口に足をかけると、ソニックムーブを用いトーレの背後を捉えると、一気に振り下ろす。
 だがトーレはすぐさま振り向き右のインパルスブレードを受け止める、だがその動きを読んでいたフェイトは、左手をかざしプラズマスマッシャーを撃ち出す。
 トーレは驚く表情を見せつつライドインパルスにて辛くもフェイトの一撃を回避、難を逃れた。
 
 「成る程…やはりアナタの能力はソニックムーブに近い特性を持っているみたいですね」
 「……大した眼力だ」
 
 トーレは自分の能力を見抜いたフェイトに対し素直に賛美すると右手の出力を上げインパルスブレードを肥大、更にエネルギーは飽和状態となり稲光にも似たエネルギーが纏っていた。
 そしてフェイトもまたライオットブレードの出力を上げ電撃を纏わせると、二人は目にも留まらぬ早さで近づき、互いの一撃を振り下ろす。
 その一撃がぶつかると、紫色の光と金色の光が衝撃となって辺りに響くのであった。 

 その頃スバル達はノーヴェ達に苦戦を強いられていた。
 スバルはノーヴェと対峙しており、スバルを援護を行う為ティアナは魔力弾を撃ち出そうとするが、ディエチの砲撃により出鼻をくじかれてしまうのである。
 そこでフェイクシルエットを用いて撹乱させる事でディエチの砲撃を回避しつつ牽制を促すが、
 今度は間にいるウェンディがライディングボードを盾にして防がれてしまうのであった。
 
 一方でスバルは、ノーヴェの蹴りに対しナックルダスターで応戦、互いの一撃がぶつかり合う事で火花を散らしていた。
 そして両者は弾かれると先にスバルが動きだし、ノーヴェの顔面目掛け再びナックルダスターを打ち抜く。
 だがノーヴェは姿勢を低くしスバルの一撃を回避すると、低姿勢のまま右の足払いを払う。
 スバルはノーヴェの足払いに急停止、薄皮一枚で躱すが、ノーヴェは低姿勢のままスバルに背を向けると
 両手を地につけ、足を跳ね上げるとスバルの顎目掛け腕をバネに代わりに跳ね上がるように蹴り上げた。
 ノーヴェのトリッキーな動きに戸惑うも顎に当たる寸前に後方に回避、その動きを逆立ちした形で確認したノーヴェはそのままスバルに背を向けると、
 前宙のような動きで起き上がり腰を据えると足のスピナーが音を立てて回転し始めスバルの下へ迫る。
 そしてノーヴェの右足のハイキックがスバルの顔面に直撃するが、スバルもまた用意していたナックルダスターをノーヴェの顔面に向け直撃させたのである。
 互いの一撃により顔が歪み、後からくる両者の衝撃が二人に襲いかかると、
 スバルは宙を舞い錐揉みしながら頭から地面に激突する最中、両手を地面に付けバク転の形を取って体勢を立て直した。
 そしてノーヴェもスピンしながら吹き飛ばされるが、腰を深く下ろしスピンを止める。
 そして両者は顔を上げると口の端から血が顔を覗かしていた。
 
 「やるじゃねぇか!ハチマキ!!」
 「ハチマキじゃない!私の名前はスバルだ!!」
 
 そう名乗るとスバルは口の端の血を左手で拭い、ノーヴェは口に溜まった血を吐き出す、そして続きを始めると言わんばかりに構えるとノーヴェ達にスカリエッティからの連絡が入る。
 連絡の内容は現在チンクがもう一つのタイプゼロの下へと向かっているらしく、その援護に向かって欲しいとの事であった。
 ノーヴェは不満そうな顔を見せるもののスカリエッティの命には逆らえない為、了解するとスバルを睨みつける。
 
 「ちっ!今度会ったら覚えていろよ!ハチマキ!!」
 
 そう捨て台詞を吐くとウェンディと共にこの場を後にする、そして援護をしていたディエチもまたノーヴェ達の後を追っており、三人が向かった先はギンガが行動している地区であった。
 彼女達が向かった方向が気になるスバルはギンガに連絡を取るが、ノイズが酷く状況が分からないでいた。
 そんな状況に不安を覚えたスバルはティアナと共に後を追おうと手を伸ばした瞬間、甲冑を纏った不死者がスバルとティアナの間に入りティアナだけを隣の廃ビルまで吹き飛ばす。
 突然の不死者の登場にスバルは唖然とするも直ぐに気を取り直し殴りかかるが、甲冑の不死者は剣を振り上げ巨大な氷柱を生み出すとスバルの一撃と共に分け隔てた。
 すると今度はティアナの身を案じ念話を飛ばすスバル。
 
 (ティア!大丈夫!?)
 (私は大丈夫だから、スバルはお姉さんの処へ向かいなさい!!)
 
 ティアナの言葉に戸惑いの色を見せるスバルであったが、現状彼女達を追えるのはスバルしかいないとティアナは窘めると、
 後ろ髪を引かれる表情を表しつつ頷き、振り切るようにノーヴェ達を追うスバルなのであった。 

 一方で甲冑の不死者は廃ビルに飛び移ると、中は薄暗く闇に覆われておりティアナは闇の中に身を投じていると考え奥に進む。
 そして不死者はビルの中央辺りを陣取ると持っていた大剣を両手で握り舞うようにうねり始める。
 そして不死者が構えた瞬間、奥の闇からオレンジの魔力弾が三発襲いかかる、だが不死者は切っ先を回すように動かすと氷の弾丸が生まれ魔力弾を相殺させた。
 
 すると左右から誘導弾であるクロスファイアが襲いかかるが、これもその場で右回転することにより魔力弾を切り払う。
 
 だがその瞬間を狙うように頭上からダガーモードに替えたティアナが勢い良く降りてくるが、
 しかし不死者は動じることなく、ティアナの動きに合わせて剣を振ると陽炎のように消えさった。
 
 「よし、かかった!行け!クロスファイア、スパイラルシュウゥゥゥト!!」
 
 すると不死者の背後でティアナが予め用意していたクロスファイアが、螺旋を描き不死者へと向かっていく。
 しかし不死者は左手でバリア型のディフェンサーを展開させるが、
 回転が加えられたクロスファイアには貫通力が加わっている為バリアを破壊、不死者の肩を貫いた。
 不死者は一度よろめくがまた何事もなかったかのように歩き出し、それを見たティアナは一つ舌打ちをする。
 やはり…頭を撃ち抜くしかない!と考えたティアナは銃口を不死者の頭に向けると不死者は突然構えを解く。
 そして兜から声が響いて来る、その声はティアナがよく知る人物の声であった。
 
 「……強くなったな、ティアナ」
 「その声は!グレイ!!」
 
 ティアナの言葉にグレイは頷く、するとティアナは構えを解きグレイに近付くと声を荒げる。
 
 「今まで何処に!大変だったんたよ!カシェルも!エイミ姐さんも…死んじゃったんだよ!!」
 「……すまない」
 「…でもよかったグレイ、貴男だけでも生きていたなんて」
 「…いや、違うんだティアナ」
 
 グレイの言葉に首を傾げるティアナ、するとグレイは兜に手を当て外し始める。
 そしてその様子を見たティアナは目を見開き愕然とする、兜の下には本来あるハズの頭が存在していなかったのだ。
 するとグレイは兜を付け直し説明を始める、スバルとティアナが六課に編入した頃、自分達はある任務に付いていた。
 すると其処にレザードが現れ自分達は呆気なく捕獲され、グールパウダーの実験体にされたと。
 最初はカシェル、次にエイミ、そして最後は自分であった。
 だが自分はその強靱な精神力により自我を取り戻したのだが、その代償に肉体を失い、今は魂と甲冑のみになったと話す。
 そしていずれくる機動六課との接触に備える為、敢えて自我を失ったフリをして機会を待っていたと語る。
 そんなグレイの話に言葉を失うティアナ、するとグレイは懐から一枚のディスクを取り出すとティアナに渡す。 
 

 「これは?」
 「スカリエッティの居場所と情報が詰まったディスクだ」
 
 だが此処に書かれている場所に赴いても中に入ることは出来ないという。
 話によれば居場所には文字自体に魔力が含まれているルーンと呼ばれる力を用いて、存在次元をずらし姿を見せないようにしてあると。
 其処で管理局に存在する無限書庫にて潜入方法並びに解除方法を見つけ出して欲しいと願い出る。
 ティアナは快く応じると、グレイはその場を去ろうとし、ティアナは思わず止めに入る。
 
 「グレイ!管理局には戻らないの?」
 「あぁ、俺はもう“人間”では無いからな……」
 
 そう一言残し場を去るグレイ、ティアナはグレイに渡されたディスクを握り締めながら佇むのであった。
 
 
 一方地上本部に潜入しているセインは一つ一つの部屋を回りレリックを捜索しつつ部屋を破壊していた。
 そして一つの保管庫へと潜入する、本来は保管庫の周囲は強固なセキュリティに守られているのだが、
 クアットロによって解除されている為、簡単に潜入する事が出来たのだ。
 保管庫には様々なロストロギアが眠っており、セインは中身を調べているとレリックが保存されている巨大なケースを発見する。
 
 「レリック発見!………なんか少ないような気がするけど、まぁいっか」
 
 セインはケースの中身を確認して数が少なく感じるも、きっと残りは機動六課の隊舎にでもあるんだろうと考え、保管庫を後にするのであった。
 
 その頃機動六課の隊舎ではガジェットと不死者の襲撃に加え戦闘機人にルーテシア、更にはゴーレムのベリオンにも襲われていた。
 
 『鋼の軛!!』
 
 ザフィーラ、シャマル、キャロの三人は鋼の軛を繰り出しガジェットと不死者を次々に殲滅していくが、
 三人の攻撃に合わせオットーが右手から緑色の光線、レイストームを隊舎に向け撃ち放とうとする。
 それを阻止しようとエリオがオットーの下へ向かおうとするが赤い刀身を持つ双剣ツインブレイズを握ったディードが行く手を遮る。
 するとエリオはソニックムーブを用いてすり抜けようとするが、ディードもまたほぼ同じスピードで移動し完全にエリオの道を遮っていた。
 するとディードは左の刀身を振り下ろすとエリオはストラーダを盾に攻撃を防ぐ。
 だが更に右の刀身を振り上げるとストラーダに思わぬ衝撃が走りエリオは仰け反る。
 その瞬間を捉えディードは双剣を斜に構え振り上げの体勢から一気に刃を振り下ろす。
 ディードの一撃がエリオに迫る中、ストラーダがとっさにソニックムーブを起動させ回避、
 だが完全に回避する事は出来ず、バリアジャケットを切り裂き薄皮一枚をかすめていた。
 その間にオットーはレイストームを撃ち出し隊舎に迫って行く中、シャマルが障壁を展開し護ろうとするが、むなしく砕け散りシャマルごと隊舎に直撃、
 辺りに爆音が響く中、今度はルーテシアがこの機に乗じて地雷王を召喚、隊舎に張り付けさせると地震を起こすように命じた。
 それを止めさせようとキャロとフリードリヒ、そしてザフィーラが向かうが、オットーがキャロとフリードリヒをバインドで縛り上げ、
 バスターモードのベリオンがマイトブロウを起動させた一撃をザフィーラに繰り出し、吹き飛ばされ隊舎に激突した。
 
 「抵抗は…」
 「…無意味」
 
 オットーとルーテシアが入れ替わるように呟くとルーテシアはバーンストームを唱え、キャロとフリードリヒを飲み込んでいくのであった。
 
 一方ロングアーチのグリフィスはモニターにて戦況を見守っていた。
 戦況は此方が劣勢…このままでは機動六課の壊滅は免れない…グリフィスはこの時、部隊長ならどうするか?考え込んでいた。
 結果は単純、きっとあの人なら「命有っての物種」と言って撤退を促すハズである。
 
 「ロングアーチから各隊員へ!これより我々はこの隊舎を破棄する!非戦闘員は速やかに地下シェルターに避難しろ!!」
 
 グリフィスの決断をオペレーターが隊舎全体に伝えると非戦闘員は次々に地下シェルターに退避していく、
 その光景をモニターで見つつ、自分の判断が正しいハズだと言い聞かせるグリフィスであった。

 一方ゼストとアギトは順調に地上本部に向かっていると、後方から強い魔力反応を感知するアギト。
 アギトの話では先日戦った二人だと話し、ゼストは厄介な存在だと考えていた。
 そしてこのまま付いて回られるより、仕留めるもしくは重傷を負わしておけばこの先付いて来ないだろうと判断、
 ゼストは足を止め迎撃の準備の為アギトとユニゾンする、一方でヴィータも遠くながらゼストの行動を確認後、リインとユニゾンし迎撃に備えた。
 互いに迎撃に備えると、リインが水色の短剣フリジットダガーを撃ち出すとアギトもまたブルネンクリューガーを撃ち出し相殺させる。
 その間に二人の間が狭まり互いの一撃が交差を描き鍔迫り合っていた。
 
 「てめぇ!一体地上本部に何の用なんだ!!」
 「貴様の問いに答える気は……無い!!」
 
 そう言うと槍の柄の端でヴィータの横隔膜辺りを突き上げると、ヴィータは九の字に曲がり更に顎を跳ね上げ首が上を向くとそのまま槍を振り下ろす。
 だがリインがパンツァーガイストを起動させ攻撃を受け止めるが、ゼストは力任せに振り抜きそのまま勢いよくヴィータを吹き飛ばす。
 だが、ヴィータは体勢を立て直すと見上げた位置にゼストがおり、槍を三度振ると衝撃波が三つ発生しヴィータに襲いかかる。
 だがヴィータは臆する事なく左手をかざしパンツァーシルトを展開させ難を逃れる。
 その動きにゼストは“アレ”を使わざるを得ないと考えるのであった。
 
 
 その頃クロノは司令部のモニターにて戦況を伺っていた。
 機動六課の隊舎はほぼ壊滅的で非戦闘員は既に地下シェルターへの避難をしており、エインフェリア達は不死者やガジェットなどの殲滅に追われ 、
 地上本部でははやての指揮のもと行動しているが、果ての見えない大量の不死者と一体の戦闘機人による襲撃により劣勢は否めなかった。
 この不利な戦況に頭を悩ますクロノの下に最高評議会のエンブレムがモニターに映し出される。
 
 「クロノ提督…状況はどうだね」
 「見ての通り劣勢です、出来れば本局の戦力も投下してもらいたいです」
 
 クロノの言葉を機に静まり返り暫くすると、最高評議会が答えを返す。
 
 「ではエインフェリア達よ、今よりこの場から退避せよ!これは最高評議会の命令である!!」
 
 最高評議会の思わぬ命令に目を見開くクロノであった。
 
 少し時間は遡り北区の現場ではシグナム、エーレンとアドニス、そして数名の局員が不死者の殲滅を行っていた。
 シグナムは飛竜一閃でエーレンとアドニスは赤い魔力を刀剣に込め地面ごと打ち砕くソウルエボケーションを用いて次々と打ち落とし殲滅を完了させると、
 エインフェリア達は転送魔法の陣を張り巡らせる、その不可解な行動にシグナムは問い掛ける。
 
 「何処へ行こうとする!!」
 「悪いが、ここから撤退しろって命令されたんでな」
 「申し訳有りませんが、命令は“絶対”なんで」
 
 アドニスそしてエーレンの順に話し終えると、二体はそのまま転送し姿を消す。
 その光景に戸惑いつつも局員に他の地域へと赴かせるように指示、そしてシグナムはヴィータの身を案じ後を追うのであった。

 そして司令部のクロノは最高評議会の指示に声を荒げ非難していた。
 
 「どういう事ですか!!」
 「……どうもこうもない、負け戦に“我等”の大事な手札を失う訳にはいかんのでな」
 
 その言葉にクロノは最高評議会の真意が見えたと感じていた。
 元より最高評議会はミッドチルダを守る気など無かったのだ。
 彼らはエインフェリアの実力を確かめる為だけに此処に配置した、そしてその実力を知った以上もう此処に置いておく必要はない。
 そして自分はエインフェリアを此処に配置させる為だけに呼ばれた存在、誰でも良かったのだ。
 それらを理解したクロノはモニターを睨みつけ吐き捨てるかのように言葉を口にする。
 
 「…我々を裏切るつもりか!!」
 「裏切る?…違うな…我々は見限ったのだよ」
 
 ミッドチルダは既に死に体となり果て、魔力によって齎された繁栄も既に終わりが見え始め、レザードという魔法技術においてて癌とすら思える存在すら現れた。
 もはやこの世界に存在価値はないのだ!…そう言うとモニターのエンブレムが消え辺りは静寂に包まれる、するとクロノは拳を堅く握り机に叩きつけた。
 その音にオペレーターが反応するもクロノは黙ってモニターを見据えており、そして重たい口がゆっくりと動き出した。
 
 「ならば…これより我々はこの基地を放棄する!これ以上の戦闘は無意味だ!この旨を地上本部にも伝えておいてくれ」
 「了解しましたクロノ提督……どちらへ?」
 「退避が完了するまでの時間を稼いでくる、後は頼むジェイク」
 
 そう言うと懐から愛用のデバイスを取り出し司令部を後にする、それを見送ったジェイクリーナスもまた避難誘導の為に場を後にした。
 クロノは外へ向かう通路を歩きつつ最高評議会が言った言葉をかみしめていた。
 最高評議会はこの世界を見限ると、この世界にはもう存在価値すらないと言ってのけた。
 しかし自分は違う、自分はこの世界を見限る事は出来ない、この世界が消されるの黙って見ている事など出来ない。
 自分が生まれた世界を、自分が育った世界を、自分が愛し愛された世界を否定など出来るものか!
 
 「このまま……終われるか!!」
 
 そう意気込み自分の決意を胸に外に出ると、空を見上げ戦場に向かうクロノであった。
 
 
 一方機動六課は壊滅的なダメージを受けており、非戦闘員はなんとか地下シェルターに避難出来た様子であった。
 そんな中、隊舎の瓦礫の中にはベリオンの一撃により沈められたザフィーラとオットーのレイストームにより隊舎ごと沈められたシャマルが眠り、
 ディードとの戦いにより息を切らしているエリオとフリードリヒがルーテシアの魔法から庇ってくれた為、難を逃れたキャロの姿があった。
 すると隊舎入り口からガリューが姿を現しその手にはレリックが詰まったケースが握られている。
 それを目撃したエリオはガリューからケースを取り上げようとソニックムーブを繰り出すが、ディードに追い付かれ道を塞がれる。
 そしてガリューとルーテシアが接触すると叫び上げるようにレリックの危険性を主張するエリオ。
 
 「何故レリックを奪うんですか!それはとっても危険な物なんですよ!!」
 「…必要だから………アナタと違って」
 
 ルーテシアの一言にエリオは目を見開き、鼓動が高鳴ると自ら封印していた記憶が甦る。 
 そしてその記憶を振り切るようにルーテシアに突撃するが、ディードのけさ切りがエリオの背中を斬りつけ、
 更にガリューの拳が身を貫くと、悶絶するように膝をつき意識を失う。
 その光景を目にしたキャロはルーテシアに震えるような声で問いかける。
 
 「何でこんな事を…何で……」
 「…言ったでしょ、必要だから」
 
 そう一言呟くとルーテシアはガリューと地雷王を送還させ、その場を後にしようとする。
 するとキャロが声を絞り上げ叫ぶように問いつめた。
 
 「だからって私達の居場所を奪うなんて……返して!私達の居場所を返して!!」
 
 その悲痛な叫びを耳にしたルーテシアは足を止め振り向くと、冷静に淡々とこう述べた。
 
 「元々…アナタ達に居場所なんて無いでしょ」
 
 ルーテシアの言葉に目を見開くキャロ、暫くして髪がふわりと逆立つとその瞳には憎しみと怒りの色に満ち、激怒の表情を表していた。
 そして足下に巨大な召喚魔法陣を展開させると泣き叫ぶように召喚を始める。
 
 「龍騎召喚………ヴォルテェェェェェェルゥゥゥ!!!」
 
 次の瞬間、キャロの後ろには体長15mの巨大な黒き火竜ヴォルテールが佇んでいた。
 ヴォルテールはキャロの出身世界では大地の守護神と崇められている程の竜である。
 その姿に流石のオットーとディードも驚きの顔を見せずに入られなかったが、ルーテシアは未だ冷静さを保っていた。
 
 「どうするの?流石にアレは厄介」
 「……問題は無い」
 
 ディードの問い掛けにルーテシアはそう答えるとケースをディードに渡し、巨大な五亡星の陣を張ると右手で触れ大声を上げる。
 
 「邪竜召喚……ブラッドヴェイン!!」
 
 するとルーテシアの後方から全身緑色のヴォルテールとほぼ同じ大きさの邪竜を召喚させた。
 ブラッドヴェイン、かつてレザードがいた世界に存在した、腹の中にレヴァンティンが入っているニブルヘイムに住む邪竜を模した不死者である。
 オリジナルの技をほぼ再現させてはいるが、能力自体はオリジナルとは程遠い、それでも実力は全不死者の中でもダントツの一位を誇る存在でもあった。
 
 互いに巨大な竜を召喚させるとヴォルテールの口に周囲の大地の魔力が集まり、ブラッドヴェインもまた目の前に稲光を放つ黒い球体を生み出す。
 そして互いに魔法が完成すると合図を送る。
 
 「ヴォルテール!ギオ・エルガ!!」
 「ブラッドヴェイン!グラビディブレス!」
 
 二人の合図により撃ち出された攻撃は中央でぶつかり、辺りに衝撃が走り不死者並びにガジェットを消滅、更にそれに止まらす隊舎のガラスを破壊、更には建物全体を揺らし崩壊させる。
 そして辺りは巻き上げられた粉塵により視界が悪くなっており、
 その中からブラッドヴェインの肩に乗るルーテシアとガードレインフォースを展開させたベリオンが突き抜けるように粉塵から姿を現した。
 ベリオンの両肩にはオットーとディードも乗っており、無事を確認するとディードはルーテシアに問いかける。
 
 「やったの?」
 「…さぁ?」
 
 少なくとも自分達は無事な為、相手も無事である確率は低くないと話す。
 だが自分達の目的はレリックの回収、それは既に終えている為ルーテシアは今度こそこの場を後にするのであった。

 …そして現場には未だ粉塵が舞い上がり、それがゆっくり晴れていくと崩壊した隊舎、そして巨大なクレーターが生まれおり、
 クレーターの近くではヴォルテールが佇み送喚されると、足下にいたキャロが声を荒げ枯れ果てる程までに泣き叫んでいるのであった……
 
 場所は変わり此処は地上本部へ向かう道の上空では、二つの魔力光が火花を散らしていた、一つはヴィータ、もう一つはゼストである。
 ヴィータは懐から鉄球を取り出すと自身の頭より巨大な鉄球に変わり魔力で覆うと、グラーフアイゼンをギガントフォルムに変え撃ち抜く。
 ヴィータが撃ち出した魔力弾が迫る中、ゼストは弾こうとシールドを展開するが接触した瞬間、鉄球ごと弾け辺りに四散する、コメートフリーゲンと呼ばれる魔法である。
 ヴィータはしてやったりな表情を表し目を向けているが、ゼストは平然とした表情を表していた。
 ヴィータは一つ舌打ちを鳴らし睨みつけているとゼストは槍をヴィータに向け構える。
 
 「アギト!ダメージ緩和、頼むぞ!」
 「任せろ!ダンナァ!!」
 「行くぞ!フルドライブ!!」
 
 ゼストの槍からカートリッジが三つ排莢されると一気に加速、グラーフアイゼンごとヴィータを斬りつけると、左肩から大量の血が噴き出す。
 するとリインが内側から傷の治療を行うが、未だ血は止まらずにいた。
 そしてヴィータは力無く落ちそれを横目にしつつ、ゼストは先に急ぐのであった。
 
 一方ヴィータを追っていたシグナムはリインからの念話が届く。
 先程ヴィータが重傷を負い落下していたのだが、リインが飛行魔法を用い減速、ゆっくりと地に着くとユニゾンを解除、現在は傷の治療に取り掛かっていると。
 リインの連絡を受けたシグナムは急いで現場に向かうと、現場では涙を流しながら治療を行うリインに血が未だ滲み出ているヴィータが地面に横たわっていた。
 
 「お願いです!ヴィータちゃんを医療院に!!」
 「分かった!いま手を―――」
 「待っ…てくれ……シグ…ナム……」
 
 するとヴィータが上半身を起こし始め、リインが止めに入るが、心配ないとリインに笑みを浮かべシグナムに目を向ける。
 そしてヴィータはシグナムにゼストを追いかけて欲しいと伝える、ゼストは地上本部で何かを起こそうとしている、
 それを止められるのはシグナムしかいないと肩の痛みを我慢するように厳しい表情を表していた。
 ヴィータの必死な願いに目を閉じ考え暫くした後、首を横に振るシグナム、
 …確かに地上本部の事は気になるが今はヴィータの怪我が最優先と考え、リインと共に医療院に向かうシグナムなのであった。
 
 
 一方スバルはギンガの下へ急いでいた、スバルは移動する間にもギンガに何度も連絡を取っているのだが、一切応答がない状況が続いていたのだ。
 そんな状況に更に不安を覚えたスバルはギンガとの連絡が取れなくなった場所に赴く、
 其処には大量の局員の死体が転がっており、その中央には血だらけで左手を失ったギンガと、その髪を掴むチンク、そして先程まで戦っていたノーヴェ達の姿があった。
 その目を覆いたくなるようなギンガの姿を見たスバルは、目を瞑り顔を背け叫びあげる。
 
 「う……うあああああああああぁぁぁぁっっっ!!!!」
 
 すると体から魔力が溢れ出しその勢いは床を砕き、涙を流すその瞳は戦闘機人特有の金色の瞳をしていた。
 そしてカートリッジを三発消費するとギンガを助ける為、怒りのままノーヴェ達に襲い掛かる。
 その動きにノーヴェがガンナックルで牽制するが、スバルは気にもとめず突っ込みナックルダスターを繰り出す。
 しかしノーヴェも拳で応戦するが、スバルの一撃に耐えきれずガンナックルが砕け散り吹き飛び壁に直撃する。

 「くっそぉ!!なめるなぁハチマキィィ!!!」
 「ギアエクセリオン!!!」
 
 ノーヴェは悪態を付きながら飛び出すとスバルはギアエクセリオンを起動、足下に四枚の翼を展開するとノーヴェ目掛け突進する。
 ノーヴェはハイキックにてスバルの頭部を狙うがスバルもハイキックで応戦、するとノーヴェはかかとのブレイクギアを起動させ威力を高めるが、
 スバルのギアエクセリオンがら繰り出されるA.C.Sドライバーには届かず右足ごと蹴り砕かれる。
 その光景にウェンディがライディングボードで砲撃するが、スバルの左右の高速移動により回避され懐に入られる。
 ウェンディはとっさにライディングボードを盾にするがスバルはお構いなしに殴りつける。
 その衝撃をウェンディは足を踏ん張り耐えていると、スバルはカートリッジを更に三発消費、
 ディバインバスターを撃ち抜きライディングボードごとウェンディを壁に叩きつけた。
 そしてスバルはディエチに目を向けるとディエチはスコーピオンを構え速射砲を撃ち出す。
 スコーピオンから空の薬莢がリズムよく排出される中、スバルの左肩を撃ち抜き両腿、右の頬を掠めるも気にする事無く突撃、右の拳がディエチに迫る。
 ディエチは速射砲より徹甲弾の方が良かったなと後悔しつつ、覚悟を決め目を閉じる、すると其処にチンク不意の蹴りがスバルの首もとに突き刺さり、吹き飛ぶと瓦礫の山に激突した。
 
 「チンク姉!」
 「ディエチ!お前はノーヴェを、ウェンディはタイプゼロを連れて退避しろ!」
 「チンク姉はどうするんです?!」
 「私はお前達が退避するまでコイツの相手をする!」
 
 その命令を聞きディエチはノーヴェの肩に手を回す、するとノーヴェは心配そうにチンクを見つめつつこの場を去り、
 ウェンディもまたライディングボードが無事機能しているのを確認すると、ギンガを乗せチンクを残し立ち去った。
 すると瓦礫を魔力で弾き飛ばし怒りを露わにするスバル、そしてチンク目掛け突進するがチンクはシェルコートを用いて攻撃を防ぐ。
 だがスバルは拳から振動波を発しシェルコートを粉々に粉砕、その時の衝撃により後方へ吹き飛ぶチンク。
 振動破砕、スバルが保有するISで四肢から衝撃波を放ち共振現象を起こし相手を粉砕するまさに一撃必殺な技である。
 
 「成る程、それが貴様のISと言う訳か」
 
 シェルコートに守られていたとはいえ体に多少の不具合を感じるチンク、
 …このままでは負ける、そう確信したチンクは左耳を覗かせるとイヤリングが一つ付いており、スバルは驚いた表情を見せる。
 
 「まさかデバイス?!」
 「そうだ…魔法が使える戦闘機人が貴様等だけだと思うな!ヴァルキリー、セットアップ!!」
 
 するとチンクの体が光に包まれ、解れると其処には蒼い甲冑と白いスカートを身に付け、
 白い羽根飾りが付いた兜を被り腰に銅色の鞘に覆われた片手剣を携えたチンクが姿を現す。
 チンクの変貌に驚きを見せるスバルであったが、すぐに真剣な面持ちに変わりチンクに殴りかかる。
 するとチンクは左手をかざすと白く輝く魔力が放たれ、集まると物質の盾を作り出しスバルの拳を防いだ。
 だがスバルは気にもとめず盾ごと破壊しようと振動破砕を使用するが、盾を砕く事は出来なかった。
 
 「無駄だ、マテリアライズした物質にはエーテルコーティングがされてある、砕く事は出来ん!」
 
 エーテルコーティングとは武具を特殊な力場で包む事で破壊不可効果をもたらすという。
 それはスバルの振動破砕にも通じる内容であり、マテリアライズした物は全て破壊出来ない事を指し示す。
 しかしマテリアライズした“物質”の強度による耐久力を越えるダメージまでは無効化できず、
 スバルのカートリッジを二つ消費して撃ち抜いたディバインバスターの衝撃までは受け切れられず後方へ吹き飛ぶと、チンクは足下に落ちていた瓦礫を二つ拾う。
 そして瓦礫を握った右手から白く輝く魔力が稲光のように輝くと、瓦礫は二本のナイフに変わっていたのだ。

 「錬金術?!」
 「原子配列変換能力だ、まぁ錬金術と大差無いかもしれんが……」
 
 原子配列変換能力とは魔力を用いて物質の原子配列を変換させ別の物を作る、簡単に言えば錬金術の様なものだという。
 チンクは説明を終えると原子配列変換能力で作られたナイフをスバル目掛け投げつけるが、プロテクションにて弾かれ、
 逆に殴りかかるスバルに対しチンクは盾で攻撃を防ぐとスバルの頭上を弧を描くように飛び越え、足下に落ちてある鉄の棒を手にすると槍に変え投げつける。
 スバルは槍を右手で無造作に叩き落とすと腰を下ろし前傾姿勢で構える、するとチンクの周りに浮いていた盾が光の粒子となって消滅した、
 マテリアライズされた物質は三分しか保つ事は出来ず三分を越えると光の粒子となって消滅してしまうのである。
 その光景に好機と見たスバルはカートリッジを二発消費しA.C.Sドライバーを放つがチンクは先読みし、すぐさま盾をマテリアライズする、
 だがチンクの行動はまだ終わってはいなかった、今度はチンクの右手から魔力が放たれるとスバルの腿を指差す、
 すると魔力は矢のように二本放たれ、スバルの両腿には金で装飾されたレイピアが突き刺さっていた。
 不意の痛みにスバルは悶絶している頃、チンクは右手に目を向け二・三度、感触を確かめる。
 
 「…やはり、マテリアライズはかなりの魔力を消費するか……」
 
 マテリアライズは魔力を用いて一から物質を作り上げる為、媒介を使う原子配列変換能力以上に魔力を消費するのである。
 するとチンクは左腰に携えた鞘から両刃の片手剣を取り出すと半身を開き構え足下に白い五亡星の魔法陣を張る。
 
 「ヴァルキリー!カートリッジロード!」
 
 そして片手剣の刀身の根元から二つ薬莢が排出されると、体は白く輝く魔力に覆われる。
 一方スバルは腿に突き刺さったレイピアを引き抜くと、チンクに投げつける、
 しかしチンクは先読みしていた感があるようにレイピアを躱すと、滑り込むようにスバルの懐に入り込み、
 右からのけさ切り、左からの払い、そして下から切り上げるとスバルの体を宙に浮かせる、
 そして巨大な槍が三本スバルの左右の脇腹から肩にかけて、脊髄から腹部にかけて突き刺す。
 そして剣を納めスバルの頭上まで飛び上がると背中から光の翼を生やし、翼が光の粒子となって右手に集うと巨大な槍に変化した。
 
 「奥義!ニーベルンヴァレスティ!!」
 
 そう叫ぶと槍は白く輝く鳥に変わりスバルを貫き、白色の閃光と共に爆発した。
 そしてチンクは静かに着地するとデバイスを解除、すると床からセインが水面から飛び出すように姿を現した。
 セインはレリックが詰まったケースを持って移動していたところ、ノーヴェがチンクの下へ戻るとディエチと口論しており、
 ならば自分が代わりに行くと名乗り上げ、ノーヴェ達にケースを渡し此処へ来たのである。
 
 「チンク姉!助けに来………あれ?そのハチマキは?」
 「………あの中だ」
 
 そう言うと親指で燃えたぎる炎を指すチンク、セインは唖然とした表情を見せてる中、
 チンクはこの場を去ると急かすとセインはハッと我を取り戻し、チンクを連れディープダイバーにてこの場を後にした。
 
 …それから暫くして燃えたぎる炎の中から、ハチマキと上着を無くし、両腿から血が流れ、火花が散りケーブルを覗かせた右腕を引きずるスバルの姿があった。
 
 「ギン姉……ギン姉を…返して……」
 
 だがスバルの悲痛な問いかけに答える者はなく、現場の炎だけが空しく揺らいでいるだけなのであった…… 

 場所は変わり此処は聖王医療院前、周囲はガジェットの残骸が四散しており、その中央でエクシード姿のなのはが目を瞑り腕を組んでおり、

 向かって左の位置には地面に突き刺したレイジングハートが並んでいた。
 なのはは誰かを待っているように佇んでいると、医療院に向かう道からゆっくりと進む足跡が響く。
 その音に気が付いたなのははゆっくりと目を開き細目で見つめると、其処にはレザードの姿があった。
 一方レザードは目の前の存在に少しばかり驚く様子を見せていた。
 何故ならば彼女が此処にいるとは思ってはいなかったからだ。
 寧ろこの場合はあの“残滓”が命の尊さを教え込むために来るとばかり思っていたからなのである。
 しかしレザードはそれを表に出さず、眼鏡に手を当て不敵な笑みを浮かべ問いかける。
 
 「おや?まさか貴女が此処にいるとは驚きです、しかし解せない…なぜ貴女がアレの回―――」
 「あの子はヴィヴィオ…モノじゃない、私の子供、…あの子をアナタに渡たす訳には行かない!!」
 「ほう……それはどういう事です?」
 
 なのははヴィヴィオの母親が見つかるまで自分が母親の代わりになる…そうヴィヴィオと約束した、
 子を護るのは親の勤め…だから自分はヴィヴィオを護る!その為に此処にいると力強く答える。
 一方レザードは違う意味で驚いていた、“鍵”には記憶がある、恐らくヴィヴィオと言う名も“鍵”が記憶の中から見つけたのだろう。
 “鍵”は聖王の遺伝子から作り出されたもの…だとすれば遺伝子には記憶を保存する機能がある?
 そんな事をレザードは考え込んでいると、なのはが睨みつけており、その態度に首を横に振り眼鏡に手を当てるレザード、
 その態度はまるで、なのはの決意を無視し、寧ろあざ笑う様子を表しておりレザードは言葉を口にする。
 
 「貴女は処女〈おとめ〉のまま母親になると?…貴女は先ず、母親になる前に処女〈おとめ〉を捨て“女”に成るべきではないのですか?」
 
 母になるにはそれなりのプロセスがあり、処女を捨て“女”となり、“女”を捨て母になる…
 それこそが母親に成る上での道のりなのではと問いかけつつ、馬鹿にした表情で語るレザード。
 しかしなのはは動じることなく、レイジングハートを引き抜き構えると、レザードもまた眼鏡に手を当て睨み付ける。
 
 「ほう、やるつもりですか…ならば、貴女の母の強さを見せてもらいましょう……」
 
 そう言うとネクロノミコンをグングニルに変え構えるレザードであった。
 そして二人が対峙する中、なのはが先手を取りアクセルシューターを撃ち抜く、しかしレザードはイグニートジャベリンにて叩き落とされ、
 逆にプリズミックミサイルを撃ち鳴らすと、なのはは足首辺りにアクセルフィンを展開、上空へと逃げるが誘導化されたプリズミックミサイルが後を追う。
 するとなのははカートリッジを一つ消費し、強化したアクセルシューターにて迎撃、プリズミックミサイルを相殺させた。
 そしてなのはは足を止め両足を開きデバイスをレザードに向けるとレイジングハートに指示を送る。
 
 「レイジングハート!ブラスター1!!」
 
 なのはの指示に反応しブラスターモードを起動させるとなのはの魔力が上がり、カートリッジを一つ消費する。
 するとレイジングハートの先端に紅に近い魔力刃と桜色の翼を展開、ストライクフレームと呼ばれる形態に変えると、そのまま突撃、
 本家のA.C.Sドライバーを撃ち出すが、レザードは左手をかざしバリア型のガードレインフォースを展開させ、なのはの攻撃を防ぐ。
 なのはの魔力刃とレザードのバリアがぶつかり合い火花が散っていると、なのははカートリッジを一つ消費させそのままショートバスターを撃ち抜く。
 なのはの撃ち出したショートバスターはレザードをバリアごと飲み込み、後方へ吹き飛ばすが、大したダメージを与える事は出来なかった。
 
 「ほう……やりますね、ではこれならどうです?クールダンセル」
 
 そう言うと左手に青白く魔力が溢れ出し魔法を唱えると、氷の刃を持った氷人形を九体撃ち出す。
 するとなのはは後方へ飛び上がり、上空にてアクセルシューターを撃ち出すが、クールダンセルは持っていた刃で次々にアクセルシューターを切り払いなのはに迫っていた。
 其処で今度はアクセルシューターでクールダンセルを牽制し一纏めにすると、直射砲を撃ち出す。
 直射砲とクールダンセルが接触した瞬間、次々に爆発し一瞬にして九体のクールダンセルを撃墜させた。
 ストレイトバスターと呼ばれる反応炸裂を高め伝播させることで多数の対象を攻撃する直射砲である。 

 レザードとなのはの間に魔力の残滓が煙のように舞いお互いに位置が掴めない中、残滓から突き破るようにアクセルシューターがレザード目掛け襲ってくる。
 しかしレザードは動じることなくリフレクトソーサリーを展開し、アクセルシューターを四方に四散させると、
 そのタイミングを見計らったかのように残滓の煙を突き破るように、なのはがA.C.Sドライバーにて突撃するとレザードもまたグングニルを構え突撃する。
 青白い魔力光と桜色の魔力光が交差する中、レザードは上空を飛行しながらアイシクルエッジを撃ち出すが、
 なのははレザードより更に上空にてディバインバスターを撃ちレザードの魔法を均すように撃ち落とす。
 

 するとレザードは急停止しグングニルを三度振り抜き衝撃波を三発撃ち出す。
 それを見たなのははA.C.Sドライバーにて加速しつつ急降下、衝撃波を回避すると、地面スレスレにまで移動する。
 すると今度はレザードが左手をかざし青白い魔力に覆われると極太のライトニングボルトを撃ち抜く。
 その攻撃を地面スレスレのまま滑走して回避するなのは、後ろでは極太のライトニングボルトがなのはの後を追っており、
 なのははレザードに体を向けアクセルシューターを撃ち出すが、リフレクトソーサリーによって弾かれる。
 レザードのライトニングボルトが撃ち終わるとなのははブラスター2を起動、更に魔力が跳ね上がるとA.C.Sドライバーで突撃するが、グングニルで止められる。
 そしてレザードは左手でファイアランスを撃ち出そうとしたが、左手が動かず見てみるとバインドに縛られており、一つの機械が浮いていた。
 ブラスタービット、ブラスターモードの機能の一つでなのはとレイジングハートが操作出来る遠隔操作機で魔法を行使する事が出来る機械である。
 レザードはバインドに縛られているとなのははディバインバスターを撃ち出した。
 
 ディバインバスターを撃ち出したなのはは左手を押さえ苦しい表情を見せているが、ディバインバスターに飲まれ吹き飛ばされたレザードは、未だ余裕のある顔を見せていた。
 
 「なるほど…貴女のその力、自己ブーストによるものですね」
 
 レザードはなのはと戦闘をしつつ能力を分析を行っていたのだ。
 そしてレザードは更になのはの様子からかなり無理をしていると判断、これ以上は無駄であると語るが、なのはのは未だ諦める様子はなかった。
 レザードはやれやれ…といった様子でなのはを見るとなのはは痛む腕に鞭を打ちレザードにデバイスを向けていた。
 そしてなのははアクセルシューターで牽制、レザードはアクセルシューターをグングニルで撃ち落としていると、
 後ろを取ったなのはが懐に入ると勝機とばかりにA.C.Sドライバーを撃ち抜く。
 だがレザードはシールド型ガードレインフォースにて防がれるが、その勢いは止まらず見る見ると地上まで押しのける。
 
 するとなのはは全カートリッジを消費し新たなカートリッジを装填するとブラスター3を起動させた。
 
 「私は負けない!この不屈の心レイジングハートがある限り!!」
 
 そう言うとディバインバスターを撃ち出し極太を通り越した魔力の奔流がシールドにより三面に分かれつつレザードを押しのけ、
 シールドにひびが入り砕け散るとレザードは桜色の奔流に飲まれていくのであった。
 ディバインバスターが撃ち出された後は地面はえぐれ木々は薙ぎ倒されており、その道中にレザードが俯きながら佇んでいた。
 するとレザードの体はブラスタービットによるバインドに縛られ身動きが出来なくなっていた。
 レザードはバインドを解除を試みつつ、このブラスタービットは厄介な存在だと感じていた。
 そんな事を考えていると上空に桜色の光を感じ見上げると其処にはなのはとビットが魔力を収束し始めていた。
 その光景にかつて見た事ある光景だと考えていると、なのはが言葉を口にする。
 
 「負けない!……アナタを“倒してでも”ヴィヴィオは絶対に護る!!」
 
 なのはの決意は固く、その決意は強い言葉となって口に現す中、レザードは黙ってなのはの言葉を聞いていた。
 そして魔力の収束が終わり、レイジングハート、そしてレザードを囲うように設置された四基のブラスタービットの前には巨大な桜色の魔力がとどまっていた。
 そして――――
 
 「全力全開!スターライトォブレイカァァァ!!!」
 
 その言葉を合図に収束砲が撃ち抜かれ、その中央にいるレザードは一言呟く。
 
 「なるほど…それが貴女の力の源ですか……………虫酸が走る」
 
 レザードの言葉は五本の収束砲にかき消され、辺りは桜色の光に包まれ大爆発を起こすのであった。 

 そして辺りには魔力の残滓と粉塵が混ざり合い、巨大な土煙覆われており、その中でレイジングハートを支え棒にしたなのはの姿があった。
 そして目の前の土煙を見つめていると一つの影が姿を現し、なのはは愕然とする。
 
 影の正体は言うまでもなくレザードであった、レザードはなのはの攻撃が直撃する瞬間、魔力によってバインドを弾き、更にあらかじめ用意していた移送法陣で転送、攻撃を躱していたのだ。
 
 「愚かな…本気で我に勝てると思っていたのか?」
 「……ど…どういう…意味」
 
 なのはの質問に眼鏡に手を当て答えるレザード、今までの戦いは全て“手加減”していた。
 その理由はなのはの実力と、なのはが言う母の力を見極める為なのである。
 
 「悪魔………」
 「フッ…よく言われる、だがその言葉は貴様の代名詞ではないのか?」
 
 そう憎まれ口を言いつつレザードは自分の考えを述べる、結果は以下の通り、
 なのはは自分の限界以上の力を使った為、肉体とリンカーコアは悲鳴を上げ、レイジングハートには無数のひびが生じていた。
 だが…なのはのその力は母の力と言うには取るに足らなく、自身の覚悟も無いと話す。
 
 レザードは様々な人体実験を行って来た、その中には老夫婦でもない、新婚夫婦でもない夫婦を餌にする為、不死者化させた事もあった。
 そして他にも親と子の絆の強さ利用しようとした事もあった、ある親は子を護る為レザードに牙をむき、実際にナイフで命を狙って来た事もあった。
 他にも親が不死者となった時、共に死んで見せた子もいた、その逆も存在した。
 それらを見て来たレザードにとってなのはの決意は陳腐な物に聞こえていたのだ。
 
 「所詮貴様は処女〈おとめ〉…その感情は親としての感情ではなくただの同情によるもの…つまりは独りよがりだ」
 
 ヴィヴィオが生まれた経緯、そしてヴィヴィオ自身が持っている記憶のみに存在する、既にいない母親の影を追う姿、
 そしてそれらの真実を知っているなのは自身の優越感と一時の感情が齎した錯覚であるとレザードは断言する。
 その証拠になのはは“倒してでも”と言葉を口にした、絶対的な戦力差の中で差し違えることを厭わない親などレザードの経験上あり得ない事であると。
 
 「所詮は紛い物、偽りの絆、故に貴様の底が見えたのだ」
 「そんな……そんな事はない!!」
 「ほう……ならば最後に試してみるか」
 
 そう言うとなのはに向け左手をかざすと赤・青・黄色のバインドがなのはを縛り上げる、
 するとなのはのバリアジャケットが解除され制服姿に戻る、黄色いバインドプリベントソーサリーの効果による物だ。
 バインドはしっかり機能している、それを確認したレザードは詠唱を始めた。
 
 「天の風琴が奏で流れ落ちるその旋律…凄惨にして蒼古なる雷!」
 
 詠唱を始めると左手に稲光が現れ徐々に大きくなりつつ形となり、その姿は、頭部は竜骨で胴は青白い稲光を放つ竜へと変化する。
 そして蔑むように見下ろすといやらしい笑みを浮かべこう述べた。
 
 「貴女の言う母の力が本物であれば、この一撃にも耐え得るハズ…そうすれば私は“鍵”の回収を諦めましょう……他に手が無い訳では無いですし…」
 「……本当にその一撃に耐えたらヴィヴィオは見逃すの?」
 「それは勿論、これでも約束を違えた事は無いのですがね」
 
 そう言うと肩をすくめるレザード、今の現状に断ると言う選択肢がないなのはは、睨みつけながらも頷く。 
 すると不敵な笑みを浮かべ、なのは答えを受け取るレザード。
 
 「では参ります……ブルーディッシュボルト!!!」
 
 そう叫ぶと左手をなのはにかざし撃ち出され、なのはの体にブルーディッシュボルトが貫くと、体全体が痙攣しているかのように何度も跳ね、
 その痛みは身を裂くような激痛を帯び、更に肉体、神経、全身のあらゆる場所を痺れてさせていた。
 
 (ヴィヴィオ…ゴメンね……約束…守れなかった……)
 
 全身に巡る激痛に耐えきれなくなったなのはは、心の中でヴィヴィオに謝りつつ意識を失う。
 そしてブルーディッシュボルトがなのはの体を通り過ぎた後には、口や耳全身のあらゆる場所から白煙が立ち上り、
 白目をむいたまま膝を突き前のめりで倒れる、逸れを蔑むように見下ろすレザード。
 
 「尤も…貴女がこの攻撃に耐えられる可能性は………ゼロでしたが」
 
 そう言うと高笑いを掲げ医療院に向かうレザードであった。
 
 一方で医療院の中は薄暗く静まり返り、その中でヴァイスがバリケードを盾にストームレイダーを構えていた。
 ヴァイスはヴィヴィオを迎える為に此処医療院に来ていたのだが、突然の襲撃によりヘリからストームレイダーを取り出し此処の警護に協力していたのだ。
 現場は緊張が張りつめており、ヴァイスはいつでも撃てる体勢を保っていると奥から足音が響き一つの影が浮かび上がる。
 その影は医療院の人間かそれともレザードなのか…ヴァイスは見極めようと直視するとその影はレザードであった。
 するとヴァイスは躊躇無く引き金を引く、ヴァイスが撃ち出した魔力弾は見事にレザードの脳天を撃ち抜くが、全く気にする様子がなかった。
 その光景に恐怖したヴァイスは何度も撃ち続けるが、まるで無人の野を行くが如くまっすぐ進むとヴァイスの目の前まで近づき左手をかざす。
 
 「愚かな…己が力量を弁えんとは畜生にも劣る……」
 
 そう言うと衝撃波を放ち一瞬にしてヴァイスの意識を刈り取るのであった。
 
 一方医療室ではヴィヴィオがシーツを被り一人震えていた。
 先程まではシャッハの姿があったのだが、窓を見つめるや否や自分にシーツを被せ部屋を後にしたのだ。
 
 「なのはママ……」
 
 ヴィヴィオは一言呟き辺りは静寂に包まれキーンと耳鳴りが響く中、突然大きな音が鳴り響く、
 その音にビクつくヴィヴィオは顔だけを覗かせると、遠くでシャッハの声が聞こえたような気がした。
 すると扉の曇り窓に頭部らしき影が現れた瞬間、扉と共にシャッハが飛び出し窓に激突する。
 ヴィヴィオはシャッハの身を案じゆっくりと近づき恐る恐る見ると、シャッハは頭から大量の血を流し気絶していた。
 その姿に驚きしりもちをつくとヴィヴィオの後ろにはレザードの姿があり、更に驚くヴィヴィオ。
 するとレザードは膝を付きヴィヴィオと同じ目線に合わせるとこう述べた。
 
 「お迎えに参りました……聖王様…」
 
 その言葉に困惑するヴィヴィオに対しレザードは左の人差し指をヴィヴィオの額に当てると優しく丁寧に気絶させる。
 そして気を失ったヴィヴィオの肩と足に手を回し優しく抱きかかえると、移送法陣を用いてこの場を後にするのであった。 

 時間はなのはとレザードが接触する前まで遡る、此処は地上本部、中将室へ向かう通路、
 その路を騎士甲冑姿のはやてとレジアスの娘にして秘書役のオーリス・ゲイスが急ぐように中将室へ向かっていた。
 はやては先程まで前線で行動していたのだが、クロノからの連絡を得て早急に退避を指示、その旨をオーリスに伝えると
 地上本部には避難用の地下通路が存在し、其処から局員を退避させるのが賢明と判断、
 次々に局員が退避する中、オーリスは父でもあるレジアスに連絡を取ろうとしているのだが、
 いっさい連絡が取れずレジアスの身を案じ部屋へ赴くことになり、はやては護衛としてオーリスについて行き、現在に至っているのである。
 
 その頃中将室ではレジアスが一人腕を組み、物思いにふけている様子を見せており、向かって左のモニターにはゼストの姿が映し出され、
 右には二つの写真立てが飾っており、レジアスの家族写真と、かつての機動隊の集合写真の順に並べてある。
 すると扉から聞き覚えのある声を聞きレジアスは扉を開くと、其処にはオーリスとはやての姿があった。
 
 「お父!………いえレジアス中将、今すぐ此処から退避して下さい、これはクロノ提督の指示でもあります」
 「そうか……」
 
 そう言うと席を立ち後ろを向き立ち止まるレジアス、その行動にはやてが急かすように言葉を口にするとゆっくりと振り向きこう述べた。
 
 「では、貴様達も早く退避するがいい、ワシは残らねばならん……待ち人も来ているのでな」
 
 そう言うとモニターに目をかけるレジアス、その反応に、あの男はレジアス中将と面識のある人物ではないかと考える。
 一方でオーリスは納得していない様子で説得を試みている中、はやては…もしやレジアス中将は此処を死に場所と考えているのではないかと感じていた。
 するとレジアスははやてに目を合わせ訴えるように見つめていた。
 その目の色に確信を持ったはやてはオーリスの肩を叩き首を振ると、レジアスは後ろを向き手を組み始める。
 そして父の決意を感じたオーリスは未だ納得していない表情を表すも、渋々と部屋を後にする。
 二人は部屋の外で敬礼をすると、レジアスは振り向き敬礼を行う。
 そして…扉がゆっくり閉まっていくような印象受けていると、レジアスの口がゆっくりと動き出す。
 
 「元気でな、我が娘よ…」
 「っ! お父さん!!」
 
 レジアスの言葉にオーリスは駆けつけようとしたが無情にも扉は閉まり、二人の前で二度と開くことはなかった。
 オーリスは扉の前で泣き崩れると、はやてはそっと肩に手を当て沈痛な面持ちで見つめている、
 そして暫くするとオーリスは涙を拭き、いつもの冷静な顔に変わり、はやてと共にこの場を後にするのであった。
 
 …そしてレジアスのみ存在する地上本部、外では不死者が暴れ内部はガジェットに占拠され、入り口にはセッテとその肩に乗るアギトの姿が見受けられた。
 そんな外の騒ぎが一切耳に入らない此処中将室、扉はレジアスのみが開閉する事が出来る作りになっており、
 レジアスは席に座り手を組むとモニターに映る待ち人を目で追い、自室の扉の前で立ち止まるとレジアスは扉を開ける。
 そして待ち人であるゼストは部屋の中に入るなり持っていた槍をレジアスに向ける、するとレジアスはゼストに問い掛けるのであった。
 
 「…ワシを殺しに来たのか?」
 「あぁ……」
 「そうか…だが、只で死ぬのは忍びない、幾つか質問してもよいか?」
 「……答えられる範囲であればな」
 
 ゼストの答えに一つ礼をすると、質問を始めるレジアス。
 
 「一つは、何故ワシの命を?」
 「知れた事、貴様がスカリエッティの事を嗅ぎ回っていたからだ、だが個人的にも理由がある…」
 「ほう?それは?」
 「八年前……“私の”機動隊を壊滅させたきっかけを作った張本人であろう!忘れたとは言わせん!」 

 ゼストの怒りの言葉に目を瞑り口を紡ぐと、更に質問を投げかける。
 
 「…誰からその話を」
 「私を生き返らせてくれた人物、スカリエッティにだ!」
 「そうか……では次の質問だ、貴様はワシの事を“知って”おるのか?」
 
 今度はゼストが口を紡ぎ、暫くすると問いかけに答えるゼスト。
 
 「いや……スカリエッティから話には聞いていたが、会うのは“初めて”だ…」
 「そうか……」
 
 ゼストの答えに大きく深呼吸をすると、最後の質問を投げかける。
 
 「最後の質問だ、貴様は“八年以上”前の記憶はあるのか?」
 「………………………」
 
 レジアスの最後の問い掛けに無言になるゼスト、そして辺りが沈黙する中、口を開き始める。
 
 「いや……無い」
 「そうか…では十分だ、やってくれ……」
 
 そう言って目を閉じ覚悟を決めるレジアス、今まで自分が出来る事は全部してきた、もはや後悔の念はない。
 …だが一つあるとしたらオーリスの子、自分の孫の姿が見れないのが残念だったかも知れない……
 そう心で答えつつレジアスは永遠の眠りにつくのであった。
 
 そしてレジアスの始末を終えたゼストはスカリエッティに連絡すると、撤退を指示されセッテとアギトと共に地上本部を後にする。
 その道中、アギトはゼストを見ると目に大粒の涙が滲み出ており、アギトは心配そうに駆け寄る。
 
 「どうしたんだ?ダンナ、まさか!どっか怪我でもしたのか!?」
 「いや…何故か涙が溢れ出してな……」
 
 そう言うと涙を拭うゼスト、その涙に自身が困惑する中、
 その事実を知っているのは自身の遺伝子に存在する記憶だけなのであった……
 
 
 一方此処は本局無限書庫司書長室、部屋にはユーノがモニターにてミッドチルダの戦況を見守っていた。
 そして地上の光景に歯噛みするユーノ、だが自分が行ったところで何かが出来る訳でもない、
 そう自分のふがいなさを痛感していると、メルティーナが飛び込むように入り、驚きを隠せないユーノ。
 
 「なっなに!メル?」
 「ユーノ!ちょっと来て!!」
 
 そう言ってユーノの手を引っ張るメルティーナ、連れてこられたのは無限書庫の一角のモニター、そのモニターに目を向けるとユーノは唖然とする。
 モニターの中では一部の空白に記録が自動的に書き込まれ、他のモニターでは一部の情報が書き加え若しくは削除、更には上書きが行われていた。
 
 「これは……まさかこの情報は!」
 「そのまさか、最高評議会の情報よ…」
 
 それはつまり無限書庫の中に存在していた最高評議会に関する情報が復活していっている事を差し示す。
 しかし何故このタイミングにこんな現象が起きたのか?
 だがこの期を逃す手はない、ユーノは早急に人員を集め情報の回収を指示するのであった。 
 

 一方、地上本部を脱した一同の中にゲンヤの姿があり、手には一つのノートパソコンを携えていた。
 するとノートパソコンから呼び音が鳴り響き、ゲンヤはパソコンを開くとメール欄に大量の情報が流れ込んでおり、その様子をじっと見つめ空を仰ぐゲンヤ。
 レジアスとゲンヤは自分が死んだ場合に備え、今まで調べた情報をお互いのパソコンに保存、そして無限書庫にウィルスと共に保存されるように仕掛けを施してあったのだ。
 そして無限書庫に送られたウィルスとは改ざん、削除された最高評議会に関する情報をサルベージする物で
 数年前、地下に潜って引きこもっている優秀なプログラマーがいるという噂を聞き、彼等に作らせたウィルスなのである。
 …つまりこれが発動したという事はレジアスは既にこの世にいないという事を指し示しているのである。
 
 「レジアス、あの世でクイントに会ったら伝えてくれ、お前の意志は無駄にしていないと……」
 
 そう天を仰ぎながら小声で話すゲンヤ、その目の端からは一粒の涙が零れ頬を伝うのであった……
 
 一方フェイトとトーレは互角の戦いを見せていた。
 だがそれはお互いに手加減して戦っているものであり、駆け引きに近い戦いをしているのであった。
 そこでフェイトは決着を付ける為、真ソニックフォームの使用を決断した瞬間、トーレが突然構えを解きその行動に困惑するフェイト。
 
 「止めだ…私は十分に時間を稼いだ、これ以上の戦いはナンセンスだ」
 「なっなんですって!?」
 
 トーレの言葉に唖然とするフェイト、トーレはスカリエッティからこれ以上の足止めは必要ないとの連絡を受けた為である。
 そしてライドインパルスにてこの場を去るトーレ、するとフェイトはなのはに連絡を取ると、
 なのはは全く応答せず、その反応に不安を覚えたフェイトは医療院に向かうのであった。
 
 
 「悠久なる凍土、凍てつく棺のうちにて、永遠の眠りを与えよ、凍てつけ!」
 
 一方クロノはエターナルコフィンを用いてガジェット及び不死者の殲滅に一役買っていた。
 だが前線に出るのは久し振りのことで、自分の体の動きに違和感を感じるクロノ。
 
 「…やはり、ブランクは否めんか……」
 
 しかし無情にも不死者達は襲いかかり、クロノはスティンガースナイプを撃ち出し、不死者の弱点である脳やリンカーコアを次々に破壊していく。
 その中クロノの一瞬の隙を狙っていたガジェットII型が迫って来ており、その接近にクロノは気がつくも既に遅く左肩を撃ち抜かれてしまうのである。
 クロノは肩を押さえつつ、ガジェットを破壊するが、クロノの周りには多数の不死者とガジェットが囲みを作っていた。
 その光景に絶望感を感じ此処までか…と諦めかけていたその時――――
 
 「奥義!ジャストストリーム!!」
 
 次の瞬間、クロノを囲っていた群れは黄緑の魔力の竜巻に飲み込まれ、バラバラに四散していった。
 その技に見覚えがあるクロノは声の元へ目を向けると、
 其処には黄色の装飾が付いた騎士甲冑に槍型アームドデバイス・ドラグーンタイラントを携えたロウファの姿があった。
 
 「提督!お迎えに参りました!」
 
 そう言うとクロノの元へ駆け寄り肩に手を回す、すると前方から不死者が此方に向かってくる様子が目に映る。
 
 「くっこのままでは!」
 「安心して下さい、提督」
 
 ロウファがそう言うと前方の群れが次々と撃ち落とされていく、そして目線をしたに向けると、
 其処にはボウガン型インテリジェントデバイス・セルスタインロックガンを構えるジェイクリーナスの姿があった。 

 ロウファの話ではジェイクから連絡があり、局員達は既に那々美と夢瑠の手によってクラウディアに避難させた為、後はクロノの提督だけであると伝える。
 それを聞いたクロノはロウファ達と共にこの場を切り抜けようと考えたときである。
 あれだけ優勢だったガジェットと不死者が、次々に撤退していくのである。
 その反応に不信感を表すクロノであるが、今はこの場を後にする事を優先とし、後方で控えているクラウディアの元へ急ぐのであった。
 
 
 場所は変わり此処はゆりかご内の施設、其処には複数のモニターが存在しており、地上の状況が映し出されていた。
 そして自分達が作り上げた戦力は管理局を遙かに越えているのを確信したスカリエッティは地上に向け高々に宣言する用意をウーノに任せる。
 
 「用意が出来ました、ドクター」
 「そうか…では始めるとしよう……」
 
 用意を終えたウーノがそう言うと狂気に満ちた笑みを浮かべるスカリエッティであった。
 
 
 そして地上の上空には謎のモニターが映し出されており、それだけではなく管理局の施設、聖王教会関連施設のモニターは謎のハッキングを受けていた。
 すると真っ暗な暗闇からスカリエッティの顔が映し出され演説を始める。
 
 「初めましてミッドチルダに住む諸君、私の名はジェイル・スカリエッティ、今回の事件に関わりのある人物の一人だ」
 
 「今回の件により管理局の脆さを痛感したハズだ、“未曾有の危機”とやらの対抗策も我々の戦力の前には稚気にも等しい」
 
 「所詮、管理局の実力はこの程度であるのだ、そして我々は今以上の更なる力を持っている」
 
 「断言しよう!我々に適うものなど居ないと!私はその力でこの世界を破壊し、新たな秩序を作り出す」
 
 「そして私が望む楽園を生み出すのだ!!」
 《随分と偉くなったものだな……“無限の欲望”》
 
 スカリエッティの演説に割って入る声が一つ響くと、モニターに割り込むように映像が送り込まれスカリエッティの映像は消え去った。
 そして割り込んだ映像には最高評議会のエンブレムと、その前にはガノッサの姿があった。
 そしてスカリエッティの電波をジャックした最高評議会がある宣言を促す。
 
 《愚かなる地上の人間よ…このミッドチルダは終焉を迎えようとしている…》
 
 スカリエッティやレザードのような魔法技術にとって害にしかならない存在や、
 世界全体に蔓延している魔法による犯罪行為、秩序が失われたこの世界に最早存在価値など無いと最高評議会は語る。
 そして最高評議会は新たな秩序を作り出す為、まずこのミッドチルダを崩壊させると宣言した。
 その発言を聖王教会で聞いているカリムは、思わず苦痛に似た表情を表し歯噛みする。
 
 《見よ……此が我等の力である…》 

 すると映像は海上を映す、その中で肩を借りているクロノはロウファと共に映像に見入っていた。
 そして映像には海面が盛り上がり、中からは宮殿を思わせる造りをした船が姿を現す。
 その大きさは全長数キロはありそうである。
 
 《此は神王の宮殿…その名もヴァルハラである…》
 
 するとモニターにはヴァルハラの内部が映し出されていた。
 内装は金や大理石などの装飾が美しくされていて、正に宮殿と呼べる造りをしていた。
 そして映像にはエインフェリアの姿が映し出され、更に引きの絵になると白い人型がずらりと並んでいる。
 
 《此こそ我等の要…本物の量産機である……》
 
 量産式人型ストレージデバイス・アインヘリアル、エインフェリアよりも見た目は機械に近く
 全身は白いスーツに覆われ、顔には赤いモノアイのカメラが一つ付いており、
 背中にはカバーに覆われた空冷用のフィンを背負っていた。
 
 《我等はこの力を持って終焉の刻を進め…神々の黄昏を引き起こし…新たなる世界を構築する……》
 
 《…そして我等最高評議会……否…神の三賢人による新たな秩序が始まるのだ…》
 
 だがまだその時期には達してはいない、しかしいずれ訪れる神々の黄昏を楽しみにしているがいいと述べると、
 ヴァルハラは陽炎のように消え去り、モニターも閉じると辺りは静寂に包まれるのであった。
 
 
 その後、本局が重い腰を上げヴァルハラを捜索するが手掛かりはとれず、
 今回の事件によって地上本部、機動六課、本局の駐屯基地は崩壊、死者行方不明者は合わせて100名は下らない大惨事となった。
 その結果を聞いたカリムは予言が覆らなかったと嘆き、クロノは自分の無力さに怒りを露わにし、
 はやてはいずれ来る神々の黄昏に対し、恐怖を感じているのであった。
 
 
 
 
 だがそれでも神々の黄昏は刻一刻と、音を立て迫って来ているのであった………

 

 

 

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最終更新:2010年05月03日 17:09