そこは、薄暗いビルの一室。プロジェクターと投影用のスクリーン、そして、向かい合
うように並べられた机が、会議室である事を知らせている。
 そして、そこにあるのは6つの人影。しかし、そのうちの5つは、己が何者であるかを隠
すように、フードを目深にかぶり、マントを付けている。残る1人も、黒服に白手袋、そ
して白い仮面と、素肌を露出している場所はほとんど無い。唯一個人を特定できるのは、
オールバックになった髪型だけである。

「さて、それではこれより、ガイダンスを始めます」

 その静寂を切り裂いたのは、仮面の男の声。その声と共に、スクリーンに1人の少年の
姿が映し出される。
 ――ザワリ
 部屋に微かな驚愕が満ちる。だが、仮面の男はそれを意図的に無視し、話を続ける。

「ターゲットの名は『クロノ・ハラオウン』。18歳。次元空間航行艦船『アースラ』に所
属の時空管理局執務官にして戦闘魔導師。魔導師ランクはAAA+。
 冷静沈着で真面目、自分にも他人にも厳しいという性格をしております。しかしながら
根が優しいため、特に誰かから嫌われている、という事はないもようです。
 また、努力型の天才であり、『覚えは悪いが覚えた事は忘れない』との評価を得ており
ます。
 戦闘に関していえば、遠近・攻防をそつなくこなすオールラウンダー。バインド系の魔
法も得意としており、戦局にあわせて有効に活用しているようです。
 使用するデバイスは、ストレージデバイス『S2U』。しかし、魔法のほぼ全てを自身の
力のみで使用しているため、これはあくまで補助に過ぎません。
 これほどの才能を秘め、若くしてこの地位に就く事が出来たのも、《因子》が関わって
いるためであると《組織》では考えられております。
 なお、家族構成は、母親と義理の妹が1人。父親は過去の任務により死亡しております。
母親は一線を退いているとはいえ、時空管理局の提督に就いておられます。
 さて、潜入の方法ですが、母親との交渉の結果、『これ以上家族が増えても困る』とい
う事から、義妹という立場は使えません。しかし、それ以外――友人や同僚という立場な
ら、まったく問題はないそうですので、ご一考ください。
 彼の乗るアースラは、現在地球に向かって航行中とのことです。それが到着次第、皆様
方の任務――《因子》の回収がはじまると思っていただきます。公平を期するために、フ
ライングは無しといたします。もししてしまった場合は、相応のペナルティを覚悟してい
ただきましょう」

 そこまで説明をした男は、確認するかのように部屋を見渡す。何か言いたそうにしてい
る者もいるが、特に質問があるわけでもなさそうだ。
 それに満足した男は軽くうなずき、高らかに宣言する。

「それでは、【紳士協定】は今ここに、《因子》回収の解禁を宣言いたします! 皆様方
の活躍を期待しております」

 そして、男は手を挙げる。あたかも、神聖なる宣誓をするかのごとく。
 そして、そこに集いし者達も、彼に倣い手を挙げる。これからの戦いが、聖戦である事
を示すかのごとく。

「それでは、御唱和をっ!」


 栗色の髪をサイドポニーにした少女が、大きく手を振りながら駆け寄ってくる。
「クロノく~んっ!
 えへへ、おまたせっ!」
 その微笑みは、太陽のように眩しくて……

「あ……あれ……?」
 突然ふらついた彼女を、思わず抱き止める。
「あ……えへへ……
 クロノ君、ありがとね」
 そう、彼女は笑った。恥らうように、嬉しそうに。

 《因子》を集める一族、高町家最強の末妹
   不屈の魂を持つ少女
    管理局が誇るエース・オブ・エース!
 高町なのは


「「「「「地には平安をっ!」」」」」


「わかったよ、クロノ。
 あ、でも……」
 小首を傾げながら、恥ずかしそうに尋ねた。
「……お、お兄ちゃん、の方が、いい……かな……?」
 時間が止まるのを感じた瞬間だった。

 スピードによる撹乱を旨とする彼女にとって、防御はそれほど得意ではない。しかし、
「クロノ……だけは……」
 大魔力による砲撃を防御しながら、彼女は呟いた。
「守ってみせる!」
 ぼろぼろになりながらも、その決意は力強く。

 誰のためでもなく、己の信ずるままに
  心優しき金の閃光
   ハラオウン家の真の義妹!
 フェイト・T・ハラオウン


「「「「「天には公正をっ!」」」」」


「クロノ君、任務ご苦労さんやなぁ。
 ……あ、そや」
 ぽんっ、と手を叩いた彼女は、満面の笑みを浮かべた。
「慰安もかねて、私が料理ご馳走してあげるわ。腕によりかけるから、期待しといてな」

「そら、私は指揮官としての勉強もしとるし、余り前線に立つようなキャラやあらへん。
 それに、『海』におるクロノ君とは、住む世界も、こなすべき仕事も違うこともわかっ
てる。
 せやけど……」
 うつむいたままで、少しさびしそうに彼女は続ける。
「……『傍にいたい』って思ったって、えぇやん」

 聖王教会よりの使者
  古代ベルカの力を継ぐ者
    夜天の書最後の主!
 八神はやて


「「「「「我等には《因子》の英知をっ!」」」」」


「ほら、クロノ君は無茶しすぎなんだよ。
 こっちゃ来なさい。お姉さんが膝枕してあげるから」
 いつもの強引さで、甘い香りに包まれてしまう。
「あ、でも……」
 何かに気付いたように呟くと、意地悪そうににんまりと笑った。
「こんなところを誰かに見られたら、どうしよっかな~」
 ……頭が上がりそうに無い事を自覚した……

「……わかってるよ。クロノ君が苦しんでることぐらい」
 そういって、優しく微笑む。
「だからさ」
 そのまま彼女は、優しく抱きしめてくれた。
「泣いてもいいんだよ。胸くらい貸すからさ」

 管理局の秘密兵器
  心優しき姉御肌
   通信主任兼執務官補佐
 エイミィ・リミエッタ


 そして、今ここに、《因子》をめぐる、熱き女の戦いが始まるっ!


「……あのね、いつも言ってると思うけどさ……」
 そう言って、画面の向こうの相手はため息をついた。
「こっちだって人手が足りないんだ! 無茶な要求ばかりしないでくれっ!」
 そんな悲鳴も、なぜか、どこか楽しんでいるように聞こえた。

「……まさか君は、1人で何でも出来るなんて思って無いだろうね」
 淡い緑色のシールドを張りながら、言葉を続ける。
「もう少し仲間を頼ったらどうなんだ! まったく……
 僕がどういう気持ちで待ってると思っているんだ……」

 《因子》を求めるスクライア一族の秘蔵子
  結界魔導師にして最強の男の娘
   無限書庫司書長
 ユーノ・スクライア


「「「「「じぇんとる☆ぷれいっ!!」」」」」

「魔法少女リリカルなのはCST」、始まりま……せんよ?


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最終更新:2009年10月18日 23:55