―Lylycal Nanoha StrikerS × SIREN ~Welcome to Hanyuda vil~― part2
キャロ・ル・ルシエ 蛇ノ首谷/折臥ノ森
初日/0時03分34秒
サイレンが鳴り止んだ。
その後、周囲に拡がる静けさ。
時折木の葉がこすれる音が聞こえる。
とにかく……フリードを呼んでここから出よう。
わたしは相棒の竜の名前を呼んだ。
足がまだ痛い。
そしてその場に座り込んでじっと待った。
下は水溜りだったらしく、じとっと濡れる感触があった。
気持ち悪いので、濡れていない場所を探して再度腰掛けた。
ふと真上を見上げた。
木々の隙間からのぞかせる空には星一つ無く、ただ真っ暗な空間が拡がるのみ。
――?
5分ほど待ったが、いっこうにフリードは姿を現さない。
「フリード!早く来て!」
わたしはもう一度呼んだ。
たが、やはりその後には何事も無かったかのように、静まり返っていた。
竜の羽ばたきの音はおろか、風の音すらしない。
ただでさえ、近くにはガジェットや戦闘機人がうろついているかもしれない状況。
こんな時なら、すぐさま飛んでくるはずなのに。
どうしちゃったんだろ。
ひょっとしたら、ガジェットらに取り囲まれているんじゃ……。
わたしはすぐさま竜魂召喚の詠唱を始めた。
足元に巨大な魔方陣が現れ出した……。
「蒼穹を奔る白き閃光。我が翼となり、天を翔けよ。来よ、我が竜フリードリヒ。竜魂召還!」
だが……フリードリヒの姿は現れない。
ただ魔方陣が空しく回転しているだけ。
そして、何事も無かったかのように魔方陣は消滅した。
「え?なんで?」
今起こっているが理解できなかった。
普通なら、本来の姿のフリードが出てくるはずなのに!
詠唱が不完全だったのかと思い、すぐさま再度魔法の発動させる。
魔法陣が出現するものの……やはりフリードは現れない。
ど、どうなっているの?これ!?
わたしはただ、うろたえるしかなかった。
普通ならまずありえないことだった。
まさか……フリードが倒されて死んだんじゃ……。
そんな思いがふと頭をよぎった。
いや、そんなのは嫌!
わたしは目を閉じて、けんめいに首を振って、そんな予感を振り払おうとした。
その時だった。
視界に白い砂嵐――まるで放送が終わったテレビが映し出す画面のような――が現れて、画面が切り替わる。
目の前には勢いよく生い茂る木々の葉。
それを掻き分けながら前進しているようだった。
そして再び砂嵐の画像になって……私が今までいた風景が見える。
い、今のは何?
何が起こったのか、全く理解できなく、その場でただ立ち尽くす。
再び、砂嵐が映って……画面が切り替わる。
相変わらず木々を掻き分けて……立ち止まっていた。
息遣いがやたらと荒い。しかも、視線もどこか安定していなく、ふらふらとしている。
葉の隙間から、目の前に広がる光景が僅かに見える。
その先には誰かの後姿。
背は小さく、白い帽子をかぶった、桃色の髪の小柄な人物。白いマントを羽織っていた。
これって……わたし!?
ふと視界の隅に、わたしを見ている「誰か」の手にしているものが映る。
――鎌!?
それははっきりとは分からなかったが、草刈なんかで使う鎌だった。
しかも、その刃先には何かが滴り落ちて……!!
同時に画面が再び切り替わり、元の視界に戻る。
すぐさまわたしは後ろを振り返った。
すると……それと同時にその先に見える茂みが動き出す。
がさがさと木の葉を掻き分ける音が響く。
わたしの頬を一筋の汗が静かに流れ落ちる。
やけにひんやりとして気持ち悪い。
茂みを掻き分けて……一人の人影が姿を現した。
麦藁帽子をかぶって、白いシャツにズボンをはいた男の人だった……。
でも……明らかに様子が変だった。
服は汚れがついて、ボロボロで。
姿勢もどこかおぼつかなく、フラフラしている。
何より……顔は青白く、目からは血の涙を流し、白目をむいて不気味に笑っていた!
その手には、血が滴り落ちた鎌が!
明らかに人じゃない。
そいつはゆっくりとわたしに近寄ってきた。
逃げ出さなきゃ……そう思っても、体が動かない。
ただ、ぶるぶると震えながら……そいつが近寄ってくるのを見ていることしか出来ない。
そいつはわたしの目の前に立ち、じっと見ると、口を歪めてなお笑い出す。
「……お嬢ちゃんも悪い子だね……こんな夜中に出歩いちゃだめだぞお!ぎゃははは!」
うめくような低い声で笑い出すと、手にしていた鎌を振り上げた!
―to be continiued―
最終更新:2007年08月14日 17:01