―――9

クラナガン市第11区ホルテンマルス通り。
陸上部局機動一課第18師団226陸士部隊は、スィンドル及びドロップキックなどのドローンたちと、文字通り死闘を演じていた。
胸部の砲塔を展開して次々と砲弾を撃ち込んでくるドローン部隊に対して、陸戦魔導師たちはバリアやシールドだけでなく、時に素早く移動し、
時に建物や車を盾代りにして攻撃を避ける。
そして、砲撃が止むのと同時に部隊全員の攻撃魔法をドローン一体に集中させて確実に倒して行くという、ゲリラ戦的な方法で本局ビル方面
へ侵攻するドローン部隊を足止めしていた。
しかし、ドローン部隊と陸士部隊の火力と装甲の差は如何ともし難く、陸士部隊は後退に次ぐ後退を強いられていた。

「くそっ、何なんだあいつらは!!」
ワゴン車の陰に隠れている、恐竜のような顔立ちのと鱗の肌をした陸士が、デバイスにカートリッジを装填しながら悪態をついていた。
「何が大型ガジェットドローンだ、車に変形する人型GJなんて見たことも聞いた事もねぇぞ!」
その隣でベルカ式ポールスピア型デバイスを構えた、脳が見える透明の頭をした三本指の陸士が、攻撃が止んだのを機に頭を少し上げると、
ドロップキックがこちらへ砲口を向けるのが見えた。
「おい、逃げろ!」
仰天した表情の陸士が、同僚の腕を引っ張って歩道へ逃げ出すのと同時に砲弾が車を襲い、直撃を受けた車が大爆発して路上を転がって行く。
路地に伏せて爆発を避けた、鶏冠のついた四本の大きな皺の走った頭をした指揮官を務める陸曹は、陸士二名を路地に呼び寄せると、回復した
ばかりのモニターに向かって怒鳴りつける。
「こちら陸士226部隊、これ以上は持ち堪えられそうにないぞ! 増援はどうしたんだ!?」
モニターの向こうでも、通信担当の士官が、同じくらい大きな声で怒鳴り返してきた。
「現在EW-TT隊がそちらに急行している、もう少し我慢してくれ!」
「了解した!」
陸曹はそう言ってモニターを切ると、懸命に闘っている部隊へ振り向いて笑いながら声と念話の両方で呼びかける。
「応援が来るぞ! 後ちょっとの辛抱だ、踏ん張れ!!」
その言葉に力を得た魔導師は、了解の意を示す陸士部隊共通の掛け声を一斉に上げた。
「ウーオッ!」

戦車に蜘蛛のような多関節脚を六本くっ付けたような形の、“歩行戦車型アインヘリアル(Einherial Walking―Tank Type 略称EW-TT)”
五両は、本局ビルNMCCより指示のあった場所へ急行しつつあった。
「前方に爆炎を確認!」
前席の、亀の甲羅のような頭に虎の様な牙を口から生やしたパイロットからの報告に、穴のような耳と肩に棘を生やした、部隊長を務める一尉の
階級章を付けた士官がペリスコープ用のモニターを開く。
すると、ロボット軍団と追い詰められつつある陸戦魔導師部隊の激しい攻防戦が、目の前に映し出された。
「ありゃ一体何だ?」
今まで見た事のない人型ロボット兵器に、車内の乗員がざわめき始める。
「落ち着け!」
部隊長が周囲の窘めるように大声を上げる。
効果覿面。その一喝に、車内のざわめきが水を打ったように静まり返った。
「何であれ目の前の敵は叩き潰す、只それだけの事よ! カートリッジロード!」
一尉の指示に、砲手が155ミリ砲弾サイズのカートリッジを砲型のデバイスに装填すると、EW-TT車体真下の路面に、ミッド式魔方陣が展開
される。

「来たぞ! 増援部隊だ!!」
EW-TTを見た陸士が仲間たちに大声で呼び掛けると同時に、隊長の眼前にEW-TTから空間モニターが開かれる。
「こちら機動一課 第89師団 陸士209部隊 重魔導車両部隊だ。これから敵GD部隊に対して攻撃を行う、至急後ろに退ってくれ」
連絡を受けた陸士部隊は、ロボット軍団に対して牽制の攻撃魔法を放ちながら、EW-TTの後ろへ後退する。

「陸士部隊の後退完了、目標までの距離、約百五十百メートル!」
土偶のような、縄のよれたような皺だらけの顔に、上唇にサーベルタイガーのような二本の牙を持つ観測手兼砲手の報告を受けて、一尉は矢継ぎ
早に部隊へ指示を出す。
「全隊、照準を本車真正面の人型GD部隊中央に!」
一尉の指示を受けて、EW-TTの全車の照準がスィンドルたちの中央部にセットされる。
こちらに向けて歩行戦車がやって来た事に気付いたドローンは、攻撃目標を目前の陸士部隊からEW-TTに変更する。
「敵部隊より攻撃が来ます!」
砲手から報告を受けた一尉は、即座に命令を下す。
「プロクテション!」
デバイスがフィールドを張るのと同時にスィンドルとドロップキックがEW-TT目掛けて一斉に砲撃する。
だが、砲弾はフィールドに弾かれるか、突き抜けても車体を貫く程の力はなく、虚しく跳ね返るばかり。
「ディバインシューターセットアップ!」
隊長の号令一下、砲手がデバイスのチャンバーレバーを引くと、EW-TTの砲口に紫色の丸い光が現れる。
「ディバインシューター、セット完了!」
砲手の言葉を受けて、隊長はEW-TT全車両に命令を下した。
「撃て(シュート)!」
その声と同時にEW-TT全車からまばゆい光の球が放たれた。
ドロップキックとスィンドルたちは回避行動をとるが、迸る魔力が嵐となってドローンたちを巻き込んで行く。
回避が間に合わなかったドローンのボディを突き抜け、周囲の仲間を巻き込み、吹き飛ばしながら、ディバインシューターはしばらくの間路上を荒れ
狂っていた。
魔力の嵐が収まり、舞い上がっていた誇りが落ち着くと、魔導師たちをあれ程苦しめていた二足歩行の巨大ロボットの大群が、今や物言わぬ
スクラップとなって横たわっていた。

「ほう」
メガトロンは腕を組んで感心したように頷きながら言う。
「エネルギーを収束させて、強力な弾丸として撃ち出す…か。ひ弱な炭素生物にしては中々知恵が回るようだな」
「ですが所詮はチビどもの玩具、我々が本気を出せば一捻りですよ」
スタースクリームがそう言って唾でも吐くように口からオイルを飛ばすと、メガトロンは腕を挙げて窘めるように言う。
「その通りだが相手を甘く見過ぎると、思わぬところで足元を掬われるぞ」
メガトロンは次に、マイクロ波による無線通信でクラナガン市街へ呼びかける。
“ボーンクラッシャー”
メガトロンから指名された大型の質量兵器用特殊工作トラックは、呼びかけを無視して百キロ以上のスピードで市内を暴走していた。
前方の車を自らの巨体で弾き飛ばし、時には建物に体当たりして崩壊させ、街灯や人間をボウリングのピンのように轢き倒していく。
車体のアームで乗用車を掴み、攻撃魔法を撃ち込みながら追って来る空戦魔導師部隊目掛けて投げつけるなど、傍若無人の限りを尽していた。
“ボーンクラッシャー、聞こえてる筈だ、返事をしろ!”
メガトロンからより厳しい口調で詰問された時、ボーンクラッシャーは初めて返事をする。
“聞こえている、何か?”
ボーンクラッシャー返事が来ると、メガトロンはクラナガン市街の地図を転送しながら指示を下す。
“敵が戦車を担ぎ出してきた、ドローンどもが苦戦しとるから片付けて来い。
場所は第11区のホルテンマルス通りだ”
“了解”
ボーンクラッシャーは簡潔に答えると、更に加速して魔導師たちの追撃を振り切り、目的地へと向かった。

NMCCの超大型空間モニターにはクラナガン市街の地図が表示され、市街各所で繰り広げられている陸・空戦魔導師部隊と正体不明のロボット
軍団の戦闘状況が、青と赤の矢印で表示されている。
その周囲を取り囲む無数の空間モニターには、市街戦の映像が映し出されていた。
ロボットからの砲撃を受けた魔導師が、木の葉のように吹き飛ばされるのが映った時、なのははレイジングハートのチェーンを強く握りしめた。
「焦るな」
なのはの焦りを察知したゲンヤが、諭すように言う。
「切り札ってものは、やたらと見せびらかすもんじゃねぇ、ここ一番って時に切るからこそ活きるんだ」
ゲンヤの言葉に頷き、内心の葛藤を必死に闘いながらなのはは答える。
「分ってます、分ってますけど……っ」
今度は長官が冷徹な口調でなのはに言った。
「自分一人で総てを背負えると思っているのか?」
自分でも思い上がりと意識している事を冷静に指摘された事に、なのはの表情が怒りを帯び、口調が自然と荒くなった。
「そんなつもりは……!」
「なのはちゃん!」
はやてがそう言って腕を抑えなければ、なのはは長官に食い掛っていたところであろう。
「も、申し訳ございません…!」
我に返ったなのはは、自分がしでかしかけた事の重大さを悟り、慌てて長官に頭を下げた。
「いや、いいんだ。気にしないでくれ」
長官は笑いながら手を挙げてなのはの謝罪を受け入れると、自分の眼前にあるモニターに目を向けながら小さくつぶやいた。
「私自身も同じ思いだよ、長官としてもっと出来る事があるのでは…? とな。
だが、実際に人手はあまりにも足りなく、示せる選択肢は極めて限られる…。
まったく、この世は思い通りならな事ばかりだな」
この呟きをゲンヤは聞いていたが、彼は何も言わなかった。

デモリッシャーの車輪をかいくぐりながら、チンクは苦内型の固有武装“スティンガー”を続けざまに投げつける。
総てデモリッシャーの顔で炸裂するが、相手は怯む気配すら見せない。
「チンク姉、だめだ。でか過ぎてあたしらの攻撃魔法じゃ埒が明かない!」
「あきらめるなノーヴェ!」
ノーヴェが歯ぎしりするノーヴェを叱咤するが、チンク自身も口の中で小さく呟いた。
「とは言え、こちらも手詰まりか…」
“チンク姉、聞こえる?”
ディエチから念話で呼びかけられたチンクは、デモリッシャーの攻撃圏から一旦離脱し、等距離を取って監視しながら返事する。
“どうしたディエチ?”
チンクからの問いかけに、まるで躊躇うかのように少し間が空いた後、ディエチが念話を再開する。
“あの化け物は…悪いけど、多分私達の手には負える相手じゃないと思う”
チンクも悔しそうに歯噛みしながら、ディエチの意見に同意する。
“そうかも知れん、だが他の部隊も手が回らない以上、我々だけで対処するしか…”
その返答を予期していたのだろう、ディエチからの返答はチンクの考えを首肯しながら、自分の考えを伝えるものだった。
“うん、そうだね。それで…倒せなくても、もしかしたら動きを封じる事が出来るかも知れない。
チンク姉、そいつを何とか海側におびき寄せられない?”
“難しい事を言ってくれるな…”
チンクは苦笑しながらも、ディエチに了承した旨を伝える。
“分かった、何とかやってみる”
チンクが答えるのと同時にデモリッシャーの後頭部が開き、中から数十発のミサイルが一気に発射された。
「いかん!  全員散開!!」
それを見たチンクが大声で指示を出す。
空へ上がったウェンディとチンク、そして地上を全力で疾走するノーヴェ目掛けて、ミサイルが獲物に群がるピラニアの如く追ってくる。
「誘導弾ッスか!」
逃げ切れないと悟ったウェンディは、振り向くとISを起動させる。
“フローターマイン”
デバイスが声を発すると、ピンク色に光る数十個の魔力球がウェンディの前にカーテン状に展開される。
ミサイル群が突き抜けようとすると、球は一斉に爆発を起こし、そこにまともに突っ込む形なったミサイルも全弾誘爆を起こした。
「ウェンディ、無事か?」
スティンガーでミサイルを防いだチンクが、ウェンディの横で並列飛行しながら尋ねる。
「大丈夫ッス!」
ウェンディが親指を挙げて笑顔で返答するのを確認すると、チンクは次に地上へ眼を向ける。
「ノーヴェは?」
それに応えるかの様に、エアライナーに乗ったノーヴェがこちらへ向けて昇って来るのが、二人の眼に写った。

「敵GD部隊、完全に沈黙!」
砲手と各車両から同じ報告を受け取った部隊長は満足げに頷く。
「ここからもっとも近い戦場はどこか、本局に問い合わせてくれ」
指示を受けた通信士が本局と連絡を取り始めた時、運転士のモニターに突然“未確認車両接近中”という警告が表示された。
「隊長、前方より所属不明の車が一台近付いて来ます」
運転士は自分のモニターの映像を、部隊長のところに転送する。
そこには、危険物処理や災害現場の後片付け用に陸士部隊へ配備されている大型特殊車両が、ドローンの残骸を掻き分けながら近付いて来る
のが映っていた。
「こちらは機動一課 第89師団 陸士209部隊所属の重魔導車両部隊である、貴方の所属を知らせよ」
EW-TTからの問いかけに返答せず、特殊車両は無言のまま近付いて来る。
「全車、ディバインシューターセットアップ!」
指示を受けたEW-TT全車の足元に、ミッド式魔方陣が再び展開される。

「撃て!」
ディバインシューターが発射されると、特殊車両は弾道を予測したかのように、反対車線へ移動して、魔力弾の直撃を避ける。
先程だったら、直撃しなくとも衝撃波で吹き飛ばされる筈だが、特殊車両はそんなもの存在しないかのように、悠然と走っている。
「なにっ!?」
その様子を見ていた部隊長が驚きの声を上げる。
まるでそれを合図としたかのように、特殊車両は急加速してEW-TTとの距離を瞬く間に詰めてくる。
「全車後退!」
部隊長がそう怒鳴るのと、特殊車両が変形を始めて“デストロン軍団破壊兵ボーンクラッシャー”の正体を現したのは同時であった。

ボーンクラッシャーは、今や巨大な拳と化した障害物及び危険物除去用のアームを上から叩き付け、一両目のEW-TTをまるで蠅でも叩くかの
ように苦もなく潰す。
潰した車両を掴み上げると、左側のEW-TTに叩き付けて横にひっくり返し、次に正面の三両目に投げ付けて擱座させる。

「ディバインバスター準備!」
目まぐるしく変わる状況に、部隊長は覚悟を決めた表情で指示を下す。
四両目を撃破したボーンクラッシャーが隊長機を掴んだ瞬間、部隊長は攻撃命令を出した。
「撃て!」
零距離で撃ち出された砲撃がボーンクラッシャーを直撃、まばゆいばかりの閃光と埃が舞い上がり、辺りを覆い尽くす。
車内の全員が固唾を呑んで見守る中、埃が晴れて来ると、EW-TTの必死の反撃を嘲笑うかのようにボーンクラッシャーが悠然と立っていた。
「そんな…!」
部隊長が絶句すると同時にボーンクラッシャーが再びEW-TTを掴んで軽々と持ち上げる。
車内の乗員は全員シートベルトを付けていたので放り出される事はなかったが、突然天地がひっくり返った事に恐慌を来たす。
ボーンクラッシャーは車両を軽々と持ち上げると、路上で民間人を退避させていた陸士部隊目掛けて放り投げた。
「こちらボーンクラッシャー。邪魔者は総て片付け―――」
結果は見るまでもないと判断して報告を始めたボーンクラッシャーは、いつまでも重車両が路上に激突する音が響かない事に不審を抱き、途中で
報告を止めて振り返った。

先程までドローン達と戦っていた魔導師部隊は、EW-TTが後を引き継いで以降通りに残って戦闘を眺めていた民間人の避難誘導を行っていた。
ボーンクラッシャーが車両部隊を潰し始めると、隊長は民間人の避難と同時に、手の空いた陸士達を、破壊された車両の乗員の救助に向かわせ
ようとするが、その暴れっぷりに近づく事すら出来ない。
このままでは自分達もやられる。
そう判断した隊長は民間人の避難が完了次第、陸士達も退却するよう、断腸の思いで命じる。
最後の家族連れを連れて隊長達が退避しようとした時、ボーンクラッシャーが放り投げた車両が、こちらへと飛んで来るのが見えた。
「逃げろ!」
呆然として動けない家族連れと部下達に怒鳴りながら、我が身を犠牲にする覚悟で隊長はプロテクションを展開する。
その時、彼の横を猛スピードで人影が横切り、跳び上がるとEW-TTに飛び付いた。
路上に十数メートルの擦過痕を残し、重戦車並の重さのEW-TTを人影は一人で受け止めながら、隊長達の眼前で停止する。
白のジャンパーと短パン型のバリアジャケットに、ローラーブーツにハンドガード型のデバイスを装着した人影は、隊長に振り向いて尋ねる。
「機動五課 第58師団 陸士556部隊所属のスバル・ナカジマです。怪我はありませんか?」
問い掛けに隊長が頷くと、スバルはモニターを開く。
「シャマル先生、スバルです。第11区ホルテンマルス通りで民間人数名と陸士部隊を救助。負傷者もいる模様です。至急後方への搬送をお願いします」
「分かったわ。今、そちらに向かうから」
モニターから声がすると同時にスバルの横で緑色に輝く鏡が出現し、中から緑のロングドレスのバリアジャケットを着たシャマルが出て来た。
「次元部局タイコンデロガ医務官のシャマルです。皆様、こちらから避難して下さい」
シャマルの指示に従って家族連れは鏡の中へと入って行き、一方スバルはEW-TTのドアを力任せに引き開ける。
「大丈夫ですか?」
スバルの呼び掛けに、部隊長がシートベルトを外しながら答える。
「私は大丈夫だ、だが、部下が…」
スバルと部隊長が怪我をした乗員を外へ運び出していた時、砲弾が頭上のビルの壁を穿ち、破片が擱座したEW-TTの車体に降りかかる。
攻撃のあった方をスバルが見ると、新たにやって来たドローンたちが、砲撃しながら近付いて来るのが見えた。
「シャマル先生、敵GD部隊は私が食い止めますので、怪我人をお願いします」
スバルがそう言うと、シャマルがEW-TTの所へ駆けて来る。
「言っとくけど、危険と判断したら即座に撤収しなさい」
シャマルの言葉に、スバルは敬礼で返した。

EW-TTからこちらへ向かって来るスバルに、ドローン達は砲口を向ける。
雨あられと撃ち込まれる砲弾をスバルはジグザグ運動で回避し、通りの左端に立っていたスィンドルの足元に蹴りを入れて仰向けにひっくり返す。
隣にいたドロップキックが砲撃するが、スバルは跳び上がってそれを回避し、弾は倒れたスィンドルを木っ端微塵に吹き飛ばす。
スバルはそのままドロップキックの肩に飛び乗ると、背中をナックルダスターで殴り付ける。
後ろからいきなり強く突き飛ばされる形になったドロップキックは、砲を乱射しながらグルグル回り、周囲のドローンを次々とスクラップにしていく。
背中にいるスバル目掛けて、ドローン達が一斉に飛び掛かる。
レッゲージがドロップキックの背に飛び付き、ニ体は縺れ合って路上に倒れる。
しかし、その時にはスバルは再び宙を舞っており、スィンドルの頭上に降り立つと脳天にリボルバーキャノンを叩き込んで粉々に粉砕する。
火花を放ち、身体を小刻みに震わせながら倒れたスィンドルの上に、スバルは悠然と降りる。
後方から別のドローン達がやって来て砲口を開いた時、ボーンクラッシャーがその内の一体を拳で殴り倒す。
“手を出すな! こいつは俺の獲物だ!!”
ドローン全員に無線で命令すると、ボーンクラッシャーはスバルへ挑むように、真正面から対峙する。
ドローンを殴った事と威圧感たっぷりに睨み付ける姿。
相手をガジェットドローンと同様の自動兵器と考えていたスバルは、そのあまりに人間的な反応に違和感を覚える。
と、ボーンクラッシャーはスバルに考える暇を与えさせないかのように、足元に転がっていたドローンの残骸を持ち上げて投げ付けてくる。
スバルは盛大なスキール音と共に急発進して残骸を避けると、走りながらカートリッジを再度装填する。
次々と投げられて来る残骸を左右やジャンプして避け、時には真正面に来たものを殴り落としながら、スバルはボーンクラッシャーへと迫る。
ボーンクラッシャーの方も路面の舗装を盛大に巻き上げながら急発進する。
進路上にある残骸や瓦礫を弾き飛ばしながら、ボーンクラッシャーは鉤爪をスバル目掛けて振り下ろす。
スバルは左にステップして回避するが、そこへボーンクラッシャーの右拳が襲ってくる。
それに対してスバルは拳の来る方向に身体を捻らせて攻撃を受け流し、勢いを殺さずに裏拳を肘の辺りに叩き込む。
勢いを流された上に攻撃をまともに受けたボーンクラッシャーは、バランスを崩して横向きに倒れ、その際拳が左側にあるオフィスビルの壁面を破壊する。
スバルは後退して、降って来る建物の残骸を避ける。

埃が濛々と巻き上がって姿が見えなくなったボーンクラッシャーに向けて、スバルは警告する。
「こちらは時空管理局陸上部局機動五課第778師団陸士71部隊所属のスバル・ナカジマです。
当該大型GDに搭乗しているパイロットに警告します、直ちに武装を解除し、GDより降りて降伏して下さい」
次の瞬間、土煙の中からボーンクラッシャーが飛び上がり、スバルの目の前に降り立つ。
「クソ喰らえだ! 止められるもんなら止めてみやがれ!」
中指を突き立て、ミッドッチルダ語で挑発するボーンクラッシャーに、スバルは面食らった表情で素っ頓狂な声を上げる。
「しゃ、喋った!?」
ボーンクラッシャーは、唖然とするスバルを嘲笑う。
「お前らの言葉で話した事がか? 俺に言わせれば、手前ェら単純な炭素生物が言葉や道具を使う方が驚きだがな!」
スバルはその挑発には乗らず、相手がどんな動きを見せてもすぐ対応出来るように、構えを取る。
そんなスバルの様子に構わず、ボーンクラッシャーは言葉を続ける。
「スバル・ナカジマと言ったな? 冥土の土産に教えてやるぜ、俺はデストロン軍団破壊兵ボーンクラッシャーよ! よぉーく覚えとけ!!」

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最終更新:2010年08月10日 00:09