なのはと
リリカルマンは、今まで紹介してきた物以外にも、まだまだ紹介しきれない程の様々な
怪獣や侵略者との戦いを繰り広げていたのであったが、ついにそれも最後の戦いの時が来てしまったのである。
『さらばリリカルマン』 次元恐竜ゼットン 超次元恐竜EXゼットン 登場
ミッドチルダに突如として正体不明の大円盤部隊が襲来、クラナガンへ向けて攻撃を開始した。
時空管理局は総力を持って迎え撃つが、そのせいで殆どの局員が出動して管理局地上本部はがら空きに
なってしまった。そこへ謎の大円盤部隊を送り込んだ者だと推測される謎の次元人が直接攻撃をかけて来のだ。
局員に巧妙に化けて堂々と地上本部に入り込み破壊を行おうとしていた次元人だが、その行動を
不審に思ったティアナに見破られ、撃ち合いの末に何とか退治されるに至った。
外では大円盤部隊もなのはやフェイトを中心とした管理局の猛者達や、
その他様々な局員の頑張りによって
次々に撃墜され、事態は収束されていくかに見えたが、最後に残っていたとんでもない強敵を迎える事に
なってしまうのである。
『ゼットォン!』ピポポポポポ
最後の一機と思われた大型円盤の中に隠されていた一体の怪獣。次元人がミッドチルダ攻撃用の
生物兵器として温存していた次元恐竜ゼットンが出現したのである。その姿は恐竜と言うよりも
虫類に近い物であったが、次元恐竜の名が指す通り、ミッドを中心とした管理世界とは
全く異なる常識の範囲における恐竜があの姿なのだろう。
『ゼットォン!』ピポポポポポ
ゼットンと言う不気味な咆哮と怪しい電子音を響かせ、ゼットンは地上本部へと迫る。管理局は迎撃するが
過去に出現した如何なる怪獣をも上回る力を持ったゼットンには効果が薄かった。
あらゆる魔法攻撃は愚か戦艦の艦砲射撃、さらには魔力砲マルス133すらも耐え切ってみせたゼットンは
さらに頭部から一兆度と推定される超高熱の火球を放ってクラナガンの街を焼き払って行く。
この未曾有の事態に管理局は最終作戦を発動。それはゼットンを宇宙空間に転送し、宇宙空間に待機させた
管理局艦隊によるアルカンシェル一斉砲撃によって完全に消滅させると言う、過去に闇の書防御プログラムを
完全に消滅させた実績と定評のある作戦であった。
なのはやフェイトを中心とした攻撃魔法を得意とした局員達が果敢に攻撃を加えゼットンを足止めし、
その間に転送魔法を得意とした局員がゼットンの強制転送準備を進める。作戦は成功した。
ゼットンはミッド地表から宇宙空間へと一気に転送されて行き、その後で宇宙空間に待機していた艦隊が
一斉にアルカンシェルでゼットンを攻撃した。理論上あらゆる物体を消滅させる事が出来るアルカンシェルならば
ゼットンも跡形も無く消滅する………に思われたが…………
ここでさらにとんでもない事態が起こった。ゼットンがアルカンシェルのエネルギーを吸収し、
超次元恐竜EXゼットンへと進化していたのだった。さらに戦闘的に精錬された姿となるのみならず
大幅にパワーアップしたEXゼットンは一兆度火球の高速連射によって管理局艦隊を瞬く間に壊滅させると共に
再びミッド地上に降り立ち、クラナガンの街を破壊しながら地上本部へ迫った。
もはやこうなってしまってはブラスターで強化したディバインバスターやスターライトブレイカーを撃ち込んでも
倒すどころかまともなダメージを期待する事すら無理なのかもしれない。そう悟ったなのはは激戦のドサクサに紛れ、
周囲に誰もいない事を確認した上でベーターカプセルを点火、リリカルマンに変身した。
『ヘァッ!』
変身すると共にリリカルマンは空中で高速回転を始めた。するとリリカルマンのその回転する身体から
リング状のエネルギーが放たれEXゼットンの身体を束縛して行く。ミッド式魔法におけるバインドに
相当する力を持ったキャッチリングである。しかし、EXゼットンは自身を束縛するキャッチリングを
易々と引き剥がす怪力を見せ、リリカルマンに推定一兆度の火球を撃ち込んで来た。これには流石の
リリカルマンも大きなダメージを受け倒れてしまった。
『ジェァ!!』
しかし弱音を吐いて入られない。素早く立ち上がり再度構えるリリカルマンだが、鈍重な見た目に反して
素早く、しかも瞬間移動能力までも持ち合わせたEXゼットンに翻弄されてしまう。
『ヘァァ!』
それでも何とか狙いを定め、素早く八つ裂き光輪を放つリリカルマン。だがEXゼットンは
EXゼットンシャッターなる超強力バリアーまで持っていた。流石の八つ裂き光輪も
EXゼットンシャッターの防御を貫く事が出来ず、粉々に砕けてしまった。
「リリカルマーン! 頑張ってー!」
フェイトやティアナ、その他管理局の局員達が見守り応援する中、リリカルマンはEXゼットンに
果敢に格闘戦にかかる。だが、EXゼットンはリリカルマンさえねじ伏せる恐るべきパワーを誇っており、
逆に首を捕まれ、地面に押さえ込まれてしまった。
『ジェア! ジェェェェ!』
EXゼットンに地面へ押さえ付けられ脱出しようともがく中、ついにリリカルマンのカラータイマーが
赤く点滅を始めた。エネルギーが限界に近いのだ。このままカラータイマーから光が消えた時、リリカルマンは
立ち上がる力を失ってしまう。リリカルマン、立て!
『ヘアァァ!』
どうにかEXゼットンを跳ね飛ばして脱出するリリカルマン。リリカルマンは最後の手段に出る。
なのはの持ったスターライトブレイカーの応用によって周囲の魔力をエネルギーとして集束し放つ
スターライトスペシウム光線だ。まさに一発勝負。眩い光と共にリリカルマンの十字に組まれた手から
桃色の光の混じったスペシウム…スターライトスペシウム光線がEXゼットン目掛け放たれた。
だが、ここでまたも信じられない事が起こった。EXゼットンはスターライトスペシウムさえも吸収し、
さらに自身のエネルギーを加えてより強力になった光線を撃ち返して来たのである。そしてリリカルマンは
それを自身のカラータイマーに受け、余りの威力にカラータイマーを破壊されてしまうのだった。
リリカルマンのエネルギーを蓄積させる役目を持ったカラータイマー。それを破壊された事によって
リリカルマンのエネルギーは見る見る内に消滅し、ついにその場に倒れてしまった。
リリカルマンが敗れた。その衝撃的な光景に誰もが騒然となってしまう。
リリカルマンは朦朧とする意識の中、自分が繰り広げてきた過去の戦いが走馬灯の様に流れていくのを見た。
それは彼の最期が近い事を意味していた。
「リリカルマーン! 死んじゃだめ! 立つんだよ! 起き上がって! リリカルマーン!
貴方が死んでしまったらミッドチルダは…次元世界はどうなってしまうの!? リリカルマーン!」
「頑張って…。」
「立つんや………。」
管理局の皆が声援を送るも空しく、リリカルマンは立ち上がる事は出来ない。
「こうなったら私達が!」
「例え無理だと分かっていても…やるだけの事をやるんだ!」
リリカルマンが倒れた今、もはやこの世界を守れるのは管理局しか無い。フェイトやティアナは
無謀だと分かっていてもEXゼットンに立ち向かって行く覚悟を決めていたのだが、
その二人を呼び止める者がいた。
「ちょっと待つんだ。」
それは無限書庫司書長ユーノ=スクライア。そして彼は二人に何かカプセル状の物体を手渡していた。
「無限書庫で『フェレットでも分かるゼットンの倒し方』と言う文献を発見してね、その記述に則って
大急ぎで作ってもらった新兵器だ。けどこれ一発しか無いから仕損じてはだめだよ。」
「ユーノありがとう。後、これを作ってくれた人にも礼を言わないと…。」
「ちなみに作ったのはジェイル=スカリエッティなんだけどね。」
「え……スカリエッティ……。」
地上本部へ迫るEXゼットンに向け、フェイトとティアナはユーノに貰ったスカリエッティが
作ったと言うのがちょっとアレな新兵器を携えて接近、それぞれの魔法を推力としてEXゼットンへ撃ち込んだ。
するとどうだろうか。直撃を受けた途端にEXゼットンはそこだけ重力を失ってしまった様に空中へ舞い上がり、
空中で木っ端微塵に破裂するのだった。
「やったぁ!」
「私達の勝利だよ!」
あれだけの強大さを誇ったEXがゼットンが一撃。余りのあっけ無さに拍子抜けしてしまうかも
しれないが、『フェレットでも分かるゼットンの倒し方』と言う文献は伊達では無いと言う事だろう。
何はともあれ、EXゼットンを倒した事により、二人は思わず子供の様にはしゃぎ喜んでしまっていた。
しかし、まだやらねばならない事は残っていた。
「あ! そうだ! まだ火が残ってる。火を消さなきゃ!」
「あ! そう言えば…そうですね!」
EXゼットンの破壊活動やリリカルマンとの激戦によって彼方此方で火災が発生していた。
それ故に皆で手分けをして消火活動と被害を受けた人々の救出活動を始めていた。
そして消火活動や救出活動も一通りきりが付いた時、何かに気付いたユーノが突然大空を指差していた。
「皆、あれを見るんだ。」
「あ…あれは…リリカルマン?」
大空の彼方からリリカルマンがもう一人現れ、こちらへ飛んで来ていた。しかし、それはリリカルマンとは
若干身体の模倣が違う様だった。
「リリカルマンが二人?」
「いや、あれはきっとリリカルマンの同胞に違いない。」
リリカルマンの同胞…M78次元世界の次元人は空中で回転を始めると共に赤い光の玉を作り出し、
皆が見つめる中、地面に倒れていたリリカルマンはその中へと吸い込まれて行った。
赤い光の玉の中において、M78次元人はリリカルマンへ向けて話しかけていた。
『リリカルマン、目を開け。私はM78次元の次元警備隊員ゾフィー。さあ、私と共に光の国へ帰ろう。』
M78次元世界の次元人にしてリリカルマンの同胞、次元警備隊員を名乗るゾフィーは
リリカルマンを迎えに来た様子であった。しかし…
『ゾフィー…私の体は私一人だけの物では無い…私が帰ると…一人の人間が死んでしまうのだ…。』
今のリリカルマンはなのはと一心同体となった身である、それ故に帰る事は出来なかった。
リリカルマンがなのはの生命維持を行っているのだから、リリカルマンが去ってしまうのは
なのはの死を意味しているのだ。
『リリカルマン、お前はもう充分にこの世界の為に尽くしてくれた。ミッドチルダの人々は許してくれるだろう。』
『なのはは立派な人間だ…犠牲には出来ない…。私はミッドチルダに残る…。』
やはりリリカルマンはなのは自身や他の皆の事を考え、とても帰る事は出来ないと拒否する。
しかし、ゾフィーはこう続けていた。
『ミッドチルダの平和はミッドチルダの者達の手で掴み取ってこそ意味があるのだ。リリカルマン、何時までも
ミッドチルダにいてはいかん。』
ミッドチルダやその他管理世界の平和は、確かにその世界の人間の手によって掴み取らなければならないのかもしれない。
何時までもリリカルマンに頼り続ける状況が続けば、その内彼等は自分の力で守ろうとする気持ちを失ってしまうからだ。
この言葉は確かにリリカルマンにも納得せざる得なかった。
『ゾフィー…それならば…私の命をなのはに与えて…ミッドチルダを去りたい…。』
『お前は死んでも良いのか?』
『構わない…私はもう二万年も生きたのだ…。しかしミッドチルダの人間の命は非常に短い…。
それに…なのははまだ若い…。彼女を犠牲にする事は出来ない…。』
リリカルマンは自分を犠牲にしてもなのはを助けたかった。元々リリカルマン自身の過失によって
なのはの命は失われてしまったのであるし、長い間…とは言っても二万年を生きた彼に
してみればあっという間であったとは言え、一心同体となって共に生き、なのはの行動を見ていたからこそ、
彼はなのはを犠牲にする事は出来なかったのだ。そしてその想いはゾフィーに通じていた。
『リリカルマン、そんなにミッドチルダの人間が好きになってしまったのか。
よろしい、私は命を二つ持って来た。その一つをなのはにやろう。』
『ありがとう…ゾフィー…。』
『じゃあ、なのはと君の身体を分離するぞ。』
M78次元世界の次元人…リリカルマンの同胞…ゾフィーはベーターカプセルを手に取りスイッチを押した。
そしてリリカルマンとなのはにそれぞれ新たな命を与えると共に、一心同体となっていた二人を分離するのだった。
管理世界においてはいかなる魔法を使っても死者を蘇らせる事は出来ないとされる。しかし、彼等には
その常識は当てはまらず、命を複数持つと言う凄まじい事をやってのけていた。そして、その内の一つを
なのはは貰い、今度はリリカルマンの生命維持無しで生きていく事が出来る様になったのだ。
ミッド地表になのはが帰還し、ゾフィーとリリカルマンの二人の入った赤い玉は上空へ舞い上がって行く。
それをフェイトやティアナ、ユーノやその他管理局の局員達が見守っていた。
「不思議な赤い玉ですね…。」
「きっと仲間が迎えに来たんだよ。」
「すると…リリカルマンは…もう二度と姿を現す事は無いと言う事なんでしょうか?」
リリカルマンがもうこの世界を去ってしまうと言う事実に、多くの者が寂しさと心細さを感じてしまっていた。
しかし、それを感じながらも新たな決意を固める者もいた。
「ミッドチルダ…いや全管理世界の平和は我々時空管理局の手で守り抜いて行こう…。」
リリカルマンはもう故郷に帰る。そうなった以上もう甘えは許されない。
誰もが今後は自分達が自分達の手でこの世界を守っていく決意を固めていた。
とても大変な事であるが、しかしそれでもやらなくてはならないのだ。
「リリカルマーン! さようならー!」
「あ! なのは! 何時の間にいなくなってたからやられちゃったのかと思ってたけど無事だったんだね!」
皆がミッドを去っていくリリカルマンに手を振る中、そこへなのはが皆の所へ駆けて来ていた。
「リリカルマンがミッドを去りますよ。」
「皆、あれだよ! あの赤い玉だよ! 私は青い玉を追っていた時に突然あの赤い玉に巻き込まれて……
それで…………今までどうなってたの…………?」
ゾフィーに貰った命によってリリカルマンの生命維持無しでも生きていく事が出来る様になったなのは。
しかし、リリカルマンと出会って以降の記憶だけはプッツリと消えてしまっていた……。それが新しい命を
貰った事による影響なのか、リリカルマンが分離した故の事なのかは…今となっては分からない。
「リリカルマーン! さようならー!」
「さようならー! リリカルマーン!」
皆が手を振り、なのはが呆然と見つめる中、リリカルマンとゾフィーはミッドから離れ、
次元空間を通り遠いM78次元世界へ帰って行くのだった。
さようならリリカルマン、人類の平和と正義を守る為、遥かM78次元世界からやって来たリリカルマン。
凶暴な怪獣達を倒し、異次元からの侵略者と戦ってくれた我等のリリカルマンがとうとう光の国へ帰る時が来たのです。
リリカルマンも、この世界が平和の光に満ちた世界となる事を祈っているに違いない。リリカルマン、ありがとう。
リリカルマン、さようなら。
おしまい
最終更新:2010年09月15日 13:11