~フロシャイムミッドチルダ支部アジト(仮)~

 「フロシャイムの怪人たちよ良くぞ集まってくれた…」


 普段とは打って変わり薄暗い居間にて、ヴァンプは壁にかけたフロシャイムのロゴを背に立っている。そしてそれを囲むように怪人たちが集まっていた。
 「明日行う作戦について話そう…まず当日は3つのグループに別れてもらう。1号、2号、タイザ!アジトに残り守りに徹するのだっ!!」
 「「「キーッ!!(ハイ!!)」」」

 「次にデビルねこ、Pちゃん改…お前達は緊急時に備えアジトにて待機。そして残るメダリオ、カーメンマン、ウサコッツは私と共にリニアレールで聖王医療院へと向かうのだ!!何か質問はあるか?」

 「ハッ!ヴァンプ様、何故病院へ向かわれるのですか?」
 一通り説明が終わった所で1号から質問が出る。それに対しヴァンプは作戦時独特の口調で答えた。
 「1号よ、これは我々にとって重要事項なのだ。それは…








 聖王医療院に入院されておられる元参謀、ミレガス樣のお見舞いだ!!」


 『天体戦士リリカルサンレッド』この物語はミッドチルダにて繰り広げられる善と悪の壮絶なる闘いの物語である―――

 FIGHT.03『遭遇、命無き兵団!!』


 「んしょ、え~っと聖王医療院前は…あったこれだ!!」
 駅に着いたヴァンプ達一行は切符を買うために券売機に向かおうとし、そこでウサコッツが「あ、僕やる~っ!!」と元気よく言い、ヴァンプは彼に頼むことにしたのだが…

 「あ、小銭が足りない!?え~っとないからお札を…『投入金が不足しています』あ~もぅ五月蝿いなぁ~っ!!」
 小銭が足りずにモタついてる所を音声案内に催促され、それにうんざりしながらも切符を購入出来た。

 「はぁ~やっと買えたよ…いつも思うけど券売機とかって少しでもモタつくとすぐに催促するよね、10秒弱で。 友愛も子ども手当てもいいけどさ…『待ってあげる優しさ』って言うのも大切だと思うよ。最近はそう言うのが蔑ろにされ過ぎだよね全く…あ、ヴァンプ様~切符買えたよ!!」
 「ありがとうウサコッツ。さ、皆ホームへ行くよ」
 ウサコッツから切符を受け取った一行はリニアレールへと乗り込んだのだった…

 「うわぁ~速い速い!!」
 「相変わらずお子ちゃまだなぁ~ウサは(笑)」 
 「ほらほら二人とも、周りの人に迷惑になっちゃうから静かにね。ん?どうしたのカーメンマン?」

 初めて乗るリニアに興奮しているウサコッツとそれを茶化しているメダリオに注意をしていたヴァンプは顔を下に向けて憂鬱そうにしているカーメンマンに気付き声をかけた。
 「いや、これ(リニア)だと聖王医療院まで遠回りじゃないですか。笹塚~下北沢を徒歩じゃなく新宿経由で向かう感じで。車だともっと早く行けたからなぁって思って…あぁ無理してでも持ち込んどけば良かったよなぁ~」
 ミッドチルダの交通事情は溝の口や日本の都市部と比べ、お世辞にも良いとは言えない。 リニアレールは設置こそされているがそれはミッドチルダ全域を山手線の様に円上に走っているのみであり地上本部のある中心部、首都クラナガンへ向かうにはバス等が主流となっている。
 この背景には太陽光発電や水素と酸素を化合させ、発電する燃料電池など環境に配慮した所謂エコカーが低価格で普及しており、
地球と比べ軽自動車クラスなら一般家庭でも容易に手が届くことで、車社会に拍車をかけている要因として挙げられる。
 特に最寄りの駅まで徒歩40分以上かかるなど公共の交通機関があまり充実していない六課の周辺地域はそれが顕著だ。

 そしてカーメンマンが浮かない顔をしているのは今回のリニア利用の件だけでなく、アジトからかなり離れた場所にあるスーパーへ買い物に行くヴァンプ将軍を思ってのことだ。
自分達も荷物運びを手伝っているとは言え、決して若いとは言えないヴァンプが週に何回も店とアジトを往復している姿を見ると「手続きが面倒だから」「動力部の規格を変更すると高いから」と言って持ち込まなかった事を申し訳なく思う。 他にも理由はあるがそれが一番大きな理由だ。
 「カーメンマン、ありがとうね。皆の為に色々と考えてくれているだけで、私は充分に嬉しいよ」
 「ヴァンプ様…」

 いつもの温厚さに加え、ヴァンプの表情はどこか嬉しそうな感じだった。実の所ヴァンプはカーメンマンが悩んでいた事も、それが車に関する事であったのも知っていたのだ。
なぜならちゃぶ台のカーメンマンがよく座る周辺には「管理世界への規格外車持ち込み手続きのパンフ」や「動力部変更の見積りサービスのチラシ」等が置いてあったからだ。
だがそれがなくとも長い付き合いである彼らには何となく察しが着いていたようである。

  「こういうの(リニア)に乗れるのって滅多に無いからね。それに歩くのだって立派なトレーニングだよ? 買い物と一緒にやれば一石二鳥だと思うの、私。だからカーメンマンが悩むことはないと思うよ」

 「そーそー、車だってアントキラーに預けてあるんだろ?だったら別に良いじゃんかよ」
 「それが余計に心配だっつーの!!あぁ絶対キズ付けるってアイツ。コ○ルカモ補償入ってないのに~」
 「も~考えすぎだよカーメンマン。アントキラーはとても君の事を大切にしているんだよ。兄弟なんだし信じてあげる事も大切だと思うの、私」

 槍と盾を網棚に乗せ、ヴァンプはいつの間にか寝てしまったウサコッツを抱えながら、カーメンマンをやんわりとたしなめる。カーメンマンは(アントキラーに関して)納得のいかない様子で、サングラス越しに景色を眺めながら「ウ~ン」と唸っている。
 だが実際の所、アントキラーは兄の車をマンションの地下駐車場にシートをかけて丁寧に保管しており、自身の負担で車検やメンテナンスにも出している。そして遠出をする際には専ら、中古で購入したヒーロー風の赤いバイクを乗り回しているのだった。
 そしてメダリオの「所で何でまたこのメンバーで行くんですか?」と言う問いにヴァンプは「やっぱり知ってる顔ぶれでいった方が向こうも安心するでしょ」と答えた所でちょうど聖王医療院前へと着いた。
 ヴァンプ達は院内へと向かうのだが、普段常に持っている筈の『何か』を忘れていたのだった…

 ~聖王医療院、内科特別病棟・個室203号室~
 「おぉ~よく来たなヴァンプ!!」
 くたびれた頭巾を被った老人、ミレガスはベッドから身を起こし点滴と腕を繋がれながらも元気そうに迎える。
 「ミレガス樣、お久しぶりです」
 思ったよりも元気そうな姿に安堵しながらヴァンプはセンヌキヤのフルーツバスケットを手に深々とお辞儀をし、他の怪人達もそれにならい挨拶をする。だがそれも「あ~そう畏まんな」と一蹴されてしまう。

 「いえ、でも思ってたよりもお元気そうで良かったです。肺に影って聞いた時は心配しましたから…」
 「まぁ良性だったからなぁ~それにこんなナリ(改造人間)だがこっちにもその手の技術があってな、医療技術も保険もミッドのが良いからこっちに来たのさ。 おかげでこの通りピンピンだ。いやぁ~しかし悪いな、折角来てくれたのにこんな状態で」 
 「そんな無理をなさらずに、ミレガス樣にはミッドチルダ渡航の手配をして下さいましたし…また日を改めてお礼に伺います」
 「ま、こっちにもそれなりのパイプがあるって訳だ。だから礼なんぞ気にすんな 。ちゃんと次元征服に向けてのノウハウを学んでくれりゃあ問題ないからな」
 「あ…はい、私たち頑張ります!!」
 ミレガスの元フロシャイム参謀とは思えない言葉にヴァンプ達は表情を引き締めて答える。その後はミッドチルダでの暮らしや最近仲良くなったはやて達六課の人々の話などに華を咲かせ、平和な時間が過ぎていった…


 ~ミッドチルダ山岳地区リニアレール付近~
 「皆よく頑張ったね。それに初陣とは思えない位よく動けてる。これはメニューを組み直さないといけないかな…」

 空中のガジェットを迎撃していたなのははキャロがフリードの制御に成功しエリオと共にガジェットを殲滅、ティアナとスバルもエリックを確保出来たと言う連絡が届き皆が無事だったことに安心していた。
 だがそれ以上に嬉しかったことがある。それはフォワード陣の活躍だ。正直に言うともう少し手こずるかと思っていたが、皆が冷静に対応し予想以上の動きを見せてくれた。教え子達の思いがけない成長を思うとデバイスを握る手にも俄然、力がこもる。

 「後はスバルとティアナが貨物車から客車を通ってリィンと合流、そして私たちが残りの空域にいるガジェットを殲滅すればミッションコンプリートだね。頑張ろう、フェイトちゃん」
 「うん。エリオとキャロも頑張ったんだし、私たちもウカウカしてられないよ」

 だがなのはとフェイトの二人が残りのガジェットに向かおうとした時、ロングアーチから緊急連絡が入った。
 『こちらロングアーチ、衛星カメラにて現場に高速で接近する未確認物体を確認!!距離…これは!?』
 「どうしたのシャーリー?」
 『こちらでも確認できたです!!現在は減速してるですが最高瞬間速度は78km/s、とっても速いですぅ!』

 リィンのから報告を聞き、なのはとフェイトは二人の驚きに納得しつつも警戒レベルを上げる。瞬間的とは言え秒速78kmを叩き出すような相手だ。 このタイミングで現れると言うことはガジェット側の援軍である可能性が高い。そう思い身構えていると予想外の事が起こった。 
 私たちを囲んでいたガジェットの群れが、やっと視認出来る距離にまで接近しているアンノウンに向かっていき、攻撃を仕掛けたのだ。 まるで私達よりもアンノウンの方が脅威であると判断したかのように…そして内包しているミサイルやレーザーを一斉掃射する。
 対するアンノウンは光る微粒子を撒き散らし、赤い光を放ちながら輝いていた。 赤く発光している為に詳細な姿はまだわからないが、ソレは雨霰の如く降り注ぐミサイルやレーザーをまるでその隙間を縫うように舞い踊る様に、残像を残しながらアクロバティックな動きで回避する。
 さらにそのすれ違い様に、発光しているソレは迫り来るガジェットの群れを体当たりで貫いていった。 そして半数以上のガジェットが撃墜された所でソレから赤い輝きが消え、姿を表した。

 光が消えた先に有ったのは小さな体。 サッカーボール位の鮮やかな黄緑色をした小鳥の様なぬいぐるみとその下に抱えられている角が生えたオレンジ色の猫型ぬいぐるみ。
そのクチバシや角にはガジェットの物と思われる塗料や鉄屑がこびりついている。
 そこでなのはとフェイトは思い出す。忙しかった為にまだ顔合わせ程度の挨拶と自己紹介しか済ませていないが、フロシャイムに所属している子達、確かデビルねこ君とPちゃん改だった筈だと…
 ならば援護に来てくれたのか?否、ここで楽観視する訳にはいかない。

 相手はまがりなりにも悪の組織だ。レリックを目当てに現れた第三勢力の可能性だってある。 私達が会ったときの印象、はやてやリィン達ヴォルケンリッターからの話を聞いた限りでは信じたいが公私を分けて行っているのかもしれない。
 そんな緊張感が漂う中、二人?は私達には特に何もせずにリニアへと向かう。やはりスターズの二人が持つエリックが狙いなのか?
 すぐさま追いかけたいが周りにはまだガジェットが残っている為、そのまま行けばガジェットもセットとなりフォワードが新たな危険に陥る可能性がある。
 だがその愛らしい襲撃者達はまだスターズの二人がいる筈の貨物車を通り越し、客車の屋根を突き破って車両内へと入っていった。
 なぜ遠回りをするのか、待ち伏せか、あるいは客車にもレリックがあったのか?様々な可能性が頭をよぎる。 そんな時、ロングアーチのはやてから直接通信が届いた。
 『なのはちゃん、フェイトちゃん心配あらへん。あの子らは敵やない…残りのガジェットの掃討を頼むわ』 
 「………はやて、信じても大丈夫なんだよね?」
 無論フロシャイムをという意味だが、フェイトはディスプレイに映るはやての表情を確かめながら問う。
 『あぁ、大丈夫や。せやからそのデカイ胸をドンと張って行ってきぃ』
 はやての表情や様子からは焦りなどは見られない。寧ろジョークを言える位の余裕はあるみたいだ。 つまり私達がまだ知らない何か判断材料があったのだろう。そう考えるとなのはは自然に頬が緩んでいた。
 「わかったよはやてちゃん、後でお話聞かせてね。行こうフェイトちゃん」
 なのはは先程のはやてのセクハラに狼狽え、赤面しながらあぅあぅ言っているフェイトを連れて残りのガジェットの掃討へ向かう。
 最後に笑顔で「それとさっきのセクハラ、次はないからね?」と言い残して…

 ~六課、ロングアーチ指令所~
 「はぁ~さっきのなのはちゃん恐かったわぁ~」
 二人との通信を切ったはやては息を吐いて緊張気味になった体を落ち着かせる。そして表情を改めて引き締め、 部隊長の顔へと戻した。レリックも確保した。フォワードも無事、残りのガジェットも両隊長が当たるので問題はない。
 後は事後処理や各所への通達、報告書の提出などを指示するだけだ。
 「しっかし色んな意味で予想外やったなぁ…」
 ふと口から漏れたのはフロシャイムの事だ。正直、あそこまで圧倒的な戦闘力だとは思ってなかった。 しかもそれがたった二人の怪人(大半はPちゃんの活躍かもしれないが)とあれば尚更だ。
 そして現場に現れた目的、それも意外なものだった。はやても当初二人の姿を見た時はなのはと同様に、様々な可能性を考えた。 そこでアジトに確認の為の電話をかけ、応対した1号から話を聞いた時は安心して肩透かしを食らったくらいだ。

 電話に出た1号の声は焦っていた様で、寧ろ向こうからかける所だったらしい。事の真相はこうだ。
 フロシャイム本部からガジェットの資料がFAXで届き、その注意欄に「最新では山岳地帯リニア付近での目撃情報あり」と記されてあり、今日リニアを利用しているヴァンプ達を心配した2号がまず携帯に連絡したのだ。
 だが電源が入っていなかった為に連絡がつかず、目的地である病院に着いたから電源を切ってあるのかと考えたが…フロシャム製GPSでの反応は山岳地帯を通過中のリニア内部を示していた。 
 そこで待機中だったデビルねことPちゃんで現場に急行し、1号が六課に問い合わせようとしていたという訳だ。
 だが乗客の避難が完了済みの車両で何故反応があったのか?そんな疑問が頭に浮かぶが自分である仮説を立てて、納得してしまった。
 「ヴァンプさん携帯とかはいつもアレ(盾)に入れとるからなぁ~まぁ多分、網棚か何かに忘れてったんやろ」
 このタイミングでは出来すぎた話にも思えるが、相手がヴァンプだとありあえるかもしれない。 そう結論つけ、ため息を吐くとはやては次の指示をロングアーチに出していった。


 ~山岳地帯リニアレール内部~
 「で、アンタ達はそのヴァンプって人が心配でここまで来たって訳ね?」
 「うん。でも良かった~荷物を忘れてただけで」

 オレンジ髪でツインテールの少女、ティアナは「荷物ねぇ…」と不機嫌そうに呟き、デビルねこから先程はやてが聞いたのと同じ様な説明を聞いていた。
少し前に聞こえた何かを突き破る轟音に気づいたティアナ達はすぐさま音のした客車へと急行したが、 彼女らが目にしたのは大きな盾と槍を引きずる猫とまるで置物の様に動かない鳥だ。
 一応話を聞き、ここに現れた目的と部隊長と交流がある事はわかった。
 ちなみに彼女が不機嫌なのは決してデビルねこに対してではない。自分の相方の行動に青筋を立てているのだ。
 「ティ、ティア~この子すごい、すごいフカフカだよ!?低反発だよ~」
 そしてその件の相方、青髪でショートカットの少女スバルは動かないPちゃん(充電中)を抱え、その抱き心地に感動していた。 遭遇してからティアナが話を聞き終えるまでずっとこの調子である。
 「うっさい馬鹿スバルっ!!今はまだ作戦中なんだからいい加減にしなさい」
 流石に許容出来なくなったのかティアナはスバルをしかり付け、いくらかおとなしくなったが(Pちゃんを離さないまま)「ティアも抱っこしたい癖に~」とぼやいていた。相変わらず鋭いと思うが今は任務が優先だ。
 「とにかくこれからリィン曹長、私たちの上司と合流するからアンタ達も一緒に来て。流石にここに置いて行くわけにはいかないから」
 「あ、リィンちゃんもいるんだね。わかった!!」

 リィン曹長とも知り合いだったのかと意外に思ったが、自分の上司と彼らが戯れている姿を容易にイメージが出来、つい気持ちが和んでしまった。 自分もスバルの事を言えないなと苦笑してしまう。 
 そして自身よりも遥かに大きい盾と槍を抱え、ズルズル引きずりながらついていこうとするデビルねこを見ていると、 何か胸にくるモノがありどこか放っておけない。
 「ほら、持ってあげるから貸しなさい」
 「え!?そんな何かわるいよ。あんまり重くないから大丈夫だし…」
 やはり断られた。でもさっきの様な姿を見ているとお節介だと感じつつも、つい世話をやきたくなってしまう。
 「だったら証拠物件として預かるわよ。一応現場にあった物だし、それに大切な人の物なんでしょ?だったら丁寧に扱わないと傷むじゃない」
 そう言うとデビルねこはう~んと考え込んで「うん、じゃあお願いします」となり、スバルはその隣で「素直じゃないねぇ~ティアは」と言ってニヤニヤとティアナを見ている。
 この際スバル(馬鹿)は無視しようとティアナは思った。そして盾と槍を預かった彼女はそのままデビルねこもヒョイと脇に抱え、デビルねこは「え?」と声を出す。
 「こっちの方が早いでしょ?それにもうリニア内でガジェットの反応も無いから別に問題無いわよ」
 「あぁ~ティアずるい!!私もねこ君抱きたかったのにぃ~」
 「うっさい!!アンタはその子(Pちゃん)がいるでしょうが。ほら、早く行くわよ」

 自分を羨ましがるスバルを連れてリィンと合流する為に先頭車両へと向かう中で、ティアナはデビルねこの何だか体に馴染む抱き心地に不覚にもクセになりそうと思ってしまう。
 そしてこの時、彼女はわからなかった。これから時間がある時はフロシャイムのアジトへちょくちょく足を運ぶようになるとは…

 「ねぇところでさ、Pちゃんの嘴やねこくんの頭にかけらとか汚れとかついてるけど…大丈夫なの?」
 「ん?あぁさっきガジェットにいっぱいぶつかっちゃったから…でも大丈夫、案外脆かったから全然たいしたことないよ」
 さらりと何かとんでも無い答えが聞こえた気がするが、ティアナはデビルねこの抱き心地に意識を向けることで、あえてスルーをした。


 『天体戦士リリカルサンレッド』この物語はミッドチルダにて繰り広げられる善と悪の壮絶なる闘いの物語である―――


  続く 






 おまけ
 ~フロシャイム西東京支部~

 「おぉ、ヴァンプか!!先程お前から送られてきた報告書が届いてな、今見ているところだ」
 受話器を片手に資料を読んでいるヘンゲルは現在それを送ったヴァンプに確認の電話をしていた。 

  「うむ、ミッドチルダの社会体制、内情、司法組織の内容が実によく纏められておる。
たった2ヶ月足らずでこれ程とは流石ヴァンプ将軍、侮れぬ男よ…」
ヘンゲルはよく纏められているヴァンプの報告書の出来に嘘偽り無い称賛の言葉を送る。 だがディスプレイに表示されている六課、主に隊長陣の戦闘映像(撮影:Pちゃん)については多少不満があったようだ。

  「しかし資料にある戦闘映像…なぜ横からの視点しかないのだ?飛行タイプの怪人であればこれで事足りるだろうが、フロシャイムには飛べない怪人も多い。 次に資料を送る時には様々な、そして怪人たちの視点、即ち真下と斜め下からの映像も追加し、三次元の立体的な動きを把握する必要があるだろう。あぁ、では次回も期待しているぞ」

 「あの、ヘンゲル将軍」
 「何だサミエル?」
 報告書の改善点を伝え、通信を切ったヘンゲルに対して傍らに控えていたサミエルは声をかけた。
 「将軍の意図は理解しています。勿論もうひとつの意味も…しかしなぜ斜め下も必要なのですか?真横と真下で充分だと思うのですが…」

 サミエルの問いにヘンゲルは深い溜め息を吐いてから口を開く。
 「サミエルよ、わかっておらんな…大事のはチラリズムだ」
 「………………」



 ---智将ヘンゲル、彼のIQは150を超えると言う------

 

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最終更新:2010年09月28日 14:49