第2話「音速は伊達じゃない!!」


~あらすじ~
 ソニックは何と自分が起こしたカオスコントロールを制御できずに、
 首都クラナガンに飛んでいってしまった!
 そこから新たな生活が始まろうとしていたのだが…


「あなたの名前は?」
「オレ?オレの名前はソニック。ソニック・ザ・ヘッジホッグさ!!」
 明朗快活にそう答える青いハリネズミ。
 フェイトは、本当にさっきのエネルギー反応の根源がこのハリネズミか気になっていた。
「あの…ソニック…さん?一体どうしてここに?」
「ん?なんか、カオスコントロールを制御しきれなくって…この世界に飛んじまったってわけだ。」
「カオスコントロール?」
 フェイトにはその単語の意味がさほど理解できなかったが、時空間魔法の一種だとは容易に推測できた。
(となると、次元漂流『者』か…いや、次元漂流鼠、というべきかな?)
 この世界では、次元漂流者などはフェイト達の属する機動六課が責任を持って元の世界に返す、という義務があった。

「あの、ソニックさん。とりあえず、機動六課に―――――――――――――――っていない!?」
 ソニックは、フェイトが何か考え事をしている内にどこかへ走り去ってしまった。
(まだそう時間はたっていないからそう遠くへ入ってないはず…)
 そう推測し、周囲に青いハリネズミがどこに行ったか、聞き込みをするフェイト。
 だが、【そう遠くへ行っていない】という考え方では、ソニックを連れ帰ることができないということを、フェイトは知らなかった。


 ソニックは今、どこかの森の中を走っていた。
 ここがどこかなんてどうでもいい。ただ、退屈したくない。
 そんなさっぱりとした、しかしどこか抽象的な概念のもとで生きてきた。
「………寝るか。」
 周りを見渡して、一番涼しそうな木の下で寝始める。
 穏やかな風が気持ちよかった。
 目を閉じていると心地よい睡魔に襲われる。

 だが、その睡魔はすぐにどこかへ吹き飛んでしまった。
「見つけた。」
 その声の主が誰かと思って見上げたら、そこには明らかに怒っているフェイトが立っていた。
「突然どこかに行ったりして!何を考えてるんですか!」
「だって、さっきの話は退屈だったんだぜ~?俺は、自由に生きたいんだ。」
 陽気に話してくるソニック。
 そんなソニックに少し苛立ちを覚えるフェイトであった。
「とにかく!一緒に来てもらいます。手続きとかいろいろやらなきゃいけないのに…」
 その言葉を聞いてソニックが嫌そうな顔をする。
 退屈なのはいやだ、といったそばから退屈そうなことが回ってくるのはごめんだ。
「……オーケイ、じゃあ、こうしよう。これからレースをしようじゃないか。オレが勝ったら、放っておいてくれ。
 オレが負けたら、連れていくなり何なり好きにすりゃいい。これでどうだ?」
 目を丸くして何を言っているのか分からなさそうにしているフェイト。
 だが、その言葉の意味を理解すると、真剣な表情で頷いた。
(大丈夫。スピードだったら、私に分がある。)
 勝ちを確信したフェイトだが、ソニックの本当の速さを知らない。
 多少警戒して、念のためにバリアジャケットに着替えるのであった。

 レース場は高速道路。ソニックが逃げるのでフェイトはそれを捕まえればいい、という鬼ごっこ形式のものだった。
「3…2…1…GO!!」
 ソニックが高らかにスタートを宣言した。
 フェイトがスタートダッシュしてソニックを捕まえようとした矢先だった。
「っ!?」
 フェイトの手はむなしく宙を舞う。ソニックを逃してしまった。
 そして気がつけば、ソニックと100メートルほど離れている。
 なぜ、と疑問が浮かんだが、考えている暇はなかった。
 フェイトはソニックを追い、全速力で飛んだ。
「くっ…」
 正直、ここまで速いとは思っていなかったフェイト。
 ソニックはこちらを振り返り、にやりと笑ってスピードを上げる。
(仕方ない。攻撃魔法を多少使うか…)
 そういってバルディッシュを一振りし、
「プラズマランサー!!」
 数本の光の矢がソニックを追う。
 だがそれらすべて、ソニックに当たることはなかった。
「こんな攻撃じゃ、欠伸が出るぜ!!」
 といいながら、全て避けきる。
 ソニックはまだ余裕の表情だが、このレース場は大きな欠陥があった。
 それは、『ここの高速道路はまだ工事中』ということだった。
 ソニックの目の前に断崖絶壁が広がる。

(勝った!)
 そう確信したフェイトは、この世のものとは思えない動きを目にする。
「!?」
 ソニックはその崖から飛び降りた。ここまでは良かった。
 しかしそのおよそ0.5秒後、ソニックはハイスピードで上昇し、断崖絶壁の向こう側にたどり着こうとしていた。
「どうして………?」
 物理的法則を捻じ曲げたとしか思えない動き。
 しかし、フェイトが驚いていることに驚いた。
(どうして………って、ライトダッシュしただけじゃないか。)
 ソニックはただ単に、この高速道路の端から端まで続いていたリングにライトダッシュしただけなのだ。
(もしかして…リングが見えないのか?)
 そんな余計なことを思っていた時だった。

「ふぶっ!」
 ソニックの顔面に何かがぶつかる。
 それが何か、確認してみると、ピンクの網。
 しかも、その網はどうやらソニックをがっちりと捕獲していた。
「フェイトちゃん、おつかれさま。」
 その声にフェイトが振り向く。
 そこには、茶髪のツインテールで綺麗な人が立っていた。
「なのは!」
「もう、帰りが遅いから心配したんだよ~。」
「ご、ごめん……」 
「でも、無事だったから、いいよ。」
 などと、ソニックそっちのけで話が進んでいる。
「と、こっち忘れてたね。」
「なのは、それ、どうするの?」
「とりあえず、はやてちゃんに相談しなきゃ。」
 そういって、なのは―――と呼ばれたばれた女性―――はソニックを捕まえた網ごと空へ飛ぶ。
 それに合わせ、フェイトも飛ぶ。
「NO~~~~~~~~!!!!!」

 こうして、ソニック対フェイトのスピード勝負は実質ソニックの勝ちだが、結果的にフェイトの勝ちで幕を閉じた。



「なんや、ハリネズミっちゅーのは聞いとったけど、ネズミにしてはずいぶんでかいなぁ。」
 かれこれソニックが捕獲(?)されて20分。ソニックははやてのもとに連れてこられていた。
 もちろん、なのはお手製の檻の中で。
「しかし、本当に奇妙な構図やな~。」
 ピンクの檻、その中にいる青いハリネズミ。しかもしゃべる。
 はやて自身、アルフやユーノとは知り合いなので見慣れていたといえば見慣れていたが、やはり、シュールだった。
「それで、本当に君は一人でその『かおすこんとろーる』を使ってここに来たの?」
「何度も言ってるだろ~。カオスコントロールがうまく発動しなくって、無理やり発動したら、ここに飛んできたんだ。」
 半ばふてくされて言うソニック。
 こんな質問をゆうに、20回ほど聞かれれば、ふてくされるのも当然だろう。
「そうすると…彼はロストロギア並み、いや、それ以上の危険性を持っているっちゅーことか…」
「となれば厳重な保護観察が必要ね…それも、そのカオスコントロールを無作為でも発動させられれば、
ソニックを殺してでもそれを阻止しなければいけない…」
 自分を殺す、という言葉を聞いてソニックはようやく真剣に聞く態度になった。
「それなら心配ないぜ。オレのスーパー化は疲れるから、そんなに使えないしな。それに、ここにはカオスエメラルドもない。
 オレは今この場じゃ、ただの歯牙無いハリネズミだぜ。」
 その言葉を聞き、なのはが当然の疑問を投げかける。
「カオスエメラルドって何?」
「言ってみれば『奇跡の石』だな。7つ集めれば強大な力を手に入れることができる。それ一つで
 ……そうだな~。少なくともここら一体の電力くらいは補えるんじゃないか?」
 何気なく口にした言葉がその場の空気を凍らせる。
「そ、その石には数字が彫ってなかった!?ローマ数字が!!」
「?い、いや…彫ってないぜ。」
 突然フェイトが聞いてきたので何事かと思いきや、そんなことか、とソニックは少し脱力する。
「よし、わかった。ソニックはしばらくここで預かることにする。その間はなのはちゃん、フェイトちゃん、
 ソニックのこと頼むで。ソニック、あんたもさっき言った通り、カオスコントロールを発動させれば、
 あたしたちはアンタを殺してでも止めるからな。」
 はいはい、といった様子で肩をすくめるソニック。
 ふと、自分を縛っていた網がどこかえと消えた。
「この管理局から出ない限りは、一応自由ってことで。」
 なのはにそう言われたが、制限つきの自由では物足りない、といった表情だった。
「OK。わかったよ。」
 その条件に妥協したソニックは、おもむろに立ち上がり外に出る。
「なのはちゃん、フェイトちゃん、頼んだで。」
 その言葉にうなずいた二人は、ソニックの後をついていく。


 そんなこんなで、青いハリネズミの新しい生活が幕を開けるのだった。

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最終更新:2022年09月05日 00:47