Dark side Episode第1話「眠り、そして目覚め」


「………」
 ここは…?
 一体どこじゃ…?
「………う~ん……」
 エッグマンは起きて周囲の状況を確認する。一体ここはどこだろうか。
「これは……」
 そこにあったのは、カプセルの中に閉じ込められた人たちであった。
 しかしエッグマンは一目で彼女たちが『人間でない』ことに気付いた。
 常日頃からメカを作ってきたせいか、人間と、『人間でない者』の区別ははっきりついていた。
 一体何者だろうか、そう思った矢先に暗闇から一人の男が姿を現した。

「ごきげんよう、ドクター。いや、ミスターエッグマンといった方がいいかな?」
「貴様…なぜワシの名を知っておる?」
「フフ…私はいろいろな世界で様々な実験を行っている。むろん、君たちの世界のことは調査済みだ。
 そうだな…これを見せれば、信じてくれるかな?」
 そう言ってポケットから赤く輝く宝石を取り出す。
「なっ!そ、それは…カオスエメラルド!
「そう、カオスエメラルド。七つ集めれば奇跡を起こすといわれる石。私はこの石に多大な興味を持っているのだよ。
 ここまで言えば、わかるかな?」
「……これを集めてほしい、ということか。何をするつもりじゃ?」
「先ほども言った通り、実験がしたいのだ。私が満足するような、ね。」
「見返りは、何かあるのじゃろうな?」
「…そうだな、では、見返りとして『これ』いや、彼を返してあげよう。」
 そう言って男は後ろを向く。エッグマンもそれにならって男が視線を向けている方に目をやった。
 そこには…………
 一匹のハリネズミが眠っていた。黒く、影の様なハリネズミ、シャドウ・ザ・ヘッジホッグ。
「シャドウ!?貴様、これをどこで手に入れた!?」
「それは、今は教えられないね。だけど、カオスエメラルドが集まる度にその話を聞かせてあげよう。」
 エッグマンはしばらく唸った後、聞きそびれていたことを聞いた。
「名前は何と言うのじゃ?」
「私の名はジェイル・スカリエッティ。スカリエッティ、と呼んでいい。その代わり、あなたのことを
 エッグマンと呼ばせてもらいますがね。」
「構わん、それともう一つ。シャドウは今すぐ返してもらう。こいつがいればカオスエメラルド集めにも
 役立つかもしれん。」
「…いいだろう。好きにしてくれ。」
 そういって、スカリエッティはエッグマンとシャドウをとある一室に案内した。
「ここは、彼の体の内部をいじくるのに最適な部屋といえるだろうね。ここを使うといい。」
「礼を言うぞ、スカリエッティ。」
 スカリエッティが出て行った後、エッグマンは機械をいじり、シャドウの情報をプロジェクターに投影する。
 しばらく無言だったエッグマンはおもむろに話しかける。
 誰にでもなく、自分にでもなく、シャドウに。
「シャドウよ…お前はまたこの星を危機にさらしてしまうかもしれん。マリアの願いを、 
 夢を忘れたわけではないが、お前はしばらくその願いに反してもらう。」
 そう言って、シャドウのメモリーレポートを開く。
 そして、エッグマンがシャドウを目覚めさせた時から、ソニックとともに『アーク』を
 カオスコントロールさせたときのメモリーにプロテクトを掛ける。
「すまないの、シャドウ。こうするしかないんじゃ。」
 断罪の思いを胸に、シャドウのメモリーにプロテクトを掛けていく。
 そして、プロテクトが完了した。
「頼んだぞ、我らが希望、シャドウ・ザ・ヘッジホッグ。」
 影(シャドウ)に僅かな光(ライト)を託す自分を少しおかしいと思うエッグマン。
 そんな彼が言った『我ら』とはいったい誰を指すのか、今はエッグマン自身も分かっていなかった。



「意外と用心深いね、あの老人は…。」
 自室の椅子に腰かけながらつぶやく。
 まるで、この状況を楽しんでいるかのような、どこか含みのある笑顔で。
「残念だけど、エッグマン。あなたの考えていることは、おそらく事実へと変貌する。
 あなたがいったい何を警戒しているか知らないが、私にはすでに、奥の手はそろっている。
 たとえ、あのソニックがシャドウと共に足掻こうと、その目論見はすべて失敗に終わるのだから…。」
 独り言をつぶやき終わった後、タイミングを見計らったかのようにモニターに通信が入る。
「ドクター…」
「ごきげんよう、ルーテシア。どうしたんだい?」
「こんなもの見つけた…」
 と、ルーテシア、と呼ばれた少女はスカリエッティのモニターに宝石店のニュースを見せる。
 そこには、緑色に輝くカオスエメラルドがあった。
「ほう…ありがとう、ルーテシア。また今度、お茶でもしよう。」
「…うん。」
 無表情で頷いたルーテシアは通信を切る。
 モニターが消えたのを確認した後、スカリエッティはエッグマンを呼び出した。
「エッグマン、たった今カオスエメラルドについての情報が手に入った。
 そちらのモニターに送るから、回収に言ってくれるか?」
「……わかった、行ってこよう。」
 モニター越しに了承の返事をいただいたスカリエッティはごきげんよう、とつぶやき、通信を切る。


 エッグマンは支度を整えたのち、シャドウを起動させる。
「あなたは、…?」
「シャドウよ、手短に言う。ワシはこの世界に混乱を望むものじゃ。お前の力を貸してほしい。
 ワシは今からカオスエメラルドを奪いに行くが、今は来るな。向こうの戦力というものを知っておく必要が
 あるのじゃ。」
「わかりました、ドクター。」
 従順にうなずくシャドウ。
 どうやら、プロテクトは効いているようだ。エッグマンの記憶すらない。
「じゃあ、ワシは少し出かけてくる…じゃあの。」
 そう言って、エッグマンはいつも乗っているメカを起動させ、その部屋を後にする。

 行く途中に、生意気に宝石店に予告状を出したエッグマン。こういうところは変わっていないのかもしれない。
「おとなしく引き渡してくれればいいのじゃが…」
 予告状なんて書いたら、警備がもっと手厚くなるということには気がつかないのだろうか、そう呟く。
 そうこうしている内に、問題の宝石店へとたどり着いた。
「あなたですか!この予告状を書いたのは!」
 と、店員がエッグマンを見るなり駆け寄ってくる。
 その姿に周囲の人たちが寄ってくる。いわゆる野次馬だ。
「ホーッホッホッホ、その通り、ワシがこの天才、ドクターエッグマンじゃ!!」
 と、さっきまでステルス化させていたエッグマンの目かが姿を現す。
 その光景に店員はたじろぎ、店の奥、カオスエメラルドのあるところ、まで後ずさりしていった。
 ここには、人はいない。そう確認した後、店員に詰め寄る。
「貴様、この宝石を一体どこで手に入れた?」
「そ、そこに路地裏にあったんだ…!」
「…まあいい。これはもともとわしらの世界のもの。返してもらうぞ。」
 と、真剣な声で呟き、外に出ようとする。
 すこし、いたずら心が出てきて
「ホーーーッホッホッホッホッホ!!このカオスエメラルドはワシが頂いちゃうもんね!!」
 と勝利宣言をする。
 しかし、店員もまだ食い下がってい来るようだ。
「やめろ!!それはこの店で…」
「しつこいなぁ、ホレ。」
 パチン、と指を鳴らす。
 エッグマンのメカが店員に銃を向ける。
「じゃあの。」

 ダダダダダダダダッ!!!

 銃声がしたが、エッグマンは銃声がする一瞬に何かが店員を連れていくのを見逃さなかった。
 ――――――――――やはり、来ていたか――――――――――――
 そう思うエッグマン。
「相変わらずクレイジーだな、エッグマン。」
 声がしたので、ゆっくり振り返る。
「ソニック!ま~た貴様邪魔をしおるか!これで何回目じゃ!!」
「さ~て、知らないな。だけど、カオスエメラルドほしさにこんな真似をするのはちょ~っと
 危なすぎないか?」
「知ったことか!ワシはこのカオスエメラルドさえ手に入ればそれでいいの!」
 と、いつもの世界での会話を始める。
「待ちなさい!!」
 ふと、誰かが割り込んできた。
 せっかく会話がヒートアップしてきたのに、とつぶやいたが、それは聞こえたかどうか。
 そこを見れば、茶髪をツインテールの縛った女性が変な杖を持って立っていた。
「あなたは誰?事と場合によっては強硬手段をとることになるわ。」
「強硬手段?ああ、それには及ばない。何故なら…」
 そこでいったん言葉を切る。
 周囲は固唾をのんでその先の言葉を待っている。
「もう手に入れちゃったもんね~~!!」
 とその手に緑色のカオスエメラルドを掲げる。
「それじゃ、サイナラ~。」
 と、勝利宣言をした後、さっさと逃げようとする。
 しかし、それでは終わらないことを、エッグマンは学習していた。
「俺を忘れるなよ、エッグマン!!!」
 ソニックが駆け出し、エッグマンのメカに向かってくる。
「小癪な~!!お前ら、ソニックを倒しておしまい!!」
 ロボットたちに指示を出したが、その命令を実行する前にソニックのホーミングアタックを食らい、
 木っ端微塵にされていた。
 そのまま、ソニックはビルを壁伝いに上ってくる。
「ソレ、返してもらうぜ!」
 ソニックは驚異的なスピードでカオスエメラルドをひったくり、地面に着地する。
「ぐぬぬぅ~~、ソニックーー!!」
 浮上させていたメカを同じく急降下させ、ソニックのもとへ行こうとする。
「それはワシの――――――――――――」
 その続きは言えなかった。
 耳元をピンク色の弾丸がかすめていったからだ。
「これ以上抵抗を続ければ、命の保証はありません。次は当てます。」
 なのはがもう一発アクセルシューターを作り出し、エッグマンに当てようとする。
 エッグマンはそんな彼女を見て、
「いーよいーよ!!今回は引き揚げるけど、つぎはそうはいかないかんなーー!!」
 怒ったふりをしながらメカを浮上させて帰った。


(ここまでは計算通り)
 とエッグマンは胸中で呟く。
 彼の真意はカオスエメラルドをただ手に入れるだけではなかった。
 エッグマンは思っていた。
 あの男は、いつか自分たちの世界までも支配してしまう、と。
 世界のパワーバランスどころか、何もかもがあいつに支配される世界が出来上がる。
 それだけは避けねばならない。
「ソニック、シャドウ。そして、名も知らぬレディーよ。悪いが、お前たちを利用させてもらう。
 ……やつの理想を打ち砕くためにの。」
 一人つぶやき、エッグマンはスカリエッティのもとへと帰って行った。

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最終更新:2010年12月19日 11:16