1:クラナガンの異変編

 仮面ライダーディケイド本編が終了した後も門矢士の旅は続いていた…のだが…実はその途中で
旅の仲間とはぐれてしまい一人になってしまっていたのだった。

「海東の奴はともかく…夏みかんとユウスケは一体何処へ行ってしまったんだ? まあ良いか…
下手に探し回るよりもこのまま進もう…。いずれ合流出来るだろ。」

 彼は旅の中で一人になった事が今まで無かったわけでも無い。故に探し回らず、いずれ合流出来る事を
考え、あえて自身の愛用バイクであるマシンディケイダーを走らせ前進させるのであった。

 そうして旅を続ける中、士が世界と世界を繋ぐオーロラを通ってとある世界に辿り着く。

「ここは…リリカルなのはの世界か…。」

 士を乗せたマシンディケイダーが到着した先は丁度ミッドチルダ時空管理局地上本部前の道路だった。
故にここが『リリカルなのはの世界』である事を確信していたのであったが…何か違和感を感じていた。

「にしては…少し物々しい雰囲気だな…。」

 周囲を見渡してみると、戦闘服を着用しデバイスで武装した局員や釘バットや木刀を持った一般人が
彼方此方におり、まるでこれから戦争でもしようと言わんばかりの物々しい雰囲気を放っていた。
そして彼らの会話に耳を傾けて見ると…

「おい! そっちにはいたか?」
「いや、こっちもまだ発見出来ない。」
「畜生…俺達を裏切る様な真似しやがって…絶対ぶち殺してやる…。」

 やっぱり物騒な会話が聞こえて来る。これは何かがおかしいと士も考えるのであったが、
間も無くその予感が確信に変わる発見をする事になるのである。

 士が何気なく通りすがった先に立っていた一本の電柱。そこに一枚の張り紙が貼られていたのである。
それは良くある『この顔にピンと来たら110番』って言う指名手配書だったのだが、
その紙に印刷されていた写真と文字が問題であった。

「なん…だと…?」

 士は絶句した。何と言う事であろう。高町なのはとユーノ=スクライア。
この二人が指名手配されていたのである!

「これは明らかに変だぞ…。探りを入れて見る必要があるかもしれないな…。」

 なのはとユーノの二人が一体何をして指名手配される事になったのかは分からない。
しかし、それでもこの二人が指名手配されると言う事実は異常事態である。
故に士としても黙って見ている事は出来ず、これに関して探って見る事にしたのだった。


 クラナガン郊外の廃業都市。既に寂れて無人となったその中の一つの建物の中に二人が座り込んでいた。
それはなのはとユーノの二人だった。

「はぁ…はぁ…。ここならしばらくは追っ手は来ないよ…。」
「ごめんよなのは…僕の為に…。」
「そんな事言わないで…。」

 何故追われる身となったのかは依然として謎であるが、なのはは変身魔法で子供の姿に、
ユーノはフェレットの姿になる事で消耗を抑えねばならない程にまで疲弊していた。
そして廃業都市のボロボロの建物の陰に隠れ、追っ手の脅威に震えながら
わずかなレーションを分け合って食べていたのだったが…ついにここにまで
非情な追っ手が迫って来ていたのだった。

「いたぞー!」
「見付けた見付けたぞー!」
「あ!!」

 一度見付かってしまった途端、廃業都市に続々と追っ手が雪崩れ込んで来ていた。
デバイスを装備した武装局員のみならず、木刀やら釘バットやらで武装した一般人にしか見えない者達が
大勢で一斉に迫って来ていたのである。なのははフェレットの姿になっていたユーノを守るべく右手で抱き、
左手でレイジングハートを握り締めようとしていたのだが、その時だった。

「ちょっと待った!」

 まるで追っ手を遮るかの様に一台のバイクが猛烈な速度で駆け寄せ、なのはとユーノの前に止まっていたのである。
それはマシンディケイダーに乗った士であった。

「貴様! 何故邪魔をする!?」
「そっちこそ大勢でよって集って何故この二人を狙うんだ?」

 士の乱入によって追っ手の進撃が止まった。突然の乱入者になのはとユーノの二人も何が起こったのかと
困惑した表情で立ち尽くすばかりだった。

 建物の中のみならず、その外にまで…。廃業都市を埋め尽くさんばかりの勢いで無数に雪崩れ込んで来ていた
武装集団に臆する事無く士は問う。

「一体この二人が何をしたと言うんだ? こんな大勢で追うなんてやりすぎだろう?」
「なのはは俺達を裏切ったんだ! 信じてたのに…。」
「裏切った? 一体どう裏切ったんだ?」
「なのははフェイトを捨てて淫獣と逃げたんだ! これは我々ファンに対する裏切り行為だ!」
「何…だと…?」

 一体何故こんな事になったのか…その理由が明かされた時、思わず士は絶句していた。

「違う! 捨てたんじゃない! 私はもうファンに媚びたレズビアンの真似事に嫌気が差しただけだよ!」
「百合とレズは違う!」
「もう何を言っても無駄だ。フェイトを捨てて淫獣に股開いた時点で俺達のなのはは死んだんだ。
今目の前にいるのはただのビッチなんだ!」
「なるほど……お前らか…噂に聞く百合厨と呼ばれる人種は…。」

 なのはとユーノの追われる理由が余りにも突拍子が無さ過ぎて暫し絶句していた士であったが、これで納得がいった。
世の中には『百合厨』と言う女性キャラ同士の百合をもっとも至高とする者達がいる。そしてリリカルなのはの
世界においてはこの百合厨が一番力が強く、そして百合厨の力を利用して発展して来た。
しかし、確かに少女時代においては友情の発展系としてなのはとフェイトの百合に疑問は無かったが、
やがて大人になるに従ってそれはエスカレートし、ついにはレズビアンまがいな行為を連発する様になった。
それはなのは個人にとってもはや我慢出来る物では無くなっていた。なのはとてフェイトの事は好きだが
百合厨が求める物とはまた違う形であり、百合厨に媚びたレズビアン行為に嫌気が差していたなのはは
本編で描かれていない所でこっそり幼馴染のユーノと付き合っていたのだったがそれさえも百合厨に察知されてしまい、
掌を返した百合厨に反逆され、この様に追われる身となっていたのだった。

「俺も旅の中で色々見て来た…。彼氏が出来たり、実は元彼がいた事が発覚した途端にお前達百合厨に
よって追い立てられる女をな…。例えばかんなぎの世界とか凄かった。そして今この二人さえ狙おうと言うのか?」

 百合厨は女性キャラ同士の百合を尊ぶと同時に女性キャラに彼氏が出来た途端に掌を返し、
ビッチだの何だのと叩きまくる。この光景を士も様々な世界で見て来ていたのだった。

「それの何がいけないんだ!? なのフェイの百合こそ世界の真理だ! なのフェイの百合があったからこそ
リリカルなのはと言う作品はここまでの人気作となったのだぞ!」
「別に百合自体を否定してるわけじゃない。百合たい奴は勝手に百合ってれば良い。だが…アイツは違うだろ!?
アイツは百合を嫌がっているじゃないか!! それなのに百合を無理やりに押し付けようと言うのなら…
俺はお前ら百合厨からあいつ等を守る!!」

 武装集団=百合厨の大軍に向けて啖呵を切った士。これには百合厨も腹を立てていた。

「貴様! いきなり出て来た上に偉そうに………一体何者だ!!」
「俺は通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」

 士はディケイドライバーを腰に巻き、さらにライドブッカーから取り出した一枚のカードをディケイドライバーへ差し込んだ。

「変身!」
『カメンライド! ディケーイド!』

 その様な電子音と共にディケイドライバーから放たれたエネルギー状の何かが士の全身を纏い、その姿を
仮面ライダーディケイドへと変えていたのだった。

「ディケイドだー!! ディケイドが出たぞー!! さてはリリカルなのはの世界を破壊しに来たなー!?」
「うおー!! ぶっ殺せー!!」
「出来るもんならやってみろー!!」

 こうして戦いが始まった。ディケイドは単身百合厨の大軍へ向けて突っかかり、ライドブッカー・ソードモードで
辺り一面に展開された百合厨を次々に斬って斬って斬り倒しまくるのであった。

 百合の破壊者ディケイド。百合の世界を巡り、その瞳は何を見る。

 そして…そんなディケイドの大暴れをなのはとユーノの二人が呆然と見つめていた。

「ディケイド…。」
「彼が…噂に聞く……破壊者…。」

 一度は歴代ライダーを全滅させた事もあるディケイドの暴れぶりは目を見張る物があった。
リリカルなのはと言う世界観…そして作品の人気を支えているも同然の屈強なる百合厨の大軍を
ばったばったと倒しまくり…廃業都市は忽ちの内に屍の山に……なってはいたのだが…
しかし百合厨はその間も続々と数を増やし、次から次へと廃業都市へ雪崩れ込んでいたのだった。

「何だこいつ等…キリが無い。」
「それだけなのフェイの百合を大勢の人々が支持していると言う事だ! 貴様の存在はなのフェイのみならず
リリカルなのはの世界そのものを消滅に導く! 今ここで百合厨の手にかかって死ぬのだ!」
「貴様…鳴滝…!?」

 何と言う事だろう。百合厨の大軍の中に一人の薄茶色のコートに身を包んだメガネの中年男の姿……。
それこそ彼方此方の世界でディケイドを世界を破壊する悪魔と言いふらしまくっている反ディケイドの
特攻隊長とも言える男…鳴滝だった。

「鳴滝ー! 百合厨になってまでディケイドを倒したいか?」
「黙れ! 貴様は今度こそここで死ぬのだー!! 行けー!!」
「うおおおおお!!」

 鳴滝がディケイドを指差すと共に大勢の百合厨が一斉にディケイド目掛け突撃する。
これは非常にまずいと感じたディケイドは一度マシンディケイダーの所へ駆け戻っていた。
そして座席に座りハンドルを握ると共になのはとユーノの方へ話しかけていた。

「おい、お前らも乗れ! とりあえずここは逃げるぞ!」
「え? で…でも…。」
「でもじゃない! 死にたいのか!?」
「いや…ほら…だってノーヘルは良くないって…。」
「だからそういう事言ってる場合じゃないだろ!! 良いから乗れ!!」
「はっハイ!」

 ノーヘルでバイクに乗るのは如何な物か…とマシンディケイダーに乗る事に
躊躇していたなのはであったが、今はそんな事を気にしている場合では無かった。
百合厨の大軍はすぐそこまで迫っているのだから。故に大急ぎでなのはは
ディケイドに抱き付く形でマシンディケイダーの後部座席に乗っていたのだった。

「しっかり掴まってろよ!」

 ディケイドは猛烈な速度でマシンディケイダーを走らせた。マシンディケイダーは
その辺のバイクとは馬力から何まで桁違いの性能であり、忽ちの内に時速数百キロにまで加速する。
なのはもやろうと思えばその位の速度で飛ぶ事が出来る事は出来るが、他人が運転するバイクに
乗った状態でその速度を出されるのはそれとは全く違った感覚であり、振り飛ばされない様に
ディケイドに力一杯しがみついており、フェレットの姿になっているユーノもまた
なのはの左肩に力一杯しがみついていた。


 さしもの百合厨の大軍もマシンディケイダーの速度には追い付けなかった。そしてクラナガンから
離れた田舎道に入った所でディケイドはマシンディケイダーを一度止め、変身を解いて士に戻っていた。

「ここまで来ればしばらくは追って来ないだろう…。」
「あ…あの…ありがとうございます…。」
「礼はいらん。当然の事をしたまでだ。」

 なのはとユーノは見ず知らずも同然の二人に対して何故士がここまでしてくれるのか不思議でならない。
だが、その後でユーノは申し訳なさそうになのはに対し謝っていたのだった。

「ごめんよなのは…僕なんかの為に…世界そのものを敵に回させてしまって…。」
「だからそんな事言わないで。ユーノ君一人が悪者にされて叩かれるなんて間違ってるし…私も嫌だよ。」

 なのはとフェイトの百合と言う名のレズビアンまがいな行為が大勢の百合厨に支持される陰で
ユーノはなのはに最も近くにいる男として百合厨の怒りを買い、淫獣と罵られ叩かれていた。
それがなのはにとっては嫌だった。なのはが世界を敵に回してでもユーノと共に逃げたのはそこも要因であった。

「私とフェイトちゃんがレズみたいな事をして…ユーノ君一人が憎まれ役になって迫害されなきゃ
『魔法少女リリカルなのは』って作品が維持出来ないのなら…いっそ破壊して欲しい……。
お願いです! 貴方が噂通りに破壊者だと言うのなら…いっその事一思いに破壊して下さい!」
「なん…だと…?」

 これには士も戸惑った。確かに今まで旅の中で『破壊者』『悪魔』と罵られ攻撃された事は
多々あったが、この様にむしろ破壊を乞われる事は非常に珍しい事だったからである。
とは言え、士にもまだ分からない部分があった。

「しかし、まだ解せない部分もある。そもそも百合厨なんて所詮はヲタの集まりだろ?
それが何故あそこまで組織的に動けるんだ?」
「そ…そう言われてみれば…。」
「これは裏で糸を引いてる奴がいると見たな…。」

 確かに言われてみれば士の言う通りかもしれないと言えた。いくら百合厨の発言力が強いと言っても
言い換えれば発言力が強いだけに過ぎない。それがこの様に大勢で直接実力行使に出て来る事は異常事態であると言えた。

「じゃ…じゃあ…もしかしてあの…確か…鳴滝って人とか…?」
「いや、あれはただ単に百合厨の流れに乗って俺を倒そうとしてるだけに過ぎん。もっと別にいるな。」
「一体誰が………。」

 百合厨が組織的に動ける様になった理由は何か…。三人はそれぞれ考えを膨らませ、暫し沈黙が起こるが
それで特に何が起こるでも無し、士は再びマシンディケイダーのハンドルを握っていた。

「ま、こんな所で考え込んでいても仕方が無い。お前ら二人とも行く当てが無いんなら俺に付いて来い。俺が匿ってやる。」
「あ…ありがとうございます…。」

 士はなのはとユーノを匿うと言う。それには逃げる当ての無かった二人も思わず礼を言い、
三人を乗せたマシンディケイダーは再び発進するのであった。


 士が向かった先は、実質彼の家とも言える光写真館。そこでなのはとユーノの二人を匿おうとしていたのだったが…
不思議な事に光写真館は人っ子一人いない無人だった。

「ここにもいないか…皆何処に行ったんだ? 爺さんまでいないなんて…。まあいい…とにかく上がってくれ。」
「あ…はい…。」

 なのはと、その左肩に乗ったフェレット形態のユーノは申し訳なさそうに玄関から光写真館の中に入り用意された椅子に座っていた。

「ここ…写真館なんですね?」
「まあな。」

 とりあえず士はなのはとユーノに光写真館の中にあった飲み物・食い物を出しつつテレビのスイッチを入れるのであったが、
丁度何か特別報道番組が組まれ放送されている様だった。

「これは………。」

 明らかに何かが起こっている事を悟った三人は思わずテレビ画面に注目した。

『大変です! つい先程、謎の武装集団によって時空管理局ミッド地上本部が占拠されました!
あ! カメラさん! あちらに向けて下さい! 犯人側からの声明が行われる様子です!』
「謎の武装集団…。」
「いつの間にかに凄い事が起こってる…。」

 なのはとユーノの二人が追われる身となっていた間にさりげなく管理局ミッド地上本部が
謎の武装集団によって占拠されると言う異常事態。彼らは一体何者なのか…
そしてミッド地上本部の方では、時空管理局のマークが描かれた旗が降ろされ、代わりに
彼ら武装集団のシンボルと思しき旗が上げられていた。

『時空管理局ミッド地上本部は我々百合ショッカーが占拠した!』
「百合ショッカー!?」

 占拠された時空管理局ミッド地上本部から続々と出て来た如何にも怪しい男達の中心に立つ
科学者風の老人がその様にテレビ局のカメラに向けて高々とそう宣言していたのだった。

 だがそれのみならず、百合ショッカーと名乗る組織の幹部と思しき彼らが一人一人自己紹介をしていく。

『私は死神博士改め…百合神博士である!!』
「じ…爺さん…ま…またこのパターンか……。」

 死神博士改め百合神博士。その姿を見た士は頭を抱えてしまった。実は彼の正体は光写真館の主人、光栄次郎である。
しかし、死神博士のメモリの入ったガイアメモリによって死神博士・スーパー死神博士ドーパントになっていた事があった。
そして今回も死神博士改め百合神博士となっていたのであった。

『私は百合ショッカー百合幹部、地獄大使改めガチ百合大使!』
『私はドクトルG(ゲー)改めドクトルY(ユリー)である!』

 百合神博士を筆頭として様々な幹部が自己紹介をしていく。そして彼らを称える様に
彼ら側の兵隊と思しき全身タイツ姿の戦闘員達が手を上げ叫んでいたのであった。

『ユリー!!』
『ユリー!!』
『これより我々百合ショッカーは百合の理想郷建設の名の下に世界征服を宣言する!』

 これには士・なのは・ユーノの三人は暫し沈黙していたのだったが、ここでユーノが
なのはの左肩からテーブルの上に飛び降り、士に話しかけていた。

「あの…士さん…。ショッカーって…あのショッカー?」
「多分そのショッカーだ。少し変わっている様だがな。」

 士の言う通りだった。百合ショッカーはその名の通りショッカーが百合の力で強化復活した組織。
例えばショッカーの戦闘員は「イー! イー!」と叫ぶ事は周知の事実であるが、
この百合ショッカーの戦闘員は「ユリー! ユリー!」と叫ぶ程にまで百合に染まっていた。

「まさか鳴滝のみならずショッカーまで百合厨になってるなんて…一体どうしてこうなった…。」

 士は頭が痛くなりそうに頭を手で押さえていたのだったが、それだけに留まらなかった。

『諸君! 見よ! このお方が我々百合ショッカーの百合首領! フェイト=T=ハラオウンである!』
「ええ!?」

 ここでまたも異常事態。何と言う事か、あのフェイトが百合ショッカーの百合首領となって
彼ら百合ショッカーの百合幹部達の中心に立っていたのである。これにはなのはとユーノもビックリ。

「そんな…フェイトちゃんがどうしてショッカーなんかに…?」

 なのはとユーノの二人が愕然とする中、テレビの映像の向こう側では、百合ショッカー百合首領となった
フェイトが百合厨と思しき人々から賞賛の声を浴びせられていた。

「おそらくこの為だな。フェイトはリリカルなのはキャラの中でも特に人気があるのだろう?
それが百合ショッカーの首領となれば人々は百合ショッカーを賞賛する。これが奴らの狙いなんだ。
フェイトは洗脳でもされた上で首領に祭り上げられているだけに過ぎん。」
「そ…そうなんですか…?」
「俺も一度は大ショッカーの大首領をやってた事があったからな…。」

 士もかつて百合ショッカーの前身たる大ショッカーの大首領をやっていた事があった。
しかしそれも単に祭り上げられていただけの事。それと同じ様にフェイトも祭り上げられているだけであると
士は悟っていたのであった。

 百合ショッカーの存在はリリカルなのは世界に大勢いる百合厨達には熱烈な支持歓迎を受けていた。

『我々百合ショッカーが世界を征服した暁には、世界各地のゲーム屋から恋愛ゲーを撤去させ、
代わりに百合ショッカー製作の百合ゲー『ユリプラス』を発売させる。』
「おー!!」
「百合ショッカー万歳!!」
「ユリー! ユリー!」

 百合ショッカーの志に賛同した百合厨達は続々と百合ショッカーに入り、百合ショッカーは
彼らを百合戦闘員・百合怪人に改造して兵力を続々と増強して行くのであった。


 時空管理局とて百合ショッカーの暴挙を黙って見ているわけでは無かった。間も無く本局は
高ランク魔導師で構成された精鋭を百合ショッカーへ向け送り込むのだが…彼らが帰って来る事は無かった。
それどころか…

「ユリー!」
「ユリー!」
「うわー! 百合ショッカーの襲撃だー!!」

 逆に百合ショッカーの百合怪人・百合戦闘員達が本局に雪崩れ込み、瞬く間に本局までも陥落させられていたのだった。

「そんな…本局まで……。」
「無限書庫の皆は無事だろうか…。」

 百合ショッカーの手によって本局が陥落させられていく様子もテレビで放送されており、
その光景を目の当たりにしたなのはとユーノは愕然とするのみだった。

 しかし百合ショッカーが本局を襲撃・陥落させる理由は別にあった。本局を陥落させて間も無く、
百合神博士が複数の百合怪人・百合戦闘員を引き連れて直々に管理世界における犯罪者が拘束されている
軌道拘置所へ向かっていたのだった。

 そして軌道拘置所で一人の男が牢から出された。それはかつてJS事件を引き起こした天才科学者
ジェイル=スカリエッティであった!

「ジェイル=スカリエッティだな?」
「おお…貴方は怪人作りの名人と名高い死神博士!」
「如何にも。もっとも…今は百合神博士と名乗っているがな。」

 生命操作・人体改造を主に研究していたスカリエッティにとって死神博士はその道の大先輩。
それ故に彼が直々に会いに来ると言う事態は相当な衝撃であった。

「私が現在進めている百合生命体の製作には君の力が必要だ。強力してくれるな?」
「他でも無い死神…いや百合神博士の頼み…。協力しましょう。」

 こうして百合神博士とジェイル=スカリエッティ。二人の天才が手を組んだ。
そして二人が作ると言う『百合生命体』とは一体何なのであろうか…………?


 一方光写真館では、なのは・ユーノ・士の三人が考え込んでいた。

「これは真剣に何とかしないと不味いぞ…。こんな時に皆何処へ行ってしまったんだ?
せめてユウスケくらい帰ってくれば良いのに…。」

 百合ショッカーに対し何か行動を起こそうにも、三人だけでは流石に頭数が足りなかった。
なのはとユーノは依然として疲弊した体力・魔力は回復しきっておらずそれぞれに子供・フェレットの
姿のままであったし、士と離れ離れになった旅の仲間も帰って来ない状況では中々辛い部分があった。

 だがそんな時だった。突然呼び鈴が鳴ったのである。

「誰だこんな時に…。」

 と、文句を言いながら士が玄関へ向かっていたのだが、そこに現れたのは意外な人物であった。

「南光太郎!」

 彼は南光太郎。『仮面ライダーBLACKの世界』にて、暗黒結社ゴルゴムによって次期創世王候補、
世紀王ブラックサンとして改造されてしまったが脳改造を受ける前に脱出、以後仮面ライダーBLACKと
名乗りゴルゴムと戦い続ける男。士もかつてBLACKの世界に行き彼と共闘したり、ライダーバトルで
戦ったりと色々な事があった。

「大変な事になってしまったな。百合ショッカーは様々な世界の百合厨のみならず腐女子をも
味方に付けて日増しに兵力と勢力を伸ばし続けている。」
「腐女子までだと!?」

 腐女子とは、早い話が百合厨の逆を行く人間。百合厨が女性キャラ同士の百合を至高とする様に
腐女子は男性キャラ同士の801を至高とする者達。それが何故百合ショッカーに味方をすると言うのか?

「考えても見ろ。百合厨が女性キャラに男性キャラが近付く事を嫌う様に、腐女子は男性キャラに女性キャラが
近付く事を嫌う。つまり、百合ショッカーによってあらゆる女性キャラが百合になる事は腐女子にとって見れば
自分達の好きな男性キャラに女性キャラが近付かなくなると言う大きなメリットがある。つまり利害が一致しているのだ。」
「な……なんと恐ろしい事を………。」

 一見馬鹿らしい様に思えるが、当人達は真剣である。いずれにせよ百合ショッカーが腐女子までをも
味方に付けてしまったと言う事態は脅威である。その内腐女子で構成された801戦闘員とか801怪人とか出て来てしまいそうだ。

「しかも百合ショッカーにはゴルゴムから信彦までもが参加しているらしい。これはもはや黙って見ている事は出来ない。」
「あの…信彦って誰?」
「………………。」

 凄い真面目な話をしている時に真顔で問われて光太郎も困った。

「つまりシャドームーンだよシャドームーン。」
「ああ…月影の事か…。」

 ゴルゴムによって作られたもう一人の世紀王シャドームーン。その正体は南光太郎と兄弟の様に育った秋月信彦。
そして彼は『月影ノブヒコ』と名乗り士の家の執事を装っていた事もあったし、大ショッカー大首領の座から士を追い落として
代わりに大首領になって大暴れした事もあった。しかし…ここで一つの問題が…

「あの…私達はライダーの世界の事情には詳しくないから良く分からないんですけど…。」
「無限書庫に行けばそれ関係の資料も出て来ると思うけど、もう既に百合ショッカーに制圧されてしまってるはずだし…。」
「あ…ごめん……。」

 久々に台詞の機会が回ってきたなのはとユーノの言葉に光太郎も士も思わず謝ってしまうのだった。
何しろこれは一応はリリカルなのはSSの体裁を取っているのだから、ライダー側だけで話を進めても仕方が無い。
とりあえず、百合ショッカーにはシャドームーンもまた参加している事で脅威が増えたと言えるが、
それと同時に仮面ライダーBLACKこと南光太郎が士達に協力してくれる事はささやかな救いと言えた。

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最終更新:2011年04月02日 09:22