4:秋葉原の世界乱戦編

 こうして次にやって来た世界…そこは電気店やアニメショップやらメイド喫茶やらが彼方此方に並び
沢山のヲタっぽい人々で賑わっている世界だった。

「ここは…秋葉原の世界か…。」
「だから世界とかそういうんじゃないと思うんだけどな。」

 そこは秋葉原の世界。電気街であり、また数多くのアニメショップ等で賑わう世界である。
ここはまだ百合ショッカーの被害が及んでない賑やかかつ平穏な世界である様子であり、
これならば普通に通り過ぎても問題は無いだろうと次の場所へ出発しようとした矢先だった。

「うあー! あれは何だー!?」

 秋葉原の世界にいた一般人の一人がそう叫び、空間に開いた次元と次元を繋ぐ橋を通り恐るべき大軍団が
秋葉原の世界に雪崩れ込んで来ていたのだ。

「百合ショッカー!? でもあれは百合戦闘員や百合怪人じゃない!」
「ライオトルーパー…か…。」

 秋葉原の世界に雪崩れ込んで来た大軍団。それは確かに百合ショッカーの軍勢であったが、今まで戦って来た
百合戦闘員や百合怪人の類では無かった。それは仮面ライダー555(ファイズ)の世界に存在した量産型ライダー
ライオトルーパーの大軍団であった。

 ライオトルーパー。555の世界においてスマートブレイン社が開発した555の量産型と言える存在。
そして今秋葉原に雪崩れ込んでいたのはそれの百合ショッカー仕様であり、名称もユリトルーパーと改められていた。
また、元になったライオトルーパー自体が555の世界における人類の進化形・オルフェノクしか変身出来ない仕様だったのだが
ユリトルーパーも同様であり、その部隊編成はスマートブレインから百合ショッカーに参加した者以外にも
百合ショッカーによる検査でオルフェノク因子を持つ事が明らかになった百合厨で構成されていた。

「ユリー!」
「ユリー!」

 ユリトルーパーも結局やってる事は百合戦闘員・百合怪人と変わらなかった。各アニメショップに押し入り
百合以外のジャンルに関連した物を破壊したり、百合以外のジャンルを好む人間を虐殺したりする。
中身は同じ百合厨なのだから仕方が無い。これはこれで一般人にとっては厄介ではあるが。

「これは見過ごしてはいられないな。」
「うん!」

 ユリトルーパーの猛威から人々を守る為に士はディケイドへ、光太郎はBLACKへ変身し、なのははバリアジャケットを
装着していたのだが、その時だった。ユリトルーパー隊がやって来た方向とは逆方向から別の軍団が押し寄せて来ていたのである。

「うわ! 百合ショッカーの援軍か!?」

 四人はそちら側にも向き構えていたのだったが、今度現れた軍団はG3及びG3-Xの軍団であった。

「今度はG3とG3-Xか?」
「しかしおかしい…。アレはアギトの世界の警察が作った物だぞ。流石に警察が百合ショッカーに協力してるとは思えない。」

 G3及びG3-Xは仮面ライダーアギトの世界の警察が開発したパワードスーツ。
故にライオトルーパーと違い百合ショッカーに参加するのは余りにも不自然である。では彼等は一体何なのか?

「さしずめ百合ショッカーを鎮圧する為に出動した警官隊と言う所か?」

 ディケイドはそう推理していたのだったが、その時だった。群集がざわめき始めていたのだ。

「うあー! 都条例の世界の奴らだー!」
「助けてくれー!」
「都条例の世界?」

 秋葉原の世界にいた群衆がG3及びG3-Xの軍団を『都条例の世界』と呼び散り散りになって逃げ始めた。
しかし、G3及びG3-X軍団はその後を追い始めていたのだった。

「規制! 規制!」
「青少年の健全育成の為に有害情報を撒き散らすお前達を規制する!」

 G3・G3-Xの軍団は秋葉原の世界に存在するアニメショップや、客として店内にいたヲタっぽい人達、
またヲタに人気ありそうな雰囲気の美少女キャラクター等、とにかく秋葉原の世界と言えばこいつ等と言う
感じの人々や場所へ襲い掛かり、『規制! 規制!』と叫びながら本来対未確認生命体用に開発された数々の
特殊兵器で射殺・破壊を繰り返していた。

「ひ…酷い…。」
「一体どうしてあんな事をするんだ? 百合ショッカーの方がまだマシじゃないか。」

 なのはもユーノも思わず顔を背けてしまう程の惨状だったのだが、ここでBLACKが逃げようとしていた人々から話を聞いていた。

「一体何があったんだ? 都条例の世界とは一体何なんだ?」
「都条例の世界の連中は青少年の健全育成の為と称して、この世界にある物を有害物扱いして排除しようとしているんだ。
あんたらも逃げろ! あいつ等は何だって規制しようとするぞ! あっちにいる女の子と小動物なんか特に危ない!」
「な…何と言う事だ…。」

しかもそれだけでは無かった。G3及びG3-Xは如何にもヲタっぽい人のみならず、普通の親子連れにさえ襲い掛かり…

「規制! 規制! 有害情報は規制ー!」
「ああー! ママが買ってくれたばかりのキュアブロッサムのお人形がー! 返してよー!」

 何と言う事であろうか。普通の親子連れの子供の方が玩具屋で母親から買ってもらったばかりと思われる
玩具を『規制』の名の下に没収していたのである。

「あんな小さい子まで…あれの一体何が青少年の健全育成になると言うんだ…。」

 BLACKは愕然としていた。百合ショッカーのやっている事も確かに非道ではあるが、彼等は自分達の存在が
悪である事を認識した上で、世界征服を目指している組織である。しかし、都条例の世界の者達は
青少年の健全育成の為と言う一見聞こえの良い綺麗な言葉で飾りつつ人々を射殺しまくると言う恐るべき事をやっていたのである。

「奴らの背後には市民を守る為じゃなく、利権の為のポイント稼ぎとしてとにかく沢山の人を逮捕したいと考える腐敗した警察官僚がいる。」
「なるほど…だからG3とG3-Xをあんなに量産したのか…。」

 BLACKは逃げなければいけない状況でありながらも親切に説明してくれた人に礼を言いつつ逃がした。
だが、この状況下で一体どうすれば良いのか判断しかねる物があるのも事実だった。

「百合ショッカーを叩かねばならないのは事実だが、都条例の世界の連中の行為を見過ごす事も出来ん。」
「うん。いくら青少年の健全育成の為と言ってても、あんな酷い事をするのは許されない事だよ。」
「放っとくと俺達の方も規制されてしまいかねないからな。全く…本来グロンギやアンノウンの脅威から
市民を守る為に作られたG3・G3-Xであんな事をするなんてな…。」

 四人は百合ショッカーのユリトルーパー隊と都条例の世界のG3・G3-X隊の両方を倒し秋葉原の世界を
救う決意を固めていたのだったが、ここで事態はさらなる混迷へと向かう事になる。何故ならば…

「ユリー! ユリー!」
「規制! 規制!」
「ついにあいつ等が衝突を始めたぞ!」

 百合ショッカーのユリトルーパー隊と都条例の世界のG3・G3-X隊がぶつかり、戦闘を開始していたのである。
確かに良く考えれば百合を推奨する百合ショッカーと、青少年の健全育成と称して若者の娯楽を有害扱いして
規制しようとする都条例の世界の者は決して相成れる事は出来ない。そう考えるならば双方の衝突は必至だった。

 そして忽ちの内に秋葉原の世界全体でユリトルーパーとG3・G3-Xが入り乱れる乱戦へ突入していた。

「ユリー! ユリー!」
「規制! 規制!」
「うあー! こっちも巻き込まれるぞー!」

 百合ショッカーと都条例の世界の連中が互いに潰し合うのは確かに良い事だと言えたが、なのは達四人までもが
その乱戦に巻き込まれて離れ離れになってしまうのだった。

「ユリー! ユリー!」
「規制! 規制!」
「ユーノ君! 士さん! 光太郎さーん!」
「なのはー!」
「お前等とにかく生き残れ! 生き残れればいずれ合流出来る! 分かったなー!」
「お前達絶対に死ぬなよー!」

 秋葉原の世界の各地で乱戦を繰り広げるユリトルーパー隊とG3・G3-X隊、そして逃げ惑う群集の波に押し流され
それぞれが離れ離れになりながらも必死に互いの無事を祈り叫んでいた。


「規制! 規制! 有害情報は規制ー!」
「ユリー! ユリー!」
「ハァ…ハァ…。」

 鳴り響く銃声や怒号の嵐の中、ユリトルーパー及びG3・G3-Xからなのはは必死に逃げ回っていた。
ユーノと一緒に逃げた時点でなのはも百合ショッカーのブラックリストに登録される事になったのは言うまでも無い事だが
都条例の世界の者から見ても『高町なのは』と言う存在そのものが青少年の健全育成を阻む有害情報でもあった。

 360度あらゆる角度から飛び交う銃弾の嵐に対し、なのはは防御魔法を全周囲に張り巡らせながら飛び逃げた。
ユリトルーパー及びG3・G3-Xに飛行機能が無いのがせめてもの幸いであった。

 とりあえず戦闘が行われている地域から離れた田舎道に降り立ち、そこでひとまずの休憩を取っていたのだが
やはりなのはにとって皆がいないと言う状況は心細くもあったし、何より皆の無事が心配だった。

「みんな大丈夫かな…。」

 しかし、そんな時だった。何者かが歩み寄る気配。なのははユリトルーパー及びG3・G3-Xがここにも
いるのかと咄嗟に身構えていたのだったが、そこにいたのは…

「スバルにティアナ!」
「こんにちわなのはさん。」
「変身魔法で子供の姿を取ってるって話には聞いてましたが、本当だったんですね。」

 スバルとティアナの二人と出会う事でなのはは無意識の内に安心しようとしていたのだったが、そこで彼女達は言った。

「百合ショッカーに投降して下さいよ。」
「フェイトさんがなのはさんに会いたがってますよ。」
「!!」

 なのはは思わずレイジングハートを構えてその場から背後に跳び退いた。

「やっぱり二人も百合ショッカーに!?」
「当然じゃないですか。」

 案の定スバルとティアナの二人も百合ショッカーに入っていた。もっとも、この二人が洗脳されているだけなのか
はたまた本心で協力しているのかは流石に分からないが、今なのはが窮地に立たされている事は事実であった。

「あくまでも抵抗するつもりと言うのなら、こっちだって容赦はしませんよ。」
「貴女達二人が私に敵うとでも思ってるの?」

 なのはは表面的には平静を装っていたが、それを悟ってか二人は鼻で笑っていた。

「それなら私達が敵と分かった時点で直ぐにバインドと砲撃をしてますよね?」
「でもそれをしないと言う事は、出来ない位に魔力が落ちてると言う事。違いますか?」
「……………。」

 図星を突かれ、なのはは一瞬だけ表情が変わった。なのははユーノと共に百合厨から逃げていた時に疲弊した分の
回復が完全では無く、ましてや幾度も戦闘行為を繰り広げてきた。故に未だ変身魔法で魔力の消耗の少ない
子供の姿になってい続けなければならないのだが、そこの弱みをスバルとティアナに突かれていたのだった。


 一方その頃、未だフェレットの姿のままであったユーノを肩に乗せたBLACKが行く手に立ちふさがる
ユリトルーパー及びG3・G3-Xを殴り倒しながら走っていた。

「光太郎さん済みません。」
「君が謝る様な事じゃない。とにかく振り飛ばされない様にしっかり掴まっているんだ。」

 降りかかる火の粉を払いのけながら逃げ走るBLACKにユーノは必死にしがみ付き続けていた。
その結果、どうにか一休みが出来そうな安全な場所に辿り付き、そこで一息付いて座り込んでいた。

「フゥ…とりあえずは逃げ切った…か…。」
「でも他の皆は大丈夫なんだろうか?」
「そう信じたいがな。」

 やはりはぐれた皆の事を心配するユーノとBLACKであったが、次の瞬間だった。BLACKの改造人間としての
センサーが敵性反応を持つ何かの接近を感知していたのだった。

「何か来るぞ。」
「あ…確かに…。」

 精神・肉体両面での疲労の為に発見が遅れたが、ユーノもまた自身の探知魔法によって敵性反応を感知。
二人とも緊張し構えていたのだったが、そこに現れたのは…

「あれは…ガジェットじゃないか!」
「ガジェット!?」

 二人の前に現れたのはユリトルーパーでもG3・G3-Xでも無かった。かのJS事件でジェイル=スカリエッティの
一派が使用した自動機械兵器・がジェットⅠ型だったのである。しかもそのガジェットには百合ショッカーのマーキングが描かれていた。

「まさかガジェットまで持っているなんて。と言う事はジェイル=スカリエッティも百合ショッカーに協力しているのか!?
いや…彼ならばああ言うのには喜んで参加しそうだから分からないでも無いけど…。ごめんなさい光太郎さん、
ガジェット周囲には僕達の魔法を阻害するAMFが展開されていて僕はお役に立てるとは思えません。」
「詳しい事は分からないが…いずれにせよ改造人間である俺ならば問題は無いと言う事だろ?」

 ガジェットは魔力を阻害するAMF発生装置が標準で装備されている。その中でも戦うには、AMFにも屈しない
大魔力が必要となるのだが、それ故にパワーの無さをテクニックでカバーするユーノの魔法では対抗しにくい部分があった。
しかし、改造人間である仮面ライダーBLACKにはそんな事は関係無かった。

「行くぞ!!」

 勢い良く飛びかかったBLACKの拳がガジェットへ打ち込まれた。


 なのはがスバル・ティアナに襲われ、そしてユーノ・BLACKがガジェットの襲撃を受けていた頃、
ディケイドはユリトルーパーとG3・G3-Xの乱戦の真っ只中にいた。

「ユリー! ユリー!」
「規制! 規制!」
「これは流石に皆を心配出来る余裕無いぞ!」

 百合ショッカーと都条例の世界の連中が敵対しているのは当然だが、ディケイドもまた百合ショッカーにマークされていたし
都条例の世界から見ても青少年の健全育成を阻害する有害物として見られていた。故に双方は争い合いながらも
ディケイドに対しての攻撃も行っていたのだが、ディケイドはライドブッカー・ソードモードを振り回し必死に応戦していた。

「幾ら個々の力が大した事無いと言ってもこんなに数が多いんじゃたまらんぞ!」

 ユリトルーパーの元となっているライオトルーパーはライダーとは言え中身であるオルフェノクの力に依存した部分が強く、
またG3・G3-Xはただの人間でもそれなりの力を発揮出来るがライダーとしての性能は低い。ディケイドと比較した場合
天と地程の差があると言っても過言では無かったが、それでも数が半端無く多いと言う点は辛い物があった。

「敵が多すぎて地面のアスファルトが見えん! 幾らなんでも多すぎだ! 555のアクセルフォーム使って
逃げると言う手もあるが、こう密集されてるんじゃ10秒で果たして逃げ切れるかどうか…。」

 辺り一面が敵ならば、地面に転がるのも敵。おかげで道路のアスファルトの色が見えない。とにかくここは何とかして
逃げる一手を考えていたのだが、そもそも密集しすぎて派手に動き回る事も難しかった。しかし…そんな時だった。

「諦めるな!」
「ん!?」

 突然ディケイドの耳に飛び込んで来た謎の声。そして声の聞こえて来た方向に目を向けると、辺り一面で乱戦を繰り広げる
ユリトルーパー及びG3・G3-Xの隙間を巧妙に縫うかの様にディケイドへ向けて駆け寄せて来る者の姿があった。それは…

「とぉ!」

 高々と飛び上がり、さらにユリトルーパー・G3・G3-Xの頭を足場代わりにして上手く駆けて行く凄まじい技…
それは『技の1号』と称される仮面ライダー1号であった。

 仮面ライダー1号。『仮面ライダーの世界』において、青年科学者にして世界的オートレーサーであった本郷猛が
ショッカーによって改造された姿であり、そこからさらに数多の戦いと特訓、そして強化改造により強力なパワーと
48の技を身に付けたのが今の彼であった。

「お前は仮面ライダー1号…。」
「大丈夫かディケイド! 詳しい事は後だ。とにかくここを脱出するぞ!」
「ああ!」

 何故ここで1号が助けに来たのかは分からない。しかし今のディケイドにとっては地獄に仏だった。
そして二人でこの乱戦を突破し、安全圏まで脱出するべく進み始めたのだった。


 その頃、なのははスバルとティアナの二人に苦戦を強いられていた。

「ほらほら、どうしましたか!? 強力な砲撃が出来なければその程度と言う事なんですか!?」

 相手が百合戦闘員ならいざ知らず、本調子では無い今のなのはの砲撃力ではスバルを迎撃するのは困難だった。

「ここはとにかく逃げなきゃ!」

 空へ飛び上がって逃げようとしても…

「おっと逃がしませんよ。」
「あっ!」

 ティアナの正確な射撃が足元に上手く撃ち込まれ、その為に怯み上昇を阻止されてしまった。
それどころか尻餅を付いてしまう始末。スバルもティアナも、味方に付けるとあんなに頼りないのに
敵に回すとこんなにも恐ろしいと言うのか。そしてスバルがなのはにゆっくり歩み寄り顔を近付けていた。

「もう観念して大人しく百合ショッカーに投降しましょうよ。百合ショッカーの首領はフェイトさんなんですよ。
なのはさんに手荒な真似をするはずがないって分かってるでしょう? ね? ね?」
「嫌…絶対に嫌だから…。」

 あくまでも投降を拒否するなのはにスバルの表情が一瞬歪んだ。

「そうですか…。なら少し痛い目にあってもらうしか無いですよね…。歯ぁ食いしばれぇ!!」
「!!」

 スバルが拳を振り上げ、なのはの顔面目掛け撃ち込もうとしていた。それにはなのはも思わず目を瞑ってしまっていたが…
その拳がなのはの顔面に届く事は無かった。

「え? あっ!」
「こんな小さな子相手に乱暴は良くないな。」

 なのはが目を開けると、そこには突如現れた謎の男がスバルの拳を掌で受け止めている光景が移っていた。

「邪魔をするな!!」

 スバルは謎の男に対し殴り掛かった…が…次の瞬間、男は空手の回し受けでスバルの拳を弾き防いでいた。

「言っておくが俺は空手五段だ。そして…。」
「あっ!」

 さらに男はスバルの手を掴むと共に物凄い速度で投げ飛ばしていた。

「うあ!」
「柔道六段でもある。」
「な…何なの…この人…。」

 なのはは一体何が起こったのか良く分からなかった。突然なのはを助けに現れ、空手五段・柔道六段の腕前を持つ
謎の男…彼は一体何者だと言うのだろうか?

「ん…カラテ五段にジュードー六段…? スバル気を付けなさい! コイツがあの一文字隼人よ!」
「イチモンジハヤト? 誰それ?」
「馬鹿! 百合ショッカーから渡された資料読んで無いの!? 要注意人物の項目に載ってたでしょ!?」
「そうだっけ…?」

 ティアナはこの謎の男について知っている様だったが、ここで彼もティアナとスバルが百合ショッカーに
関わりのある人間と言う事に気付いていた。

「大人気なく二人して小さい子をいじめる不良少女かと思ったが…君達は百合ショッカー関係者か…。」
「だとしたらどうするの!? あんただってあの一文字隼人でしょ!?」

 ティアナは謎の男と相対しても怖気付く事無くクロスミラージュを向けていたが、男も全く動じていなかった。

「如何にも俺の名は一文字隼人。またの名を仮面ライダー2号。」
「え? 仮面ライダー…2号?」

 なのはが『仮面ライダー』と言う単語に一瞬反応した時、一文字隼人と名乗った男は服の上着のチャックを開き
その奥に隠されていた中心部に風車の内臓されたベルトを露出させていた。

「変…身! とぉ!」

 腕でポーズを取りつつ隼人は高々と跳び上がった。するとどうであろうか。ベルト中央の風車が高速で回転を始め
彼の姿が変わって行き、仮面ライダー2号へ変身していたのだった。

 仮面ライダー2号。『仮面ライダーの世界』においてフリーカメラマンであった一文字隼人がショッカーによって
改造されてしまうが、脳改造を受ける前に本郷猛に救出された事をきっかけとして仮面ライダー2号を名乗り
戦う様になり、さらに数多の戦いと特訓を重ねる事によってより強力な戦闘力を身に付けたのが今の彼の姿であった。

「君達の相手はこの仮面ライダー2号がしよう!」
「偉そうに! 姿が変わっただけじゃない! カラテだかジュードーだか知らないけど、こっちにもシューティングアーツがあるんだから!」

 スバルは今度は遅れは取らないと言わんばかりに2号へ殴りかかった。だが、そのスバルの拳に対し2号も空手の正拳で
返し、双方の拳がぶつかり合った結果、スバルが弾き飛ばされていた。

「うあああ!」
「馬鹿! 仮面ライダー2号は力の2号って言われてる位に凄い力があるのよ! 正面から行っちゃダメ!
百合ショッカーから渡された資料ちゃんと読んどきなさいよ!」

 ティアナの言った通りだった。元になっている一文字隼人自身が既に空手五段・柔道六段の腕前であるが故に
仮面ライダー2号はパワーを重視した仕様として改造された。それ故に『力の2号』と称される程の強力なパワーを有していたのである。

 その後もスバル・ティアナは仮面ライダー2号に阻まれ未だなのはを攻撃出来ずにいた。

「はぁぁぁ!」
「とぉ!」
「うあっ!」

 スバルが再度突っかかるも、逆に2号のパワーによって弾き飛ばされてしまう。

「君達が百合ショッカーに与しているのならば容赦はしないぞ。」
「くっ!」

 自身を盾にしてなのはを守る2号の強さにスバルも歯軋りしていたが、そこでティアナが後ろからスバルを引っ張っていた。

「仕方ない。一度撤退するわよ。」
「え!?」
「え!? じゃない! 私達はまだライダー対策が甘かったって事。」

 そう言ってティアナは強引にスバルを引っ張って去って行く。しかし、その間も二人はなのはを睨み付けていた。

「私達は諦めませんからね。絶対に貴女をフェイトさんの所に連れ戻してみせますから。」
「……………。」

 撤退して行く二人の姿をなのはと2号は呆然と見送っていた。今回はひとまずここまでで済んだが、
次は必ず決着を付けねばならないだろう。かつての教え子と敵対しなければならないと言う事実がなのはには心苦しかった。


 一方その頃、ユーノを肩に乗せたBLACKが単身ガジェット・百合ショッカー仕様部隊を相手に大立ち回りを演じていた。

「ライダーパーンチ!」

 BLACKの拳が重金属の塊であるガジェットを容易く打ち砕き次々に倒して行く。しかしガジェットも接近戦では敵わぬと
AIが学習してかBLACKから距離を置いたレーザー攻撃に切り替えていた。

「くっ!」
「AMFさえ無ければ僕がチェーンバインドで動きを止められるんだけど…。」

 ユーノが魔法で援護しようにもガジェットのAMFによって阻害されてしまう。とりあえずガジェットに接近さえしなければ
AMFの影響を受けないが故にユーノが防御魔法を展開してレーザー攻撃を防御していたが何時まで持つか分からない。
BLACK自身にも連戦による疲労の蓄積もあり、このままではガジェット部隊にやられてしまう可能性も否定出来なかったが…

「とぉ!」

 ここで何処から突然何者かが高々と跳び上がり、BLACKとユーノへ向けて激しいレーザー攻撃を続けていたガジェットの内の
一体へ向けて突き進むと共に……

「V3ィィィィキィィィック!!」

 その凄まじいキックでガジェットを蹴り込み一撃の内に粉砕していた。そして彼こそが…

「仮面ライダー! V3ァァァ!!」

 仮面ライダーV3。『仮面ライダーV3の世界』において本郷猛の後輩である風見志郎がデストロンによって
瀕死の重症を負わされた際に仮面ライダー1号・2号の手によって改造されたのが彼であった。

「大丈夫かBLACK!」
「ああ! しかし何故こんな所に!?」
「詳しい話は後だ! とにかく今はこいつ等を叩き潰すぞ!」

 V3の参戦によって流れが変わった。ガジェットもV3と言うイレギュラーの出現によってAIが浮き足立ち、
それが攻撃を鈍らせBLACK・V3の反撃のチャンスを作った。

「とぉ!」

 BLACKとV3が同時に高々と跳び上がり、空中からガジェットへ向けて襲い掛かり…

「ライダーキィィック!」
「V3ィィィ! 反転! キィィィック!」

 BLACKは自身の赤熱化させた脚で蹴り込むライダーキック、そしてV3は一度蹴り込んだ後に再度跳び上がり
再び蹴り込むと言うV3反転キックでガジェットを破壊していた。V3のベルトは1号の技と2号の力を受け継ぐ
ダブルタイフーンにより、強力な技と力を併せ持っていたのであった。

「よし! このまま行くぞ!」
「おお!」

 BLACKとV3は横に並び共にファイティングポーズを取り未だ残存するガジェットと相対していたのだったが…

「しかし…その肩に乗る小動物は何なんだ?」
「そんな事言ってる場合じゃないだろ。」
「あ…あの…僕はユーノ=スクライアと言います。」
「うわぁぁぁぁぁぁ! 喋ったぁぁぁぁぁぁ!!」

 未だBLACKの左肩に乗り続けるユーノの姿がV3にはシュールに映ったらしく、思わず突っ込んでいたのだが
ユーノが自己紹介した途端に『マクドナルドの世界』におけるスポンジボブのCMばりにV3は驚いてしまっていた。

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最終更新:2011年04月02日 09:31